時は流れ、2026年2月14日 土曜日のバレンタインデーを迎えた。
かねてから烏藤から依頼を受けていた山梨市の万力公園西の警官人形の真相を探るために侑斗は星弥とと共に山梨市に訪れていた。待ち合わせ場所として万力公園の噴水広場で烏藤の到着を待っていると、15時55分に星弥と侑斗が現地に到着して5分程が過ぎた頃に烏藤が到着した。
「ごめん!ごめん!飛行機が遅れてしまって申し訳ない!今日は俺が引き受けた依頼の手伝いをしてくれてありがとう!助かった!」
烏藤が星弥と侑斗に対してお礼を言うと、侑斗は「飛行機の遅れならしょうがない。だって俺達だってさっき来たばかりで5分程待ったぐらいだから怒らないよ。」と語ると、星弥も「大丈夫。俺達はそこまで突っ込んだりしない。それにやっと烏藤が青森にいた時からずっと追求していたテーマに俺達も参加できるのだから、霊能者として選ばれて光栄だよ!」と話すと、烏藤が隣にいる人物を紹介し始めた。
「紹介するよ。YouTuberで降魔師の藤村操。結構人気があってね、藤村の心霊革命ってYouTubeとニコニコ動画で公式チャンネルがあって、東北では今流行りに流行っているんだよ。今回の山梨の警官人形の依頼も藤村さんからの依頼でね、警官人形を霊能力者として見てほしいという依頼が俺のところにあって、それで警官人形を写した際に不可解な映像が撮れたから一人では判別しにくいから確認してほしい。それが俺がまだ青森にいたときに星弥と侑斗に見せたあのファイルの内容なんだよ。藤村さんの公式チャンネルにも既に御払い済みなんだけど、設置されてある警官人形に取り憑いたであろう男の霊がくっきりと写っていてね、改めて見てほしい。」
※降魔師・・・ごうまし 霊能者の一種である
烏藤がそう話すと、藤村が持っていたタブレットにインストールしてあるYouTubeのアプリをクリックすると公式チャンネルの管理ページから問題の動画を星弥と侑斗に見せることにした。
藤村が「これはあるカップルがたまたまここを通りかかった際に、助手席に座っていた彼女が運転をしていた彼氏に対して、”ここ噂だと心霊スポットらしいよ。警官の人形がすれ違いざまに首を傾け動き出した、目が動いて視線を感じるとかそういった内容だけど肝試ししてみようか?ちょうどカメラを持って来ているんだし心霊現象が撮れるかもしれないよ”と彼女が提案したところ、彼氏は笑いながら”そんなもんよくある噂話の一つなんだから心霊映像が撮れるわけねえだろ”って笑いながらも、その彼氏も怖いもの見たさで万力公園西の交差点に設置されてある警官人形のところへ夜の22時過ぎぐらいに彼女と共に車から降りてくると、彼は彼女の前で警官人形を徐に触り始めると”〇〇〇(彼女の名前)ちゃん、こいつただの人形だぜ!何ともないただの人形!(人形の左肩の部分をパンパンと叩きながら)今人形の左肩を叩いているけど何か呻き声とか聞こえたか?してこないだろ?こいつは何の害も無いと分かったから隣の大きな岩、俺的にはこっちの岩のほうがすんげえ気になった。”馬頭観音”って書かれてあるけど、覗こうかと彼女に言いながらその岩のところに彼氏がやってくると、再び岩を叩き始めたり隣に蜘蛛の巣が張ってあるのを確認すると彼女に対して”なんかでけぇ蜘蛛がいる。それだけ手入れされていないってことなんだから男の”ううううう”って声も聞こえてきても当然じゃね?しっかし汚ねぇよなと話しかけると馬頭観音と書かれた岩のあたりをウロチョロとするわけだが、しかし何かしらの不可解な現象が起きるわけでもなかったために彼氏が”もうない”と確信して警官人形のところにまで戻ってきて再度確認のために彼女に対して映像を撮るようにとお願いをしたところ、誰もいないはずの警官人形の背後から男の”うああああ”という呻き声が聞こえたと同時に警官人形の左方向からスッと警官人形と同じ見た目の30代か40代ぐらいの男の魂のようなものが出てくるという内容で終わっている。当初は撮影した彼女も気づかなかったようだが後々撮影した映像を改めて見直したときに言葉では言い尽くしがたい不可解な映像が撮れたたために僕のところに依頼が入った。