【完結】慰霊の旅路~試練編~

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稲村ヶ崎(神奈川・鎌倉市)

公開日時: 2022年2月13日(日) 15:05
文字数:10,500

緑山峠を12時過ぎに出発した一同は昼食を取るために、近くのレストランへと立ち寄り、ワイワイと食事を楽しみながら打ち合わせを行うことにした。


杉沢村が「いや~緑山峠はなかなか良かった!早速ライブ配信した動画の反応も良くってね、不審な音がするとか、この辺りで若者がじろじろと見ていると言っていた辺りを中心に写真を撮った結果、ポラロイドカメラもチェキもデジタル一眼レフカメラも優秀だった。見てほしい。カメラのフラッシュによるものとは思えない白い靄のようなものから、茂みを写した写真には顔のようなものが浮かび上がっている。更には音が聞こえると饗庭さんが指さした方向には赤いオーブのようなものが写っている。これは是非とも総集編として心霊好きのフォロアーの方々に見せたい。」と意気揚々に話すと、改めて掲示された写真を見た星弥は「まず御祓いを受けてから。それから掲示するべきだろう。恐らくだが若くして事故死したであろう暴走族のメンバーの一員が写し出されたものかと推測されるが、彼らの御霊は今もなお自分たちの苦しみやこんなことになるはずじゃなかったと今でも後悔の念を抱いている。禍を齎さないがここはやはりきちんと御祓いして彼らの御霊の供養を行わなければいけない。」と話すと、すぐその場で映し出された画像の供養を行い始めた。


一方で烏藤は、油井から「次の心霊スポットは14時からの生配信で、知る人ぞ知るという心霊スポットで肝試しを行いたいと思っていて、場所は稲村ケ崎なんだ。烏藤さんは知っているよな?」と聞き始めると、烏藤はきょとんとした表情を見せると村田が「自衛隊なのに稲村ケ崎を知らないなんて!ここは、戦時中に結成された伏龍特攻隊の特攻基地だった場所だ。今も断崖に要塞の跡とされている洞窟が残っている。洞窟は今現在立入禁止ではあるが、深夜に訪れると白い人影が出入りするのを目撃したという声がある。この白い人影というのが要塞を作る際に土砂崩れや水難事故で亡くなった作業員が霊となって出入りをしているのではないかという説がある。そのほかにもサーフィンをやっていると海底から伸びてきた手に引き摺り込まれるなどの報告も寄せられている。あまり心霊YouTuberでもこの地に訪れて肝試しを行うなんて動画は今の段階では寄せられていない。だからこそ明るい肝試しで検証をしてみる価値があると思っているんだ。」と話すと、烏藤は「伏龍は勿論知っているよ。ただ非常に残念なお知らせがある。」と語ると、それを聞いた村田は「残念なお知らせ?それってどういうこと!?」とつかさず質問をすると、烏藤は「心霊スポットの念入りなリサーチをしていると説明した割には、あまり調べていないんだね。実際は稲村ケ崎で伏龍特攻隊が稲村ケ崎の要塞から出撃してアメリカ軍と戦ったわけではない。特攻隊の隊員の殆どが当時の訓練場だった久里浜海岸や野比海岸などで死んでいる。酸素ボンベのほかに身に着けていた二酸化炭素を吸収するための清浄缶というブリキで作られたもので指で押すだけでもベコベコするほどの強度しかないものを、中に劇薬の苛性ソーダが入っていて、その状態で海に入ればどうなるか。呼吸法を間違えたり、海底の岩にぶつかったりしてしまえば、苛性ソーダが海水と混じり合いその状態で口に入ると喉は火傷状態に陥り、呼吸が出来なくなってしまう。最大の欠陥ともいうべき箇所を改善されることなく、訓練中に発生した隊員たちの死は終戦をもって二度と語り継がれることはなかった。だから自衛隊関係者の俺でも、勿論星弥でも、伏龍に纏わる話は今でもトップシークレット扱いで、公にされていないところが多い。」と説明すると続けて「因みに野比海岸や久里浜海岸は心霊に纏わる話はない。よって、仮に俺達が伏龍の特攻隊の御霊達を見たと発表してしまえば、あまり宜しくないことが起こり得ることは想定される。心霊現象をとらえることが出来たなんて言ってしまえば、社会的な反響は避けられない。どうしても伏龍特攻隊が歩んだ道を行きたいという目的ならば心霊とは切り離して考えたほうが良い。」と指南した。


