東沢大橋を後にした星弥と烏藤、そして明るい肝試しのメンバーの一同は御祓いを終えてから出発するまでに駐車場で次に向かう心霊スポットの軽い打ち合わせをしてから次に向かう場所へと移動することにした。
「今時計は12時を過ぎたところだから、ここから一般道使ったとしても1時間40分ほどの距離にあるから14時からのライブ配信に間に合うことが出来る。でもその前にむっちゃんに次に向かう心霊スポットの宣伝をTikTokでしてもらおうか。(持っていたタブレットを片手に)ライブ配信したばかりの東沢大橋の視聴回数が凄いことになっている。ニコニコ動画でもYouTubeでも最新のトレンド動画入りを果たすほどの再生回数だ!凄い!さすが饗庭兄弟だ!!これで広告料でしっかり稼げるぞ!」
杉沢村が甲州に対してお願いをすると、甲州は笑いながら杉沢村のほうを見て「独り言が大きいね。次の心霊スポットはわたしたちのライブ配信で絶対間違いなく再生回数だけでも凄いことになると思うよ。TikTokの宣伝?勿論OKだよ!」と軽い口調で返事をした後に、すぐTikTokで次の心霊スポットの予告のライブ配信を始めた。
「明るい肝試しをご覧の皆さん!こんにちは!甲州です!成人式三連休の初日はスペシャルゲストで凄腕ボランティア能力者としても知られている饗庭星弥さん、そして烏藤隆成さんに来てもらい、東沢大橋で噂される白いワンピース姿の若い女性の幽霊の除霊をして貰いました。わたしたちも除霊の現場を目の当たりにして、あんな感じで行われるのだなというのを改めて学習したと同時に、わたしたちの目の前に現れたあの若い女性がどうか心から安らかに眠って欲しいことを願うばかりです。さて次は山梨県最恐、いや関東地方では屈指の最恐心霊スポットと言っても過言ではない青木ヶ原の樹海へ行って明るい肝試しを行いたいと思います。14時からライブで検証したいと思います。また13時55分からライブの様子を伺えることが出来る状態になっていますので、引き続き青木ヶ原樹海の明るい肝試しを見て下さったら嬉しいです。また東沢大橋でも話していたことですが、饗庭さん、烏藤さん、樹海にも同行していただけます。東沢大橋では明日までと仰ってましたが、新潟での心霊ロケの打ち合わせが夕方の17時からという事なので12日も我々の明るい肝試し千葉編の午前の部だけ霊能者として同行していただけるということになりました。なので12日の午前中まで引き続き、饗庭さんと烏藤さんには霊能者として我々と行動を共にしていただき、霊能者としての助言並びに適切なアドバイスをして頂ける予定になりました。明日もそして明後日も引き続き皆さんにライブ配信を見てもらえたら嬉しいですので、またどうぞ三連休の時間つぶしでも構いませんので宜しくお願いします。」
甲州がTikTokでの配信を終えた後、じっくりと頷きながらライブ配信の様子を見守った杉沢村の携帯に星弥からかかってきた電話を取り始めた。「はい。もしもし杉沢村ですけど。どうした?え?スタッフが次々と体調不良で心霊ロケどころではなくなったので延期になった?新潟の心霊ロケが延期っになったってことは最終日までずっと帯同してくれるってこと?」と杉沢村が思わず聞くと、星弥は「そうだ。それこそ霊能者である俺達が御祓いをしなければいけないんだけど、体調不良の原因は聞けばこの時期流行りのノロウィルスらしくってね、心霊とは全く関係のない事なので、スタッフの体調が戻り次第になって話は結局時期の延期という形になった。ぶっちゃけた話俺だって12日のうちに佐賀に帰らないといけないし、烏藤だって異動したばかりの帯広駐屯地に戻らなければいけない。俺も烏藤も13日は仕事だよ。俺は病院で右手が動かせるようになるためのリハビリを受けながら片手だけでもできる仕事をやっているんだけどね。ほぼ事務員なんだけどね。」と笑いながら話すと、予想だにしなかった展開だけに後藤が「本当に最後まで一緒について来てくれるのなら有難い!助かる!」と大きな声で返事をすると、星弥は笑いながら「ハハハ。でも青木ヶ原の樹海で除霊ははっきり言って無理!お亡くなりになられた方が多すぎるから、一先ずはどんな状態に今あるのかを霊視した結果を皆さんにも伝えたいと思う。」と話すと、後藤はその言葉を聞いただけでも「嬉しい。最後の最後まで一緒についていただけると考えただけでも、いや饗庭さんの懐の大きさにただただ感謝するしかない。」