ただ、僕の仕事では果たしてこの地に何かあって警官の人形に救いを求めて男が現れたのだとしたら、果たしてそれが警官の人形じゃなかったらどうだったのか。心霊スポット検索サイトの情報では警官人形に助けを求めるために現れたのではという話も上がったが、俺は違うと思う。せっかくだし警察官をしている星弥さん、そして過去の透視能力を併せ持つ侑斗さんの饗庭兄弟が来ているから、高い御祓い能力を持つ烏藤さんの存在も考えると非常に心強いメンバーで心霊検証を行えることが出来る。本当に有難い、感謝の気持ちでいっぱいだ。」と一通りの説明を終えたところで、改めて御礼の言葉を告げた。
動画を改めて見た侑斗は「確かに。救済を求めるのなら、観音様が祀られている岩に近づいた際に現れたというのならまだわかる。でもこれは見る限りでは警官人形の叩かれた左肩のほうからスッと抜けるように男の魂のようなものが抜け出ている。仮に編集後に心霊映像と見せかけて細工をしたにしても、こんなにうまく警官人形の左からスッと抜けたように見せかけるなんてCGだとしてもここまで上手に編集をすることはできない。」と自分なりの見解を話すと、星弥は「警官人形の情報ってどこまで調べることが出来た?」と藤村に対して聞き始めると、藤村は「恐らくだがよくある交通安全のために設置された人形だと思う。奥にはそれぞれの道から向かうドライバーに対して注意喚起の一つとして標語ポールが設置されており”心地良い 交通マナーが照らす未来(あす)”と”行けるかな 渡れそうでも待つ勇気”と”譲り合い 心と心の交差点!!”いう内容とも考えたら、事故が多かったために策の一つとして注意喚起を促す内容にしているんだと思う。その一つとして昭和30年代から40年代にかけてモータリゼーションの波に流されてやってきた背景もあると推定される。」と話すと、星弥は「なるほどね。事故が多かったから亡くなられた方が警官人形を見て救いを求めるために近づいたってことか。でも馬頭観音って運搬作業の際に馬を使うことが多くなった江戸時代以降に馬が突然死した場所に供養の意味を込めて設置されることが多いらしい。それでも馬の魂を祀っているわけだし、警官人形なんて安全運転をしなさいよの注意喚起のうちの一つでしかないから、ここで警官がひとり殉職したとかそういうわけでもなさそうだな。」と話すと、烏藤は「本当にそうなのか。俺は絶対何かしらここで警察官がひとり死んでいるようにも見えたんだけどな。あの動画を見ても若者達の行為を見て戒めるために現れたとしか考えられないけどな。」と率直に思ったことを語ると、星弥はこう答えた。
「仮にもしここで警官一人が殉職していたら、この地で事故に遇ってお亡くなりになりましたという石碑が場合によってはある。しかしそういったのも見受けられず、あの動画に出てきた男の正体は恐らくだが、警官人形のモチーフになった警察官がいて若者達が夜に騒ぎ出したことに対して怒る目的で呻き声と共に現れたんだと思う。いったい何時だと思っているんだ!?とね。」
星弥が思ったことを語り終えたところで一同は万力公園西の交差点へと徒歩で向かうことにした。
侑斗が歩きながら「烏藤さんがここに来るまでに徹底的に調べたあのファイルの内容を見ただけでも、来たかった!霊能者としては果たして本当に警官人形に取り憑く御霊の正体を明らかにしたい!それが今日一番の目標!!」と高らかに宣言すると星弥は呆れた口調で言い返した。「侑斗、人形に霊は取り憑かない。取り憑いているように見せかけるだけであって、実際はその媒体に過ぎないのだからね。アメリカの有名なアナベル人形もそのうちの一つだ。人形に悪魔が取り憑いたように見せかけ、実際は人形を媒体として悪魔が人々の心を恐怖に陥れたところでその人の心の弱みに付け込み精神的に痛めつけた末に闇の世界へと手招きする。今回の警官人形も同じ類だろうと推測される。実際にその付近でどんな御霊が彷徨っているのか、ストリートビューを見る限りでは複数名の御霊の存在を確認することは出来た。