2022年2月23日 三連休最後の朝を朝5時に起床した侑斗は眠たい目をこすりながらさっと身支度を済ませると、5時30分にはホテルのフロント前にやってくると朝の6時過ぎには最初の心霊検証地の一つである正丸峠へ向け出発した。
朝が早いという事もあり、ゆっくりと次に向かう心霊スポットに憑いて論議をしている余裕もなく、侑斗は移動中の車内でずっと鼾をかきながら寝ていた。
そして車が埼玉県に入ったと同時に侑斗は隣に座っていた藤村に「起きろ。ミーティングを行う!」と頭をポンポンと叩かれた侑斗は「わかった!起きるよ!しっかし眠たいんだよ!!」と思わず愚痴をこぼすと、政井は「眠たいのはみんな一緒!」と突っ込まれだんまりとする中で正丸峠での心霊検証について話し合った。
綾羽が車を運転しながら、助手席に座る飯塚が代わりに正丸峠に纏わる怪談話についての説明を三人に対して行い始める。
「正丸トンネルが出来るまでかつてここは国道299号線として一般的に使われていたが、道幅が異様に狭く山道特有のヘアピンカーブが多いために事故多発地帯の一つとして挙げられている。今は市道の一つとして車の出入りは今も出来るようにはなっているが、酷道というほど道は荒れ果てている。走り屋が多かった時代に無論この道もレースとして使われていたのだろうか、速さを競い合った際に事故が起きぶつかった衝撃によりガードレールが大きく湾曲しているところが複数個所見受けられるあたりからも、いかにここが死亡事故が多発していたのかという事を教えてくれている。正丸峠で伝わっている心霊現象の内容は死亡事故が多かったという事もあって、事故死したであろう霊のほか、白い服の女の霊が出る、走り屋が多かった背景からバイクに乗る骸骨や首なしライダー、口裂け女や人面犬など様々な情報が挙げられている。そのほか正丸トンネルでは昭和の頃に世間を震撼させた幼女連続殺人事件の舞台の一つともなった場所で、何十年も前から少女の霊が現れるという噂がある。そのほか、四つん這いの老婆の霊が出る、人面犬が出る等ある。正丸トンネルも心霊調査の対象にしたい。ただ今も車が走る場所でもあり歩道や路側帯のような場所もないため歩いての調査は難しく、制限速度30kmの道なりを霊視検証を行いやすいように速度は控えめにゆっくりと後ろから車が来た場合は進路を譲るなどをしてゆっくりと調査を行いたいと思う。なのでもし車の中で異変に気付いたときは真っ先に声を上げてほしい。まずは正丸トンネルから調査をして、トンネルを抜けた左手に正丸峠へと入っていくための道があるからそこから正丸峠に入り正丸峠の調査を行う。質問があれば今のうちに聞いてほしい。」
飯塚の話の話は続く。
「正丸峠ってやっぱり有名だからね、本当に調べたら色々な情報が出てくる。この地で事故を起こした若い男の霊が出る、夜中にこの道を通ると首のない男がバイクにまたがっているのを見かけたなどの噂が、やはり事故が多かっただけにその類の話が多いね。山道でヘアピンカーブが多く、走り屋がスピードを競い合っていた場所でもあったために、事故が後を絶たない。今一番心霊記事を読んでみて一番気になったのがある人の体験談なんだけど、峠の先の旅館に行く途中にトンネルがありそこを通過した際にバケツをひっくり返したような水を浴びせられたというが目的地の旅館の方が言うにはそんなトンネルはそもそも存在していないと言われたそうだ。首なしライダーやバイクに乗る骸骨、四つん這いの女性、幽霊として現れたら本当に面白いと思う怪談話の宝庫だな。」と笑いながら話すと、飯塚の話を頷きながら聞いた侑斗は「首なしライダーやバイクにまたがる骸骨など、かつてローリング族が暴走行為を繰り返し行われていたような場所で主に伝わっている、いわばよく耳にする怪談話ですからね。猛スピードでカーブに入った際に曲がり切れずにガードレールに直撃したために首と胴体があっという間に切断され即死してもなお死んだという自覚がないから走り続けるという首なしライダーの話は、何もここだけに限った話ではないですよ。