【完結】慰霊の旅路~試練編~

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神居古潭(北海道・旭川市)

公開日時: 2022年3月21日(月) 02:10
文字数:9,750

※神居古潭 ”かむいこたん”と呼びます アイヌ語で神様が住む場所という意味です


2026年3月18日 水曜日 AM10:00

平和の滝でのライブ配信を終え、何事もなく神居古潭がある旭川市内に到着した明るい肝試しと藤村は安堵の表情を浮かべながらライブ配信された動画の編集作業を宿泊先のビジネスホテルで行っているとライブ配信の動画を見てくれたユーザーから次々とある指摘の声が入っていることに気付き、すぐさま杉沢村が藤村を呼び出して映し出された不可解な”何か”の検証を行うことにした。


「滝壺の周辺のところに人の顔のようなものが点々と映っていることを指摘されまして、滝壺での投身自殺が無いと仰っていましたけどこのような形で映ってしまっている以上、これは藤村さん。次の神居古潭での心霊ロケの際にどうしてこのような映像が撮れてしまったのかの説明をして頂かないと納得していただけないと思います。」


杉沢村が藤村に不可解な映像が撮れたことを説明した上で、次回の神居古潭では心霊ロケを行うまでにまずはこの説明を行ってからの検証をしっかりと説明をしなければならないと伝えると、藤村は「心霊ロケのライブ配信を行うまでにまずはこの不審な顔が写し出されたこの部分のみ抜粋したものを映像で配信しよう。ライブ配信の際に行ってはより分かりづらくなってしまう。別件として扱うべき。」と語った後に、指摘された部分の映像のみ抜粋したものの映像を解説したものの動画を撮影・編集し終えた後に配信を行う流れとなった。


「明るい肝試しの平和の滝でのライブ配信の動画をご覧になられた皆様に説明をしなければいけないことがあり、僕藤村が今回ご指摘をして下さった点についてご説明をさせて頂きます。ライブ配信の撮影時の際には僕も気配を感じていましたが、まさかと言ったらあれですが、今回このような形で映像に映ってしまったのが僕達にとっては想定外のことで急遽霊能者の僕がしっかりと説明を果たさなければいけないと判断をさせて頂きまして、急遽この動画を配信する流れとなりました。」


藤村が動画を配信するに至った理由を説明した後に、不審な映像が撮れた部分を繰り返し分かりやすく解説した映像が流れると再度藤村の説明が始まった。


「今回ですね、滝壺の付近で何名か、こんなところに人がいたらおかしいだろうと思える場所に人の顔らしきものが点在して映ってしまったのは、噂にもあった滝壺への投身自殺者の御霊によるものではなく、全国津々浦々の心霊スポットとして挙げられる滝の共通点の一つとしてまず山でありこれから昇天されてゆく死霊たちにとっては滝は一休みをする憩いの場と化してしまうケースがあり、平和の滝はその条件に当てはまる場所でもあり、また我々も滝壺への投身自殺を行った可能性も含め、ありとあらゆる場所を見回ったりもしましたが、仮にもし小さなお子さんが岩場から飛び込んだりしたら滝の流れに抵抗できず命を落とす危険性は非常に高いと思われますが、大人の場合は流されたとしても抵抗が出来る程の緩やかな流れでもあるため激流ではないんですよね。なのであの看板は小さなお子さんが読めるようにわざと難しい漢字を使っていないあたりからも、大人が命を落とす危険性は皆無に等しく、また僕が実際に見た恐らくですがこの木が噂にある無数の浮遊霊が集まるのではというのを発見したとも伝えましたが、その木に宿る浮遊霊が写り込んだとかそういうわけではなく、単純にこれはもう無害な、これから旅立たされた方々がより高い場所へと昇るまでに一休みをされていたところを我々がタイミングよく撮影しただけに過ぎないと思いました。今回撮影した映像につきましては僕が責任をもって御祓いをさせて頂きましたので、動画を見たからと言って皆さんの身に禍は齎さないのでどうか安心して、また心霊検証をしたいと思う方にも見て頂ければと思います。今回このような形でご指摘をして下さった方、本当にありがとうございました。そしてこれから13時頃からライブ配信で行う予定の神居古潭での明るい肝試しも皆さんどうか楽しみにまた動画を見て頂けたら嬉しいですので、引き続き温かい応援のほど宜しくお願いします。」