※伏龍(ふくりゅう)補足説明

水深7~8mの海底に潜み、長さ大よそ5mの爆弾をつけた状態の竹やりで敵の上陸用舟艇の底を突くために結成された特攻隊である。別名”人間魚雷”とも言われており酸素ボンベ+長時間の潜水を可能とするために呼気の二酸化炭素を苛性ソーダ(劇物である)が取り除く構造の清浄缶の組み合わせの簡易潜水器の重さは約80kgで、最大深度が15m、潜水可能時間は最長約10時間とされている。


それを聞いた村田は「心霊スポットの情報だけで見て、実際には使われなかったことは初めて知った。だけど今もなお訓練中の隊員たちの霊を見ることはできるんじゃないのか?」と言い方を変えて質問すると、星弥は「それはわからない。Googleのマップなどを見ても、微かだが霊視を行わないと見えぬレベルの御霊の存在を捉えることは出来た。ただそれが伏龍の特攻隊の霊かどうか、若い男性だったのは間違いないが、はっきりと言い切れるものではない。それでもいいというのならば、稲村ケ崎から野比海岸、久里浜海岸を伏龍の特攻隊ゆかりの地を探るという名目で練り歩くのが一番良いんじゃないかな。」と提案すると、油井は「心霊じゃないけど、でも慰霊を目的にした練り歩き、監督はどう思う?」と自分のジャッジでは判断しきれないと判断した油井は杉沢村がどう考えるのか答えを待つことにした。


杉沢村は「たまには肝試し以外の、慰霊目的のライブ配信を行ってもいいと思う。これで若い人たちに伏龍特攻隊の歴史に触れて、改めて戦争はしてはいけないことだという事を真面目に伝えるドキュメンタリーとして配信を行うのも悪くないな。」と理解を示したところで、油井は星弥と烏藤に対して「わかった。今回はその方向性で行こう。」と理解を示したところで、昼食兼打ち合わせを終了させた。レストランを後にした一同は最初の検証地の稲村ケ崎へと向けて出発することにした。


移動中の車内で明るい肝試しが次回伺う心霊スポットでの肝試しの内容について公式のTikTokでライブ配信を開始した。


「皆さん!こんにちは!明るい肝試しメンバーの斧落です!緑山峠は朝早い中お付き合いをして下さりありがとうございました!そして13時55分からライブ配信予定の14時から肝試しを決行するつもりでしたが、稲村ケ崎ですね。噂されているのはかつてこの地で命を落としただろう伏龍特攻隊による霊が現れるのではという話が合ったのですが、烏藤さんの話で”ここは要塞の跡地で伏龍特攻隊の隊員の多くは訓練中に死んでいる。”という指摘を受け、急遽ですが伏龍特攻隊の隊員の方が辿ってきた足跡を辿っていこうではないだろうかということで、心霊ドキュメンタリーと言いますか戦争ドキュメンタリーになりますけど、ぜひ皆さんにも伏龍特攻隊の事を知って改めて戦争をしてはいけないんだという事を伝えていけたら良いなと思いますので宜しくお願いします。」


斧落が公式TikTokでライブ配信を終えた後、早速コメントが寄せられた。


「先程の予告を見ましたよ!別にあんな青森の自衛隊霊能力者の助言なんかなくとも稲村ケ崎は十分怖いですよ。ボート遭難慰霊碑というのがあって、1910年(明治43年)1月23日に逗子開成中学の生徒ら12人が乗ったボートが七里ガ浜沖で遭難し乗っていた全員が死亡したという事故がありました。慰霊碑は抱き合ったまま発見された兄弟の姿がモチーフになっています。そのほかにも岬の頂上付近は自殺の名所としても知られており、今もなおその名残としていのちの電話の連絡先が掲示されているので見てください。地元のサーファーの話だと、足を引っ張られ海中に引き摺り込まれそうになった時に海中に沢山の顔が見えたという噂があります。それが亡くなられた伏龍特攻隊の霊によるものではないことは明々白々ですので、ひょっとすると自殺者の霊達が誘い込んでいる可能性のほうがわたしは十分高いと思いました。そのあたりを自殺の事ならわかるだろう警察官の饗庭さんにも、現場を知る人間としてしっかりと見てもらったほうが良いと思います。長文失礼しました。」


