【完結】慰霊の旅路~試練編~

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秩父湖吊橋~秩父湖~大洞川吊り橋(特別編)

公開日時: 2022年2月7日(月) 07:33
文字数:9,133

下久保ダムを後にした”明るい肝試し”の一同は次の検証地である秩父湖での明るい肝試しを実行すべく、唯一の駐車場である秩父湖駐車場を目指して向かっていた。移動中の車内で甲州が次に向かう心霊スポットの予告をTikTokで生配信を行い始めた。


「皆さん、こんにちは!甲州です!次回の明るい肝試しを行う検証地ですが、あの有名な怪談家が心霊ビデオ撮影時のロケ地としても使用した、秩父湖にかかる吊り橋でございます。今回いけるかどうかは分かりませんけども、工事関係者の車が頻繁に出入りしていたという情報だけですが、秩父湖の吊り橋と大洞川の吊り橋を同時に生配信で肝試しを行うという、明るい肝試し史上初の試みを今回は行いたいと思います。ライブ配信の時間については14時からYouTubeとニコニコ動画で行いたいと思っていますので、13時55分からは両吊り橋の状況が同時にしかもライブで閲覧できるようになっていますので、皆さんの視聴を心よりお待ちしております。」


甲州がにこやかな笑顔で宣伝し終えたところで、油井が「よかったよ!今の宣伝。秩父湖吊橋と大洞川吊り橋の同時ライブ配信で果たしてどれだけの人が見てくれるのだろうか、反応が楽しみだな。怪談蒐集家としてはレジェンドが一度訪れたこの吊橋に纏わる怖い話を何か一つは知っていないか?」と村田に対して切り出すと村田は「一応怪談蒐集家として、予め情報はリサーチしておいた。さっきむっちゃんが話していたように秩父湖の吊り橋を心霊スポットとして有名にさせたのは某怪談家の方ですけども、その方がビデオで仰っていた話では、時代は分からないが女性が恋人と友人によって突き落とされたと紹介された吊り橋が恐らく大洞川の吊り橋だと思われるが、そこで女性が恋人と友人に騙されて吊り橋から突き落とされたらしい。当初は女性の自殺だと考えられて、事故扱いでその当時は処理されたらしいそうだが、その怪談家曰くは”自殺なんかじゃない、これは殺しだ、落とされたんだ”といってね。お決まりのあの女性リポーターの悲鳴と共に終わるんだけど、ただあのビデオの収録に関しては紹介されているほとんどの心霊スポットがまず無許可でしかも強行的に行っているもんだから場所が特定されていない。そのために、”ここでは?”という話が出回ってしまったことにより秩父湖に差し掛かる吊り橋という理由で秩父湖吊橋というのがあるのだけど、そちらのほうに多くの若者が肝試しに来てしまうという事態になってしまったんだよね。大洞川の吊り橋はまだ渡れる状態ではあるが、秩父湖の吊り橋のほうは渡れるかどうか、最新の情報を見たとしても、元々がハイキングコースだったらしいが落石などにより歩けるような状況ではないことも考えると、吊橋の近くの遊歩道は歩けるかもしれないが吊橋は果たしてとなるともう復旧のめどすら立たず今もなお渡れないかもしれん。」と話すと、それを聞いた甲州が「実際にそんな事故があったのか、あったのならばやはり女性は相当な強い怨念を持っていても不思議じゃない。でもだからといって関係のない人を撒きずり込んで悪霊と化すのはどう考えてもお門違いな感じはするんだよね。だって怨みを持つとしたらさ、突き落とした恋人と恋人の友達のほうじゃん。通っただけで、殺された怨みをここで晴らすのは違うような気がする。」と話すと、油井が「実際に言って見ないと分からないってのもあるんだしそれに作り話の可能性も否定はできない。事実なら仮に事故扱いの案件であれどこういうことが起きたので気を付けてくださいという名目で警察がマスメディアに情報を開示していてもおかしくない。情報がない以上、本当に起きたのか、それすら疑わなければいけないだろう。単なる怪談話のネタの一つにすぎない可能性だってある。」と話しながら、一同は秩父湖駐車場に到着した。


大洞川の吊り橋の肝試しを行う村田、斧落、後藤、杉沢村にマイクとポラロイドカメラが渡されると、秩父湖吊橋の肝試しに行くことになった秩父、甲州、畑、油井にはチェキとデジタル一眼レフカメラが渡ったところで、その場でそれぞれのチームで肝試しを行う吊橋へと歩いて向かうことにした。


