【完結】慰霊の旅路~試練編~

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千眼堂吊橋(新潟・燕市)

公開日時: 2022年2月23日(水) 15:45
文字数:10,057

山梨での”呪いの警官人形”の心霊検証を終え、一週間が経った。


2026年2月21日 土曜日 PM16時

侑斗はかねてから依頼を受けていた東北地方のローカルTVの心霊ロケのため新潟県へと足を運んでいた。


「九州をメインに活動していた俺もついに東北・中部地方へと本格的に上陸か!しかし俺自身が九州から離れないと移動時間だけでも時間がかかるのに、交通費は負担してくれて貰っているから助かるけど、それでも俺自身が今後霊能者として各地を転々としてゆく上において九州にも行きやすく北海道や東北地方にも行きやすい場所を選ばないと、週末をメインに活動しているから、毎度毎度仕事の前日は定時の18時にきっちりと帰ってその日のうちに福岡空港から離陸する飛行機に乗って移動しなければいけない。本当この活動をずっと続けなければいけないのかとなると小城市役所での市民課職員として霊能者としての副業を認めてもらえて、また俺が企画したわけじゃないんだけど心霊観光地の企画だって順調にいっているんだから、やっぱりまだまだ九州から離れる決心はつかない!」


新潟空港へと降り立った侑斗は待ち合わせ場所へと指定された場所に足を運ぶと、そこに東北や中部地方などでオンエアしている心霊をメインテーマとする”あなたは幽霊を信じますか”という番組の心霊ロケで既に番組プロデューサーやディレクター、カメラマンなどが集まる中、侑斗はある人の存在に思わず目が留まった。


「あれ!?降魔師の藤村操さんじゃないですか!?今回の心霊ロケに参加されているとは思ってもいませんでした!!」


侑斗が嬉しそうな表情で藤村に近づき喋り掛けると、藤村は「侑斗君。俺だってこのために遥々盛岡から来た。九州の人からすれば、新潟は遠くて当たり前だと思う。でもこうして霊能者として活動できる機会を与えてもらっているだけでも有難いと思わなきゃね。日本全国で考えると俺達のように霊能者として活動している人が数知れているからどうしても遠距離から呼ばなければいけない事態になることも致し方のない世の中だと思うよ。俺だってそのために前日の仕事を早く切り上げて俺だって侑斗君と同様に空港で一泊して来ているんだから、きついのはみんな一緒だよ。」と慰めるように語り掛けると、侑斗の心の中で思っていたことを吐露するまでもなく言い当てたことに侑斗は驚いた表情で「何で俺の心の中まで見抜いてしまった?いや、俺が移動に時間がかかるからなんて言っていなかったのになんでだろうって思ってね。」と思ったことを率直に話し始めると、藤村は「俺はねこう見えて人の心が読み取れる特殊能力を持っているんだ。俺はこうして御霊達が何を訴えているのかを気を集中して見極めた末に答えを導き出すんだ。」と語ると、番組プロデューサーの綾羽暢が侑斗と藤村の元へと駆けつけると、「遠くから遥々新潟に来てくれて本当に助かった。実力派の霊能者が一堂に集結して心霊バトルを行うなんて夢の企画が実現できただけでもプロデューサーとして光栄に思う!それに霊能力者の侑斗君と降魔師の藤村君以外にもスペシャリストを呼んでるんだよ。もうすでに後ろでじっと二人のやり取りを見ていたから気付いていたかもしれないが、後ろのセミロングヘアーの花柄のワンピース姿が特徴的な女の子だよ。」と言うと、二人の前に「はじめまして。岐阜で陰陽師として活動している政井みねといいます。新潟編、福島編、楽しくお互いの霊能者としてのスキルをより発揮できるように、番組では霊能力者VS降魔師VS陰陽師というタイトルなんだけども、わたしたちは戦うためにここに来たんじゃない。今もなおこの世への未練を断ち切れぬ御霊達へ救いの手を差し伸べるために来ている。その精神を忘れることなく2月21日から23日の三日間を過ごしたい。」と意気込むと、それを聞いた侑斗は「俺は饗庭侑斗、本名だけど藤村さんも政井さんも本名じゃないよね?何でまあハンドルネームで活動しても良しなのは良しなんだけどどうしてって思ってしまう。」と語ると、藤村から思いもしない言葉が返ってきた。