投稿された内容を読み上げた斧落の話を聞いて、村田は「俺達、伏龍特攻隊のとばかり思っていたけど、でも本当の恐怖は何だろう。情報が多すぎて、益々これは真相にはたどり着けそうにない。」と話すと「これだと伏龍特攻隊の真実をと言って野比海岸、久里浜海岸のほかにもこの七里ガ浜海岸にも行かなきゃいけないってこと?でも岬に今もなお現存するといういのちの電話の検証を行うことも確かに必要なことだ。自殺の名所かどうかは言って見たらわかることだからね。」と話した後に、続いて油井も「伏龍特攻隊だ、逗子開成中学の学生が乗ったボートが七里ガ浜で遭難した、切り離して考えたほうが良い。じゃないと14時から日が暮れるまでの17時までの短時間で俺達は遭難地の七里ガ浜海岸にも行かなきゃいけない、伏龍特攻隊の訓練場だった野比海岸にも久里浜海岸にも行かなきゃいけない、一日を通して検証しないと絶対に回り切れないよ。」と語ると、杉沢村は「確かにそうだな。それに稲村ケ崎の自殺の名所として伝えられている信憑性についても真偽を追求する必要性はある。そして何よりもサーフィンをしていると海中から何者かに引き摺り込まれる、この何者かを追求する必要性はある。」と話すと、続けて村田が改めてスマートフォンのワード検索で調べた結果を語り始めた。


「稲村ケ崎は鎌倉時代後期に新田義貞が鎌倉攻めを行った古戦場の一つでもある。そのため新田軍が藤沢方面からやってくると浜辺から侵攻したともある。場所的に山側からの侵攻は不可能だったからだろうけどね。今でも稲村ケ崎のビーチを掘ると髑髏が出てくるとも書き込みには寄せられているな。その結果を饗庭さんたちにも伝えてみようか。稲村ケ崎だけでも明るい肝試しは出来そうだな。」


村田がそう切り出すとすぐさま星弥の携帯に連絡を取り始め、調べた結果を告げるのだった。


「あっ、もしもし。村田なんだけど、今から俺達が考えたことを聞いてほしい。」


村田が星弥に内容を告げると星弥は「まあ確かにそうだね。時間的に考えたら果たして3時間のうちに調査が出来るかとなると出来ないに決まっているからね。さっき、マップの情報を見ていたんだけどさ、岬のいのちの連絡先と思われるポスターの存在も改めて確認できたし、ボート遭難慰霊碑の逗子開成中学の学生たちの御霊が今どうなっているか、伏龍特攻隊の隊員たちの御霊達の追跡を行うことも、稲村ケ崎を調査していく上においては必要なことかもしれないが、逗子開成中学の学生も伏龍特攻隊の隊員もたまたまそこに慰霊碑があって、出撃するための待機陣地があって、色々な心霊的な要素が含まれているから心霊スポットになっているのかもしれない。今の稲村ケ崎における現状を伝えたほうが良いかもしれないね。TikTokにコメントを寄せてくれたそのユーザーさん、名前がおだっちで投稿されてあったけどひょっとすると俺の霊能者の先輩の小田切さんかもしれない。ボランティア霊能者で消防士の、小田切さん。ずっと俺と烏藤のことをひっそりと見ていたのかもしれない。」と語ると村田は「今度は消防士か。暇な消防士もいるもんだな。ってか常に救急車に乗っているわけではないってことを初めて知ったよ。」と話すと、星弥は「そりゃ、そうだろ。俺のような警察官はパトロールの時間があるけどでも、でも毎度毎度出るかと言ったら違うじゃん。朝とか夕方の交通量の多い時間帯に出て取り締まりを行ったりするでしょ。となったら、警察にも暇な時間というのはあるし、当然消防士だって出動以外の暇な時間も存在するってことだよ。一度聞いてみるよ。」と話すと、村田は戸惑いながらも「お、おう。わかった。」と答えて電話を切った。