「歩道があっても、車の交通量の事を考えると本当に危ないね。気を付けながら歩いていかないといけないね。」


秩父湖吊橋へと向かう油井チームで甲州が怖いと思ったことをカメラを前に率直に話し始めると、油井が「仕方がないだろう。ひとまず一列になって歩いて、秩父湖吊橋のある場所へと向かっていくしかない。」と話すと、畑が油井に「某有名怪談家が話したから秩父湖の吊り橋が有名になったのと同時に、2006年には秩父湖の近くで集団自殺が起きたという。5人の男性と1人の女性が車内で練炭自殺をしたとされるのがここらしい。全国的にメディアでも大きく取り上げられたことからも益々心霊スポットとしての確固たる地位を築いてしまったのもあるね。」と語ると油井は「それだけじゃないと思うんだけどな。繰り返し話していることになるが、某有名怪談家が心霊ビデオで話した吊橋の中央付近で女性が恋人と友人に騙されて投げ落とされた女性の霊が現れると、橋の上から秩父湖を見下ろしていると霊に引き摺り込まれる話の真偽も含め、現地に行けば答えが分かるはずだ。因みに某有名怪談家曰くは秩父湖には死の世界へと誘惑する力があるとのことで、先程話した事件以外にも多くの自殺者が出ているために近づくときは気を付けなければいけないという。女性の霊の云々は別にして、自殺者の霊の存在をキャッチすることが出来るか、それに尽きるね。」と語り終えたところで、目の前に秩父湖吊橋の入り口付近にまで辿り着いた。


先を歩く油井が到着したと同時に畑に対して「非常に残念なお知らせだ。絶賛立入禁止で入れません。トタンのような板で立入禁止と大きく書かれている。よってこの下の遊歩道から橋を眺めて霊がいるかどうかを検証するしかない。」と話すと、その様子を見た甲州は「せっかく来たのに残念。でも通れないからしょうがないね。遊歩道を歩いて肝試しを行うことぐらいしか出来ないね。」と話しながら、一同は湖岸遊歩道と書かれた入り口へと入って肝試しを行うことにした。


階段を下りて、遊歩道をゆっくりと歩き始めたその時だった。


”うっ、うっ、うっ”


橋がある方向から男の呻き声のような声が聞こえ始めると、甲州は「どうしたの?誰か何か言った?」と秩父と油井と畑の男性陣に対して聞き始めると、畑は「いや、誰もそんな呻き声なんてあげていないよ。それにさっきの呻き声なら俺達も聞こえた。つまりあのさっきの呻き声の主は俺達じゃない。」と答えると、甲州は油井の顔を見て「秩父湖吊橋は心霊の一つとしてあげられているのなら、どうしてここの湖岸遊歩道なんて心霊の一つにもあげられていないのにどうして?」と疑問に思ったことを単刀直入に聞き始めると、油井は「さっき、呻き声が聞こえた方向がちょうど木があった。そこに首を吊っていたんだ。首を吊ったままの状態の男が呻き声を上げながら俺達のほうを見ていた。恐らくここは首吊りもあったのかもしれないね。そのほかにも今は通行できないが通行できた時は橋から落下しただろう人もいたのかもしれない。そう考えると、ここにいる霊達は俺達に対して何かを訴えているということだろう。」と解説すると、続けて「しかしハイキングコースとして使われていたと言っても、観光地として有名と言ってもそれを知っている人でなければ訪れないような場所と化している以上、自分の存在を知ってもらいたいがために最期にこの地を選んだとも考えにくい。ともなればやはり、人目につかずこっそりと死にたいと思った人がここを選ぶのかもしれない。夜になれば人気は少なくなるし、誰にも注意されることなく死のうと思えばできるからね。」と自分なりの解釈を話したところで秩父が「さあ。秩父湖だけで調べても観光地の一つとして挙げられているのだから昨日油井が言っていたように観光地だと分かって自分に注目をして貰いたい一心で姿を現しているのかもしれない。」と話すと、さらにその先の吊り橋の下を眺めることが出来るスポットへと辿り着いたときに改めて橋の下を見上げることにした。


