杉沢村が車を運転しながら次の心霊スポットを行う場所を早速宣伝してほしいと斧落に指示し、斧落が「次に向かう場所は何所?埼玉って言っていたけど、結局何処に決まったの?」と聞き始めると、杉沢村が「結局、俺と油井と村田と後藤、秩父の四人で協議し合った結果、金毘羅橋と神流湖、そして下久保ダムに足を運んで明るい肝試しを行いたいと考えている。ライブ配信はいつもより早めの朝8時からオンエアをしたいと考えている。なのでビジネスホテルを少なくとも7時過ぎにはチェックアウトの準備をして、7時55分には金毘羅橋の前のところでライブ配信を行いたいと考えている。」と話すと、斧落が苦笑いをしながら「金毘羅橋に神流湖に下久保ダム、なかなか内容盛りだくさんだね。説明できるかな。これだけ回ると午前中だけで時間を取ってしまうからってことかな?」と質問すると、杉沢村が「まあ予定としては、12時には終わらせて次の秩父湖吊橋の付近から秩父湖を眺め更に大洞川吊り橋へと足を運び2026年現在の秩父湖の心霊スポットとしての現状を伝えたいということで14時からライブ配信を行う。ひょっとしたら渡れないとされている吊橋が工事関係者の出入りがかつてあった経緯も考えるとリニューアルされているかもしれない。そこは行って見ないと分からないけどね。」と話すと、それを聞いた甲州は「何でわざわざ秩父湖をチョイスしたの?吊橋のリニューアル工事がされているって保証もないじゃん。正丸峠に行くのだって選択肢の一つにあったじゃん。」と思わず質問すると、杉沢村は「本当に埼玉は行ける心霊スポットが無すぎるんだよ!次来た時に困らないように世界無名戦士の墓と正丸峠は残しておきたかったんだよ。」と話すと続けて油井が「条件としては同じ。ダム湖の周りをウロチョロするだけ。ただし秩父湖に関しては駐車場が二瀬ダムの近くにしかない上に心霊調査を行う上で今回は二手に分かれて行動をしたいと考えている。油井、畑、甲州、秩父の4人で秩父湖吊橋、村田、斧落、後藤、杉沢村の4人は大洞川吊り橋で肝試しを行ってほしい。ある程度張り付いて心霊調査を行ったうえで、吊橋が渡れるようなら吊橋にも渡ってもらって明るい時間帯での肝試しを行いたい。待ち合わせ場所は二瀬ダムで落ち合おう。」と話すと一同が埼玉で行う明るい肝試しの説明を受け理解を示したところで、早速TikTokでのライブ配信がスタートし、1月5日にライブ配信で肝試しを実施する心霊スポットの場所を斧落が報告した。
「皆さん!こんばんわ。斧落です。明るい肝試し、明日は朝早く8時からのライブ配信で行いたいと思います!あす1月5日、我々明るい肝試しで実施する2026年最初の明るい肝試しを行う連休最終の地は埼玉編です!1月2日に茨城編、1月3日に栃木編、1月4日に群馬編と行い、最終日の1月5日は埼玉で行います。朝8時からは埼玉と言っていいのか群馬と言っていいのか県境のため非常に際どいところですが、関東を代表する心霊スポットの一つと言っても過言ではない金毘羅橋から神流湖、そして下久保ダムの明るい時間帯での肝試しを行いたいと思います。いつもと違って朝が早いですけども、7位55分からライブ配信を見て頂けたら嬉しいです!埼玉編のご視聴もどうぞ宜しくお願いいたします!!」
斧落が言い切ると、隣にいた油井が「勿論ダムセイバーに成敗されないようにルールを守りながら明るい肝試しを行いますので安心してみてください!」と笑顔で手を振ったところでTikTokのライブ配信を終了させた。
