【完結】慰霊の旅路~試練編~

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金山ダム(千葉・鴨川市)

公開日時: 2022年2月14日(月) 23:21
文字数:9,939

稲村ヶ崎を後にした一同は、明くる日の千葉県で行う明るい肝試しのために、予約しておいた鴨川市内のビジネスホテルにチェックインした後に、晩御飯を食べながら明日のミーティングを行うことにした。


杉沢村が饗庭と烏藤に対して「まさか。先輩の霊能力者のコメントで教えてもらうなんてことがあるとは思ってもいなかった。」と話すと、星弥は「すみません。僕達も出来る限りリサーチはしていて、ただ伏龍に関してとなっちゃうと、Googleマップのストリートビューなどを見て思ったことだけど”果たして死んだのか”がただただ疑問に思えてならなくて、それで烏藤が伏龍特攻隊とワード検索した結果、あそこは待機陣地で実際にあそこは使われることなく終戦を迎えました、ということがわかりそれなら伏龍だけで調べたほうがと思ったけど、でも稲村ヶ崎から野比海岸に行くにしても、久里浜海岸に行くにしても距離があるんだよね。1時間ちょっとは確か調べたらかかるってあったから、さらにボート転覆事故で亡くなった逗子開成中学の学生の御霊が出るかという検証になると七里ガ浜にも行かなきゃいけないし、さすがに移動時間を考えてもスッと行ってまたスッと行って、短時間で回り切れることは出来んだろうなって思っていた時、まさに小田切さんからのコメント投稿があって、稲村ヶ崎に纏わるとなっちゃうともうキリがないからこうしたほうがいいっていう適切なアドバイスがあって、また小田切さんの経験談も伺えて、指摘通りの女性の霊の姿も確認することが出来て、確か心霊写真も撮れたんだよね?」と話すと、後藤が「ああ、撮れた。カメラのフラッシュによるものとは思えない赤いオーブが撮れた。見てほしいんだ。ちょうどまさに視線を感じたと言ったときに何枚か写真を撮ったけど、この何かが横切ったような赤い閃光、そして別の角度から撮影した写真には赤いオーブがくっきりと撮影され、拡大してみると女の顔になっている。これはフラッシュによるものではないのは断言できる。」と話すと、星弥と烏藤は改めて後藤から掲示された写真を確認し始める。


烏藤が写真を見た途端、後藤に一言伝える。


「赤いオーブは怒りの感情を露わにしているという事だ。言ったことだと思うけどこれ以上は干渉し過ぎないほうが良いって思って、女性の御霊の存在を確認したときに俺達は除霊も何も行わなかったのは覚えているよね。」