「俺は本名だよ。華厳の滝で遺書の巌頭之感を遺して絶命した藤村操のような人生を過ごしてくれっていうわけじゃないけど、若くして立派な功績を遺す男に育ってくれという意味合いを込めて、藤村操って名前になったんだ。今となれば、同姓同名ということもあってか、こうして心霊ロケに引っ張りだこの存在になるのも非常に有難いことだと思っているし、俺の中ではすごく親に感謝している。」


藤村が本名と告げた後に政井は「わたしはハンドルネームだよ。”あゝ野麦峠”に影響されてね。モデルになった女性の逞しく家族を支えようと必死になって働いた精神をわたしもお手本にしたいという一心で、わたしは陰陽師としてより技術を磨き上げるためにも切磋琢磨をしたいと思ってこの名前にした。本名は非公開にしているの。」と侑斗の質問に対して答えたところで、侑斗は「俺と藤村さんだけが本名か。」と呟いた後、綾羽が侑斗と藤村に対して他のその場にいるスタッフの紹介をし始めた。


「ディレクターの飯塚佳樹、音声の古森翼、カメラマンの鳥井洋祐。特に侑斗君に至っては九州から遥々来てくれて本当に嬉しい。遠いから御断りをされるのかもしれない思っていたけど”交通費を負担してくれるのなら良いですよ”の返事が聞けて良かった。それに藤村さんにも政井さんにも来てもらって新潟、福島、最終の首都圏近郊で繰り広げる心霊スポットの検証における火花散る舌戦!白熱の除霊バトル!こんなに番組の内容としても今まで以上にとても豪華でしかも知名度がある御三方に出演をして頂く機会なんてそうそうないから、YouTubeでもニコニコ動画でも大いに盛り上がりを見せるような気がしてならない!今からすごく楽しみなんだ!」


綾羽が笑顔で語り始めると、侑斗は冷静にこう言い切った。


「あの僕のような霊能力者、並びに藤村さんのような降魔師。政井さんのような陰陽師は一般的に霊能者になりますが霊能者は供養を目的にする職業で競い合う仕事じゃないので、火花散る激しい舌戦や小競り合いは一切ありません。その点については全国各地にいらっしゃるお坊さんと立場は同じだということを忘れないでください。」


侑斗が綾羽に説明すると、綾羽は「まあまあ。オカルト好きにとっては霊能力者と降魔師と陰陽師がどう判断して除霊を行うのかっていうのが今回の特番の見どころの一つにしたいわけで、勿論競い合うのが目的ではない。一応今回の予定としては最近話題になっている心霊スポットを回ってみて御祓いをする立場としてどう感じ取りジャッジを下すのかが気になるので、そのあたりを中心に撮っていきたいと思っている。因みにこれから1時間かけて伺うのは燕市の千眼堂吊橋、新発田市の内の倉ダム、明くる日の2月22日には福島編ということで最初に会津若松市の飯盛山に行った後は福島市の上蓬莱橋へ、最終日の2月23日に関東近郊で行う心霊スポットは飯能市の正丸峠と青梅市の旧吹上トンネルでの心霊検証を行っていくというスケジュールになっている。今から大まかな予定などを記載した台本を古森から侑斗君と藤村君とみねちゃんに渡すからそれを受け取って欲しい。」とざっくりと説明をしたところで、侑斗、藤村、政井の順に台本が渡されると続けて飯塚が「新潟空港から千眼堂吊橋が1時間ちょっとのところにあるから今から出発して17時過ぎには収録を始めたい。ゆっくりとしているわけにはいかない。レンタカーを停めてある場所へと移動しよう。」とスケジュールの日程について質問の余地も与えられることなく、バタバタとレンタカーが停めてある駐車場へと向かい始めると、目的地の千眼堂吊橋へと向け出発した。


