車の中で薗原ダムで経験したことを必死で忘れようとする明るい肝試しメンバー。
車を運転しながら油井が「動画には映すことは出来なかったけど、最後の最後で臭い始めたあの豚舎とか牛舎とか、何だろう家畜小屋に入ったかのようなあの家畜臭い臭いの正体が分からない。はじめ通ったときはあんな臭いなどしていなかった、水の流れる音が轟々と聞こえてくる。それだけだったのに、何だったんだ。そればかりはわからなかった。謎の”出ていけ”って言っていたのかな、か細い声で俺達に言ってきたのも何かあるから指摘するために言ってきたのかもしれない。」と話すと、後ろに座っていた後藤が「その指摘だろう声の後にさ、呻き声がした。その後に牛とか豚を飼っているような家畜臭ってのがしたんだよね。俺もちらっとしか見ていなかったけど確かにおじさんらしき男の人がいた。豚の散歩って言ったらおかしいけど、それであの橋を渡ったときに揺れて落ちて亡くなったって印象がある。」と自分なりの解釈で説明すると、斧落はブッと笑った後に「あれは男の人じゃない、女の人の呻き声だったよ。だから男らしい見た目のおばさんじゃないのかな。家畜関係の方に居ても不思議じゃないしね。それに豚の散歩って、今流行りのミニブタじゃあるまいし。放牧の間違いじゃないの?」と指摘すると、杉沢村が「次の心霊スポットの解説を甲州がしていたから、次は斧落でTikTokの生配信を始めようか。」と切り出したところで、一同はTikTokで次回の心霊スポットに行く予定の場所をライブ配信し始めた。
「皆さん、こんにちは!明るい肝試しメンバーの斧落です!ってか、車のラジオで流れているリクエスト曲のその歌五月蠅いよ!」
斧落が苦言を呈すと、油井が「俺がラジオ局にこの曲を流してと言ってリクエストしたわけじゃないよ。それに渡辺美里さんの”My Revolution”なんて名曲中の名曲じゃねぇか。まあ著作権の関係もあるからボリューム下げようか。怒られるな。」と話すと、隣にいた村田がラジオのボリュームを聞こえぬように下げ始めると、再び斧落の説明がスタートした。
「皆さん、カーラジオのリクエスト曲が大音量で流れてしまい大変失礼しました。気を取り直して、次に向かう心霊スポットの話をしましょう。次はみどり市にあるはねたき橋という、ここは非常に女性による飛び降り自殺が9割と言われているように、自殺の名所とされているのと同時に、やはり女性の自殺者が多いこともあって目撃例としては女性の霊や子供の霊を見た等の声があります。そこで我々ははねたき広場の駐車場へと先ず向かい、撮影の成功を祈願してはね瀧道了尊へお参りをしてから、はねたき橋へと向かいたいと思います。ライブ配信はいつもと違って、14時から配信をスタートしたいと思います。私達が今いる沼田市からみどり市、一般道を使って走っても距離があって1時間はかかってしまいます。13時55分ごろからはね瀧道了尊のところからライブ配信をスタートしたいと思います。それでは皆さんのご視聴を心からお待ちしておりますので、宜しくお願いします!!」
TikTokでのライブ配信を終了させた一同は、みどり市に着いたと同時に昼休憩を取るためにレストランへと先ず立ち寄ってから、目的地のはねたき橋に向かうために車を停車することが出来るはねたき広場の駐車場を目指すことにした。
そして時刻が13時55分になったと同時に、YouTubeとニコニコ動画でのライブ配信が始まった。
