2026年3月16日 月曜日 PM13時過ぎ。
油井、畑、秩父、甲州、斧落、杉沢村、後藤、村田の8人は北斗市内にある有名な心霊スポットのカンカン橋へと明るい肝試しのライブ配信を行うために訪れていた。
油井が畑が持つカメラを前にレポートを開始した。
「明るい肝試しをご覧の皆さん!こんにちは!油井です!ちょっと2月は心霊レポートが撮影できなくてすみませんでした。できる限りちょこちょこと投稿をしなければいけなかったんですけども、以前の弁天橋でお世話になった霊能力者の饗庭さんとスケジュールの都合が合わなくて、いずれまた共同でやりましょうって話をしてあの後終わったんですけど、結局お互いの都合が合わずに3月の大型連休になってしまったわけです。と言いつつも、饗庭さんは他にお仕事されていますので、僕達と共に今回行動できるのが少ないんですけども、一緒に行動が出来ない場合はリモートで出来る限り霊視は行って頂けるということで、饗庭さんの都合が合うときにはお互い合流して心霊検証を行おうという形で合意をして頂けましたので、一応念のため僕達とリモートで行う心霊レポと饗庭さんの星弥さんと侑斗さんのどちらかで来ていただけることになったスポットを改めてご紹介をさせて頂きます。」
油井が語り終えた後にその様子を見計らった村田が説明を始める。
「今回ですね、北海道までやってきました。北海道まで来るのは初めてで、僕達も北海道まで来たのだからどこで美味しい海鮮丼でも食べようかという話で大いに盛り上がっていたんですけどね、まあ見たらわかっていただけるかと思いますが3月ですけど北海道はさすがにまだこんなにも雪が残っていて、季節を間違えたと言えば本当に間違ってしまいましたとしか言いようがありませんけど、冬季閉山の時期に入っていなければ、苫前町にある三毛別羆事件の復元地にも足を運びたかったのですが、残念ながらここには行けず、小樽市内のオタモイ海岸も有名ですが土砂崩れにより行けるところが限られているために遊覧船に乗ってオタモイ海岸を眺めるほか方法がないという事もあり、結局行ける範囲内で行くしかもうないという事になりました。前置きの話が長々となりましたが今僕達がいるのは上磯ダムに差し掛かる心霊スポットとして有名なカンカン橋を徒歩で往復するためにレンタカーを上磯ダム公園の駐車場に停車させてから、さてこれからカンカン橋に渡ろうかとしているところです。ここで伝わる心霊の話としては、深夜に橋の上でエンジンを止めて静かにしているとどこからか”カーン、カーン”という不気味な金属音が聞こえてくるということから正式名称は豊年橋というのですがカーン、カーンという金属音が鳴り響くことで有名になったことかららも別名のカンカン橋で知られるようになりました。そこで僕達は今までずっと8人のメンバーという、TV局並みのロケ体勢でライブ配信を行っていますがより心霊現象を照明するためにも今回僕がリポーター、油井がカメラマン兼音声という形で上磯ダムを眺めることが出来るカンカン橋で伝わる心霊現象をお伝えします。」
村田が語り終えた後にカンカン橋のほうへと歩き始めたとき、早速後ろを歩く油井から「俺達車を駐車場のところに停めて歩いていくわけだし、おまけに深夜じゃないし、エンジンを止め静かにしていると”カーン、カーン”と不気味な音が聞こえてくるという心霊現象が起きると言われているというのも昼のこんな明るい時間帯でも果たして起きるのかどうかってことだよね。心霊スポットの一つとして写真や動画が投稿されている割合は少ないけども、果たしてカーン、カーンという金属音が聞こえてくるのか、噂によるとその金属音を出している者の正体はダムで自殺を図った女性の幽霊によるものではというのがある。そのほかにも白い靄のようなものを目撃した人もいるみたい。果たして霊感の強い俺達でどこまでおびき寄せることが出来るかどうかあまり知られていない場所だから、こんな昼間に来ても心霊現象のようなものが出るかどうか検証のし甲斐はあるね。」と話しかけると、村田は「あくまでも噂話の一つにしか過ぎないのだけど、その油井が言っていたダムで自殺を図った女性の幽霊が自身の存在をアピールしたいがために橋の欄干を叩きながら接近をしているのではという説もある。