移動中の車内で侑斗が綾羽に「ところで新潟編はブラックハウスとホワイトハウスの心霊検証を行う内容だったとも伺っていましたが、内容が屋外に変わったのは何かあったんですか?」と聞くと、古森が「そうですね。元々は行く予定でしたが撮影許可が下りない以上勝手に入って撮影をするわけにはいかないので、ここ最近は心霊廃墟と言える場所の撮影が難しいんです。何せ、その土地を管理する所有者すら誰のものなのかが分からないところが多すぎるんです。土地の謄本を取って、連絡が繋がったとしても曖昧な答えしか返ってこないところが多いのでね。福島でもあの某有名怪談家が、某有名霊能力者が訪れたことでも知られているYロッジにも行きたかったんですけどね、そこも所有者不明のために撮影交渉が困難とみて、新潟県、福島県、関東近郊の行けるとしたらYouTubeやニコニコ動画で不審な呻き声が聞こえた、人の話し声が聞こえた、黒い影が通り過ぎたなどの報告が寄せられた心霊スポットなどをメインとして、侑斗君にも藤村君にも政井さんにも霊能者としての危険度をジャッジしていただくという事で決まりました。」と言って説明すると、侑斗は「まあ仕方ないですね。どの心霊廃墟もオーナーが不良債権を抱えた上で自己破産して土地を明け渡したりして管理者がどこになったのかも、それすら不動産などを取り扱う会社等が”ただ単に言われたので土地の所有者になっただけに過ぎない”場所が多いから致し方のない事実ですね。あまり心霊がとか、話題になればなるほどいざ商品として売り出したいときに幽霊が出ると分かれば過去に事件や事故がなかったとしても忌み嫌われますからね。誰も幽霊が出ると分かった以上、土地の値打ちが下がったとしても喜んでお買い上げをする人なんていませんからね。」と話すと、侑斗の意見を聞いた藤村が「まあどこの心霊廃墟も皆そうだろ。近隣の住民からしてみたら早く潰してくれって思う廃墟はいくらでもある。怖いもの見たさで不良が集う集会所と化しているところだってあるからね。治安の観点から見ても残して良い事なんて何もない。かもめ荘だってやっと壊されたことでニュースになるぐらいだからね。」とお互いの思うことを語り合ったのを後ろの席に座る政井が「最近は撮影目的で不法侵入する若者も増えてきているからね。一番良いことは不法侵入だと分かっている行為に対しては強くNOを示す姿勢がこれからますます求められてくるね。視聴回数が少ないとわざわざ犯罪を犯してまで侵入を犯す人はいないと思うから。」と自分なりの意見を語り終え、三人のやり取りをじっくりと頷きながら聞いて居た綾羽は「だからなんだよね。だから心霊系を扱うオカルト番組が減ってきたのも投稿された心霊系の映像や画像を取り扱うのもSNSの発展と共に廃れてしまった傾向のほうが強いが、我々はSNSの影響力を生かしながら少しでもテレビを見てくれる人たちが増えてほしいという思いで撮影しているんだ。だからここ最近ニュースにもなる心霊スポットへの不法侵入もいかがなものかと思うよ。でもだからこそしっかりと投稿されたサイトのほうで自動的に削除するなどのことをしなければ、同じ輩は絶対に出てくると思う。管理する側もしっかりと自覚をもって規制を行わなければ真面目に取材許可を取って撮影する側が馬鹿になってしまう。」と綾羽自身の思いを強く主張したところで、一同が乗る車は燕市分水ビジターサービスセンターの付近にある駐車場へと辿り着くと、吊橋の近くにある朝日山展望台を目指して歩くことにした。


歩きながら飯塚が侑斗、藤村、政井の三人に対して千眼堂吊橋に纏わる怖い話について説明をすることにした。


「これから向かう千眼堂吊橋では、国上山に差し掛かる燕市の観光地として知られる一方で長さ124m、高さが35mもあることから度々飛び降り自殺があるらしい。そのために夜に吊橋を渡ると橋の下から無数の呻き声が聞こえてくる、足を掴まれ引っ張られそうになるという心霊現象が起きるとされている。又YouTubeの動画では、渡っている途中に黒い影を目撃したというのもある。そこで今回は吊橋に今もなお自殺者の幽霊が彷徨っているのかどうか確認をしてほしいというのが今回の議題のテーマになる。噂される呻き声が確認取れるのか、足を掴まれて引っ張られそうになってしまうのか、そして黒い影の存在が映像を通して証明できるかどうかも含めて御三方には霊視・透視などを行っていただき検証してほしい。」