と震える声で話すとそれを聞いた秩父が「何お前、饗庭さんと烏藤さんに出会うまでは悪口ばっかり言っていたのに会って喋り出したら急に態度がコロって変わってしまっているじゃん。お前だって浄化されてしまったのかよ!?」と聞くと、畑は「後藤の気持ちも分かる。饗庭さんや烏藤さんは他の霊能者とは違う。優しさと思いやりで包み込んで心の傷を癒してくれる。一緒にいるだけでも、霊じゃないけど何だか俺達の悩んでいた事とかそういったことが思いっきり忘れてくれるような感じが凄くあるね。饗庭さんなんて警察官って言わなきゃ誰も警察官って思わないよ。ってかあんなユーモアもあって知識もあってニコニコ笑顔で太陽のように明るい人なんて警察官勿体ない!烏藤さんもハーフの饗庭さんと負けず劣らずとも優しい顔立ちのイケメンでブサイクじゃないんだよね~。だから本当にどっちもどっちで痺れるほどカッコいいんだよね。」と話すと、三人のやり取りを聞いて居た杉沢村が「確かにね。言っていることも分かる。同じ男同士であってもあれはかっこよすぎて惚れてしまうね、態度が軟化するのも理解できるよ。」と後藤の話に同情すると後藤が「見た目はどうであれ二人が行っていることは俺達にはまねできない。俺達に出来ることは霊視すること、それぐらいだ。霊の正体までは突き止めることはできないからね。」と話すと、一同が乗っていた車は富岳風穴駐車場へと到着するとそこから徒歩で青木ヶ原の樹海へ入るための遊歩道を歩いて進んでいくうちに、青木ヶ原樹海と書かれた看板のところに辿り着くとYouTubeとニコニコ動画での同時ライブ配信を撮影し始めた。
「明るい肝試しをご覧の皆さん!青木ヶ原樹海での明るい肝試しにも引き続き饗庭さんと烏藤さんの霊能者についていただくことになりましたので、では饗庭さん、烏藤さん、カメラの前に来て頂いて挨拶していただけませんか?」
油井が星弥と烏藤を案内すると、右端にいた村田が「さあ、どうぞ。どうぞカメラの前に立ってください。」と優しく誘導すると、星弥が「どうも。」と言った後に烏藤が「ありがとう。」と一言お礼を伝えてから、星弥が青木ヶ原樹海での思い出も振り返りながら話し始める。
「青木ヶ原樹海は霊能者としては今回で2回目になる。初めて訪れたときは僕が警官学校に通っていた時のことで、関東ローカルの心霊ロケの番組で霊能者として同行してほしいってのがあって一緒についていったのがあったんですけど、その際に道に迷わぬためにカラーテープなどを持参した状態で立入禁止ゾーンに足を運んだんですけど、まあ有名なところなので霊が見える僕が言わなくとも皆さん分かって頂けるかと思いますが、恐らくこれから自殺を図ろうとした方々の生活感が、ゴミを捨てられた痕跡とか、中には首を吊って自殺を図ろうとして頓挫したのか枝にロープが括り付けられたままの状態もありました。自殺をすることを諦めてその方達が今も生きてくれたらと今でも思うことがあるのですが、歩いていくにつれ木影からちらっと40代ぐらいの、見た目としてはバリバリのサラリーマンといった感じでしたが、表情はとても思い詰めており、それ以外にもこのゾーンに立ち入ったと同時に今の今まで僕が心霊スポットに足を運んできた中でも樹海は群を抜いて彷徨う御霊の数が、先程僕達が行ってきた東沢橋よりも圧倒的に多くそのために霊能者も”きつい”と感じる場所の一つでもあります。余談はさておき、僕はサラリーマンの男性のことが気になり、男性が動いた方向へと僕達も道を迷わぬように道しるべとなるものを道に落としながら男性に近づこうと接近したのですが、深みに入れば入るほど、本当に道に迷ってしまったんじゃないかと思うほど不安になりましたが、そんなときに再び木陰の裏で男性が僕達を見て”こっち、こっち”と合図をして下さったので、さらに近付いて男性が合図をしてくれたところへと辿ってみた結果下ったところに黄色いテントがありました。僕は恐る恐るテントの中を”失礼します”といって入ると、僕が見た男性がそこで眠るように息絶えていました。恐らく服毒自殺だと思います。御遺体の近くに劇物が入っているだろう薬の瓶が散らばっているのを見てゾッとしたのを今でも思い出します。その時点でもう撮影の続行が不可能と判断されて中止され映像はお蔵入りになったのですが、今もピーク程自殺者の数は年々減っては来ていますが、今も心に迷いや悩みを抱えた者が足を運んでしまうと樹海の闇に埋もれてしまうのかもしれません。」