藤村が笑顔で解説をし終えた内容の動画の配信が終えると、早速反響があったのかコメント欄には次から次へと「心霊映像が撮れた!有害だろうが無害だろうが関係なく明らかに幽霊の顔だと分かるものが映っていた!さすが明るい肝試しさんらしい心霊動画を久しぶりに見れて背筋が凍る思いになった!神居古潭も楽しみにしているので明るい肝試しさんらしい心霊配信をお願いします!」という応援のメッセージが続々と寄せられたのを見て、油井が「よかった!皆あれが俺達にしか出せない心霊映像としか思っていなくって、これなら神居古潭での心霊ロケもブーイングの嵐の中でドキドキしながら挑むってリスクがないってことで安心した!」と思ったことを話し始めると、隣でじっと話を伺っていた秩父が「ブーイングの嵐って何なんだよ!それに俺達のチャンネル動画を見てくれる人なんて心霊に懐疑的な人より心霊に興味津々の人の割合のほうが多いはずだし応援してくれる人のほうが多いに決まっている。」と語った後に「次の神居古潭、俺もこれから先色んな心霊スポットの心霊ロケの知識を深めるためにも、俺が一人、藤村さんと一緒に行ってくる。村田、油井、監督と行ったから順番的に多分俺か畑か後藤だと思うので、今いるメンバーの中では俺があまり今までの心霊スポットで霊感強いね的なことも出来ていないから、次は俺が行く。」と話すと、心配になった甲州が「秩父君、本当にそれでいいの?」と切り出すと、杉沢村が「最後に伺う網走監獄は皆で検証すればいい。それまでに伺う心霊スポットは野郎どもで順番に検証していくのが良いかと思う。」と提案すると、それを聞いた畑が「え!?野郎どもってどういうこと!?甲州や斧落は女子だから単独で心霊リポートをしなくていいのなら、それって特別扱いし過ぎじゃね!?ってかそんなこと勝手に決めないでくれよ!」と苦言を呈すと村田は「良いね。網走監獄までにあと常紋トンネル、鎖塚、雄別炭鉱と行くから、後は誰が行くか。くじ引きで決めようか。男性陣の名前だけをメイサちゃん紙に記載したものを折りたたんだ状態で箱の中に入れてほしい。担当を誰にするか決めようか。」と語ると、さっそく斧落が言われた通りに動き始めると、明るい肝試しの男性メンバーが全員ドキドキしながら、運命のくじを一斉に引き始めたのだった。


斧落が「いっせいに引いたくじを開けてみて!」と号令をかけると、ドキドキした表情で折りたたんだメモ用紙を開けることにした。


杉沢村が「やった!俺は平和の滝で終了!」とガッツポーズをすると、油井も「やった!俺も行かなくていい!」と喜ぶ中、秩父と畑と後藤と村田の表情が曇り始めた。


秩父が「神居古潭に行くって俺は最初言ったけど、開いたメモには常紋トンネルって書かれてあるよ。一番重たいのを引いてしまった。」と声を大にして嘆き始めると、村田は「何言っているんだよ!俺なんて雄別炭鉱、ああくじ運悪すぎる。」と項垂れると畑は「俺は鎖塚って書かれてあるね。これもまた気が重たくなる場所だ。」とそれぞれの結果を話していく中で後藤だけが「俺がひいたメモには神居古潭と書かれてある。くじ引きで引いた運命から逃れることはできないから神居古潭での心霊レポートをやるよ。」と安心させるように話すと、その後深いため息をつくのだった。


そして12時頃にホテルをチェックアウトをした一同は神居古潭へと向け出発すると無料駐車場に車を停車させてから、12時55分頃から神居古潭と書かれた木製の案内ポールをバックにライブ配信を行うことにした。