飯塚の説明を受けた侑斗は「え?高さ35mってビルの高さで換算すると1フロアの高さが3mだと考えても12階建てのビルの高さから落ちるのと同じってことですよね?ちょっと待ってくださいよ。僕こう見えて吊橋とか高いところ苦手なんですよ。それでもここにいる以上、僕だけ展望台で待機なんてことは許してもらえませんよね?」と飯塚に近づいたと同時に耳元で囁くような口調で相談すると、飯塚は侑斗に「高いところが怖いので渡れません。それでは霊能者の仕事になりませんよね?前もって支払った交通費や出演料など全額返して下さい。」と冷たい口調で言い返すと侑斗は何も言い返すことなく渋々嫌な表情を見せながら吊橋の前まで辿り着いた。


それを見た藤村が侑斗に対し「仕事で来ている以上、金銭を受け取ったかどうかは別として、霊能者としてしっかりと役目を果たさないと、苦手だから無理ですって言うぐらいなら引き受けないほうが良い。俺達のような仕事には、”嫌です”だなんて言い分が通用するわけがない。」と納得させるように話しかけると、侑斗は「わかっている。我慢するしかない。」と呟くような口調で話したところで、一同は千眼堂吊橋を渡ることにした。


政井が左側のフェンスを掴み始めると何かの念を感じ取ったのか、目を瞑ったと同時に霊視を行うと、その瞬間に左方向に傾いたこともあってか、吊橋に揺れが生じ思わず侑斗が「ギャアアア!!」と叫び立ちすくんでしまうと、藤村が「お前が先に呻き声をあげてどうする!?」と突っ込みながら、一同は周りの観光客にも気遣いながら霊視を行い続ける。侑斗は右側のフェンスから恐る恐る下を覗き込むと「こちらでは気配は感じない。だけど左側のほうが強く感じる。」と感じたことを話すと、びくびくしながら左側のフェンスのほうへと近付くと侑斗の脳裏にある光景が焼き付いた。


「20代か30代前半ぐらいの若い女性がいる。恨めしそうに我々の足元にいて我々の方向を注意深く見ている。噂にもあった足元を掴まれそうになったというのは、この我々の足元に潜む御霊かもしれない。仮に本当にここが自殺の名所ならば、自殺対策のためにもこんなフェンスをよじ登るだけでも簡単に乗り越えて投身自殺を図れることが出来るようなシステムは絶対にとらないと思う。ただ見た限り、実際この地で投身自殺を図った件数は少ないんじゃないかな。何名か、足場のないところなのに複数名の御霊の存在を確認できた。また右側よりも左側のほうが強く気配を感じることからも、吊橋を渡った先のちょうど俺がいる場所(左側のフェンス側)で決意を決め飛び降りる傾向が強いのかもしれない。フェンスの高さが高すぎず低すぎず乗り越えるような行為さえしなければ転落死をする危険性は考えられず、事故死の可能性は間違いなく低い。また足を掴まれてという話もあったみたいだがこの状況下では誰かこのフェンスを乗り越えた末に自分の足を誰かが掴まれたというのなら、足場のないところなのに掴まれるのはおかしいし、ましてや乗り越えてまで写真撮影を行うような者など決していないと思う。」