出会い頭の衝突事故で不運にもお亡くなりになられたのかもしれない。心霊画像だろう箇所にはモザイク処理が施されているので霊視をしないとわからないレベルになっている以上、生きている人間が写り込んだとAIが自動的に判別するほどの生々しい写真が撮れてしまったのは確実だろう。だから、警官の人形に助けを求めているようにも見受けられるのかもしれない。」と話すと、烏藤は「その彷徨う御霊の正体が何かだよね。仮に事故死をした御霊が警官の人形に助けを求めるように現れるにしても、亡くなった馬を祀る観音様ではなく人形に憑依しているように見せかけ映像に可視化して現れる。あの映像を見ても相当生々しいし、きっと事故が起きたときに”相手側からぶつかってきたんだ!俺は被害者なんだ!”という感情が芽生えても不思議じゃない。それにしても警官人形に取り憑くように見せかけるあたりから察しても強い訴えを起こしているから察しても今も自分の主張を繰り返している可能性もあるね。」と話すと、じっくりと話しのやり取りを聞いて居た藤村は「その答えは実際に人形を見て、霊視を行ったら答えが分かることなんだし今ああだこうだ議論するような事でもないと思うけどね。でも現場に向かうまでに色々と話を交えながら向かっていくってのもアリだね。面白いね。」と話しつつ、一同は目的地の万力公園西と書かれた交差点のところまで辿り着いた。
信号機にもたれかかるようにして警官人形が置かれてあるのを見た侑斗は「足元が不安定なのか、ずっと倒れた状態のまま雨風にもさらされだいぶ色合いが薄くなってしまっているね。これって心霊スポットの一つとして誰かが投稿したりしてくれているから色んな人の目に留まる機会があるからいいほうなのかもしれないけど、そうじゃなかったらただただ色褪せた人形としか思われないだろうね。」と話すとすぐその場で透視と霊視を行うことにした。
そして藤村は、持ってきたカメラを片手に御霊の気配を感じた場所を重点的に写真撮影を行うと、星弥と烏藤は周りの交通の状況にも注意をしながら警官人形と馬頭観音のあたりで霊視検証を行うことにした。
星弥が馬頭観音の前にやってくると、何かを発見したのか烏藤にそっと近づくと囁くようなトーンで「ストリートビューで見た馬頭観音の台座に男らしき御霊がいる。確認を行うために接触を試みてみる。」と話すと、さっと気配を感じたという台座の近くにまで近づくとすぐその場で周囲を気にしながら語り掛けることにした。
「ここで何があったんですか?」
星弥が話す内容に侑斗と藤村が気付くと星弥の近くにまで駆けつけ、近くにいた烏藤に対して「何か発見したのか?俺達は今さっき、横断歩道の押しボタンの付近で女性の霊を見かけたんだけど、改めて噂される内容について検証しよう。」と話すとすぐさま確認のために心霊スポット検索サイトで投稿されている内容について調べることにした。スマートフォンを片手に藤村が「山梨市万力の国道140号線、万力公園西の下にある警官人形で警官人形の後ろには馬頭観音がある。警官人形が設置される背景には交通事故が多発していると思われる。そのために交通事故で亡くなった方が霊となってこの警官人形に取り憑いているのかもしれない。うーん。観音様なら話は分かるが人形に取り憑くって有り得ないんだよな。」と話すと、烏藤が警官人形の右側に回り込むと一同に「赤錆だと思いたいが、血痕にも見える痕跡が見受けられる。横断歩道を渡っている最中に撥ねられて人形に直撃したので人形に血痕が付いてしまったのか、それにしてもこんな見通しの良いところで、夜間の街灯がそんなになかった時代だったとしても、あえて警官人形にぶつかるようにして意識して撥ねられないといけないってことだから通常ではありえない話だね。スタントマンじゃあるまいし。」と話すと、星弥は警官人形が何で出来ているのか左手で確認のために警官人形の左肩をコンコンと叩き始めた。それを見た藤村は「おい!コンコンと叩いたらまずいことになるって絶対!怒らせてしまうかもしれないじゃん!!」