カメラを前に油井が「13時55分になりました。油井です!」と元気良く挨拶をすると続けて村田が「怪談蒐集家の村田です!今回ははねたき橋に来ましたが、ここが心霊と言われる所以としては、ここでお亡くなりになられた方の9割が女性ということもありここは非常に女性の霊が現れる心霊スポットとしても知られている場所だね。ということで、今回リポーターは俺達ではなくいつも俺達の後ろで支えてくれている甲州と斧落の女性陣に久しぶりにリポーターを務めてもらおうか。花魁淵(山梨県甲州市の心霊スポット)以来だから、だいぶたつな。俺達の心霊リポートの最初がおむつ塚(山梨県山梨市の心霊スポット)で、青木ヶ原の樹海(山梨県南都留郡富士河口湖町の心霊スポット)、新府城跡(山梨県韮崎市の心霊スポット)、東沢橋(山梨県北杜市の心霊スポット)、すずらん池(山梨県北杜市の心霊スポット)と行ってきたから、本当に山梨県様様だな。」と話すと、村田が「それだけ関東圏内で考えると山梨とあと神奈川はこれでもかとばかりに心霊スポットが多数あるんだよ。千葉県や栃木県、茨城県、群馬県もそうだけどね。所有権が絡んでくる心霊廃墟の割合が少ないからあとは撮影許可が下りるか否かだけで問題なく撮影できる場所が多いんだよ。だから首都圏だからって多いと思われがちな埼玉で心霊巡りってなると、すんごく難しいよ。何にもないからね。怪談話で有名になったあの秩父湖の吊り橋は立ち入ることも出来ず湖を眺めるだけで終了、畑トンネルは私有地内にありまた出口が住宅地でしかも裏庭になるために立入禁止となっている。となれば群馬と埼玉の県境に位置する神流湖を埼玉として扱って検証するか、吊橋は渡れないが秩父湖で心霊検証を行うか、ハイキングコースになっている正丸峠とか、撮影できる場所がもう知れている。明るい肝試しとして行けるところが無すぎるんだよ。」と話すと、油井が「埼玉は心霊スポット巡りをする上において行くところが無さ過ぎて泣かせるね。東京だって、行けるところといや八王子か青梅か、場所が限られているのも泣かせるね。あるサイトは硫黄島を推す声もあったけど、元住民の慰霊目的以外の上陸しか出来ないのにどうして行けっていうのか教えてもらいたいものだよ。」と話すと、甲州は「東京と埼玉はしょうがないよ。それだけ人がいるんだからマナーを守らず肝試しをする若者がいるってことなんだから、わたしたちのようなルールを守って肝試しをしてくれる人たちが増えてくれると良いんだけどね。」と話すと、村田は「そうだね。少なくともゴミをポイ捨てしたり、トイレがないからって立小便とかを勝手にしたりするのも許される行為ではないね。霊達の怒りを買うだけに限らず、近隣住民の迷惑になる行為そのものだからね。」と話したところで、一同ははね瀧道了尊で一列に並んで一礼二拍手で御参りを済ませた後に、はねたき橋へと向けて移動した。
はねたき橋が目前に近づこうとした時に、斧落がある看板に気が付き立ち止まった。
”その悩み あきらめないで 打ち明けてください みどり市”
命の相談の窓口ともとれる看板を目にした斧落は「やっぱりまだまだここは自殺者が多いってことだよね。こんな看板があるってことはもう何もわたしたちが肝試しを実行しなくとも出てくるような感じがする。」と話すと、杉沢村が「いやいや。看板があるからって霊が出てくる!とは言い切れるものじゃないじゃん。写真を撮ろう。ポラロイドカメラでの撮影を油井が担当して、チェキの撮影を村田に任せて気になるポイントを写真撮影しようぜ。」と切り出し看板の写真撮影を行ったところで、甲州と斧落がはねたき橋をゆっくりとした歩調で並んで歩き進んでゆく。
甲州が斧落に「何だかここにきてから下に渡良瀬川が流れているというのもあってか風が段々ときつくなっているような気がする。ここで彷徨っている霊は複数いるような気がする。」と話すと、斧落も同じようなことを考えたのか「わたしもちらっと下の渡良瀬川を覗いたんだけど、誰かがふと欄干のところから注意深く覗き込んできたんだよね。下には足場なんて何もないのに、あれは髪が長かったから女性の可能性がある。何か目で訴えている、そんな気がしてならなかった。でも他にもいる。わたしたちが確認できる範囲外にもいる。」とリポートをしながら歩き進んでゆくと、写真撮影をする村田が「やはり噂はその通りだったな。ここはどうしてか女性の自殺者が多く、また女性の霊の目撃談が後を絶たない。」と語ると、甲州が「理由は何なの?教えて。」と村田に聞き始めると、村田が解説をし始めた。