星弥が樹海での思い出話を語ると、明るい肝試しのメンバーは何も言う言葉が出てこず、空気を打開するためにも烏藤が「まあ、樹海というのは今僕達がこうして立っている場所だけでも、ぶっちゃけた話霊視してここに彷徨っている霊達を数えろと言われたら数え切れません。除霊とか供養ははっきり言って僕達のような霊能者で数多もの御霊達の心の傷に寄り添いケアを行うことは僕達では対処できません。僕達がこうしてリポートをしているだけでも御霊達が僕達のような霊的エネルギーが強い人間の存在に気付いて、この地でお亡くなりになられたであろう御霊達が徐々に集まりだしてきていますね。なので、皆さんが見たいだろう心霊現象らしきものを確認したところでさっとこの地を後にしたいと思います。そのほうがいいでしょう。」と油井に対して語り掛けると、油井は烏藤に「そうだな。実際に遺体なんて見つけたらライブどころじゃなくなるからね。本当に笑い事ではない、洒落にならないほどの霊達が俺達の動きを注意深く見ているのは見て察したし、長居してまで調査をするべき場所ではないだろう。」と理解を示したところで、斧落が「まずいのちの電話に記載されてあることを読んでみようか?ここだって心霊写真が撮れそうじゃん。あとさ、わたしてきに立入禁止のゾーンも少し立ち入っただけにしておいて道に迷わぬように散策をしたら17時までに終わらせることも出来るはずだしね。」と提案すると、村田は「そのつもりだ。ここは霊感の強い人にとっては居心地のいい場所ではない。」と話すと斧落は理解を示してから、斧落が看板に書かれた内容を読み上げた。
”命は親から頂いた大切なもの
もう一度静かに両親や兄弟、
子供のことを考えてみましょう。
一人で悩まずまず相談してください。
富士吉田警察署 自殺防止連絡会”
斧落が読み上げた内容に思わず甲州が星弥に「警察が声かけるって、普通に考えたら金比羅橋やはねたき橋のように県や市といった行政が対策に動くけど、警察が動いたりするなんて珍しいパターンだよね。」と聞くと、星弥が「それだけ”遺体を発見しました”という通報が多いってこと。ここはボランティアによる自殺を防止するための呼びかけの行動も行われているから、そういった方達が見つけて通報することもある。一年に一度警察と消防で協力し合って400人が集まって樹海で一斉に自殺者の遺体の一斉捜索を行ったときもあったと聞いたことがある。遊歩道からさほど離れてはいない場所で捜索は行ったが、多い時で100名以上の御遺体を見つけた時があると言われている。それ以外にも樹海で道に迷い通報はしたもののその通報しただろう人物は二度と見つけられることはなかったという話があるように、同じような光景が繰り返されて方向感覚そのものがマヒしてしまうような場所では自殺することが目的じゃなくとも迷子になってしまう。果たしてそれが不本意な形で命を落としたかどうかとなると、多くの方はきっと”連絡手段はなかったのか”となるだろうが、冷静に考えることが出来ないほどの状況ならば、迷い込んだ末に追い詰められ絶命してしまうのかもしれない。」と話すと、甲州は続けて星弥に対して「心霊スポットの検索サイトには霊感の強い人が足を運ぶと数分で霊が集まる、あっ今がそうだったね。歩いているときに金縛りにあったり、帰宅後に体中に手跡がついていたなどの噂もあったりするけど、自殺じゃない死に方の場合なら今でも”SOS”を叫んでいるのかな。だからこういった噂もあるの?」と聞くと、それを聞いた烏藤は「噂は噂でしかない。霊的エネルギーの強い人間は御霊からすると眩い光に見える、それだけで救世主的な存在がやってきたと解釈して集まりだすんだ。金縛りや手跡がつくなんて話は何も、ここだけに限った話じゃない。」と答えると、後藤が「これ以上ここで長居していては先に進まないからさっと遊歩道を歩いて、立入禁止ゾーンを見つけてちょこっと足を少し運んだだけで写真を撮り終えたら、駐車場まで戻ってこようぜ。動かないから段々と霊達が集まってきているじゃないか。」と指南すると、星弥は「そうだな。そろそろ動いて、俺が以前訪れた立入禁止ゾーンに行って見ようか。」と切り出すと、星弥を先頭に烏藤、油井、村田、斧落、甲州の順に歩いてゆく。
道に迷わぬように予め烏藤が用意しておいた赤く色を塗ったカラーストーンを落としながら、奥へ奥へと進んでゆく。