それにバイクにまたがる骸骨は僕が今まで霊視してきた経験談で言わせてもらうと、幽霊として現れるとしたら生前の姿で現れるパターンが多く、死後の姿で現れることはまずありえません。そこは想定される噂話の一つに過ぎないと思いますので、検証のし甲斐がもしあるとしたら、首なしライダーの霊が出るか、四つん這いの女性の霊が出るか、そして事件の犠牲者となった少女の霊が出るか、正丸峠での検証議題は限られていますよ。」と話すと、飯塚は「まあそうだな。そんなところだろう。さすがに骸骨の霊が出たら、まあ霊感がないもんで実際に見えるわけでもないのだが、でもそんな霊がもしいたとしたらそんな姿になってでもまだ走り続けたいのかって逆に思ってしまう。」と笑いながら語った。
二人のやり取りをじっと聞いて居た藤村はスマホを片手に調べ始めながら飯塚に対して「昭和の頃の幼女連続殺人事件についてですけど、正丸トンネルで調べたらありましたね。でも実際に遺棄された場所とは違うみたいです。犯人の男は三人目の被害者である少女を川越市で誘拐後に正丸峠の途中にある駐車場で少女を絞殺した後に名栗村の山中に遺棄したとありますね。ただただ正丸トンネルが正丸峠にリンクしているからそう思われたのかもしれませんが旧道となった今も通れることが出来る正丸峠のほうが僕は殺された少女の御霊が出てきても不思議ではないと思います。それに山頂のところにある、恐らく駐車場として使われていただろう、今は封鎖されて使われなくなっているところから、茶屋のガレージなどの写真を見ているだけでも嫌な感じしかしない。投稿された写真は心霊写真ではないが、”何か”あったことは間違いないことを彷彿させる。」と語ると、続けて政井が同じく気になったことをタブレットで調べ始めると「正丸峠は仰っているように道が狭い上にヘアピンカーブが多いために1980年代から1990年代後半にわたってローリング族(=峠道などのカーブでバイクの車体を倒し膝を擦り乍ら走る暴走族の一種である)のメッカとしてバイクによる事故も多発していたようです。またコミックの「頭文字(イニシャル)D」(=しげの秀一先生原作による走り屋の若者達を舞台にした漫画の聖地として紹介されている)の影響もあり、峠道をいかに速く走れるか走り屋による死亡事故も、ローリング族による死亡事故も相まってか、多発する事態となったようですね。因みに四つん這いの女性の霊は正丸峠にも出るともされていて、内容としては物凄いスピードで追いかけてくるとか、道路を走っていると道路の端に若い女性が立っているのを目撃したなどがあって、埼玉県内でも屈指なんじゃないんですかね。あげればきりがないと思いますよ。正丸トンネルで体験した、男子高校生4人組が飯能側から秩父側へと向かおうとした際に一人が急に遅れたために立ち止まって待っていると遅れた友達の背後に知らないお婆さんが乗っていたという。それをみた三人はうわー!という悲鳴を上げながらトンネルの出口まで一目散に逃げると遅れてきた友達の背後にはもうお婆さんの姿はなく、その友達曰く遅れだしたときに急にペダルが重たくなったというという実話怪談までありますよ。事故死した御霊の可能性も視野に調べる必要性がありますね。」と提案すると、侑斗は必死になって星弥と支倉に昨日調べた高麗橋のレポートを報告するのだった。
その様子を見た藤村は侑斗に対して「饗庭さんは何か思ったことはある?」と切り出すも、スマホを片手に侑斗は「ああ。クソッ。昨日のうちに返事が出来なかったから兄ちゃんと支倉さんの返事に俺は必死なんだ!」と語ると、藤村は侑斗の言い分を聞いて「それは言い訳だろ。昨日のうちに出来たことなのに出来なかった饗庭さんのミスでしょ。」と言われると、侑斗は渋々報告内容をさっと送信し終えたところでストリートビューのアプリで正丸峠を調べ始めると「確かに。ローリング族や走り族は好みそうだね。こんな道狭い上に、カーブが連続しているから、猛スピードで走行したらどうなるか大体想像がついた。カーブの生々しい事故の痕跡も気になるが、山頂の峠茶屋みたいなところ、その付近にある駐車場、嫌な予感がするのは俺だけか。