「昔このはねたき橋の付近には高津戸城という城があって、城主だった山田家の姫様が異様な死に方を遂げたという逸話が残っており、近くを通った女性をターゲットに橋の下へと引き摺り込もうとしているのでは?という話がある。思いがけない形で死を迎えた女性たちの無念が今も彷徨っているのかもしれないね。またこのはねたき橋を渡り切った先にある高津戸峡遊歩道にも心霊の噂がある。高津戸ダムにも建設中の際に殉職された作業員の霊を弔うための慰霊碑があるだけに、こちらも女性たちの霊とは関係のない霊の目撃談がある。遊歩道とダム、どちらも歩いて検証しよう。」
村田が話し終えた後、後ろにいた秩父が「改めて今持っているスマホではねたき橋と調べてネットサーフィンをしているけどさ、わずか一カ月弱の短い間だけで二桁にも及ぶ投身自殺が起こったともあるね。そういった背景から、何かに引き込まれそうになったり、赤子の泣き声が聞こえてくる、母親と赤子の霊体が出没するなど、出てくる霊は女性だけではないね。近年に報道されたニュースだと、親子による無理心中があったらしいからね。姫が呼び込んでいるのかどうかは別問題と捉えて、高さがあるだけに自殺志願者を呼びかねない構造になっているんだろう。それに真ん中にきたらここの部分だけが柵が高くなっている。これもまた自殺対策のうちの一つなら極めて効果があるとは言い切れない構造になっているね。本当に多かったら、虹の大橋のような高いフェンスと有刺鉄線を張り巡らせるなどの柵に出ても不思議じゃないがここはそんな対応を取っていない。つまり乗り越えてしまえばおしまいだ。この高さが乗り越えることが出来なければ脚立を用意すればいい。打越橋のように高いフェンスではあるが一番先端の先が内側に折れ曲がっていて仮によじ登っても自殺を思いとどまらせるような構造すら取っていないのも、飛び降りやすい環境が非常に揃っているとしか言いようがない。」と話すと、先頭を歩く畑が「それはここが観光地で、あまりにも高いフェンスを設けてしまうと、景観を損ねてしまうのもあるんじゃないのだろうか。せっかくこんな雄大な景色を味わうためにも、こんな立派な作りにしたんだから、やはりここは観光地であることを最優先にしたとしか言いようがない。いのちの電話の看板は設置しても景観を損ねないからだろう。しかしあれを見たからと言って他にも仲間がいると分かれば怖くないと思い、あんな看板を設置した行為そのものが自殺者にとっては誘発行為なんだよ。ここで飛び降りた人間が自分一人だけじゃないと分かれば、思い切って飛び越えることが出来るからね。とりわけ衝動的な自殺は防ぎようがない。悩みを作らせない社会環境を作るといっても、結局人は考えがある以上、迷いや悩みがあって当然の生き物だから。」と語り、斧落は「そうだよね。精神的ショックに陥りもう立ち直れないとなってワーッとなって飛び降りた可能性だってここでは多く起こったかもしれないってことだよね。」と語りながら先を進む。
橋の出口に来たところで、左手に見えてきた慰霊碑に甲州が斧落に対して「慰霊碑がある。あそこがきっとダム建設の際にお亡くなりになられた作業員を弔うための慰霊碑に違いない。」と話すと、二人は慰霊碑の近くへ向かうことにした。
改めて慰霊碑を前に明るい肝試しの8人のメンバーが一列に並んだところで、頭を深々と下げて両手を合わせ拝み始めた。