と話すと、星弥は烏藤が見た血痕のようなものを改めて確認すると「人形は恐らく金属、銅のようなもので出来ている。台座が石だから接着しやすい材料をあえて選んでいる。相当昔に作られたのだろう。それこそマイカーが普及して交通量が劇的に増加しただろう70年代あたりかな。警官人形が設置される背景としては、投稿される内容にもあるけど事故が多いからいつもいつも警官が見張って立っているわけにはいかないという理由で警官人形を設置することが多いんだ。人形であっても、遠くから見ると警官が立っているように見えて、あそこで警官が検問をしているぞ!と思うと緊張感が走るでしょ?でも今のありようを見ているとこんな倒れかかった状態で検問をしていたら、”おい大丈夫か”で終わると思うんだけどね。呪いのホームビデオで投稿されて噂にならなければただただ気味の悪い人形に過ぎなかったのだろう。それに血に見えるようなのは錆で間違いない。仮に撥ねられて人形に直撃したことを想定したときに、まさに烏藤の言う通りなんだけどこの人形に対して(背中を叩き始める)コンコン、横断歩道中の事故なら間違いなく車道に倒れるのが普通で、撥ね飛ばされ警官人形にぶつかるように意識をしたとしてもスタントマンとしてその動作を鍛えないと普通の人ではまず出来ないことだ。俺も烏藤にもそのアクションを求められたら絶対無理って言うよ。(再度確認のために右肩をコツコツと叩き始める)やっぱりこれは相当昔に設置されたもので間違いない。」と語ると、藤村は「さっきからどう突っ込もうかと思ったけど星弥さんさ、無神経に警官人形を叩きすぎじゃね?絶対怒らせているって!今こうしているだけでも何か起こっても洒落にならない。」と心配になり始めると、恐る恐る警官人形を霊視することにした。
藤村があまりにも怯えている様子を見た侑斗は傍に近づくと「大丈夫だと思うよ。それにあの投稿された動画だって、噂のきっかけにもなったホームビデオの様子だって見たけど、あれはきっと交通事故死で亡くなられた方の御霊が人形に取り憑いているとかそういうわけではないんだと思う。この警官人形はモデルになった警官がいてその警官が死後に思い入れがあるこの地だからこそこの人形に魂が宿っているってことなんだと推測される。だから動画には顔が飛び出したと同時に人形の表情が全く何もないのっぺらぼうのような状態になったじゃん。人形に宿る警官の魂が怒りを露わにするためにも出てきた、と考えるのが妥当だと思う。俺達はモデルになった警官の魂に敬意を払って対応すれば怒らせるようなことはない。」と安心するように語った後に星弥は「大丈夫と見て確認のために叩いた。多分恐らくこの人形には魂が宿っている。人形のモチーフになった警官がいてその方の魂が眠っている可能性のほうが極めて高い。ここで殉職されたとかそういうわけではなく、定年退職をされた後に病気でお亡くなりになられたのだろうと思うけど、左手には住宅街があって、歩道があると言ってもすぐ近くを車が通ったりしているから、あまり心霊スポットだとどんちゃん騒ぎをするようなことをしてしまえばどんなことが起こり得るか。この警官人形に宿る魂が注意喚起を行うために”うううああああ”という呻き声と共に現れたのが答えだろう。」と話した直後に異変が生じた。
”ドンッ”(鈍い音)
異音が聞こえたと同時に警官人形の周りにいた烏藤、侑斗、星弥はお互いの顔を見ながら「誰か叩いたのか?」と烏藤が話すと、星弥は「いや。俺じゃない。」と答えると続けて侑斗が「俺じゃない。それに叩いたの兄ちゃん以外誰もいないじゃん。こんな蜘蛛の巣だらけのきったねぇ警官人形、じっと直視するだけでも気持ち悪い。誰か処分してくれよ。心霊スポットと化している以上、もう人形を設置した目的が交通安全どころじゃなくなっているじゃん。」と語った直後に藤村が侑斗に「今さっき、警官人形の首が侑斗さんが立っている方向に向いて動き始めると目が侑斗さんのほうを睨みつけるように直視していた。やっぱり叩くのは良くなかったんじゃないのか?」と不安そうに語ると、侑斗も感じたのか「ああ。さっき。気持ち悪いって率直な意見を言ったときに背後の警官人形の目が俺の背中を鋭い目つきで睨み付けたんだ。」と話しながらさっと振り返った。
