「あの、それはどういう事でしょうか?」
訳が分からなかったので王妃様に聞いた。
「前に帝国で晩餐会があったでしょう。あの時にハルシアを見て一目惚れしたらしいのよ。それで密偵を使って調べさせたらしいのよ」
やっぱりあの時だったか······。
当然だけど晩餐会には私も婚約者として参加して自己紹介もしている。
だから私の存在も気づいていた筈だ。
「勿論、貴女の事も調査済み。それで我が国に脅しをかけてきたのよ。『ハルシアを婿として迎える。断るのであれば敵対心がある、と判断してそれなりの対応をする』ってね。その中には貴女に危害を与える事も書かれていたのよ」
「わ、私にですかっ!?」
「えぇ、だから貴女の安全を護る為には貴女を公爵家から離す事しかなかった······」
そう言う事情があったのか······。
「ただ、これは一時的な措置だと思って。表向きは貴女は平民になってしまうけど全てが落ち着いたら公爵家へ戻す事も考えているわ。だから、ちょっと我慢をしてほしいの」
「······わかりました」
私があーだこーだ言っても仕方がない事だ。
それに王妃様の言葉には悪意を感じなかった。
本当に申し訳無い、と思っているんだ。
だったら私は今の状況を受け入れるしか無い。
王妃様と話をしている間に馬車は目的地についた。
王妃様の後を追って馬車を降りると一人暮らしには丁度良いぐらいの一軒家が建っていた。
「此処は王族所有の別邸なのよ。貴女にはこの家で暮らしてもらうわ。食料とか生活用品は定期的に送らせて貰うわ。困った事があったら手紙を書いて送ってちょうだい。ただし偽名を使って」
「偽名? 何故ですか?」
「······帝国の密偵はまだ国内に潜んでいるわ。もし貴女との関係がバレたら」
「私も国も危うい立場になってしまう······」
「えぇ、そう言う事よ」
「わかりました、本当に必要な時以外は一切連絡は致しません」
「無理はしてはダメよ」
そう言って王妃様は私を抱きしめてくれた。
「貴女に酷な事をしてしまったけど私はいつでも貴女の事を見守っているわ」
「ありがとうございます······」
その後、王妃様は馬車に乗り去っていった。
改めて家の中を見回した。
「私の部屋と同じくらいの広さね、それにキッチンやトイレが付いている感じかしら」
うん、1人で住むには問題ない。
「住居問題はこれで解決だけど、まだ問題はあるわね。でも時間はあるから焦らずに行動しましょう」
こうして、私の怒涛の1日は終わった。
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