烏藤の問いかけに後藤は「ああ。勿論。覚えているよ。でも除霊しようと思ったら出来たよね。」と話すと、それを聞いた星弥は「勿論できた。でも辞めたのは理由がある。稲村ヶ崎が自殺の名所であるのは間違いない、いのちの電話の連絡先が記載されたポスターがあるという事はそれだけこの地を最期に命を絶つ者が後を絶たないことは言える。ただ小田切さんの話にも、俺達が実際に出くわしたあの女の霊は、これ以上干渉しないほうが良いと思った。多分だけど、男にトラウマがあるんじゃないのかな。俺達が女性の霊能者ならまた対応は違ったかもしれんけど、生前に男性とトラブルがあって男に対して強い嫌悪感を示す女性の御霊なら間違いなく男に対して禍を齎す危険性のほうがグッと高くなると感じた。だからこれ以上はというのがあった、俺達が除霊を行って他にいる人に禍を齎すようなことがあってはならないと感じた。俺たち二人であの女性の霊は対処できない。他にも霊能者が必要だ。」と話すと、星弥の思いもしない告白に甲州が「わたしとメイサちゃんに例えば霊能者的な才能があれば、また結果は違っていたの?」と聞き始めると、星弥は「そうかもしれないね。いずれにしろ、あまりにも関与しすぎてしまうと、亡くなられた御霊の心のケアまでしっかりと行わないと後々恨まれることにも繋がる。俺達は除霊を行うときは行うけどでもしっかりと御霊に対して安心して昇天できる導きが出来るか否かにもよってまた結果は異なってくるから、ぶっちゃけた話俺も烏藤も恨まれてしょうがないことがあってもおかしくないんだよ。」と語り続けて烏藤も「そうそう。男鹿プリンスホテルのときもそうだった。ただ俺達不法侵入で捕まったけど、活魚の時は除霊を断念せざるを得なかった。明らかに強烈な負のパワーを放つ若い女性の御霊が厨房にいるのは確認した。その時点で除霊を行おうとしたら、余りにも強すぎて話し相手にもならなかった。」と振り返るように話すと、それを聞いた油井は「えっ!?あの活魚に行ったことがあるのか!?しかも厨房の若い女性って殺された女子高生の霊がまだそこにいるってことだよね!?」と興味津々になって聞き始めると、星弥は「そうだ。恐らく殺された女子高生だと思った。志半ばで少年たちの犯行を見ただけでここに連れてこられ殺害されたのだから、女子高生からしたら犯人を死んで恨む気持ちがあって当然のことだし、犯人のうちの一人が獄中死しているんだよね。だから相当強い気持ちで自分の命を奪われたことに対する怒りを露わにしているし、何より殺された被害者のあの女の子の遺影をゲートのところに飾ってあったのでパッと見たとき、女の子の顔が般若のような、怒りの感情を露わにしているような表情になったのを見て背筋が凍るとその後に遺影通りの笑顔の写真に戻ったのがもう怖くてね。2階の小窓からちらっと見た20代か30代ぐらいのセミロングのヘアスタイルの女性も気になったけど俺はやっぱり厨房で見たあの女の子だけは強烈に印象に残った。あれは俺も思い出すだけで怖い。」と話すと、斧落は「いやいやいや、もう聞いて居るだけで段々と背筋が凍り付いてしまったよ。もうやめて。怖すぎるよ、本当に洒落にならない!」と悲鳴を上げると、後藤は「聞いたことすら忘れたいと思うぐらい、本当に洒落にならない怖い話だ。ああ~もう忘れたい。今の饗庭さんの不幸だって、それもあるんじゃないんですか?」と聞き始めると、星弥は笑いながら「俺の場合は祟りじゃなくて、自分のミスだから。心配しなくていいよ。ありがとう。」と語ると、一同は解散して22時過ぎに就寝することにした。


2026年1月12日 月曜日 成人式の日の朝を迎えた。


朝7時過ぎにチェックアウトをした一同は、移動中の車内で千葉県で行う明るい肝試しの心霊スポットの場所を斧落が公式TikTokでライブ配信を行う。


「皆さんおはようございます!そして成人を迎えられた方々の皆さん、おめでとうございます!明るい肝試しのメンバーの斧落です!最終日の千葉編ですが、最初に肝試しを行うのは千葉を代表する心霊スポットの金山ダムから肝試しを行いたいと思います!ライブ配信開始時刻は7時55分から、実際にライブ中継を行うのは8時からになりますので、今まで9時から行っていましたが、移動時間の都合とわたしたちの休憩時間も考えて、8時からの生中継という形に変わっていく形になっていくかと思います。引き続き、わたしたちの明るい肝試しの応援を宜しくお願いします。」


斧落がTikTOKでのライブ配信を終えた後、車を唯一駐車することが出来る場所へと辿り着いた後、徒歩で金山城址と書かれた石碑のところにまで辿り着いたと同時にニコニコ動画とYouTubeのライブ配信を行い始めた。