終わったところで甲州が「ところでダムセイバーって何?」と油井に対して質問をすると、油井は「関東では誰もが知っている有名なスポットだからね。だから夜中に肝試しをして騒いだりする若者がいて問題視されているんだ。肝試しをして馬鹿騒ぎをするのならまだしも、中には廃墟へと入り込んでそこで盗みを働く者が出てきたという事もあって、治安を維持するためにもダムセイバーというのが出来たんだ。ダムセイバーの存在によって心霊スポットという風評被害に悩まされるのを防ぐ狙いもあるのだが、投稿された情報を見ている限りでは残念ながら神流湖は心霊スポットとして認めなければいけないだろう。特に金毘羅橋は自殺の名所であることは間違いない。いのちの電話の連絡先が群馬県側にも埼玉県側にもあるように投身自殺が多発しているのは間違いないからね。まあそれも行って見たらわかることだ。」と話すと、続けて村田が「大丈夫だ。ダムセイバーを刺激しないように、ルールを守りお行儀よく肝試しを行うから安心してほしい。それに今回の撮影の話だって心霊のことは全く伝えていないからね。心霊だと言ってしまえば事実無根の話をと言われかねない。一先ず電話で話したときに一番話しやすそうな人に小声で”すみません、心霊です”ってこっそりと言ったら、”迷惑にならない程度でお願いします”って言われた。それだけ。行政側にとってもこれ以上ルールを守らない若者が急増されては困るという背景があるのだろう。」と語ると、それを聞いた斧落は「何だか悲しい世の中ね。少しでもわたしたちのマナーを守って肝試しを行うというのが若い人たちにも伝わって模倣してくれる人が増えてくれたらいいんだけどね。」と言いながら、一同は藤岡市内にあるビジネスホテルにチェックインをすると、22時には就寝した。
夜が明け、2026年1月5日(月)の朝を迎えた。
朝6時には起床したのと同時に、油井が早速駐車場からの距離などを含め計算をしていると、隣で村田が神流湖に纏わる心霊話について持っていたノートパソコンでリサーチをしていた。
そして朝の7時過ぎに宿泊していたホテルをチェックアウトすると、最初に肝試しを行う金比羅橋へと向かうため、付近にあった駐車場に車を駐車させてから、車の中である程度の打ち合わせを済ませた後に40分過ぎには車から降りて徒歩10分の金毘羅橋へと向け歩き始めた。
スマートフォンの時計が7時55分になったのを確認したのと同時に、金比羅橋の入り口付近でYouTubeとニコニコ動画でのライブ配信をスタートさせた。
「朝早い中、皆さん明るい肝試しのライブ配信を見て頂きましてありがとうございます。リポーターを務める油井です!そして僕の隣には怪談蒐集家の村田がいます。では、村田にも自己紹介をいつものようにしてもらおうか。」
油井が案内すると、村田が元気よく挨拶をした。
「皆さん、朝早い中ご視聴していただきありがとうございます。怪談蒐集家の村田です。今回、我々が来ているのは、金比羅橋という群馬と埼玉にまたがる心霊スポットにやってきました。さっとね、明るい肝試しをマナーよくルールよく行ってね、ダムセイバーに怒られないように僕たち頑張って検証したいと思いますので宜しくお願いします。最後まで視聴していただいたらうれしいです!」
村田が笑いながら挨拶をすると、油井が「おいおい。俺達の敵は幽霊であってダムセイバーではないだろ。ダムセイバーを刺激させぬように今回は肝試しを実施しますので安心して下さい。ってかこう言っちゃえばさ、警察官よりも怖いダムセイバーみたいに見た人は皆感じ取っちゃうじゃん。やめようよ、ダムセイバーは下久保ダムの平和のために活動しているんだからね。さっきね、撮影するまでの段階だったので3台のカメラを用いて撮影はしたんだけど、右手にある茂みから何者かの気配を強く感じたのでちらっと覗いたら、誰もいないはずなのに足音がこちらのほうに近づくようなのがあって、とてもじゃないがここは今までの心霊スポットとは違って異質な感じがあるな。それだけに夜に訪れるとさらに雰囲気が変わるだろうな。」と話すと、斧落が油井と村田に「あったよ、いのちの電話の連絡先。これで自殺の名所であることは間違いない証拠になるよね。」と話すと、そこに記載されてある内容を読み上げた。
”埼玉いのちの電話 (連絡先番号) 神じい なっちゃん 神川町マスコットキャラクター 失われていい命なんてありません みんな大切です!!”