その様子を見た村田が「用意周到だな。」と感心すると、烏藤が「これがないとね。同じような光景が本当に繰り返し続いていくから、いざとなると帰り道が分からなくなってしまう。そうならないためにも、道しるべとしてカラーストーンを落としながらのほうが、テープだとどうしても限界があるけど、石だとこの地に生息する動物たちに食べられる心配はないからね。」と説明すると、油井は「さすがだな。俺達はそこまで考えてもいなかった。」と感心しながら話すと、星弥は「いやいや。そういったものは前もって準備すべきだろ。俺も一応登山用のテープは持ってきた。」と話すと、油井は「俺達は心霊リサーチは準備万端だけど、細かな装備だけは準備万端ではないからね。」と釈明すると、烏藤は「本当にメンバーの安全を考慮するのなら、前もって危険性を熟知したうえで肝試しをしないと、俺達は心霊になるためにここに来たんじゃないからね。そこはしっかりとした計画がないといけないと思うよ。」と呆れた感じの口調で語ると、後ろでやり取りを聞いて居た杉沢村は「そうだな。これからは気を付けたい。」といって返事をすると、星弥の足が立ち止まった。
「皆さん、お待ちかねの立入禁止ゾーンだ。ここから先、落とした石だけでは心細いだろうから両手が使えない俺の代わりに烏藤にテープを張ってもらいながら、さらに用意してもらった石を再び道しるべに探索をしたいと思っているので、出来る限り進んでいって、霊能者の俺達が”これ以上の調査は危険”と感じたら肝試しの続行を注視して帰路につくことにしよう。ここから先は”団地”と警察の間で言われるように、自殺者の遺体が多く見つかるエリアでもある。歩いているうちに悪寒に襲われる、肩が重いなどの霊障による症状が出たらすぐにでも俺か烏藤に報告をしてくれ。すぐその場で御祓いを行う。その時点でライブ配信の続行は中止だ。御祓いの現場を見た人間もその後霊障に悩まされる危険性が高い。」
星弥がある程度霊能者としての説明を行ったところで、杉沢村は「わかった。それでも心霊写真がより撮れるのならば、進まない理由は存在しない。」と納得を示したところで、一同は立入禁止と書かれた看板が掲げられたロープの中を潜り抜けてゆく。
目印を烏藤がつけながら歩き進んでゆくと、星弥が事前に話していた自殺者が命絶つまでに食べていたであろうゴミから、最近までここに生活をしていたんだと思われる生活臭を改めて触れたことに斧落は「命絶つまでここで過ごし、決心を決めてから命を絶ったのかな。だとしたらとても寂しい最期だね。」と思ったことを語り始めると星弥は「見つかった御遺体の全てが自殺者ってわけではない。自殺者は人目につくような場所をあえて選んでお亡くなりになられている傾向が多いから、見つからない場所をあえて選んでいるわけではない。ふと足を運び、嫌になって、”もう帰りたくない”と決心してこの地で絶命した。そんな傾向が多いから、ひっそりと死にたいことを目的としているわけではない。樹海ならではの、蒸気穴というのがあって、それに落ちてしまうとSOSを求めても誰にもその声は届かずに餓死して誰の目にも届かず髑髏になってしまう。そのパターンも多く報告されているから、今もなお”助けて、助けて”と御霊達が現れるのでは?という怪談話にも繋がっているのかもしれない。」と話すと、その瞬間に男の呻き声のような声が聞こえ始めた。
”ううう、ううう、ううう”
その声が聞こえた瞬間に、烏藤が「生者ではない。自殺者の霊だ。あっちのほうから聞こえてきたから(声が聞こえた方向を人差し指で指示しながら)カメラを向けて映像を撮ったり、カメラの写真撮影を行ってほしい。それ以外にも俺の後ろから女の叫び声のような声が聞こえてくる。”いやあ”とか”きゃあ”とか。俺が聞こえた声の方向にも映像と写真撮影してほしい。これ以上進むのは危険だろう。益々道が分からなくなり、日が暮れてしまう危険性すらある。太陽の日差しがあるうちに道しるべを頼りに戻ろう。」と話すと、杉沢村は「わかった、そうするよ。皆特に急に寒気がするとか、肩が急に重くなったとか、誰かが後ろに張り付いているような感覚があるといった異変はないな?」と確認のために一同に対して聞き始めると、秩父が「さっきからマイクにノイズが入り始めて音声がおかしくなったんだけどその都度器具を新品に取り替えたりしてみたんだけど、直らなくって。多分ライブ中継を見ている人は音声がおかしいと感じ始めているかもしれない。」