「どうも!YouTubeをご覧の皆さん、そしてニコニコ動画をご覧の皆さんこんにちは!後藤です!今回は久しぶりに心霊リポーターとして明るい時間帯での肝試しを実行させて頂きたいと思います。昨日の平和の滝から引き続き降魔師の藤村さんに帯同して頂けることになりましたので、本日も霊能者としての御意見のほど、よろしくお願いします。」


後藤が挨拶を済ませると、藤村が後藤を見て「宜しくお願いします。」と会釈をした後、後藤がカメラマンとなって、藤村が先に先頭を歩いてゆく。


後藤が藤村に「神居大橋を渡るまでにある注意書きの看板のところをよくみてください。一度に100人以上渡れませんって書いてますけど、僕達一度に渡って大丈夫なんですかね?」と話しかけると藤村は「このスリムな体型を見てくださいよ。後藤さんと僕の体重、合算してもせいぜい120kgを超えるか超えないかぐらいですよ。十分耐えられる重たさです!」と言い切ると、後藤は苦笑いをしながら「そっ、そうだね。先を行こうか。」と切り出すとゆっくりとした歩調で、石狩川を眺めることが出来る神居大橋を渡り始めた。


後藤が藤村に「神居古潭ってアイヌ語で神様の住む場所という意味になるんですけども、どうしてこんな神聖な場所が心霊スポットの一つとして挙げられるようになったのかご存知ですか?」と訊ねると、藤村は「一度耳にしたことはあるね。」と答えた後に藤村なりに知っていることを説明し始めた。


「神居古潭の石狩川に掛かるこの神居大橋では自殺の名所としても知られており、石狩川の流れが急なために昔は川を渡るだけでも犠牲者が多く出たとも言われていますね。噂ではその時にお亡くなりになられた方が今でも生者に対して川へと引き摺り込もうとしているというのがあります。また川の流れが激しいために遺体が絶対に上がってくることはないとも伝わっていますね。」と話すと、思ったことを率直な気持ちになって後藤に対して語り始めた。


「水深が70mと深さもあるため、そのために深いからこそ一度水難事故に遇われると御遺体が上がらないって話になったのだと思いますが、水の流れが激しい状態であっても引き上げは可能かと思われます。ただ見て見る限り激流だからこそ流れた末に引き上げられた遺体の損傷は相当激しいものだと思いますね。自殺の名所でここで飛び込む人が自分一人じゃないと分かり切っているからこそ飛び込む人間がいるんだと思いますが、でもこの神居大橋の状況など察しても自殺対策などはされていないようですので、自殺の名所と言えるほどのものでもないような気がしますね。」


藤村の語った内容に後藤は「水難事故が多かったのは確かなようですよ。神居大橋が造られるまでは船で渡っていた時に雨とかで石狩川の水量が増えたときに、乗っていた船が転覆してしまう危険性もあったんじゃないかな、そういう気が見ていてしましたね。だから噂にもある水難事故で亡くなられた方が川へ引きずり込もうとしているのではなく、死んだ自覚のない方が助けを求めて必死になって手を伸ばそうとしているとも、僕個人的にはそう感じましたね。そのほかにも突如正気を失って急に渓谷のほうへと飛び込みたくなるともありましたが、これを恐らく初めて見た人からすると”何て水の流れが激しいんだ”と思って目の前がふらつく程度のものかもしれませんね。」と話すと藤村は「なかなかいいところに目を付けましたね。自殺対策にも講じていない所から見ても、ここに飛び込んだ方はそんなに多くはないと思います。今検証のために霊視をそっと行いましたが、言われている水難事故で亡くなられた方のほかに自殺者ではなかろうかという方もちらっといらっしゃいましたが、どの方も損傷が激しいために、自殺なのか事故なのか見た目だけでは見当がつきませんね。死ぬまでに、残留思念が残っていればそれだけで読み取ることが出来る才能が、僕にはないので僕が見た御霊を説明するしかありません。この才能は饗庭の侑斗君なら、過去の透視能力がありますので、正直ここは僕じゃなくて侑斗君のほうがしっかりと見極めることが出来るのかもしれませんね。」と謙遜しながら語ると、後藤は「人間ですから出来ないことがあって当然、その点は僕も咎めたりしませんよ。侑斗さんならスケジュールの都合で会わなかったんですよね。最期の雄別炭鉱と網走監獄のみ同行していただけるんですよ。明日の常紋トンネルから鎖塚はお兄さんの星弥さんが帯同して頂けるんです。」と答えると、藤村は「星弥さんはまあ凄いな。仕事ならしょうがないとはいえ、星弥さんのほうがあまりにも霊能者にとっては強烈なスポットばかりですね。僕がボランティアならお断りです。」と苦笑いをすると後藤は「やっぱりきついんですね。」と言って反応すると藤村の意見に同調するように「アハハ、アハハハ。」と笑いながら神居大橋を渡り切る。