淡々と斧落が読み上げた内容に改めて一同が目を通したところで3台のカメラを用いていのちの電話の連絡先の写真撮影を実施したところで、慎重な足取りでゆっくりと金比羅橋を歩いていく。歩きながら村田がスマートフォンを片手に「不思議に思ったんだけどさ、Googleのマップでは金比羅橋と調べたら群馬県藤岡市って出てくるじゃん。心霊スポットだって群馬県の心霊スポットになるけど、でも神流湖と下久保ダムは埼玉県児玉郡神川町扱いになるんだよね。不思議だよね。どっちが大きく面積を所有しているのかって問題なんだろうけどさ、でも地図で県境を見る限りではどっちもどっちなんだよね。なので正確には群馬県と埼玉県の心霊スポットですってスパッと言っちゃえばすっきりするかもしれない。でも何で埼玉のいのちの電話があって、群馬サイドは何もないってのが不思議なんだよな。」と話すと、先を歩く油井が「それだけ埼玉県サイドからここにきて投身自殺を図る人が多いから、埼玉県が行政として動かなければいけなくなった事態にまで陥ったということでしょ。それならば、理解できると思うよ。んでさ、今回俺達は駐車場がある群馬県側から来ているけどさ、この欄干の自殺防止のためのネットを張り巡らされているあたりから察してもやはりここは出てくるのは間違いないよ。ところどころ、今俺がちょうど橋の中腹の部分に来ているんだけど真ん中だけ破られた跡があってしかもそこが補修されている部分が非常に生々しいんだよね。きっとこの大きさだとここに足をかけて飛び降りた可能性だって捨てきれない。やはりこういった策を講じても自殺者は後を絶たないってことだろうね。」と話したその瞬間だった。
”うん、うん、うん”
足場のない神流湖のほうから低い男の声が聞こえてきたので、村田が油井に「お前今さっき俺の発言を聞いて頷いたのか?」と質問すると、油井は「いや俺は何もしゃべっていない。ってか俺もさっきの頷き声を聞いて誰が喋っているんだろうなって思ってさ周りを気にしたけど、やっぱり後藤も杉沢村も秩父も畑も皆あの瞬間は喋っていないんだよ。でもあれは女性の声じゃないね。明らかに男の声だった。ちょっと霊がいるかだけでも霊視してみるよ。」と油井が切り出すと、その場で霊視を行った。
村田も何かを感じ取ったのか、畑に対して「いるよね。俺達の行動を上から見ていたり、この橋の欄干から覗き込んだりして俺達の行動を注意深く見ている”何か”がいるよね。それこそダムセイバーにさっきの男の頷き声のことも聞けば教えてくれるのだろうか。」と話すと畑は「ダムセイバーは”気のせいだ”としか言わないと思うけどね~。心霊に関しては懐疑的だしましてや肝試しを訪れる若者に対して戒める目的で結成されたというのもあるからね、俺達の写した映像を見て腰抜かすダムセイバーっていうのも見てみたいのはあるな。」と話すと、油井が「それじゃダムセイバーの正義って何のためってなるよ。そんなことで腰抜かされたら困るよ。」と話しながら前へと進んでゆく。油井が橋の出口の少し歩いた先にまで辿り着くと続けて村田が到着したところで後ろを歩く後藤と秩父に対して油井が「橋の出口のその先のほうまで辿り着いたけど、もうそろそろ駐車場のところまで戻って、下久保ダムの心霊検証を行おうか?」と切り出すとまたしても不審な声が聞こえてきた。
”あああ、ああああ!?”