村田が「明るい肝試しをご覧の皆さん!おはようございます!村田です!」と挨拶すると続けて油井も「おはようございます!油井です!さて金山城址と書かれた石碑のところに僕たちいますけど、村田ここは何があったのか教えてほしい。」と話すと村田が「その前に俺達の肝試しに同行してくれる霊能者の饗庭さんと烏藤さんの紹介されていないか!?最終日の千葉編も一緒に来てくれているので、まず紹介するべきだろ。」と話すと、後ろでじっくりと聞いて居た星弥が「明るい肝試しをご覧の皆さんおはようございます。饗庭です。」と挨拶すると、烏藤も「烏藤です。最終日の千葉編も僕達ボランティア霊能者が明るい肝試しさんと連携し合いながら心霊スポットの検証を行いたいと思いますので宜しくお願いします。」と話したところで油井が「早速ですが右手にある二つあるトンネルを抜けた先に噂されているダムがあるんで、ダムを目指して歩いていこう。右手には金山隧道があり、その先には船石隧道と抜けていった先に、某有名怪談家のDVDにも出てきた赤い吊り橋が見えてくる。吊橋を渡って左手のほうを進んでいけば、行けるかどうかは分からないが斧落(おのおとし)隧道というのが見えてきて、これが某有名怪談家が話す”黄泉トンネル”とも称された恐怖のトンネルが待ち受けているんで、僕達ぞくぞくしながら進める範囲内で進んでいきたいなと思う!」と話すと油井と村田が先頭を歩くような形で先を進んでゆくと、続いて甲州と斧落、そして星弥と烏藤が続いて歩いてゆく。


先を歩いているうちに油井がいったん立ち止まると村田に対して「金山隧道のほうでは急に寒気が走った以外の違和感はなかったんだけど、今歩いている船石隧道を歩き始めると、何か先のほうから足音が聞こえてこないか。”カツン、カツン”って。でも俺達、饗庭さんと烏藤さんが履いている靴とか見ても完全にスニーカーだし、カツンと鳴るような要素が無いんだよな。」と話すと、二人の異変を察知した星弥が「俺達の存在に気付き、女性の御霊がこちらに近づいて来ているんだ。」と答えると村田は星弥に「某有名怪談家の話では女性が殺害されたと説明しており、ダム周辺にあるトンネルで赤い服を着た女性の霊が目撃されるという話があったが、星弥さんが見たその女性は赤い服を着ていたのか?」と訊ねると、星弥は「赤くない。オレンジのカーディガンに白いワンピース、清楚な感じの装いで靴は黒いハイヒールだったな。」と答えると、油井は「え!?あの有名怪談家の話と違うじゃん。」と話すと、烏藤は苦笑いをしながら「あの方の話される話の殆どはオーバーリアクションなんだよ。一緒についているアイドル女の子たちだってキャーキャー騒ぎに騒ぎまくってそれが彼女たちの仕事?とばかりの内容になっているから余計伺った先が最恐のとも言われがちなんだろうけど、でも実際にあれは違う。でもあの某有名怪談家の方が話されている内容で当たりがあるとしたら、それは自殺があったことは間違いない。」と話すと、一同はついに船代橋と書かれた赤い吊り橋の前まで辿り着いた。


油井が「いよいよ噂の吊り橋に到着だね。某有名怪談家の話では、非常に身投げをする方が多く、中でも有名な怪談話として若いカップルが心中を試みようとこの吊橋で投身自殺を図ったが、なかなか遺体が上がらない状態で男性のほうがまず最初に見つかると女性はなかなか出てこなかった。日が経ったある日に釣り人がここで釣りをして帰ろうとした時に、浮きが自分のほうへと近付いてくるなということに不審に思い確認のためにも見てみるとそれは浮きではなく見つからなかった女性の頭部だったという。それ以降男性がこの吊橋を単独で通ろうとする際には死んだ女性の霊が現れて湖面へと引き摺り込もうとするという話がある。他に紹介された話では、ある人がこの吊橋を通ろうとした際に自分一人しか吊り橋の上を渡っていないにも関わらず非常に揺れが激しく、何だろうと思い橋の下を確認すると、女性が首を吊ってブラーンブラーンブラーンと揺れていたという。過去に女性が殺害された背景もあってか、女性の霊の目撃例が後を絶たない。また若いカップル以外にも自殺志願者が自殺をした地でもあるとされている。その真相を突き止めることが出来るかどうか。俺も村田も可能な限り調査を行おう。」と話したその瞬間だった。