そして星弥は小田切に電話を掛けるとコール音が数秒鳴った後に小田切が「はい、もしもし。」と応答してくれると、星弥は思い切って聞き始めた。


「お疲れ様です。星弥です。明るい肝試しの公式TikTokにコメントを寄せてくれたのは小田切さん、あなたですよね。」


星弥が小田切に切り出すと、小田切は笑いながら「烏藤が説明した伏龍特攻隊の云々の話にばかりに宣伝の内容で説明していたから、俺が以前稲村ケ崎に行って心霊検証を行ったことがあったからそれは違うって言いたかった。」と話すと、星弥は「これだけは気を付けたほうが良いとか、そういうのはあるんですか?」と単刀直入に質問すると小田切は「特に気を付けたほうが良いのはやはり自殺者の御霊だね。あのいのちの電話の連絡先のポスターが掲げられているあの場所で女の霊を見た。その時に女の霊を強く感じたところを写真で撮ってもらったんだけど、今LINEのメッセージで送信するよ。御祓いはしているんだけどさ、ゾッとさせられるよ。そのほかにも稲村ケ崎古戦場跡 新田義貞徒渉伝説地の碑とされているところがあって、その辺りは霊視をすれば分からないレベルではあったが、鎌倉時代当時の武士らしき御霊を確認することは出来た。霊視しないといけないんでよっぽど霊感が強くなければ気付かないぐらいのレベルなので危険性は低いと思うが、俺が見た女の霊は気を付けなければいけないと思う。」と話すと、星弥は「わかりました。お忙しいのにアドバイスまでして下さってありがとうございます。」と話すと、小田切は「腕の複雑骨折さっさと治せよ。ってか今一人暮らしなのに利き腕負傷したらどうやって生活しているんだよ。そこがまず気になったよ。」と聞くと、星弥は「バルセロナのお婆ちゃんがね、俺が利き腕の複雑骨折をしたって聞いてね、佐賀にまでやって来てくれたんだよ。しかも俺の職場の佐賀県警にまで日本語も話せないのに案内所にいた事務員にカタルーニャ語で”負傷した孫の警官はいないか”って必死になって駆けつけてくれてね。バルセロナで一人待っているだろうお爺ちゃんも心配なんだけど、でもお婆ちゃんは俺のほうが心配だってね。だから今凄く助かっている。」と話すと、小田切は「お婆ちゃんに心配をかけてどうすんだ。全く呆れるよ。少なくともお婆ちゃんはきっと、年頃の星弥に嫁さんを見つけて安心させてほしいと願っていると思うよ。」と苦言を呈すと、星弥は「俺には、まだ遥が。式を挙げられなかっただけで、でもあいつとは婚姻届も提出して、あいつを裏切るのが怖いんです。」と話すと、小田切は「それはそれ。リセットしないと、いつまでもいつまでも引きずっていたらお前自身が幸せになる機会を逃すばかりだ。侑斗に先を越されるのは嫌だろ!?それに遥ちゃんだってお前が幸せになることを誰よりも願っているはずだ。」と説得をするように話すと、星弥は黙り込んだ末に「わかりました。お婆ちゃんのことだって俺は申し訳ないと思っているし母さんだって仕事の合間に俺のために車で送り迎えをしてくれたりしている。婆ちゃんにも母さんにも俺の愚行で迷惑をかけてしまっている。今回の大怪我で、今まで以上に自分の立場について色々考えさせられました。でも今の俺の仕事に理解を示し、家族が出来たら俺が立ち会った御霊達と接触してもおかしくないから祟り返しに遭う可能性だってある、そんなことを覚悟してくれる彼女がいるか、俺がそこが気がかりなんです。そんなことを理解してくれたのは遥だけです。」と話すと、小田切は「マッチングアプリで彼女を探せばいいだろ。物好きな彼女はいると思うよ。俺だってラッキーな形でマッチングアプリでマッチングした彼女と今同棲しているし、彼女だって今の俺の仕事の内容を理解したうえで付き合ってくれているから、そういう人との出会いがあると思う。」とアドバイスをすると、星弥は「わかりました。マッチングアプリってお見合いのやつでしたね。加入することを視野に検討します。ありがとうございます。」と深々とお礼を言って電話を切った。


二人のやり取りを聞いて居た烏藤は「一人でどうやってって思ったけど、でもまさかスペインからお婆ちゃんは駆けつけ、送迎にはお母さんが来てくれるのか。親不孝とはつくづくお前みたいな息子を言うんだなってことを改めて考えさせられたよ。アラサーにもなってそれか。」と話すと、星弥はふっ切れたような口調で「ああそうだな!親不孝で悪かったな!酔っ払った上に時差ボケで落としたスマホを拾おうとして自宅マンションの階段で派手にすっ転んで大怪我した独身のバカ息子を許してくれ。因みにスマートフォンも派手に壊してしまって新しくスマホを買う事態になったんだよ~。お金だけが飛んで行く~。」と嘆いた。