その声が聞こえた瞬間、後藤は真っ先に湖のほうを見て油井と村田に対して「橋の下に女がいる。俺達のことを覗き込んで、注意深く俺達のことを見ている。さっきからここはきっと男だけに限らず女、老若男女問わずこの橋を最期に飛び降りたんだろうな。ネットが大きく破られた痕跡もあったことから見ても、ここは早めに退散したほうが良いと思う。それにさっきから俺たち以外の足音が俺の背後から段々と近付いてくるんだよな。これだけ俺達に聞こえる範囲内の異音がするんだから、マイクでも拾えているだろうし、これ以上霊達の怒りを買わないためにも早々と立ち去ったほうが良いだろう。何かあっては遅いからね。」と指摘すると、村田は「そのほうがよさそうだな。呻き声に、足音も確かにする、そして明らかにマイクで拾えているかどうかは分からないが”死ね”とか”出ていけ”とか、湖から声がしてくるんだよ。もう説明のしようがない。俺達は自殺者の霊達に囲まれている。餌食になるまでに下久保ダムへと向かおう。」と話したと同時に、後藤が身に着けていたパワーストーンのブレスレットが一瞬でちぎれてしまった。
言葉には言い尽くしがたい恐怖が撮影されてしまったことにより、杉沢村が撮影の続行を中止をするように呼び掛けたところで撮影は中断した。
そして一同は駐車場のある方向へと戻ろうとした時に、改めて埼玉から群馬へと向かう方向に対して子供が描いたような絵が展示されてあることと、埼玉県サイドと群馬県サイドにいのちの電話の連絡先が記載されてあることも考え、改めて一同は橋の中腹部分で亡くなられた方々へ手を合わせ追悼の意を捧げることにした。
駐車場にまで戻ってくるとやはり何かあっては不安と感じた杉沢村がスマートフォンを片手に御祓いの方法を見ながら実施し終えたところで、下久保ダムのある方向へと移動することにした。
車を運転しながら油井が「さすが自殺の名所。後藤が勝負運をつけたいと身に着けていたパワーストーンのブレスレットが一瞬でちぎれてしまった。もうあんなもん拾い集めていたらそのうちダムセイバーに見つかって”何しているんですか”と言われかねんので、バラバラに落ちてしまったパワーストーンの回収は不可能と判断して次の下久保ダムへってのもなあ、せめて見ている人が後藤のパワーストーンのブレスレットがちぎれましたってだけでもゾッとなって欲しい。因みにあれは御祓い用とかそうじゃないからね。」と話すと、それを聞いた後藤は「それをどうしてカメラの前で説明しない?ってか御祓い用のブレスレットをしているって思われちゃうじゃん。」と話すと油井は「まあまあそこは見ている皆さんの創造にお任せしたいなと思ってね。あえてあそこでは言わなかった。だって勝負運を上げるためとかってカミングアウトされたら嫌じゃないの?」と聞き始めると、後藤は苦笑いをしながら「いや別に恥ずかしい事でも何でもないから。ただ商売人としてね、勝負運をよりあげたいって誰もが思う事じゃん。」と話すと、油井が「あと少しで駐車場に到着だ。到着したらまずダム工事に携わって命を落とした方の慰霊碑があるから先ず手を合わせお亡くなりになられた方に追悼の意を捧げてから堰堤へと歩いていこう。」と話すと、甲州が「金比羅橋は自殺の名所だって言わなくても分かった。ところどころお供えのためのお花やお酒などが置かれていたり、埼玉のいのちの電話の連絡先があったりと、出てくるのはやはり自殺者の霊だったね。あれはきっと撮影されていることに不快感を示しているようにも感じ取れた。苦しみながら死んでゆく様子を誰にも知られたくないっていうのかな、そっとしてほしい、そんな霊達の心境を垣間見ることが出来た。」と自分なりの解釈を話すと、斧落が「慰霊碑があるってことは、つまりダム工事関係者の霊が出てくるってこと?」と油井に対して聞き始めると、村田が答えた。
「神流湖には下久保ダム建設の際に約310世帯と墓地が移転を余儀なくされた背景もあって、これだけの大規模の集落が湖の底に沈んでいるからこそ墓で眠っている霊が出てくるとか、そういった声があるね。同時に斧落が言っていた作業員らしき男の霊を目撃したとかね。あとは白い影が浮かぶと消えるとかね。仮にもし墓の正式な移転の手続きっていうのか宗教的な儀式が家族の手によって行っていないってのはありえないしましてや墓が今もなお存在しているなんてことはよほど無縁仏であったとしても考えにくいんだよね。だからやっぱりこれだけの大規模のダムを造ったからこそ多くの方々が移転を余儀なくされた背景が心霊スポットとしての噂の要因の一つになったのだろうと考えているんだよね。どう考えても理解を示さなかったら、ダム建設の話なんて進まないと思うよ。