肝試しに訪れた若者が、噂のように車を停車してエンジンを切ったところ、橋の欄干の脇に上半身だけの白い人影のようなものを目撃したという話もスマートフォンで調べたら出てきた。その人影のようなものは顔をダムの湖面に向けて手で欄干を叩いているようにも見えたという。これほど具体的な情報が上がっている以上あとは女性の霊が現れるかどうか、どうか俺達のYouTubeとニコニコ動画の再生回数が伸び悩んでいますので、この地に今もなお彷徨っている女性の幽霊が僕達の願いを叶えるような形でどうか現れてほしい。今はもうそれだけだよ。最近また俺たち以外にも人気のある心霊系のYouTuberが出てきているし、もうそろそろ俺達も心霊系の動画をしっかりと記録として残さないと、人気の低迷に拍車をかけるようなことになるよ。」と語ると、油井は「そうだな。でもこうしてゆっくりと語っているうちにだんだんと橋が目の前に現れたな。正確には上磯ダムの堰堤のようだね。何かこう、この地に訪れた心霊系YouTuberの動画を見ていると、俺達が今向いているダム湖を眺めることが出来る左側よりも右側の田んぼ側の手すりを背後から”何か”が叩きながら接近をしているようにも見えたね。あれは一体何だったのか、何を訴えたかったのか、今俺達が渡っている橋の欄干を叩いても(試しに欄干を叩いてみる)鈍い金属音しか出ないのでその奥にある金属製の欄干から本番開始ってところだな。」と話すと、村田は「さっき心霊系YouTuberがアップロードをしていた動画の話をしていたじゃん。その動画は俺も見たけど、今俺達がいる方向から逆のダム湖の堰堤を通ろうとした時に左側からの田んぼのある方向から欄干を叩くような音がするって内容だったじゃん。とも考えたら俺達はその人たちからすると逆方向から検証を行うことになるじゃん。つまりいったんあっちのほうまで行ってまた今いる地点にまで戻ってきたときに何かしらの異変が生じたらそれは、今いる俺達がいるところからというよりもあっちから来た人に対して何かしらのアクションを起こしているってことだと俺は思う。とりあえず、このダム湖の堤防あたりから気になったところをカメラで撮影してみたりしてゆっくりと検証を行うことにしよう。同時進行でInstagramで写真でもあげようか。」と話すと、油井は「わかった。一先ず気配を感じたところはInstagramでアップをしてみて、どんな反響があるのかも含め心霊検証を行おう。でも心霊検証って言っているあたりからもう明るい時間帯の肝試しじゃなくなってきたな。どっかの心霊ドキュメンタリーTVみたいなスタンスになろうとしているな。」と話すと、村田は「それでもいいんじゃね?だって饗庭さんの登場から方向性が変わったような気がするもん。それに明るい時間帯に行っても心霊現象のようなことが起きると分かれば肝試しの概念を覆すことにも繋がってより真夜中に出掛けて馬鹿騒ぎをする若者が少しでも減ったら俺達の行動が心霊スポットを抱える市町村にとってはこれほど俺達のような行動スタンスが世の中に浸透していけば有難いと思えることはないよ。だからこそ地道な活動をこれからもずっとずっと続けなければいけない。」と語った。
そして、二人の前に問題の鉄製の欄干が長く続くゾーンに入ったところで、村田は油井に「ここからが勝負の時。と言いたいが早速気になったものがあった。ダム湖のほうの堤防を見てほしい。これ何?」と言って人差し指で指し示すと、油井は指摘された方向を覗き込むと驚いた表情で「何これ。綺麗にダム湖に向かってスリッパが並んでおかれているじゃん。まさかと思いたいけど、入水自殺の痕跡!?いやこんな綺麗に残すかな。いやちょっと気味の悪いものを見てしまったよ。」と語ると、村田も油井が発見した謎のスリッパを確認すべく欄干の外から眺めると「自殺した?しかしこんなわざわざ綺麗にスリッパだけを遺したりするのかな。しかしどうしてこんなダム湖に向かって綺麗に並べているのかも不自然でならない。よし、これは俺達だけではわからないので、一先ずこの様子を写真で撮影したものを饗庭さんのLINEにメールで送信しよう。」と打診すると、油井は「そっ、そうだな。これは俺達ではどうしてこんなことが起きているのかの答えがはっきりいってわからない。専門家の意見に頼るしかない。」と理解を示し、村田は持っていたスマートフォンのカメラを起動するとすぐさまスリッパが置かれている様子の写真撮影を行い、星弥のLINEにメールで送信した後に星弥のメッセージの既読の表示がついたのを確認した後にLINE電話を行うことにした。