拝み終えた後、斧落が慰霊碑の後ろをまわりこんでみると、畑に対して「殉職された方々のお名前が刻まれているね。改めてこの方達の存在が無ければ今の高津戸ダムが完成しなかったのだから、心を込めてお亡くなりになられた方達のために黙祷を捧げよう。ここは心霊と言ってしまえば非常に失礼にあたる。」と語ると、油井が近くにあったブロンズ像を見て、「この全裸の男のブロンズ像は当時の亡くなられた作業員をモチーフにしているのか?」と聞き始めると、杉沢村が「それはないだろ。ってか作業員を弔うためのブロンズ像にしては何でどうしてその銅像のチョイスにしたのかがさっぱりわからないな。筋肉は鍛えられているし、何より作業員の服を着ていないし、弔うにしても効果があるのか疑問にしか思えない。」と話すと、村田が「以前俺が黒部ダムに行ったときは、ここも171名の方が工事中に命を落とされていてダムが完成された今も慰霊碑を大切に供養しているが、そこに設置されてある像は明らかに作業員だって分かるヘルメットと作業着姿でつるはしを使って手作業で掘削をしているんだけどね、ここのブロンズ像は何を弔いたいのかさっぱりだ。」と話すと、油井が「これこそ税金の無駄遣いだ。意味の解らぬお金の使い方では、結局何のために作られたの?と突っ込まれかねない。」と苦言を呈したところで、一同は高津戸ダムの堰堤がある方向へと進んでゆく。
そして高津戸ダムを前に甲州と斧落が堰堤を先に歩き始めると、改めて二人並んで
下を眺めてみる。
「高いね。高所恐怖症の人には耐えられない高さだね。」
甲州が斧落に語ると、斧落は「そうだね。足がすくみそうな高さだね。でもここは高さがあって怖い以外の霊的なものは感じないね。お亡くなりになられた作業員の霊が出るとかそういったわけでもなさそうだしね。」と話すと、二人はさらにその先まで歩き進んでゆくが、後ろをついていた油井と村田に対して甲州が「ここから先は何もないみたいだよ。マップで見ても発電所の事務所があるぐらいだね。高津戸峡遊歩道で肝試しをし終えたら、はねたき橋のところまで戻って、生配信を終えようか。それにもうわたしたちで検証しても、警戒するような霊達の動きはあったが、それは決してカメラに映るような事ではないから油井君と村田君がリポーターをやっても良いんじゃないの?」と打診すると、油井はハハハと笑いながら「ここでリポーター交代しても意味がない。最後までむっちゃんとメイサちゃんの二人にリポーターをお願いしたい。」と改めてお願いしたところで甲州が「わかった。最後までリポートする。」と返事して、二人は再びはねたき橋に戻るために高津戸ダムの堰堤を歩き始めた。
その時だった。
斧落の足が一瞬立ち止まった。
思わず甲州が「どうしたの?何かあったの?」と訊ねると、斧落は「いやなんでもない。何か悪い予感がした。」と答えると、甲州は「悪い予感って何?どういうこと?何かこの先起こるってことだったらそれは包み隠さず教えてほしい。」と話しかけると斧落は「さっきのはねたき橋で、警戒するような霊達の動きがあったのはわたしたち感じた事じゃん。でもその霊達以外にも、わたしたちのことを鋭い視線で睨み付けてくる霊がいてそれがとても恐ろしかった。帰路とはいえ、何かあったら怖いなと思って、それが気がかりになった。それだけ。」と理由を話すと、甲州は「睨み付ける霊?それってあの集団でいた女性たちの中にいたあの般若のお面のような表情をした女性の事?」と聞き始めると、後ろでじっと聞いて居た油井と村田と杉沢村に対して甲州が「すぐに写真検証を行おう。何か写ってはいけないものが写り込んでいるかもしれない。」とやはり不安に思ったのか提案するも、油井が「まだ高津戸峡遊歩道が残っている。高津戸ダムでの写真撮影も十分ではないのに、今すぐに行うのは早すぎないか。はねたき橋の帰路を終えたところで写真検証を実施しよう。」