心霊写真ではないが悪い気を感じてならない。何かあったはずだ、事故以外にね。」と話すと、政井は「藤村さんの話を聞かなかったの?幼女連続殺人事件の被害者の女の子が峠道の途中にあった駐車場で絞殺されている。これは噂でも何でもなく事実よ。」と語ると、それを聞いた侑斗は「事故に殺人事件の殺害現場だったってことか。益々心霊検証のし甲斐があるな。前もってこういった情報を知っておくべきだった。」とため息をつきながら話した。それを聞いた綾羽は「引き受けたからしょうがないでしょ。現に殺されたかもしれない少女の霊の目撃例もあることから、カメラにも何かしらの霊障による異常を撮影することが出来るかもしれない。そこを霊能者としてどうジャッジをするのか、視聴者は絶対に見たいはずだ。そのために九州でも屈指の若手実力派の霊能者として知られている饗庭君を呼んだのだからね。」と話すと侑斗は「わかりました。あんまり殺害現場って引き受けたくなかったんですよ。俺達にとっては酷すぎる、建物の中じゃないから三半規管を狂わせるようなことはないとしても俺達のような霊的エネルギーの強い人間をその少女の御霊が見たときに俺達に対して助けを求めてくるかもしれないんです。僕は兄が、活魚で経験したことを聞かされているので、”これは霊能者が関わるべきではない事案”であることはわかっているし、でも来ているからこそ気持ちを切り替えてやるしかありませんね。」と言葉少なげに返事すると、藤村は侑斗に「活魚は次元が違うだろ。あそこは誰が行こうが、霊感の有り無しは関係なく皆気持ち悪くなる。それだけ殺された少女の怨念が渦巻いているんだよ。あそこは異常すぎる。正丸峠で殺された女の子といっても年齢が年齢で幼いから、殺されたから腹立たしいというよりも、おじさんがわたしの写真を撮ってくれると言ってくれたからおじさんと一緒についていったけどいつの間にかここに来てしまっていて帰り道が分からなくなった程度でしかないだろう。」と指摘すると、侑斗は「まあそんなもんだろうな。でもやはり帰り道が分からず首に絞殺された跡が残る女の子の御霊を見たら俺はたまらない。怨みの感情はないと分かっていても、人間としてこれほど可哀想と思えるものはない。これは霊能者としての意見ではない、いち一人の人間としての意見だから、そっとしておいてほしい。出来るだけ感情移入はしないようにはする。」と語った後に黙り込んでしまった。
そして一同が乗る車は正丸トンネルを目前にしようとしたところで、改めて飯塚が侑斗、藤村、政井の三人に対して「あと少しで正丸トンネルだから、ここから先はドライブレコーダーと車載カメラなどを使ってトンネル内の撮影を試みたいと思う。饗庭君、藤村君、みねちゃんの三人にはいつでも霊視が出来る身構えをしてほしい。」とお願いをしたところで、正丸トンネルと書かれたプレートを目前にして三人がいっせいに気を集中し始めた状態でトンネルの中へと入っていく。
トンネル内に入ったと同時に侑斗が車の窓を開け始めると徐にトンネルの天井を見上げるように覗き込み始めた。侑斗は右側の窓際に座る藤村に対し「窓を開けてトンネルの天井を見上げてほしい。何名か、御霊の存在を確認することが出来た。これが男子高校生が実際に見たとされるお婆さんの御霊なのか特定はできないが、少なくともこの付近で事故死した方達の可能性のほうが高い。」と話すと、侑斗が発見したことに対し藤村も確認のため窓を開けて確認すると、「トンネルの天井だけじゃない、歩道のところにもいるな。噂される自転車の後ろに乗っていた女性の霊かどうかは分からないが、今ちらっと近くを通り過ごしたときに目が合った。俺の見立てが正しければ、この付近で事故死された女性で一瞬でお亡くなりになられたのか、死んでもなお助けを求めているのかもしれない。事故に巻き込まれたのではなく、この付近を走行中に発生した土砂崩れによる犠牲も捨てきれない。あの画像にも落石注意の注意標識があったように、その可能性が大いにあると思う。」