お父様との話し合いから数時間後、私は荷物をキャリーバッグに纏めて玄関口に来ていた。
玄関口にはメイドや執事、使用人達が勢揃いしている。
みんな顔は悲しみや中には泣いている人もいる。
私は改めてこの家の暖かさを感じた。
「皆様、今までお世話になりました」
私は頭を下げた。
「お嬢様······、どうかお体に気をつけて」
「本当だったら嬉し涙を出したかったのですが······」
「とても残念無念です」
口々に別れの言葉をかけてくれる。
「お嬢様、これからは1人で何もかもしなければなりません。しかし困った時は他人の手を借りる事も大事です」
「ありがとう、執事長。肝に命じるわ」
私は玄関を開けて外へ出た。
庭を抜けて門の所まで来て後ろを振り返った。
産まれて育った我が家を瞼の奥までに焼き写していた。
多分、私は二度とこの家に戻ってくる事は無いだろう。
良くも悪くも思い出がある家。
「······よし」
私は前に向き直し門を出た。
これでもう私は公爵令嬢では無くなった。
まずは住む場所を見つけないといけないので町の方へ向かおう、と思ったら私の横に馬車が止まった。
「ミンシア様ですね」
馬車から降りてきた兵士が私に声をかけた。
「は、はい、そうですが」
「どうぞお乗りください。ご自宅までご案内致します」
へ? 自宅?
訳がわからないけど言われるがままに私は馬車に乗った。
「お、王妃様っ!?」
馬車にはこの国の王妃であるレナージュ・レガシア様が乗っていた。
「な、なんで王妃様が······」
「勿論、貴女のこれからの人生をサポートする為よ。まずは今回の件、王に変わって謝らせてもらうわ」
そう言って王妃様は頭を下げた。
「私は貴女を娘として迎える事を楽しみにしていたのよ。なのにこんな事になってしまって申し訳無いわ」
「い、いえっ!? 頭をあげてください、王妃様。私も王妃様には感謝しているんです。挫けそうな時にはお茶会を開いて私の愚痴を聞いてくださって······」
王妃様は優しいお方で私が疲れたり心が折れかけたりしたら言葉をかけたりお茶会を開いてくれたりした。
「私も王妃教育では散々苦労したから貴女の気持ちがわかるのよ。貴女がいれば安泰だと思っていたのに······、私達も最後までどうするか迷っていたのよ。抵抗するかもしくは影武者を立てて貴女とハルシアを何処かの村に隠そうかとも思ったのよ」
「そうだったんですか······」
「だけどハルシアが自ら行く事を決めたのよ、それはこの国の為でもあるし貴女の為でもあったのよ」
「私の為、ですか?」
「今回の措置も貴女の身を守る為の措置だったのよ、貴女がこのまま公爵令嬢のままだったら命に危険があったの」
え?どういう事?
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