すると突如呻き声のような声が聞こえ始めた。
”ヴヴヴアアアアア”
まるで苦しみ悶えるような、悲鳴とも聞こえる男の声が聞こえ始めた途端、そこに人形の顔から人形に宿っていただろう警官人形と瓜二つの男の霊が現れ藤村が即座に写真を投稿したと同時に御祓いを行い始めた。
侑斗は「え?俺の無神経な発言が警官人形を怒らせた?」とキョトンとする中、烏藤は「とにかく怒りを鎮めよう。」と話すと一同は周りの状況に気を配りながら御祓いを行うことにした。
御祓いを行ってから5分程が経過して、人形の表情が穏やかに変わったのを確認してから、星弥が振り返るように「当初は事故死されただろう方の御霊の存在を確認することが出来たので、恐らく事故死された方の御霊がまだ彷徨っているのではと思いながら霊視したり人形を確認したけど答えは違っていた。馬頭観音があるように、ここは交通の要所ということもあって、事故が多発していたのだろう。そのために警官人形を設置する際に、管轄する警察署内でも評価の高い人、人形の見た目から察すると年齢的に恐らく署長か警部か、そういった人をモデルに作られた可能性が高い。横から見ると20代ぐらいの方にも見えるが、真正面から見ると40代半ばのようにも見える。キャリアがあってそれなりの地位を築いているとしたら、その人の功績を称えるためにモデルになった人がいても不思議じゃない。だから、普通の人形を設置するよりもリアリティがあってここを通過するドライバーからすると”警官がいる”と錯覚を覚えかねない。それをあえて狙っている。しかし投稿された内容を見ているとこれは明らかに怒っている、綺麗に整備されていないことに対する怒りを動画を通して訴えたのかもしれない。せっかくここまで来たんだ、俺もさっきは叩きすぎて怒らせてしまったのなら後輩として詫びたい。」と話すと、烏藤が「まだ右腕が不自由だろ。それに汚いと分かっているから、ゴミ掃除をするための道具を、まあウェットティッシュなんだけどね。これで蜘蛛の巣を払ったりして、出来る限りこの辺り一帯を綺麗にしてから最後にこの地で亡くなられた方々のために御経を読んでからここを後にしようよ。長居してはそれこそ俺達が通報されかねないからね。」と話すと、一同は烏藤が持ってきたウェットティッシュで綺麗に清掃をし始めると、その様子を近くを通りかかった住民のおばさんに声を掛けられた。
「清掃活動をしているなんて、偉いね。ゴミはどうするの?袋はあるの?」
おばさんの呼びかけに星弥が「気を遣ってくださってありがとうございます。ゴミは僕達で何とかしますから大丈夫です。」と話すと、話しかけたおばさんは「わたしの住んでいる家がすぐ近くだからもしなかったらゴミ袋一つぐらいなんだしあげるよ。段々と汚くなって心霊スポットだって言われるようになって若者達が夜中に騒ぎ始めるようになって、交通安全が目的じゃなくなっているからね。幽霊見たさに集まるもんだから、誰もこの馬頭観音様や警官人形を綺麗に整備なんてしようだなんて、馬頭観音様には定期的に供養はされているけど警官人形は設置されたままの状態よ。傾き始めて薄気味悪いだけの人形になったのだから、正直不気味で近付きたくもなかったんだけど、綺麗にしようと清掃をしてくれているだけでも助かる。」と話すと、さっと家のある方向へと移動し始めた。
その様子を見た藤村は清掃しながら「まさか。こんなサプライズが。でもこうして綺麗に清掃してあげるだけでも住民の意識が変わってくれたらいいな。」と語りながら綺麗に吹き始めるのだった。そしておばさんがゴミ袋を星弥に渡すと「わざわざくださって本当にありがとうございます。」と御礼を伝えると、綺麗にできる範囲内で清掃したところで、改めてその場の交通状況に気を配りながら御経を読み始めた。