星弥が吊り橋の鉄骨の間から金山湖を覗き込むと「これは投身自殺を図って果たして死ねるかどうか疑問だな。」と話すと、烏藤と村田、さらには油井にも声をかけて「見てほしい。高さは調べてみたけど、どのネットサーフィンの情報にも記載がされていないために大まかな情報しか伝えることが出来ないのだが、2階建てのお家程の高さから転落をしたことになる。その際に金山湖の深さにもよるが落ちた衝撃によっては骨折して水面へ浮上しようと試みるも浮上が出来ない状態のまま水中でもがき苦しみ溺死してしまうパターンがダム湖では多いが、吊橋からの高さもそんなになく、果たして自殺の名所と言えるほどのものではないと言える。」と話したと同時に、何かの気配を感じ取ったのか、右手の吊り橋の鉄骨で何かの気配を感じ取ったのか星弥は「女が見ている。烏藤も気づいたか?」と話しかけると、烏藤は「ああ。明らかに足場もないところで俺達のことを鉄骨の後ろからじっと眺めているようにも感じ取れたね。あの感じから見ても身投げではない可能性のほうが高い。かといってロープを括り付けたような痕跡も見受けられないから、鉄骨を乗り越えた末にロープを括り付けて首を吊ったのならば、そもそもそんなに自殺した件数は多くないように感じる。こんなに人気もなく、すぐにでも見つかって欲しいという思いがあればこんな寂れた場所を最期の場所として選ぶのか、相当の覚悟が無ければ衝動的な自殺であったとしても、これは確実にひっそりと死にたい人が死にに来る場所なのかもしれない。」と話すと、星弥は「某有名怪談家の話にも出た”黄泉トンネル”の信憑性についても疑う必要性はあるな。それが金山ダムの名誉を守ることにも繋がるしね。」と話すと、村田は「そうだね。でも土砂崩れが起きた関係で行けるかどうかはわからないが吊橋を渡って左手に噂の斧落隧道があるから行って見ることにしようか。」と案内すると村田と油井が先に吊橋を渡り切ると、斧落隧道がある方向へと歩き進んでゆく。


二人の後ろを歩いていた甲州が油井と村田に対して「吊橋を歩いていた時に、マイクで拾えたかどうかは分からないんだけどさ、後ろからピチャンピチャンと水が撥ねるような音が凄くして音が聞こえた橋の下を恐る恐る除いては見たんだけども何かこう背筋が凍るような視線を強く感じて、自殺した女性の霊によるものじゃないかと思うと、帰る時が本当に怖くなってきた。段々とその音が近付いて来ているんだけど、本当に大丈夫なのか不安に思えてならない。」と話すと、村田は「怪談で話していた話が本当の事なら、水が撥ねるような音が聞こえてくるのはおかしい。」と切り出すと甲州の話を聞いた星弥はある可能性を示唆した。


「自殺であるのは間違いないと思われるがどういった状態で遺体が発見されたかにもよる。例えばロープの長さが長すぎて足元が湖面についてしまうようなものならば風に揺られたと同時に遺体の足元が湖面についてピチャンピチャンと水面を揺らしながらブラーンブラーンと揺れていた状態だったのかもしれない。まあ実際に自殺があったかどうかについては、そもそも女性一人でロープを括り付けるにしても足場がそんなにない鉄骨の上を不慣れながらロープを括り付けた末に首を吊ったとしても、投身自殺を図ったとしても、やはり不自然。」と話すと、それを聞いた油井は「不自然ってあの某有名怪談家が話した内容だと、多くの投身自殺がとされているのは、伝えられている噂の内容と真実は違うってこと?」と星弥に対して聞き始めると星弥は「某有名怪談家が見た世界は恐らく、あの方に霊感があるのか、まあ誰がどう見ても不気味な場所に長年ずっと怪談のスペシャリストとして心霊ドキュメンタリーたるビデオやDVDを販売してきた実績はあるからね。霊が見えるほどのレベルではないが、過敏なほうかもしれない。こういった朝方の明るい時間帯に行っても気味が悪いほか言いようがないこの場所で、推測だけど女の霊が見えたので、恐らく身なりから察して率直に思ったことを怖い話のように仕立て上げた可能性のほうが極めて高い。この先の斧落隧道に纏わる話も、単純に”斧落”という誰がどう聞いても”何でそんな名前にしたのか”と突っ込まれかねない気味の悪い名前だから、怖い話がぱっと頭の中で閃いて思いついたことを語っているだけに過ぎないと思う。それに霊障とは思えない人工音のようなもの、動物の泣き声のようなものも聞こえてならないものがある。それらも全て霊障だと言い切ってしまえば、霊能者の立場から言わせてもらえばそれは違うと言いたい。」と答えると、星弥の補足説明を烏藤が語り始めた。


