とある町のカフェで、鈴とヤヨがラングドシャに似たお菓子を食べていた時だった。
鈴があることを思いつく。
「ねぇ、ヤヨちゃん。ヤヨちゃん」
「はい、なんですか?」
ヤヨは飲もうとしていた紅茶の入ったカップを置き、鈴に笑顔で尋ねた。
「ヤヨちゃんっていっつも本当のことを説明してくれるでしょ」
妙な言い回しに、ヤヨは若干違和感を覚えつつ、笑顔で対応する。
「本当のことかはわかりませんね。以前にも言った通り、私の知識は実践に欠けるものが多く、本の受け売りなんです。本に書かれていることが必ずしも真実であるとは限りませんから」
「うん、それはいいんだけど、一度でいいから、本当っぽい嘘を言ってくれないかな?」
「本当っぽい嘘ですか? そうですねぇ」
ヤヨは少し困った風に考え、何か思いついたのか説明を始めた。
「鈴さん、マウスって知っていますか? 動物のマウスではなく、パソコンで使うマウスです」
「うん、お父さんが使ってるパソコンをたまにいじらせてもらうから」
「そのマウスの移動距離には、特別な単位が用いられているんですが、その単位の名前がミッキーって言うんです。という本当っぽい嘘の話でした」
「あはは、ヤヨちゃん。さすがにそのネタは嘘ってわかるよ。やっぱりヤヨちゃんは嘘が苦手なんだね」
「あ、いえ、ミッキーの話は本当で、『本当っぽい嘘の話』というのが嘘なんです」
「…………………………え?」
鈴が脳の処理が追い付かず、フリーズする。
「ミッキーが嘘で、嘘が嘘で嘘が本当で、じゃなくて、ミッキーが本当で、嘘が本当で嘘が嘘でミッキーも嘘でつまりマウスがミッキーでミッキーがマウスで……」
「鈴さん、落ち着いて下さい! 周りの人も変な目で見てますから!」
結論、嘘は周りを混乱させる。
(マウスの移動単位がミッキーというのは真実です)
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