電話を掛けた村田は電話が繋がったと分かって安心したのか「ああ、よかった。すぐ電話に出てくれないと思って心配になった。今大丈夫?忙しい?」と聞き始めると星弥は「暇。びっくりするぐらい暇だから俺の隣に座る僧侶君、お家がねお寺をしていていずれ住職の後継ぎになる副住職の吉村晴樹と一緒に見てみるから、油井さんか村田さんかどっちか一人になったほうがこちらとしては有難い。一人になった状態で撮影を続行したほうがよりカンカン橋の真実に辿り着くことが出来る。」とお願いすると、それを聞いた村田は「え!?一人でカンカン橋をリポートせよってこと!?そんな!?昼間の明るい時間帯であっても写真見てくれた!?すんげぇ気味が悪いよ、そんなところに一人でカンカン橋を往復して通ってきなさいってちょっとやっぱそれは無理が。」と言ったとたん、隣にいた吉村が「こちらからもお願いしたいんです。こういう場所は一人で行動されたほうがより御霊が生者に対して接近しやすくなるチャンスです。投稿してくれた動画などを通して僕も饗庭さんもこれが心霊現象なのかやらせなのかはっきりと見極めたいので心細いと思いますが、村田さんどうか一人で渡ってきてもらえないでしょうか。」と丁寧な口調で説得を行うと、油井は村田の顔を見て「欄干を叩く者の正体が自殺者の幽霊なのかどうか、確認を行うためにも村田が一人で調査を行ったほうが良いだろう。俺は公園で皆が待つ車の中で待っている。何かあったら俺でも饗庭さんでも、必ず連絡して。」と言い残し、村田も「わかった。一人になって調査を行う。ライブ配信も行う。」と嫌々な表情を見せつつも引き受け、村田単独でのカンカン橋での撮影を行うことになった。
カンカン橋は時折車が通り過ぎるぐらいのものだったが、村田はダム湖のほうをかなり気にしながら歩き進んでゆくと「今のところ、噂にあるような不審な金属音は聞こえない。まあ気にせずあと少しで橋を渡り切るから今度は往路だな!」と言い切って向こう側へと安堵の表情を浮かべながら進んでゆくと、やっとの思いで橋を渡り切ると「何もなかった!さて今度は復路だ!」と強く言い切り道路を渡ると同時に今度は左側の欄干沿いに歩き始めた。
その間に吉村は星弥に「どうしてダム湖に向かって綺麗にスリッパだけが置かれていたんでしょうね。謎ですね。」と聞き出すと、星弥は「不法投棄ではない。それならもっと無造作に捨てれていてもおかしくない。これは意味がある。」と自分なりの見解を話すと吉村は「意味があるってどういうことですか?」と突っ込んだ質問をすると星弥は「恐らくだが、お供え物の可能性のほうが高い。仮にもしこのスリッパの持ち主が入水自殺を図った人ならばご遺体もこの近くで発見されていてもおかしくないし、このスリッパが故人が自殺を図る直前に履いていたものだと分かればすぐさま回収されてご遺族の元に返すなどをすると思う。なのでこの状態のまま残すなんてことは考えられない。御遺族の心情も考えると、死ぬ間際にまで履いていたスリッパをこんなわざわざ亡くなったと分かっているところに置いて行ったりするか。可能性としてあり得るとしたら、大事にしていたものだと分かって、故人が大切にしていたものをあえてお供え物として捧げたいって気持ちのほうが俺は強い気がする。お花が無いのが気になる点ではあるが、不法投棄でもないってことは間違いなく言える。」といって答えると、吉村は「それでも不法投棄の可能性は有り得ますよ。自殺した方の所有物と見せかけてこういうスリッパの置き方をした可能性も捨てきれませんよ。」とさらに疑問に思ったことをぶつけると、星弥は「それにしてはやり過ぎだろ。そこまでして故人の所有物だってアピールしたいのか、亡くなられた方の御遺族の心情も考えたら理解に苦しむ。何もここにこんな形で綺麗に置く理由もないじゃん。」と語った後に「さっきから右側の欄干のほうがやはり気になる。」と呟くような口調で語ると、吉村は「それは僕も感じました。何名か、多くはないですけど視線を感じますよね。だとすると、この村田さんがいる進行方向から見て左側がダム湖、右側が田んぼ側とも考えたら、田んぼに向かって身投げするとは考えにくいことです。しかし投稿された映像などを見ているとどうも左側ではなく、右側のほうから気配を感じるんですよね。左側にも村田さんの背後にちらっと気配を感じる、そんな程度でしたね。」と話すと、星弥はある可能性を示唆した。