「多分だけど、自殺者が出たのは間違いない。ただ名所と言えるものでもなければ某有名怪談家が話したような、沢山の自殺者の遺体をこのトンネルで運んだに違いないとか、そういったことは間違いなくあり得ない。勢いよく飛び込んだとしても、橋から湖面の高さがそんなにまずない分、致命傷になり得るような大怪我にはそもそもならない。だから星弥が話したように首吊りの可能性のほうがグッと高いと思うが、件数としては少ないだろう。あったとしてもこの付近の、船代橋を渡るまでにあった休憩所やあるいはこのダム湖を囲むようにある雑木林などで首吊り自殺があっても不思議ではない。橋の鉄骨の部分にロープを括り付けて死ぬことまではよっぽどその人が見つけてもらいやすい場所をあえて選んだのかそれとも赤い色の吊橋に魅せられ”痛くない”という錯覚に陥った末の末路だったのか。いずれにしてもこんな釣り人以外の人気が全くないこのダムで、”見つかって欲しい”という気持ちも抱えながらもこの世の中に嫌気がさして亡くなられた方の割合のほうが多いかも。つまり大袈裟に語り過ぎ、騒ぎ過ぎ、怖いか怖くないかと言ってしまえばここは怖くない。」


烏藤がはっきりと言い切ってしまったことで、油井が「いや。俺は違うと思う。俺だって霊視が出来るんだからこの辺りでも、自殺者の霊と接触できるかもしれない。検証を行ってみる!」と強く叫ぶとその場で霊視を行い始めた。


油井の様子を見た星弥は「真実だと思いたい気持ちは分かる。それが心霊現象を追求する立場なら尚更自殺の名所であってほしいと思う気持ちも理解できる。ただ残念だけど自殺の名所じゃない、あっても件数がたかだか知れいてる。それは橋の上から御霊の気配を強く感じたあたりから、その場にいた御霊と接触を試みたが、”人気のないこの場所でひっそりと死にたかった”ぐらいの答えしか返ってこなかった。つまりここは御霊の存在がいるのは確実で、甲州さんが聞いたような異音が聞こえたりするなどの霊障が起きているのは間違いない。ただ御霊達が音をあえて立てることによって、これ以上のことは干渉してほしくないという意思表示でもあるんだ。それにここに彷徨っているのは噂にある通り女性だけじゃない。男性も一部いる。斧落隧道まで行けば答えが分かる。ほら(左手の人差し指で指し示しながら)もう少し歩いていけば斧落隧道が見えてきたじゃないか。斧落隧道を抜けた先は土砂崩れがあって斧落隧道の先はいけないみたいだけど、紹介されている”黄泉トンネル”の一部に入れるとわかっただけでもラッキーじゃないか。霊視はトンネル内で行ったほうが良いと思う。何かいい発見が今度はあるかもしれない。」と話すと。油井は納得がいなかったのかいまだに憮然とした表情で星弥の話を聞くと一同は斧落隧道の中へと入ってゆく。


懐中電灯を照らしながら歩くと、天井にここだけが色が変わっている場所が見受けられ、油井は「これが斧落隧道の所以になった、斧のような石が落ちてきてそれがたまたま通りかかった女性の頭をかち割るようにして女性は即死したという、その際に女性の血飛沫が大きく広がったために、天井から亡くなった女性の血がポタン、ポタンと落ちてくるという話はここだったのか。だとしたらここに女性の霊がいるってことかもしれない!俺は某有名怪談家のファンだもん!先生だって俺は勝手に言っているけど先生の言うことに俺はいつも心霊ロマンを感じて信じてならないんだもん!だから俺は先生の言うことを信じて、女性の霊が現れることを夢見て霊視検証を行う!」と再び強く主張すると、村田が呆れかえって油井に告げた。