と二人に対して説得をしたところで、甲州は返事をすることなく黙り込み渋々わかったといった感じで歩き進んでゆくと、斧落は「むっちゃんのことはわたしが何とかする。きっとわたしのことを心配してくれて言ったんだと思うから。ごめんね。わたしも心配させてしまうアクションを起こして申し訳なかった。」と話すと、甲州の後を追うようについていく。その際に斧落は甲州に対して「どうして返事をすることなく先に進もうとしたの?」と単刀直入に切り出すと、甲州は「メイサちゃんが心配だったからとかそれだけが理由じゃない。霊の姿はキャッチすることはできないんだけども、何だか嫌な気配がする。カメラには写らないことだから確信を持って言えることではないんだけど自殺した女の霊に憑いてこられているような、わたしが気付くとまた消えたり、気付いていないと分かればまた憑いて来たりと、やはりここは霊感の強い人間にとってはきついところかもしれない。それこそ饗庭さんが指摘した”霊的エネルギーの強い人間が持つ強いパワーを取り込むために悪霊や邪霊がターゲットとして狙ってきてもおかしくない”と言っていたように、狙われているのかもしれない。冗談抜きでここは来てはいけない所なんだと思う。」と話すと、斧落は「怖くなければ肝試しの必要性なんてないじゃん。それに今朝の薗原ダムの再生回数なんてすごいよ!今の段階でむっちゃんが足を掴まれた!と言ったシーンだけでも100万回以上は再生されているよ。これだけ多くの人が霊の存在を疑う懐疑派の意見すら否定も出来ぬほどわたしたちの活動で霊がいることを証明しているのだから、頑張って高津戸峡遊歩道でも肝試しを行って、はねたき橋の帰路を目指そう。応援してくれているフォロアーさんのためだからね。」と元気づける口調で話すと、甲州も斧落の話を聞いて笑顔が戻ったのか「そうだね。わたしたちの活動を応援してくれている人がいるから明るい肝試しとしての活動が成立しているもんね。気持ちを切り替えて頑張る。」と話すと、斧落は「そうだよ。あと少しだよ!高津戸峡遊歩道まで行けばあと少しで肝試しも終わりだからね。」と励ましながら歩いていくうちに、高津戸峡遊歩道に入るための入り口にまで辿り着くと、甲州が「大丈夫、大丈夫。わたしは強い。」と心配させぬようにニコニコ笑顔で言い聞かせながら階段を下りてゆく。
変わりゆく甲州の様子を見た後藤は油井と村田に「代わってあげたらどうなんだよ。明らかに怖がっているし、このままでは自殺者の霊達の格好の餌食にもなりかねない。心の弱みを掴まれたらおしまいだ。あの世の世界に連れていかれる。」と警告すると、村田は「饗庭が投稿しただろうコメントにビビっているだけだ。それに饗庭とは限らないだろ、今あいつらの公式Instagramを見たけど3日に故郷のバルセロナに居て4日には日本に帰ってくるとあったから、コメントが投稿されたのは俺達がまさにライブ配信をしようとする直前だから時差的に考えてもあっちは夜中だ。あいつらのファンの誰かがあいつらと思わせるようなコメントを寄せたに過ぎないのを深刻に甲州が受け止めているだけに過ぎない。あとで俺が甲州に対して説明する。」と強い口調で言い切ると、後藤は「仮にあいつらのファンだとしても言っていることは霊能者だと思うけどな。霊感が強くなければあんなことは言いきれない。だから可能性として有り得るなら、あいつらの心霊一大プロジェクトに賛同する消防士だ、自衛官だ、警察官といった霊能者としてのスキルを持つ副業地方公務員があいつらのことを庇って俺達のサイトに批難した可能性だってあるんだ。あえて饗庭兄弟と思わせる発言をすることで俺達の活動を危惧しているとでも言いたかったのだろう。霊能者である可能性は捨てきれない。」と言い切ると、村田は「まあ理由がどうであれ、後で俺達が慰霊の旅路の公式WEBサイトに対して正式にクレームを叩きつければいい。所詮奴らは副業地方公務員に過ぎないのだからね。」と話すと、後藤は「それは益々饗庭兄弟の怒りの炎に火をつける結果にもなると思うが。でもまあいいや。どう反応を示すか見てみたいね。」と言いながら、高津戸峡遊歩道を歩いてゆく。