侑斗が疑問に思ったことを話すと、藤村は「確かにね。下へ引っ張られそうになったとしたらこのフェンスにも変形の痕跡もあるし、ただ今のところそういった下へ引っ張られてしまいそうになったというような痕跡は見受けられず、足を掴まれ引っ張られそうになるという噂の真偽としては”足場がないのにも関わらず足元から人の気配を感じる、人の視線を感じる”といったものだろう。それが歩く人にとっては”足を引っ張られるかもしれない”という強い恐怖に繋がったのかもしれない。また吊橋ということもあり、左右のどちらかに偏り過ぎてしまうと橋にちょっとした揺れが生じてしまう特性も考えるとそういった心霊以外の恐怖も合わさって心霊スポットとして噂される所以の一つになったのかもしれない。」と話すと、続いて政井が「侑斗君と藤村君と話すことは重複しているが、わたしも歩いてみて同じことを考えた。右側のほうにもちらっと複数名の恐らくここから身投げされたであろう方々の御霊を確認することが出来たが、ただ左側の方向に関しては怒りの感情と言うか、”これ以上我々の安らげる場所を五月蠅くしないで欲しい”というようにも見て取れた。この地で命絶った方の殆どは人気が少なくなる夜間にひっそりと飛び降りているのかもしれない。どうして左側が中心になっているのか、最期に見る光景が夜に見ると絶景だろう燕市内の夜景を堪能してから決心してそこで身を投げるのかもしれない。そのパターンが大半で右側から命絶つ方は多分市内を眺めるだけでも嫌な思いがあってあえてこちらを選んだのだろう。我々が下すジャッジとしては、自殺者の数も我々が霊視で確認できる限りでは名所というほど数は多くない。ただひっそりとしている場所だからこそ人目につかぬように誰にも迷惑を掛けたくないという一心であの世へと旅立つ心情を察知することが出来た。」と話した後に綾羽に対して「吊橋を渡った先にお寺がありますよね?大切にケアがなされているのか、自殺者の御霊を丁重に供養はされていると思います。現れた御霊にはこの世への未練を残しつつも、生者に禍を齎すような悪霊ではないことは確実ですね。危険か安全かと聞かれたらこちらは安全に保たれているし、命絶った方達の供養もしっかりと行われているようにも見受けられましたのでとても危険と言えるレベルではないですね。夕方のこの時間帯なので、映像で可視化するのは難しいと思いますが、我々のような霊的エネルギーの強い人間が感じ取って改めて確認をすることが出来ました。夜であっても、不気味な気配をより一層感じることが出来るのかもしれないが、その気配から招くものが”黒い影”の正体なのかもしれませんね。何かが通り過ぎたと思ったら、実際は懐中電灯で照らしたことによる自分の影を黒い影だと思ったかもしれないし、黒い影が走り去ったとかそういうことであればやはり何かしらの危険信号を発していたのだと推測されます。それが、我々が感じ取った”これ以上関与してほしくない”という訴えそのものでしょうね。」と思ったことを吐露した後、綾羽は驚いた表情を見せつつも「吊橋を渡った左側に本覚院というお寺があって隣には休憩所の五合庵というのがあるね。確認のためにも本覚院まで足を運んでみることにしようか。鳥居が撮影した映像にも、俺が着になった部分を撮影したところにも不可思議な現象は一切見受けられなかった。亡くなられた方のケアがしっかりと行われているのは間違いないだろう。危険だと感知できない以上、これからの心霊ロケの成功祈願を願って御参りをして千眼堂吊橋のロケ収録を終えることにしようか。」と打診すると、一同は吊橋を渡り終え五合庵を通り過ぎた先にある本覚院に足を運ぶと、参拝をさっと済ませて再び吊橋のところへ戻ってくることにした。吊橋での帰路も同様の気配を感じ取ることが出来たが、侑斗が何かを感じ取ったのか、途端に中腹の部分で立ち止まると、あることを話し始めた。


「多くはないがちら、ほらっとやっぱり見ている。」


侑斗の発言を聞いた藤村は「そうだね。まだ我々の動向に対して注意深く見ている御霊が何名かの足元で覗き込んでいるね。ひっそりと死にたいという思いもあってこの地を選んだけどもでもやっぱりまだまだ先急ぎ過ぎたという反省の念というのも強く感じることはできる。そんな思いがあって、今も成仏しきれずに彷徨っているのだとしたらやっぱりこんな形で人生を終わらせてはいけないってことに尽きるね。」と語ると、政井は二人の話をうんうんと頷きながら先に吊橋を渡り切ると、侑斗、藤村の順に渡り切ったところで、最期に千眼堂吊橋の危険性について政井がカメラを前に代表して意見を述べることにした。