二人のライブ配信の様子を見ていた秩父と畑は車の中で怒りを露わにした。


「俺は恵まれているとでも言いたいのか!あの野郎め!クソッ。何か後藤がギャアアアと悲鳴を上げてしまうような心霊現象起きてくれ。」


秩父が思わず声を上げると、畑は「大丈夫。神居古潭トンネルで怖い思いを絶対にすると思うから、無事渡り切って安心しきっているだけ!」と言うと、その間に後藤と藤村は旧神居古潭駅の駅舎に辿り着くと、後藤から藤村に「現在はサイクリングコースになっていて駅舎の建物が休憩所とありますね。」と語り確認のために駅舎の中に入っていくと、藤村は「俺達は駅舎の中にまで来たけど、ここって何か心霊に纏わる話ってないのか?」と訊ねると後藤は「いや。ネットで調べた情報ではそれ以外になかった。あとは階段を上がった左手のほうにあるSLと神居古潭トンネルに纏わる怖い話ぐらいですよ。」といって答えると藤村が「さっきから俺たち以外の気配を感じるのですぐさま霊視を行ったのですが、御高齢のお爺様のような方が駅舎だったこの建物内を徘徊しているように見受けられました。思い入れのあった駅舎だったのかもしれません。廃線になったと分からずに今もこの世での思い出を振り返るためにも現れたのかもしれません。列車への飛び込みがあったとかそういうわけでもなさそうです。」と話すと、後藤は「よかった。そのお爺さんの霊ならば俺もちらっと見た。俺以外にもと思って再度確認のために辺りを見回したけどでも俺達以外誰もいなかったから、一体何を見たのかと思ったんだけど藤村さんも俺と同じのを見ていたと分かって安心した。」と語り終えた後、念のために旧駅舎で記念撮影を終えた後に、SLが展示されてある方向へと移動し始めると、SLを前にしたところで後藤から藤村にSLに纏わる怪談話をし始めた。


「1932年11月4日に神居古潭トンネルを走行中だった蒸気機関車が落下してきた岩盤に激突し石狩川に転落、乗っていた乗務員の2名がお亡くなりになられたという有名な事故が起きているようです。そのためにC57蒸気機関車の機関士だった男性の霊が出るという目撃談がありますね。」


後藤が話し終えると、藤村は「さっきからあのSLの運転席からじろじろと見られているような気がするんですよね。」と話すと確認のために運転席の中の様子を確認することが出来るところへと回り込むと「運転席は中に入れることが出来ないようになっている。ともなればあの俺が体感した視線は、ひょっとすると何か写っているのかもしれない。念のためにこのSLの運転席を撮影しましょう。」と後藤に対してお願いするとすぐさま写真撮影を行い、不自然なものが映っていないか検証した。


「さっきね、じろじろと視線を感じたとき、いるなとわかったんです。だけど振り返ると俺に気付かれなくないのかすぐ隠れて又じろじろと見るを繰り返すんです。何を訴えたかったのかがちっともわかりませんでした。だけど写真は嘘をつかなかった、この苦悶の表情を浮かべているのを見て、恐らくだが亡くなられた機関士の霊が今も彷徨い続けているのかもしれません。不慮の事故だったがゆえに、思いもよらぬ運命を受け入れられない心情なのかもしれません。その答えを出すためにも、SLの先にある神居古潭トンネルの中での心霊検証を行いましょう。」