そして段々と空気が変わっていくことに気が付き始めると、橋のほうから呻き声のような大きな叫び声が聞こえてきたので思わず一同が橋のほうをみて振り返る。
しかし誰も飛び込んだ様子などは見受けられなかった。
甲州が畑と後藤に対して「さっきの声って拾えた?」と聞き始めると、畑は「ああ。一応拾えたかもしれない。」と言って返事をすると、後藤も「さっきの音は拾えたかもしれない。でも微かに聞こえる程度のものかもしれない。」と続けて答えたところで、一同ははねたき橋のところまで戻ると、改めて音が聞こえてきた橋の真ん中あたりにやってくると、改めて下を眺めてみる。
確認のため、油井がその場で霊視を行うと全員に対して「さっきの呻き声は自殺した女性の声だろうな。渡良瀬川の岸辺にいて俺達がいる方向を見てじっと睨みつけている。自殺者の霊がどうして死んだ今でも呻き声をあげるかわかる?」と話すと、村田が「それ饗庭の星弥が言っていたことだろ。”自殺者は更なる自殺者を出すために誘発行為を出してくる。それが呻き声がする、叫び声がする、足音が聞こえるとそれが段々と近付いてくる、足元を掴まれるなどのアクションを起こし、生者に対してSOSのサインをあえて出すことで自殺者のサークルを作る、ってね。結局自死なんか遂げてもあの世に行けたとしても歓迎された死ではないから先祖の霊達に怒られて居場所を失い結局最期を遂げたここに戻るしかない。死んでも居場所がない怨みもあるらしいが、何より観光地である以上、あえて人目につくような場所で死を選んだことによって自分の存在を主張したいというのも潜在意識のうちの一つにあるらしい。だからこういった場所で死ぬ霊は質が悪いんだってね。」と話すと油井は「そうだ。その通りだ。だから言いたい。自殺なんかするもんじゃないってね。」と力強く話した後に甲州と斧落に対して「亡くなられた方々に対して改めて追悼の意を捧げてライブ配信を終えようか。二人ともよく頑張った。むっちゃんもビビりながらだったけど終始よく頑張ってくれた。ありがとう。」と話すと、甲州は「ありがとう。そうだね。亡くなられた方々に黙祷を捧げよう。」と頷きながら答えると、最後は8人が一列並ぶような形で渡良瀬川に向かって手を合わせた。
「どうか心の傷が癒されますように、天国に行けますように。」
甲州が呟きながら手を合わせると、それを聞いた村田が「やっぱり怖いんだったら明るい肝試しのメンバーを離脱したらどうだ?」と話すと、甲州は「何言っているの。それに後藤君と村田君のやり取りだって聞いたよ。あのコメントの内容を考え過ぎた、それだけ。でも今は吹っ切れた。教えてくれてありがとう。もう大丈夫。」と言い切ると、斧落はその一言を聞いて安心したのか「よかった。苦言に対して真摯に受け止め過ぎないほうが良いよ。良い苦言ならまだしもあれは脅しそのものだったからね。気にし過ぎだよ。」と笑いながら話すと、いのちの電話の看板のところにまで戻ってきたところでライブ配信を17時過ぎに終了した。
「明るい肝試しって言う割にもうそろそろお日様が沈みそう。本格的な肝試しと言われてもしょうがないね。」
斧落が杉沢村に笑いながら話すと「仕方がない。検証も兼ねているのだから、時間だってかかっちゃう。最終日となる明日は埼玉県での明るい肝試しだ。」と説明したところで、車を駐車させておいた広場に戻ってくると、一同は埼玉に向けて車を出発させた。
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