「ここで身投げをする人間は、今ライブで見る限りでも村田さんが歩いている方向からダム湖に向かって入水自殺を図るパターンが多いように見受けられる。つまり村田さんと油井さんが通ってきたルートは自殺者が行動を起こしたのとは逆のパターンで接近をしているために、俺達のような有識者でなければ”いるな”ということがわかる程度でしかなかった。だからここから先、俺の推理が正しければ、最初に村田さんの背後を伺っていた御霊達が村田さんが復路に入ることでより接近が出来るチャンスとばかりに思ってラップ現象のようなことが起こり得る可能性がある。それが噂される左側の欄干を叩く音の”カーン、カーン”だよ。こんなことをする御霊の正体はもう答えが分かり切っている。自殺をした人が、自らの存在を主張したいがために、わざとダム湖とは逆側の左側の欄干を叩くことによって、一人になった孤独の寂しさを紛らわせているだけに過ぎない。これは自殺の名所でよく見かける手招きをするなどの誘発行為とは全く異なる、伝えたいこと、訴えたい思いがあって、わざと欄干を叩いているんだ。”ここにいる”ってことを証明したいに過ぎないだけなんだ。」
星弥が解説すると、吉村は「つまり自分の存在意義を主張したいがために欄干を叩いているってことなんですか。」と切り出すと、星弥は「ここは自殺の名所ともいえるほどのレベルではないが、ちょこちょこと出る程度のものじゃないかと推測される。あの映像を見る限りでも、大よそ20名か30名には達していないが、恐らくそうではなかろうかという御霊がいるのは確認が出来た。ひっそりとした場所をあえて選ぶ傾向にある自殺者のパターンとしては大体肝試しなどで夜中に騒がれたりされると、自分の落ち着ける場所がないということから怒りの感情を露わにするためにも欄干を叩いたりなどをして抵抗を示す傾向がある。だがここは違うと確信した。邪魔してほしくないというよりももっと介入をしてほしいというような、自分に注目してほしいという気持ちが強いから、生者に気付かせるためにわざとこんなことをしている。生前に色んなことがあって行き詰ってこんな最期になってしまったのだろうけども、本来なら相談できる窓口があればまた違っていたんだろうけども切羽詰まってそれどころじゃなかったのかもしれない。そんな方達が行きつく先がこういう場所ならば俺達が今目の当たりにしているのは、心の哀れな御霊達そのものなんだよ。話し相手が欲しかっただけなのかもしれない。」と話すと、吉村は「さすが除霊と御祓いに関しては九州でもトップクラスの霊能者が言うから説得力がありますね。」と星弥を褒めちぎりながら話すと星弥は「いやいやトップクラスでもそもそも俺は休止期間があたからまだまだ見習い程度に過ぎない。」と謙遜しつつも、星弥はライブ配信される明るい肝試しの動画の様子の変化を心配そうに見つめるのだった。
そして村田が少しずつカンカン橋での復路を歩き始めていくにつれ、段々と村田の歩くスピードが段々と落ちてくるとカメラ越しに感じたことを話し始める。
「こっちに向かうまで背後でじわりじわりと誰かがいるような、そんな気配がちらっとしていたのは見ていてわかった。だけどいざ振り返っても誰もおらず、ただただ気配がするというのがずっと続いていた。でも今こうして復路を歩いていくにつれ俺の背後で、往路とは明らかに違う乾いた金属音のカーンという音が聞こえてきた。ちょっと俺の持っているカメラで収録できたかどうかちょっと自信のないところではあるが明らかに俺の背後に誰もいないのに、不審な金属音が聞こえた。」
村田がそう話すと再び不審な金属音が村田の背後から聞こえ始めた。
”カーン、カーン”