と話すと、政井も我が目で確認したい一心で車の天窓を開けて身を乗り出して確認し始めるとすぐにシートに座り込むと同時に「ここに彷徨っている御霊は、ローリング族や走り屋だけに止まらないと思う。もっと、落石や土砂崩れによる犠牲者もカウントをしたら我々の手には負えぬほどの御霊が救済を求めてここに集結していることになる。溢れかえって居場所がなくなったからここにまで来ているのかもしれない。トンネル内を一瞬見ただけだけど激しい事故が起こったような痕跡も見受けられず、見通しのいい一直線の道路で変にカーブになっているような個所も見受けられないから、こんな場所で事故が起こるとは極めて考えにくい。」と話すと、侑斗は「そうだな。それこそ旧道に入ればさらに俺達が想像している以上の御霊達と遭遇することになる。除霊が出来るかどうかは別として、これはもう山全体を洗浄しなければいけないぐらいのレベルだろう。大規模に行わないと、俺達三人の霊能者で数多もの御霊達の煩悩や救済の声に対して一人一人聞いて居たらとてつもなく時間がかかってしまうことになるだろう。」と話すと、一同の乗る車がトンネルの出口にまで辿り着くと峠に入るための道に入った際に綾羽が侑斗の発言を聞いて「正丸峠にはそれだけ多くの事故死した霊が彷徨っているってことなのか?洗浄ってあまり聞かないけど、それってどういうこと?」と質問をすると、侑斗は「洗浄は一度起こった穢れを元々あった状態に戻す、つまり何も起こらなかった時代の状態にまでその土地を元に戻すって言いますか、穢れの要因になるものを取り除く行為が洗浄っていうんですけどね、御祓いだけだと穢れを取り除く行為になるのですが、洗浄は穢れを取り除くだけにとどまらず要因となり得るものを綺麗に取り払うことで元々あった状態に戻すことになります。」と答えると、続けて藤村が「心霊的には無害な状態の時と同じように戻すという事です。ただそれをしようと思うと、霊能者が僕達だけでは足りません。大規模に行なわなければいけないことですからね。」と続けて話すと、二人の解釈を聞いた綾羽が「それだけのことをしなければ正丸峠に彷徨う霊は数え切れぬほどってことなのか?」と切り出すと、藤村は「仮にもしここで除霊をして下さいと言ってしまえば、これは僕達の手には負えぬほどのこのトンネル内だけでも老若男女問わず峠で事故死されたであろう方々が今も彷徨い続けていることに間違いはありません。何度も議題に上がっていますが、ローリング族や走り屋の事故死が多かったのも正丸峠での心霊スポットとして名高い地位を築き上げたのもあるかもしれませんが、そうじゃなくとも道は狭く対抗する車が来たときに進路を譲るために避けようとした際に一歩間違えたら崖に転落ですよ。デスロード(=死の道)と言われてもしょうがない程の、今の正丸トンネルが出来るまでは相当の事故数が発生していたのは何も現地に行かなくとも地図の道路の形状を見ただけでも分かりますよ。こんなくねくねとした道、出来ることなら避けて通りたい。でもここしか道が無ければここを避けて通るわけにはいかない。こういう交通の難所というべき場所には、俺達のような霊能者が除霊を行っても差し支えは無いのだが、ただ俺達には到底できないことを要求される可能性が高い。例えば”もっと道が離合出来る程の道の広さだったら事故など起こらなかった”というように、行政の対応に対する怒りをぶつけられる場合もある。そうなった場合は、申し訳ないけど俺達は飯能市の行政に携わる立場でもないので、そのやり場のない怒りをぶつけられても俺達は聞くことは出来ても具体的な策に講じることはできない。御霊達は命あるからこそ俺達に自分たちの願望を要求してくるが、正直に言ってこういうところで現れる御霊のほうが無理難題を突き付けてくるんだ。」と語ると、侑斗は藤村の意見に同調するように「きっと同じことは政井さんも考えているはずだ。」と話すと政井の顔を覗き始め、政井に対して侑斗は「政井さんはどう感じた?除霊は出来ると思った?」と聞き出すと政井は「ここは凄い。わたしが今まで見てきた中でもトップクラスに入るかもしれない。