一連の清掃並びに供養を行ったところで、星弥は改めて「先程は無神経に叩き過ぎました。大変失礼しました。」とお詫びすると、続けて侑斗は「すみません。さっきは気持ち悪いとか気味悪いとか、この場所をずっと守り続けているのに気分を害すようなことを言ってすみませんでした。」と謝罪して一同は邪魔にならぬようにすぐその場を後にすることにした。
ゴミ袋に入れたごみをゴミ捨て場に捨てた後、一同は再び噴水広場のところにまで戻ってくると、藤村は饗庭兄弟をじっと見つめると「有名な霊能者兄弟の割に無神経なことをしてたね。でもそのおかげで霊障の真実を確かめることが出来た。一体霊能者として何を経験されたのか、首を傾げた。」と呆れた口調で話し始めると、星弥は「いやああでもしなかったら、事故死で亡くなられた霊なのか、そもそも人形に魂が宿ることはあっても霊は取り憑かない。あやふやな答えのまま、誰かが勇気を振り絞って叩いてみないと分からない答えだってあるじゃん。投稿されたホームビデオの内容以上に叩き過ぎたのは事実だからそれは謝った。でもそのおかげで侑斗の失言もあって、人形に魂が宿っていることが分かった。事故死された方の御霊は霊視したから分かるけどあの警官人形に魂が宿っているという事もあってそれが功を奏しているのか、事故死された御霊達は警官人形からすると隠れるように潜んでいるようにも見受けられた。あとはこの世の未練を払拭さえしたら、成仏してくれるのは時間の問題だろう。警官人形に宿る魂は、今もあの付近の一帯の安全を誰よりも誰よりも強く思い行動してくれる良い霊なのだから。それが分かった以上、後は誰か色褪せた人形に色塗りとかしてあげてほしいな。」と侑斗のほうを見て語ると、侑斗は「確かに率直に俺が思ったことを正直にぶっちゃけ過ぎたかもしれない。でも清掃したときに思ったんだ。綺麗に吹いてあげると、あの警官人形の顔が俺が失言したら次第に険しい表情へと変わっていったのが、再び穏やかな表情に変わっていく事に気付いた。改めてあの人形には警官の魂が宿っているとそう思った。きっと警官の魂がこの地で亡くなり今もなおこの世の未練を捨てきれず彷徨う御霊達に対しても戒めている。”早く成仏しなさい”って。そう考えたら、きっとあの警官人形が思うことはただ一つ。綺麗にしてほしい、それだけだったんだ。」と話すと、烏藤が「饗庭兄弟のやることはたまに強行的に突撃してしまうこともあるんだ。でもそうしないと辿り着けない答えもあるわけで、今回だって真相を改めて知ることでこれから肝試しに向かおうとする若者に対して注意喚起をすることも出来る。人の目に触れ、改めて綺麗にしてあげようと思う人が増えるだけで、未来は変わってくれるのかもしれない。」と自分なりの意見を語ると、藤村は納得したのか「まあそうだね。真相について触れたくないって一心も正直言ってあったんだけど、でも饗庭兄弟の思い切ったアクションで答えを知ることが出来た。そして何より俺一人だけだったらきっと真実を追求することなんて出来なかった。冷静に考えると星弥さんと侑斗さんが起こしたアクションは正しかった。また今後の降魔師としての活動においてもいい勉強をさせてもらった。」と改めて御礼を伝えると、侑斗は「いや、とんでもない。また機会があったら今度は心霊革命のスペシャルゲストとして呼んでよ!俺だってまだまだ学習しなければいけないのは同じ立場なんだから!」と慰めるように語ると、星弥は「本当は右腕がギプス状態でなければこのメンバーでは唯一の後輩にあたるわけだし、綺麗にしなければいけない責務を果たさなければいけなかったのに左手で出来ることしかしてあげられなかったのが悔しい。でもまた右腕が完治したら足を運んでみたい。」と話すと、烏藤は「いくらでもあるよ。今度は新しい彼女とカピバラ温泉を見た後に立ち寄ればいい。」と笑いながら話すと、侑斗と藤村がギャハハハとつられて笑い始めると、星弥は「ああそうだな!今度はそうしたいね!」と逆ギレするような口調で反論して、万力公園西の交差点下にある警官人形の心霊調査を終えることとなった。
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