大反対しても、そこは建設会社が移転費用を賄うなどして保証するべき部分は保証するだろうし、お墓だってその時に正式な手続きを行ってから移転をしているはずだから、俺達は殉職された8人の作業員の霊が出るか否かを検証する。これでダムセイバーの逆鱗に触れることはないと思う。気になることがもしあれば聞いてほしい。」と話し終えたところで、杉沢村は「特に異論はないね。言っている通りだと思うよ。だから後は自殺や事故などにより水死体が数え切れぬほど上がっている背景も考えて、亡くなられた霊達が彷徨っているのか、その可能性も含め検証をする必要がある。」と切り出したところで、無料駐車場に車を駐車させてからすぐ近くにあった慰霊碑に一同が並んで立つと深々と頭を下げて両手を合わせた。
下久保ダムの堰堤に辿り着いたときに改めて油井が村田に「ここに辿り着くまでに心霊スポットの検索サイトでは北側の下久保トンネルで兵隊の霊が出るともあったけど俺達普通に通り過ぎてきたけど何の気配も感じなかったな。」と話すと、村田は「あれは噂に過ぎない。それにググっても忠霊塔(旧日本軍戦没者顕彰記念塔)としか出てこない。恐らくだが旧日本軍とあるわけなんだし、戦時中の群馬県から出征した兵の方々を弔うためのものなんじゃないのかな。生首が飛んでくるなんてことはありえない。」と答えると、油井が「そんなに兵隊の霊がみたけりゃ、八甲田山か田原坂に行きたまえ。100%推奨する。」とカメラを前に堂々と宣言したら、村田が「いやいやいや。そんなことを言ってしまえば青森県民、熊本県民を敵に回すよ。」と話すと油井が「後藤、今の話聞いたよな。後藤お前は後藤房之助の名前を拝借しているのだから雪中行軍を実施していた1月23日に合わせてお前は雪中慰霊で後藤伍長の像の前で陸軍方式の挨拶で”大変失礼しました”と言って詫びてこい、村田お前は美少年の像のモデルになった薩軍の戦士だった村田岩熊の名前をお借りしているから、3月4日から20日まで繰り広げられた田原坂で慰霊登坂をして美少年の像の前で”美少年じゃないのに名前を拝借してすみませんでした”って謝りに行ってこい。よし決めた。監督もそれありだと思わないか?」と話すと、杉沢村は笑いながら「それをどうせするんだったら皆で検証したほうが良いと思うけどな。」と村田と後藤の表情を見ながら話すと、後藤のほうを見てどうだ?というような表情でじっと見ると、後藤は「仰る通りで名前を使わせてもらっている以上、慰霊の雪中行軍をしなければいけないのは分かっている。」と話すと、続いて村田も「慰霊登坂しなければいけないのはわかっている。」と返事をしたところで、杉沢村が「よし、今後の行き先が決まったな。そのためにもまずは移動費用をしっかりと視聴料で稼がないと東京から青森にしても熊本にしても結構な交通費が掛かってくるからね。予算を集めてからの話になるよ」と結論を出した。そのときに、油井が堰堤の真ん中あたりで立ち止まり、改めて堰堤から眺める景色を眺めてみることにした。
「明るい時間帯だから心霊現象と言えるものなのかどうかは断言しがたいが、カツンとかキュンとか乾いた金属音のような音がするんだよね。ダムが稼働している音ならば水の音がして当然ではあるが誰かしら叩かない限り、あんな不審な音はしてこないしやはり作業員の霊が出ると言われる所以はここにあるのかもしれない。」
油井が語ると、後ろを歩く後藤が「さっき、俺も何だろ変な金属音がしてきたから思わず霊視をしたんだけど、音が聞こえた方向から作業着姿の青白い顔の男が通り過ぎていった。あまりにも表情に血の気がなく青白いから気になって振り返ったけど、誰もいなかった。慰霊碑があるからきちんとお亡くなりになられた方々を弔っているわけだしそのためにもダムセイバーの存在があるとも考えると、やはりまだ最期の地であるここに未練があるのかもしれない。」と話すと、油井は「仕事中に急になくなったと考えたらそりゃあ誰だって”俺死んだ?”ってなるだろ。唐突過ぎて受け入れられない死というのもあって当然だ。」と語ったところで、下久保ダムでの肝試しをさっと切り上げて無料駐車場へと戻ったところでライブ配信を終了した。
「さて次の秩父湖、怖いものと出会えたらいいな。」
油井がそう語ると、杉沢村が思いもしない言葉を口にした。
「因みに二瀬ダムにもダムセイバーはいるよ。」
その言葉を聞いた瞬間、油井は思わず「またダムセイバーとの戦いかよ!もうみんないい加減ルールとマナーを守って肝試しをしてくれよ!真面目に肝試しをしているのに疑われたら俺達だって迷惑なんだよ。」と大きな声で愚痴をこぼすのだった。
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