トンネルの中からそうだった。厳しい視線を強く感じた。そしてここに辿り着いた際に、いるはずもないあの木々のほうから我々をじっと見つめる若い男性の恐らく御霊だろう、姿を確認することが出来た。わたしは過去に、緑山峠にも多良崎城跡にも足を運んだが同じものを感じる。通行禁止の場所ではないのでバイクの音がするしないは別として、あの錆びた事故をした痕跡が生々しく修復されぬまま残っているガードレールから感じ取ることが出来る、旅立つまでのその人が遺した証を、ここしかなかったから通って不幸な目に遭われたのかもしれない。走り屋やローリング族の御霊は若かりし頃の自分たちが犯した暴走行為で自らの命を殺めるとは思ってもいないために、もうそっとしておいたほうがいいかもしれないね。自分たちの犯した罪に今もなお向かい懺悔している姿を見ていると、わたしたちが彼らの御霊に対して何も言うことはないと思う。時間の経過と共にそっと諦めがついて消えるはずだ。だから除霊の必要性は無いと思う。洗浄は必要かもしれないが、そうなってくると我々三人だけでは人手が足りなすぎる。」と言って答えると、政井の答えを聞いた侑斗は「三人の意見が一致した。除霊の必要性は無いと見て間違いない。ここはトンネル内から霊視検証を行う限りでも、今こうして旧道を走っているだけでも無数の数え切れぬほどの人の視線を強く感じる。霊感をあまり感じない人であっても、車から降りる行為には抵抗を示すほどのレベルだろう。こういう場所は、藤村さんが言ったことの鸚鵡返しにもなるが、現れる御霊達が俺達にしか出来ないことと思い行政に対する無理難題を突き付けてくるなどの可能性もあるために、俺達としては極力ここで彷徨う御霊達との接触は避けたい。後々になって約束したとかしていないとかで逆恨みされる危険性も極めて高い。やはり時間の経過と共に心の傷が癒えるのを祈り続けるしかもう答えはない。」と語ると、侑斗の解釈を聞いた飯塚は「わかった。除霊は困難ということだな。」と語った後に、「あと少しで山頂。そして幼女連続殺人事件の殺害現場だっただろう、駐車場がある。恐らくここなんじゃなかろうかというのがあって、車を一度茶屋の駐車場に停めいったんここで休憩してから、この付近で霊視検証を改めて行いたい。殺された少女の霊が今も彷徨っているかどうか、だね。」と切り出すと侑斗は「あんまりそういうことは言わないほうが良いと思いますよ。殺された少女に何の罪もない、無垢で社会をよくわかっていない女の子が、いち一人の男の欲望を満たしたいがための目的で連れてこられたのだから、仮に現れても心霊映像を撮る撮らないというよりもう手を合わせて女の子の御霊の追悼をするしかないですよ。それに嫌な感じがするというのは、こういう事故以外の殺害とか、俺達のような霊能者にとって、戦場とかもそうだけど見るに耐え難い、辛すぎる痛々しい現場があったところはたとえ霊がいるいないは別として俺達にはそこに悪い気が流れ込んでいるというのだけで答えが分かってしまう。事件か何かありましたか?ってね。見ただけでも不気味な感じがするとかそういうことではないんですよ。でも来たからこそ、今も彷徨い続けているのか確認を行わなければいけませんね。」と語った後に侑斗は藤村と政井に対し「俺が代わりに見てくる。見ていて辛いと思うだろうし、警官にはならなかったが警官一族の俺が代わりに霊視してくる。藤村さんと政井さんは俺よりも疲れているはずだから先に茶屋で休憩してきなよ。」と気遣い始めると、政井は侑斗に「本当にそれでいいのか?一人で霊視検証なんて、それならば交代しながら検証するのも一つの策だと思うよ。」と気持ちを切り替えるように指南すると続けて藤村が再確認のために「饗庭さんはそれでいいのか?あれだけ嫌がっていたのに、殺された人の霊を見るのは皆嫌なのは同じことなんだ。嫌だと思うことは皆で分かち合おうよ。」と説得すると、侑斗は「いや。俺一人で十分。カメラマンの鳥井さんと音声の古森さんがいてくれたら、大人が大人数で少女の御霊に対して取り囲むようなことをしてしまえば益々怖がって逃げてしまう可能性だってある。俺が代表して行ってくる。だから藤村さんも政井さんも綾羽さんと飯塚さんと一緒になって休んできなよ。俺は大丈夫だから。」と安心させるように語ると、藤村は「そうか。わかった。ありがとう。」とお礼の言葉を伝えると、山頂にある正丸峠と書かれた二種類の案内表示のところで一同が記念撮影をし始めると、侑斗、古森、鳥井以外のメンバーが茶屋の中に入って先に休憩を取り始めた。