藤村が体感したことを後藤に語ると、後藤は「答えが分からないから写真を撮ってとかそういうわけではなかったんですね。それにしても霊能者と分かればSOSのサインを出してアピールとかされないんですか?」と聞き始めると、藤村は「あの機関士の御霊を見ていてわかったのはそこに生きている人間がいることに気付いてほしいからこそ、そういう方法でアピールをしたのかもしれません。こういう大自然だからこそ事故当時は列車ごと石狩川に落ちて、救助する側が事故の報告を受けた際に意識ある人間なのかどうかを見極めなければいけなくなった時に動ける状態であるという動きをすることにより救助してもらいたかったのかもしれません。」と話すと、後藤は渋い表情になった後「何だかそれを聞くと、本当に何とか”除霊”をしてあげて昇天をするためのお手伝いとかしてあげたほうがいいんじゃないんですか。果たしてこのままでいいのか、あまりにも気の毒すぎますよ。」と質問すると藤村は「今僕が体感した機関士の御霊は事故死された方なのかどうか、トンネルへと向かいましょう。除霊をするかしないかはトンネルを見てからジャッジします。」と言い切ると、さっとその場を後にして、後藤も後を追うように神居古潭トンネルのほうへと移動した。


後藤が思わず藤村に「まだ質問の途中だろ!?どういうことだよ!?」と疑問を呈すと藤村は「殉職された方の御霊との説得は難しいものがある。仕事中の思いもよらぬアクシデントで命を失ったのだから、仮に後藤さんが同じ立場なら、事故に遇われた際に必死で生き抜こうとしてもがき苦しんだ末にお亡くなりになられたのならどうされますか?後藤さんもきっといまの僕が見た機関士の御霊と同じ境遇になると思いますよ。少しでも心の痛みを和らげるために、昇天させるためのケアをすることはできますが完全除霊は難しい話です。皆さんは僕達の仕事が除霊や御祓いをすることを前提にしてきますが、この世の中には完全除霊が出来る場合と出来ない場合というのがある。我々のような霊能者が常に御霊と接触し深く負った心の傷に接してあげることによりこの世に対する未練を取り除いてあげる行為は簡単に出来ることではないんですよ。それは事故だろうが自殺だろうが、関係のない事です。生きているときに味わった苦しみを理解してあげて、少しでも生前に味わった心の傷に向き合ってあげることで、亡くなられた方が思い残すことはもうないとわかって昇天されてゆくのを見守ってこそ完全除霊したと言い切れるんです。」と答えると、後藤は黙り込んで言い返すにも何も言えなくなってしまうと、沈黙の状態のまま歩き進んでゆくにつれ二人の前に神居古潭トンネルの入り口が目の前に現れた。


後藤の様子を見た藤村が「うわ~サイクリングロードでも真っ暗!懐中電灯とかって持ってきていますか?」と後藤に対してお願いすると、後藤はポカンとなると藤村は「考えすぎないほうが良いですよ。後藤さんは一般の人が思う正論を言っただけに過ぎません。気にしてませんので安心して下さい。」と慰めるように話すと、後藤は藤村に「ちょっと口調きつめで、霊能者なんだからそれをして当たり前だろみたいなことを言ってしまってすみませんでした。事情を知ってどう答えるべきか、湿原を行ってしまったなという思いが頭の中をよぎって、何も言えなくなりました。」と謝ったと同時に前もって準備しておいた懐中電灯を藤村に対して渡すと、藤村は「気にしていないから大丈夫ですよ。さあ行きましょうか。」と笑顔で話しかけると、後藤は藤村に「そうですね。ここが最終の心霊検証地ですからね。」と話すと、二人は真っ暗闇のトンネルの中を出口を目指して歩いていく。