「やはり投身自殺が多いというのも理由の一つとして頷ける。心霊ビデオで紹介されていた橋から身を投げただろうずぶ濡れの下着姿の長髪の女性が見えるというのは感じ取れないが、こうして見上げているだけでもそれなりの雰囲気を感じさせるね。」


秩父が率直に思ったことを話すと、それを聞いた畑が「霊能者じゃないから何とも言えんけども、それでもやはり橋から落ちたであろう霊の存在だったり、首を吊ってお亡くなりになられただろう霊の存在は複数名確認することは出来た。吊橋が渡れるような状況だったらまた結果は違っていたんだろうけどもやはりここには何かあるとしか、霊感が強いだけではそれとしか答えようがない。でも自殺者がいる以上は自分以外の仲間がいると分かって最期の地として選ぶ理由があるのかもしれない。」と話すと、さらにその先を歩き進んでゆく。


甲州が「あそこにベンチがあったけど座ってみようか。」と言い出すと、歩き続けた疲れもあったのだろうか、ベンチの左端にそっと座り始めると、秩父と畑と油井を見て「疲れているんだったら座りなよ。4人は座れるよ!このベンチ。ちょっとした足の疲れを取るのには最高だよ!」と話すと、油井が何かを感じ取ったのか斧落に対して「そのベンチに座らないほうが良い。背後に複数の霊がいる。明らかにむっちゃんに近づこうとして襲い掛かろうとしている。そこから離れたほうが良い。」と話すと甲州は恐る恐る背後を振り返ると、見てしまったことすら忘れたいと思わせるほどの複数名の霊が背後から近づこうとしているのを感じ取りすぐさま悲鳴を上げて油井たちのところへと戻ると、畑が「これだけでは映像に写らないから先へ進もう。可能な限り調査を行ってその他に異変が起こらないかも含め確認しよう。」と話すと行けるところまで先へ進むことにした。


歩き続けて左手に通ってきた道路が現れてきたところで、秩父が「この先はどうやら登れなさそうだし、引き返して二瀬ダムに戻ろうか。不審な音は恐らく撮れたはずだしね。」と話すと、一同は戻ることを決意し帰路につくことにした。


歩きながら甲州が「村田君たちのチームもどうなっているのか気になるな。ライブ配信していると言えどもお互いの状態がどんな風になっているのかはお互い連絡のやり取りをしながらやっているわけではないから気になる。」と話すと、油井が「あいつらは大丈夫だろ。心配することはないだろ。」と話すと、またしても茂みがある左手のほうから複数の人の囁くような声が聞こえ始め、畑が「俺達を仲間にしようと企てているのだろうか。しかし残念ながら君たちの仲間になることはない。怖いと思っても命ある俺達のほうが強いんだから自我を強く持って接したほうが良い。」と促したところで、秩父湖吊橋付近にあった湖岸遊歩道での調査を終了した。


その一方、大洞川吊り橋の肝試しを行うことになった村田チームは吊橋の入り口のところまでやっとたどり着くと、思わず斧落が「今日は本当にスニーカーで良かったと思えるような場所だった。そうじゃなかったら本当に足場が悪くてわたしたちが心霊になるところだったよ。」と話すと、村田は「ははは。でも課題はあの目の前にある吊り橋でどのような現象が起きるかだよ。ゆっくりと人数制限もあるから、まず俺と後藤で先を歩くから杉沢村と斧落は俺達が渡り切った後にきてほしい。その際は大きな声で合図を出すから、それでいいかな?」と提案したところで、杉沢村は斧落の表情を見て「俺は良いけどメイサちゃんはどうかな?」と話すと、斧落は「わたしも出来れば後からのほうが良い。後藤君と村田君が先に行ってくれるだけでも怖いと思う気持ちが半減する。」と語ったところで、言い出しっぺの村田が後藤に「すまないが特攻隊長に任命する。勝手に指名して申し訳ないが頼む。」と話すと、後藤は「もういいよ。しかも吊橋の特攻隊長って何だよ。意味わかんねぇよ。一先ず俺と村田の二人が先を進むからメイサちゃんと監督は俺達が渡り切ったのを確認してから渡ったほうが良いというのは同感だね。板が張り替えられたってのも30年以上も前みたいだし一気に渡ってしまうと床板が抜け落ちてしまう危険性だってあるからね。ゆっくりと進んでいこう。」と話すと、後藤と村田が吊橋の上を慎重になって歩き始める。その際に予め持っていた2台目のカメラを杉沢村に渡した。