鳥井が「はあ。音声だからしょうがないけど、俺も名物のジンギスカンをみんなで食べたかったなあ。」とため息をつきながら愚痴をこぼすと、侑斗は「今から俺が悪い予感がしたと感じた恐らく駐車場跡地、恐らくここだろうと思われる。ここでいったん霊視して、今現在も使われている駐車場でも念のために霊視を行う。」と改めて説明をすると、ガードレールの中を侑斗が恐る恐る左足をくぐり始め、五歩ほど歩いた先でいったん立ち止まると改めて気を集中させた後に凍死と霊視を行い始めた。侑斗が途端に黙り込んだと同時に首をうんうんと振っている様子を見た古森は侑斗の状態を見て「大丈夫ですか!?」と思わず後ろから声をかけたときに侑斗はケロッとした表情で「大丈夫。」と答えた後に、「恐らくここが殺害現場で間違いない。こういう場所は少女の霊以外にも、少女の死を悼み関係のない霊までも呼んで巻き込んでしまうことがある。俺が見た限りでは、少女の霊は帰るべき場所に戻っていると心の底から信じてやまないが、無念というのは何年経てど拭えぬもので、人が人である以上、考えを持つ生き物だからこそ、今の俺に出来ることはただ一つ。心から少女の死を悼み、供養をしてあげること。命を甦らせることはできないが、どうか心安らかに天国で眠って欲しい、祈りを込めて供養のための御経を唱えます。」と語ると侑斗は気を集中させた状態で御経を唱え始めた。
唱え終えたところで閉じていた目を開けると、侑斗の目の前に光り輝く少女の霊が現れ始めると、侑斗に対してこう告げた。
「わたしの存在に気付いてくれてありがとう。でもここにはもっと困っている人達が沢山いる。助けてあげて欲しい。」
女の子の御霊は侑斗にそう告げるとスッと消えたのだった。その言葉の意味を知った侑斗は「ここには困った人たちがいる、恐らく事故死したであろう人達のことを指しているのだろうか。あの女の子はしっかりと帰るべき場所に帰っているってことか。それならば安心はした。だけどあの子は最後まで自分以外の御霊の存在に気付いて心配をしていた。恐らく俺達のような霊能者に今も彷徨い続ける御霊達を助けてあげて欲しい一心で俺に伝えてくれたのだろうか、だとしたらあの女の子はここで天使になったのかもしれない。家に帰りたいとか、そういったことも一切訴えてこなかった。まるで自分の運命を受けれたようにも感じ取れて、犯人に対する恨み節も決して感じなかったが、少女の御霊の存在が心に傷を抱える事故死者たちの御霊の癒しの存在になっているのだとしたら、頭が上がらない。」とカメラを前に自分の思いを吐露したところで、駐車場跡地を後にして茶屋へと入り遅れて休憩を取ることにした。
侑斗が発見した内容として、少女の霊を確認することが出来たが決して家の場所が分からず道に迷っている様子なども無ければ、事故死した御霊達の天使のような存在になっていることを伝えたところ、政井は感慨深い気持ちになったのか言葉を詰まらせながら「凄いね。何も言えない。でもただ言えることは全てのこの地で亡くなられた方々の追悼を出発するまでに行いたい。それがいまのわたしたちにしかできないこと、そしてそれを少女の御霊も一番強く望んでいることだとしたら、少しでも供養をしてあげてからこの地を後にするべきだ。」と打診したところで、最後に侑斗、藤村、政井の三人が駐車場跡地とそして現在も使用されている駐車場脇の階段で供養を行ったところで、正丸峠での心霊検証を終えることにした。
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