そして、13時55分に稲村ケ崎古戦場跡 新田義貞徒渉伝説地の碑の付近で稲村ケ崎の明るい肝試しを行うためのYouTubeとニコニコ動画でライブ配信が始まった。


畑のカメラの前に油井が「まず最初に言っておきたいことがあります。予定の都合上まあ皆さんも勘付かれたと思いますが、伏龍特攻隊に纏わる史跡をまわろうとしたら日が沈むまでの17時過ぎにまで終わらせようなんてことは100%不可能ということがわかりました。稲村ケ崎から野比海岸、さらに久里浜海岸、心霊としての話は無いのですが、伏龍の訓練所があった久里浜海岸では現地の陸上自衛隊の久里浜基地に勤務されている方が”水兵の霊を見た”という目撃証言があったことから、検証の余地はあるかなと思う。なのでここで今もある七里ガ浜で遭難した末に亡くなった徳田兄弟をモチーフにしたボート遭難の碑も、場所を探れば鐙摺(あぶずり)海岸から出港して江の島を目指そうとしたところ、七里ガ浜の沖合で強い突風にあおられ乗っていたボートが転覆してしまったというのがあるんだけど、結局稲村ケ崎に纏わるとなっちゃうと俺達横須賀にも葉山町(三浦郡)にも行かないといけなくなるってことになるから、この出来事の検証のために1日潰さないといけなくなる。それを3時間内に抑えるのは難しいということで、饗庭さんの先輩の霊能者の意見を参考に、稲村ケ崎の明るい肝試しを実施する流れに急遽変更になりました。すみませんね。ドタバタで決まったものなのでTikTokで内容変更の旨を伝えることが出来ませんでした。」と話すと、続けて村田が「饗庭さんの先輩が体験したことを今回は饗庭さんにも烏藤さんにも検証してもらいたいと思いますので宜しくお願いします。」と案内したところで、烏藤が「宜しくお願いします」と挨拶した後に星弥が「宜しくお願いします。」と返事した。


稲村ケ崎古戦場跡 新田義貞徒渉伝説地の碑を前に油井が星弥と烏藤に対して「ここは鎌倉時代の古戦場の跡地としても知られているが、何か感じることはある?」と聞き始めると、星弥は「ほんのわずかだが、気配を感じる。海岸沿いに歩いてみて検証を行おう。」と答えたところで、一同は海岸を目指して歩き始めた。


「今日は綺麗な天気で良かったね。江の島が凄く綺麗で見えるんだもん。」


斧落が思ったことを話し始めると、村田は「そうだね。でも俺達は肝試しをしにきているんだからね。あっ、あれが伏龍の基地だったという、今は洞窟内が崩れて中に入ることはできないが、窓のようなものが見えてきたね。あそこから出撃して近付いてきたアメリカの船に対して伏龍特攻隊が海中に潜んで襲い掛かるという作戦だったが待機陣地を作っただけで終わったので、洞窟の掘削作業中に亡くなったとされる作業員の霊を見ることが出来るとされている話も、どうなんだろうね?」と烏藤を見ながら話すと烏藤は「そもそも海軍の待機陣地を作るという事も、伏龍という特攻隊の存在も、当時としてはトップシークレットの扱いだった筈。民間人は一切立ち入らせず海軍だけで作ったような感じはあるんだけどね。そうじゃなかったら、今でも伏龍って公式な記録があるはずなのに一切それがない。だからどれだけ訓練中に隊員に選ばれた人が死んだのか、元隊員の情報では苛性ソーダを吸引したり海底に体を打ち付けたりして、毎日1人~2人は死者が出ていたことから100人から130人が命を落としたと推測している。」と話すと、それを聞いた村田が「実際はそれ以上の可能性もあるってことだよな?」と烏藤に対して聞くと、烏藤は「それはもうわからない。訓練中の事故死扱いだからね。何より重大な欠陥があることをわかりながらも終戦を迎えるまで訓練が行われていたのだからね。」と話すと、星弥は待機陣地の窓がすぐ近くで眺めることが出来る場所に立ち止まると、烏藤に対してこう告げた。


「岬から誰かが飛び降りたのか、この一帯を霊視したら夥しい数の御霊を確認した。ただ伏龍の関係者ではないことは間違いない。新田義貞の軍勢だっただろう武士の御霊の存在もちらっとしか確認が出来なかった。服装から見ても鎌倉時代の鎧姿には見えず明らかに現代人だ。恐らくだが自殺者だ。岬に行こう。」


星弥の一言で、一同は岬へと移動する。岬から海を眺めることが出来る展望台を前に斧落があるポスターに目をつけて、烏藤と星弥に対して「あのポスター、まさしく自殺を呼び止めるためのものじゃないの?」と人差し指で指示しながら話すと近くまで近づいて内容を読み始めた。