村田は恐る恐る背後の様子を確認しながら、「弱みを見せつけてしまったら俺の負けだ。」と心の中で言い聞かせながら前へ前へと前進していく。村田の動きに合わせるかのように、聞こえ始めた謎の金属音が村田の付近にまで近づいてくると、カメラでも明らかに聞こえるレベルの者にまで音が大きくなってくると、村田が配信する動画の様子を見た杉沢村が予め渡していたトランシーバーを用いて村田に話かけてきた。
杉沢村が「村田!大丈夫か!」と心配になって質問をすると、村田は「大丈夫。俺は俺のままでいるよ。」と笑顔で答えると、その答えを聞いた斧落は「本当に大丈夫なの!?さっきからライブ配信の様子を見ているけど、鉄製の欄干の叩く音が本当に村田君がカメラを後ろにも向けているから後ろには誰もいないと分かっているのにそれでもなお、熊でも鹿でもない、かたや風による振動によって生じる金属音にしては村田君に近づくように段々と音が大きくなってくる。これはわたしたちの知識では解決できないことが起きている!いまライブ配信を見てくれている人からも次から”大丈夫なのか!?音が心配だ!!”とか”村田さんの身に危険が迫ってきている!悪霊の可能性があるから即刻撮影を中止するべきだ”なんて意見が次から次へと沢山投稿されているよ。我々もカンカン橋の噂が真実だったと分かればもうこれ以上真実の追求をするほどの事でもないと思うから、渡り終えたらすぐに車まで戻って来てほしい。村田君は一人で怖いと感じながらでも立派な仕事をやり遂げてくれた!有難う!」と村田を励ますように提案をしたところで、村田は「とんでもない。俺はこれが野生動物の仕業なのか、風によるものか、はっきりとさせたかった。でも風によるものにしては俺に近づくように段々と音が大きくなっていくのは不自然だ。かたや俺が着になって後ろを振り返っても何もない。つまりここには”何か”がいて俺に気付いてほしいとばかりのサインを送り続けているという事だろう。今きっと俺にカンカン橋を一人で歩けと指示をしてくれた饗庭さんに連絡がつくか。饗庭さんの意見を聞きたい。大丈夫取り憑かれていないからみんな安心してほしい。」と強い口調で言い切りカンカン橋での復路を渡り切ると、すぐさま星弥にLINE電話をし始めた。
村田が「あっ、もしもし。村田だけど、大丈夫?」と聞き始めると、星弥は「大丈夫。さっきの素晴らしい映像のおかげで俺の周りに沢山の警察官が囲んで村田さんが撮影した動画を皆興味津々になって見ているよ。欄干を叩く音が大きくなっているって皆ビビりまくっているよ。やばいよ、やばいよって。」と苦笑いをしながら話すと村田は思わず失笑して「警察の皆さんで僕がライブ配信を行った様子を見守ってくれていたんですね。」と語ると、星弥は「本題にうつろう。動画を通して俺が霊能者としての意見を言う。」と真剣な口調になって語り始めた。
「カンカン橋で彷徨う御霊の正体は恐らく自殺者によるものだろう。ただ往路も復路も見た限りでは村田さんの背後に現れた御霊は霊視をしないと確認が出来ぬレベルで往路の際の”ザザザ”と後ろのほうで堤防の草が動くような音がしたのもすごく気になったが実はあの時に村田さんをターゲットにしようと御霊達が村田さんの行動に対して注意深く察していた。そして村田さんが来た道を戻ろうとした際にチャンスだとばかりに思ってあの欄干を叩いて主張し始めたんだ。」
星弥の説明に村田は「どうしてそんなに欄干を叩いて主張する?俺には意味が分からない。どういうこと?」と困った表情になりながら話すと、星弥は「後ろにいるから気をつけろ。決して振り向いてはならない。どうやら勘づかれたようだ。」と言って答えると村田は「何だよ!”後ろを振り返ってはいけないから気を付けろ”って!何があるのか、その説明じゃわからないだろ!この目で見てやる!」といってバッと後ろを振り返ると、村田は思わず「あっ、あっ、あぁあああ。」と声を震わせながらカメラを向けるとそこには、村田の背後に誰もいないと思っていたはずなのに、セミロングヘアーの20代らしき黒いワンピース姿の女性がずぶ濡れの状態で立ち尽くす姿が村田には見えたのだった。
”ピチョン、ピチョン、ピチョン”