と機械の不調を報告すると続けて畑が「俺も。さっきからカメラの電池の残量がやばくなってきている。入れば入るほど電池の消耗が早くなっていってその都度交換している。」と説明すると、その報告を聞いた後藤も「俺も。同じようなことが起きている。」と話すと、星弥は「電気器具の不調は霊障があらわれている何よりの証拠だ。取り憑かれぬためにもここは、冷静になって考えこの場を後にしたほうが良いだろう。」と語ると、烏藤も「これ以上は危険だ。お亡くなりになられた方々に追悼の意を捧げてからこの場を後にしよう。」と打診して一同が理解を示したところで、星弥と烏藤、明るい肝試しのメンバーが並んで立つと深々と頭を下げてから両手を合わせ追悼の意を捧げた。
遊歩道へと戻る道を歩いていくうちに、後藤が星弥に「さっきからすんごく綺麗なセミロングの女性がいて、ちらっとこっちを見てきているのが気になった。いや~何もこんなところで自殺しなくともって思っちゃったよ。」と話すと、星弥は「あまり自殺した霊を見続けないほうが良い。自分の死に同情してくれる人がいると思うと、それだけで憑いて来てしまう。」と話すと村田は「1995年の夏の話をお前知らないのか?有名な怪談話だぞ。」と後藤に対して語り掛けると、その怪談話をし始めた。
『1995年の夏に大学生3人が遊歩道を使わずに樹海を横断しようと計画していた。彼らは知り合いに”もし俺達が4日経っても連絡がない場合は警察に通報してほしい”と頼んでから樹海の地へと足を運んだ。訪れてから4日経って彼らは帰ってくることはなかった。通報を受けた警察は捜索を開始し、2日後に3人のうちの1人が生存した状態で発見されたが、決して無事とは言い切れるようなものではなかった。裸で木に抱きついている状態だったからだ。警察の呼びかけに気付くこともなくひたすら腰を振り続けていたという。その顔はうつろで口から涎が垂れていたという。後日正気に戻った彼から話を伺うと”長髪の美人の女性に会い、その女性と共に過ごしていた”という。暫くしてもう一人が草の上で寝ているところを発見され、その彼も”長髪の美人の女性と共に行動をしていた”という。残る一人は木の枝にロープを括り付けて首を吊った状態で死んでいた。生き残った二人は普段の生活に戻ることは出来たが、やがてノイローゼになり入退院を繰り返しするようになっていくと、彼らは時々誰もいない方向へと向かって”なっちゃん、来てくれたの?”と嬉しそうに話しかけ1人で喋りつづけている。』
村田が話し終えた後に、後藤に対して『怪談話に出た”なっちゃん”の危険性がある。今は禍なくとも御祓いを受けなければいけないと思うよ。』と話すと、後藤は「えっ!?嘘!?だってちらっと見た程度でじっとは見ていないよ。綺麗だなあって思った。それだけだよ!」と説明すると、烏藤は「女性の霊は、後藤君が見た霊だけに限らない。老若男女問わず、ここには数多もの御霊達が彷徨っている。もしそれが怪談話に出てきた女性の御霊ならば相当強い負のパワーを持っていることになる。それは霊感をあまり感じない人間であったとしても目に見えてしまうレベルだ。非常に危険で関わらないほうが良いと言ってもいいが、果たしてその霊になるのかとなると今の時点では断言できない。でも、見た事は忘れてそうっとしておいたほうがいい。」とアドバイスをすると後藤は「わかった。一先ず女性の霊を確認することが出来たところを写真撮ってもらうよ。」と返事した後に女性が立っていた位置に写真を撮って、一同は樹海を後にすることにした。
駐車場まで戻り、星弥と烏藤の御祓いを受け、改めて樹海の恐ろしさを肌身で感じた明るい肝試しのメンバーは星弥と烏藤に「本当についてきてもらって助かった。本当にありがたかった。これからも一緒に行動してくれるだけでも、言葉では言い尽くしがたい。感謝しかない。本当にありがとう、ありがとう。」と杉沢村が改めて御礼を伝えると星弥は「とんでもない。霊能者として来ている以上、本来なら除霊をしなければいけないが、ここばかりは俺達の手には負えない。申し訳ないね。こんなことでも満足してもらえたら俺も烏藤も嬉しい。」と素直な意見を述べたところで、明くる日の神奈川県で行う明るい肝試しを行うために、神奈川県へと向け出発した。
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