”ひとりで抱え込まないで

携帯の向こう側に

あなたの声を

待っている人がいます

よりそいホットライン

鎌倉市”


斧落が読み終えたときに、背後から何かの気配を感じたのか、星弥と烏藤に対して「さっきからあの茂みから視線を感じる。」と人差し指で視線を感じた方向を指し示すとその場で3台のカメラを用いて写真撮影を行った。そして烏藤と星弥、霊視を行うことが出来る油井がその場で霊視検証を行った。


油井が星弥に「いるな。見た感じ、女性もいるし、男もいる。景色が良いところだから最期をこんなところで迎えたいと感じる人が多いのか。何だかこういうのを見ていたら、何で自殺するんだろうってそれしか考えが浮かばない。」と話すと星弥は「結局こういうところで絶命するということは、報道などを見てこの地で死んだ人間が一人だけじゃないと分かれば自殺志願者というのが集まりかねない事態になってくる。だからここ最近のメディアの報道でも、自殺したことを伝える際は必ずいのちの電話のホットラインや悩みがあったときにこちらに連絡をかけてくださいというように、自殺を抑止するための内容へとシフトチェンジをしている。そうじゃないとメディアも報道する内容によってはバッシングを受けるからね。ただこういう社会の働きかけをしたとしても、衝動的な自殺だけは抑えられない。こうやって茂みから俺達の動きに対して注意深く見つめてくるということは、俺達に伝えたいことがあるはずだ。言いたいことがあるのなら、何かアクションを起こしてほしい。」と茂みに向かって呼びかけると、星弥の呼びかけに反応したのか風もないのに音がした。


”ザザザ、ザザザ”


まるで茂みの中に誰かが潜んでいるような物音が聞こえた瞬間に、星弥は勘づいて烏藤に「あのさっきの物音、どう思う?観光客だったら撮影されては困る理由があったとしても何も茂みに隠れる理由など存在しないからね。」と切り出すと、烏藤は「自分たちの大きな過ちに気付いて後悔の念があるからこうやってこの地で今も彷徨っているんだろう。あの世にいても自死を選んだために居場所がなく、結果最期の地に戻ってくるしかない。今のままの状態で隠れた心霊スポット的な場所としてそっとしておいたほうが、一番の供養になるかもしれない。」と返事すると、星弥は安心した表情を浮かべ「俺と考えが合致してよかった。」と話すと、霊能者としての意見を二人で話し始めた。そして改めて心霊検証を行った結果を油井と村田が語ったところで明るい肝試しのライブ配信を終えた。そのときだった。


油井と村田が海をバックにライブ配信を終えたとき、崖には足場がないにも関わらず油井の背後から女性の声が聞こえてきたという。


油井が慌てふためいた状態で烏藤と星弥に報告した。


「さっきのシーンで俺の耳元で女が”死ね、死ね、死ね”と呟いてきた。囁くような声だったからきっとマイクでは拾えていないと思うけど、俺の身に何かあっては怖い!何とかしてくれるよな!?」


油井の報告を受け、すぐに星弥と烏藤が霊視を行った結果、星弥がその場で油井の御祓いを行ったところで、稲村ヶ崎を後にすることにした。帰り際に油井が星弥に「どうしてあの場、すぐに御祓いを行った?しかも理由なく、どうして?」と訊ねると、星弥は「力の強い者がいるとわかりSOSを求めるために近付いてきたのだろう。とりわけ霊視が出来るとか、一際霊能力者並みの力を持つ人間はこういったことに出くわすことが多い。俺だって家にいる時でも、俺しかいないのに数多もの付近で彷徨う浮遊霊の声が複数聞こえたりすることがある。同じことなんだ。」と話すと烏藤は「自殺の名所でよくある悪霊とされる霊ならば誘発行為の一つとして下を覗けば下に引き摺り込まれるような錯覚に陥るとか、そういったことが挙げられるが今回の場合は何かしら憎いと思うことが生前にあって嫌気がさして絶命した女性だから、きっとこうしてリポートを続けただけでも静かにしれくれという一心で発したかもしれない。」と話すと、村田は油井に対し「俺もさっきの女の声は聞こえた。でもこういう活動をしている以上聞こえてきて当たり前といや当たり前かもしれない。」と助言するように話すと、稲村ヶ崎での明るい肝試しを終了することにした。


そして明くる日千葉県で行う明るい肝試しのために、一同は千葉県へと向けて出発するのだった。

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