カメラにも拾えぬほどの小さな水滴を間近で聞いた村田は恐怖のあまりに思わず金縛りにあって立ち尽くしてしまうと、村田の異変にすぐ気が付いた星弥は電話越しに除霊のための御経を唱えた始めると、村田の前に現れた女性の霊は御経を読み上げて数分も経たないうちにスーッと砂埃のように消え去った。
女性の霊がいないと分かって安心したのか、村田が動けるのかどうかを確認S瑠ために右腕を動かそうとした時にスッと動いたのを見て安心したのか、村田は星弥に対して「除霊をしてくれたのか?」と質問すると、星弥は「勿論。実はここで見かける白くって上半身だけの御霊というのは間違いなく村田さんの前に現れたあの女性ではなかろうかと思われる。人目もつかぬようなこんな場所でひっそりと自死を選ぶ場合には自分の存在を一刻も早く見つけてほしくない理由がある。千葉で有名な金山ダムでもそう。借金取りに追われているからここにいることをわかってほしくないためだとか、或いは夜逃げだね。自殺した女性にもそれなりの事情があったのだろうが、だからこそ生前に出来なかった話し相手が欲しかったというのかな、自分の存在に少しでも気付いて察知してくれるような人の存在を求めていたのだろうと思われる。本来ならこういったひっそりとした場所で死を選らぬ場合、騒がれてほしくない一心であえて音を出すことによって、”そっとしてほしい”という意思表示をしてくるが、あの女性の御霊は違った。明らかに村田さんに対して近付こうとしてくるのは騒がれたことに対する抵抗ではない、気付いてほしいからアクションを起こしたんだ。俺は一応女性の御霊の除霊は行ったが、渡り切ったら最後に女性の御霊の追悼の意を捧げるためにも両手を合わせたほうがいい。そのほうが女性の御霊の心の傷を少しでも癒やすことになる。」とアドバイスを行うと、村田は「わかった。何から何までありがとう。両手を合わて現れた女性の御霊に追悼の意を捧げる。」と言って電話を切ると、村田は女性の御霊が立ち尽くしていた方向をじっと見つめると、両目を深く目を瞑ると同時に「南無阿弥陀仏」と呟いた後両手を合わせ拝んだ。
村田がライブ配信を終えて、駐車場にまで戻ってくるまでの間、村田はやはり本当に祓えたものか心配だったのか背後をちらっと霊視をしながら油井たちが待つ車のところにまで戻ってくると「金縛りにあったときはどうかと思ったが饗庭さんが異変に気付いて助けてくれた。本当に饗庭さんがいたからこのカンカン橋の正体に辿り着くことが出来た。今の俺は何も問題はない、普通にここまで自分の意思で戻って来れた。だから安心してほしい。憑依はされていない。」と笑いながら答えると、その様子を見た杉沢村が「それならよかった。今のうちにTikTokで予告動画のライブ配信をむっちゃんがリポート役で行おう。前もって説明したから忘れていないと思うが、明日3月17日の支笏湖(しこつこ:千歳市)、平和の滝(札幌市)、3月18日の神居古潭(かむいこたん:旭川市)までは明るい肝試しの少人数のメンバーでライブ配信は行うが、3月19日の常紋トンネル(北見市)、20日の鎖塚(北見市)は饗庭兄弟の星弥さんが同行して、21日の雄別炭鉱(釧路市)、最終22日の網走監獄(網走市)には弟の侑斗さんが帯同してくれる予定だからね。」と念を押して説明をすると、甲州は「わかっているよ。次の支笏湖のレポートをさっさと終わらせてまたおいしい北海道グルメをみんなで食べようよ~!」と言いながらTikTokのライブ配信を行った。
ライブ配信を終え、甲州が「ところで網走監獄って心霊じゃないよね?」と疑問に思ったことを呟くと、それを聞いた後藤が「網走監獄は一部心霊スポットだよ。何せ明治時代に囚人だからという理由で今の世の中で言う基本的人権が尊重されぬやり方でこき使われていたんだからね。真冬の寒さを凌ぐためのストーブがあってもマイナス10度の世界、なかには凍死する者が出てくるほどだから、幽霊として現れない理由などはないからね。」と語ると、甲州は思わず「それってやばいような気がする。」と声を震わせながら話すと、杉沢村が「見える人にとってはやばいってこと。」と言い切って一同は上磯ダムから次の目的地である千歳市へと車を走らせることにした。
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