「斧落の名前の由来はこの土地の地名だそうだよ。女性は死んでいない。それに血飛沫が飛んで岩があんな色にという割にあれはどう見ても普通の岩だね。血しぶきを浴びたようにも感じられるが、元々素掘りでしかも一部がコンクリートで舗装されていないために地層の一部が剥き出しになっていることから、恐らくあれは地層の一部で今俺達がこう歩いているだけでも未舗装の地層が剥き出しになっている箇所から落盤の危険性は十分考えられる。今まさに俺たちの頭上には斧のような形をした石が落ちてきても不思議じゃない。出口まで辿り着いたらさっと調査を終え、元来た道に戻ろうぜ。ここは何もない。さっき通ってきた前がコンクリートの壁で目隠しされていたトイレのような場所でも物騒な気配は確かに感じた。でも誰も利用しないトイレと貸している以上、ああいう感じになってしまったのだろう。」


村田の一言を聞いた油井は自信満々の表情で村田を見ると「さっきちらっと、霊視をしたけど女性の姿を確認できたんだ!これが噂の頭がかち割れた女性の霊なのかもしれない!霊能者じゃないけど可能な限り接触してみる!噂話の一つにしか過ぎないってことを払拭させてやるんだ!」と言い放つと、星弥が答えを言い始めた。


「女性の霊は俺も見た。ただここで死んではいない。思い出してごらん。ここは山で水場もすぐに近い。これから昇天されてゆく御霊がより高い場所を目指して山を登っていく場所がまさしくここなのだろう。見た限りでは病死の可能性が高い。」


星弥が淡々とした口調で語った内容に油井は納得が出来ないイライラが募ったのか話しかけても黙り込んでしまったが、そんな油井の認めたくないとばかりに頑固な姿勢を貫く様子を見かねた後藤が油井に対してこう助言をした。


「霊感も強く、霊視が出来るんだったら分かるはずだ。饗庭さんと烏藤さん、さらに村田の言っていることのほうが俺は信憑性が高いと思う。お前が尊敬する某有名怪談家の話を信じたい気持ちもあるが、ここは”怖い”と騒ぎに騒いだだけでに過ぎないってことが俺達の調査で分かった。それに音がするだけで、俺達に何の禍も示してこない。つまり、これ以上関わるなということなんだ。踏み入っては怒りを買うだけだ。黄泉トンネルとされ、トラックに数多もの死者を乗せた状態で運搬したというのもでっちあげた思い付きによる話だろうし、それにトンネル内で死んだ女性も思い付きの思い付きでしかなかった。現れたのは女性の霊だったが、しかし残念なことにここ以外の場所で亡くなっていることが分かっている。そんなに頭がかち割れた幽霊が見たいというのなら、列車の旅で常紋トンネルにでも行ってきたら?」


村田、そして後藤と油井にとっては信頼のおける仲間からも指摘の声を掛けられた油井は諦めの決心がついたのか「わかった。もういい。ここで有意義な、それこそまだトンネル内が土砂崩れで通行が出来ないほどの状態でなかったのがありがたかった。これ以上の調査は何をしても出てこないとわかった。諦めて千葉編最終の心霊スポットに行くことにする。」と話すと、一同は帰路につくことにした。


そして金山城址と書かれた石碑のところに戻ってきたと同時にライブ配信を終了させた。配信終了後、油井のことが心配だった星弥は油井に「好きな気持ちも分かる。でもこれが現実なのか架空の話か、しっかりと見極め夢ばかりは追いかけ過ぎないほうが良い。それこそがこのYouTubeでもニコニコ動画を見てくれている人たちは求めているはず。真実を教えてほしいとね。だから俺は説明した。自殺はあったかもしれないがでも件数としては少ないはずだとね。あの吊り橋の上に立ち、答えがあの時点ですでに分かった。自殺の名所と言われる割には彷徨う御霊の数が少なすぎるからなんだ。それに男の呻き声のような声も遠くから聞こえてきた。女性の霊が多いことを理由に女性の霊が現れることを前提にするのも間違いだし、それこそ霊感があって霊視も出来る油井さんにはしっかりと見極めをして貰わないと、噂話の真実が闇に葬られてしまう。それは決してあってはならないことだ。」と優しい語り口調で話すと、油井は「好きだったから信じたかった。」と言って返事をするのだった。


駐車場へと帰ってきた一同は最終の午後から行う明るい肝試しを行う心霊スポットへと向け、金山ダムを後にした。

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