トンネル内で後藤が「トンネル内には自殺を図った方達の幽霊が集結しやすい場所としても知られており、何十名もの幽霊に追いかけられたなどの情報が多数寄せられていますね。そのほかにもトンネル内に入ると同行者以外の人の気配を感じてならないとか、神居古潭の中にある心霊スポットの中では断トツで怖い場所ともありますね。髪の長い女性の霊が現れるという噂も気になりますが、不可解な現象が起きる前触れの一つにトンネル内で”ゴーン”という不気味な音が鳴り響くんだそうです。そのほかにも作業員の霊が現れるというのもありますね。」と藤村に説明すると、藤村は「本当に有名な心霊スポット程噂話が多すぎる!」と愚痴をこぼした後「聞いたことはありますよ。神居大橋周辺の電話ボックスに現れる女性の霊、川を見つめる女性の霊、吊橋からの自殺者も多いとか、噂話の情報をあまりあてにし過ぎないほうが良いと思いますよ。霊感の強い人がその場で見て率直に感じたことを伝えただけの可能性もありますからね。」と解説したところで、一同は何事もなくトンネルの出口にまで辿り着くと、後藤は「何事も起きなかったですね。とはいえこの先が調べた情報によると立入禁止の地域のようですので、我々は神居古潭トンネルを後にしますか。SLの機関士の霊の除霊をするべきかどうかの答えも出せましたか?」と藤村に対して訊ねると藤村は「除霊は出来ないが説得は行ってみる。」と語り、再度機関士の霊を目撃したSLのところへと戻り始めると、そこにはもう機関士の霊の気配すらなかった。


念入りに停車してある全てのSLを藤村と後藤が手分けしながら確認するが、藤村が実際に見た機関士の霊は二度と現れなかった。


これ以上の心霊ロケを続けるのは難しいと判断した後藤が「もう切り上げましょう。ゆっくりと神居古潭土産でも買いましょうか。」と話しかけると、藤村は「後藤さんの言う通りで、心に負った傷のケアを行うチャンスは幾度もあった。言う通りで、臆病な俺はそれを見過ごしてしまった。饗庭兄弟ならまた違うジャッジを下していたかもしれないが、ここには機関士の霊以外にも数多もの数え切れぬSOSのサインを出す御霊達が多いのは事実だ。水難事故で亡くなられたアイヌの方達も含め、この機関士の御霊達だけを救うとなると他の御霊達の反発を食らいかねない。逃げたい一心でトンネルへ行きましょうと言いました。すみません、仕事で来ている自覚があるのなら大きなリスクを背負ってでも霊能者らしいことをするべきでしたね。」と肩を落とすと、後藤は「そこまで危険なリスクを背負ってまでするような事ではありません。身に危険が生じることだと分かることなら退散するのは当然のことですし、もう答えがわかったからこそ、噂なのか真実なのか、明確にした以上藤村さんの下したジャッジに異議を唱える人はいないと思いますよ。除霊が危険だという事は、心霊好きなら皆分かっている話ですからね。」と慰めると、藤村はほっとしたのか「何も、お役に立てるようなことなどできませんでしたが、でも有意義な二日間を明るい肝試しのメンバーの方達と過ごすことが出来て幸せでした。」と話すと後藤は照れ臭そうに「それは俺じゃなくて皆に言うべきだと思いますよ。」と返事した後、車の中で待機するメンバーの元へと戻ったところで神居古潭でのライブ配信を終了させた。


最後に油井が藤村に「二日間、お忙しいのに我々のために時間を作っていただいてありがとうございました。平和の滝も神居古潭も共通して複雑な事情がそれぞれ絡み合ったことによって心霊スポットの一つになったのかもしれませんね。霊能者としての解説も非常にわかりやすかったと高評価ですよ。」と御礼を伝えると、藤村は「とんでもない。僕なんかよりも饗庭兄弟のほうが実力は上です。僕は饗庭兄弟の代理にしか過ぎませんので、お役に立てただけでも嬉しいです。」と笑顔で答えた後、駐車しておいた車に藤村が急いでいるのか勢いよく乗り込むと、明るい肝試しのメンバーに見送られながら神居古潭を後にしたのだった。

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