「危険度のランクを5段階で評価をするとしたら星一つ半ぐらいの怖さがある。夜になるとより観光客がいなくなるためにより一層気味の悪い環境になっていくだろうがそのタイミングに恐らく身投げをされた方の時間帯ともかち合ってしまうために、肝試しに訪れた若者が下からの気配を感じるというのは恐らくそのためであろうと思われます。呻き声については山でもありますから、果たしてそれが明らかに人間の声なのか、野生の動物の可能性もあり得るので、検証の余地は非常にあるかと思います。ただこういった場所で自殺者が呻き声を上げながら投身するというのは非常に考えにくいため夜間に行動する野生動物が発した声の可能性も捨てきれません。噂の真偽としては足元からの気配を感じるの間違いない、ただ足を掴まれ引きずられそうになるというのは嘘で乗り越えなければ引きずられそうになったと思い込んだ可能性もありえます。」と話した後、侑斗が「赤い橋は血の色を彷彿させることもあるので、それを見た瞬間に”これを乗り越えても痛みを感じない”と錯覚を起こしてしまい、簡単に乗り越えてしまうのかもしれません。ただ見た限りフェンスの高さは普通の背丈ぐらいの方、大体身長が170cm程の方だと肩ぐらいの高さまであり、金網フェンスの厚みもそんなに分厚くなく簡単に乗り越えようと思ったら乗り越えることも出来る。」と語り終え、藤村が「侑斗君と政井さんの仰っていることと全く同じ考え方なので僕の立場としては、ただ肝試しであったとしても、噂されている内容はあくまでも大袈裟に伝えたいがための怪談話の一つにすぎない可能性があるのでそれはね、我々も夜に渡らないと答えは出てきませんが、今ちょうど時計が19時を回って我々が到着した17時頃と明らかに違うのはもう太陽が沈んで懐中電灯が無ければ漆黒の世界が包んでいる。足場の階段も舗装されているわけではないので夜間街灯の灯りもないこの場にいくこと自体が僕はあまりお勧めしません。心霊度の危険性は低いと思いますが夜間に行くことは避けたほうが良いでしょう。十分な装備をしていなければ、怪我をしてしまう危険性も高いと思われます。」と語り終えたところで、千眼堂吊橋での心霊ロケを終了することにした。


次に向かう内の倉ダムへと向かう道中に予め用意されていた弁当を食べながら侑斗は「TVだから言えなかったことがあるけど、あの吊橋で命を落としただろう方々はざっと見る限り20名は超えるが、50名には達していない。20から40にいくかいかないか、それでも多数の方が命を落としたことに変わりはない。でもそういった場所だからあえて観光地としてPRすることによって自殺防止の抑止効果に繋げているのかもしれない。ただこれは俺が見た世界なので憶測の一つにしか過ぎないんだけど、赤色の橋というのも影響されているのかもしれない。強くそう感じ取った。だから死んだ今もなお懺悔の気持ちがあって、してしまったことに対する心の痛みに触れてほしくないから怒りを露わにする。それは紛れもない事実だと想定できる。」と率直な意見を話すと侑斗の意見を聞いた綾羽が「わかったのならもっと最期の朝日山展望台での締めの撮影の時に言ってほしかったなあ。そうじゃなければ”怖くなかった”で終わってしまうじゃんかよ。」と苦言を呈すと、侑斗は「言っても良かったんですけど、あまり大袈裟に知らないことを伝えたことによって語弊が生まれては地元の方にも御迷惑をかけてしまう事態にもなります。僕達のような霊能者が”危ない”だ”危険だ”と言ったりしただけでも心霊スポットが生まれてしまいます。率直に思ったことはお話させて頂きましたが、我々が見る世界とそうじゃない方が見る世界はやはり違いますのでその点を理解していただけませんか。」と言って答えると、綾羽はそれを聞いて納得をしたのか「某有名霊能力者もそうだったな。怖いとか危険だとかジャッジしたところが心霊スポットになって、果たしてそうだったのかとなってしまうと、確かにその人は凄い才能の持ち主だった。人を見抜く力はあった、ただ怖いと感じるのは人によりけりなんだろうね。その人が思った怖いと思うことが独り歩きして、それを聞いた人も”怖い”と感知されるようになってしまうものかもしれないね。」と理解を示し侑斗と綾羽のやり取りは終わり、その後は疲れを取るためにも仮眠を取ったりなどして過ごすことにしたのだった。

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