歩きながら後藤は「結構揺れるね。足元もキシキシといっているし、心霊以外に普通にここは怖いよ。下だって眺めようとしたけど。結構な高さがあってちょっと足がすくみそうになった。」と率直な意見を話すと、村田は「まだまだ橋の中腹にまで俺達は辿り着いていないのだから。きっと真ん中あたりにきたときに空気が変わってくるはずだ。ここが噂されている心霊ビデオで某有名怪談家の方が言っていた女性の方が彼氏と友人に騙されて突き落とされたとされる地点になるからね。果たしてその女性の怨念は今も彷徨っているのか、それが肝試しの目的の一つだからね。」と説明すると、後藤は「騙されたと言っても状況がつかないんだよね。場所は違うけどさ、昔福岡の力丸ダムにある力丸橋で恋人に騙された女性が恋人と友人の男に突き落とされたって事件は確かにあったけど、確かそれは二股恋愛の末の出来事かだったと思うけどさ、実際のところってどう報道されている?」と質問すると、村田は「聞いた情報によると男二人で女性を突き落としたと言われている。或いは男と女の友人で女性を突き落とした、その話は諸説あって、福岡で実際に起こった事件の話も入り混じっているのかもしれない。だとしたら、本当にそんなことが起こったのかを疑わなければいけないだろう。」と話した時だった。


後ろを歩いていた後藤の背後をピチャン、ピチャンと水の音が聞こえ始める。


後藤が音が聞こえるたびに振り返ってみるがやはり何もなく、先頭を歩く村田に対して「何かさっきから俺の後ろをピチョン、ピチョンと水たまりの上を歩くような音が聞こえ始めるんだよね。何だと思う?まさかと思うけど水の上を誰かが歩いているとでもいうのか?」と話したときに、男二人しかいないのに女性の声が聞こえてきた。


”ここにいるよ”


その声が聞こけた瞬間に村田が思わずハッとなって立ち止まった場所がまさしく女性が投げ落とされたとされる橋の真ん中付近であって、村田が正体を確かめなければ話にならないという思いから金網からそっと下を眺めてみる。


そして後藤に対して「この辺りからさ、フェンスをさ誰かが上ったような痕跡はあるね。つまり誰かがここを登って飛び降りたという可能性は捨てきれない。」と話すとまたしても女性の声が聞こえ始めた。


”こっちにきて”


まるで囁くような声が聞こえたと同時に村田が後藤のほうを見始めると、後藤は「さっき確認のためにちらっと霊視をしたらさ、俺達の後ろにさっきからいたんだよ。長髪でずぶ濡れの女がね。俺が気付いたと分かったときにニタっと笑ってね。これを見て殺されたと判断するのは筋違いな気がする。殺されたように思われるかもしれんがこれは最初に言っていた自殺した可能性のほうがグッと高くなってきた。俺達を闇の世界へと誘導しようとして、あなた現れたんだね。でも残念だ。俺達はあなたの仲間にはなりたくない。まだまだ生きて死ぬ時が来た時に俺達は死ぬからね。」と強く言い放つと、現れた女性の霊は一瞬むっとした表情になったのが村田でも確認が出来たところで村田も「新たな自殺者のサークル勧誘はお断り!俺もまだまだあなたと違い長生きをしたいもんでね、あなたの思惑通りにはいかないぜ!」と笑いながら返事をすると、馬鹿にされたと思ったのかそれとも心の弱さに付け込む隙が無いと見極めたのかスッと消えたのだった。


女性の霊を改めて確認したところで後藤と村田が橋を渡り切ると、橋の入り口で待つ斧落と杉沢村に対して大きく手を振って合図を送ったところで、斧落と杉沢村が橋をゆっくりとした歩調で歩き進んでゆく。


斧落が「ギシギシギシといって本当に怖いね。抜け落ちたら本当におしまいだね。」と語ると杉沢村が「怖いと思いながら歩くのは良くないよ。とりわけ今俺達が来てるのは自殺の名所なわけだしね。弱みを掴まれてしまえばおしまいだ。己を強く保ち何があっても微動だにしない心の強さがここでは求められるよ。絶対にちょっとしたリアクションであっても怖いと思わずに聞こえてきて当然だと思ったほうが良い。」と心配しないように話したとたんに、湖の方向から男の呻き声が聞こえてきた。


”ううう、ううう、ううう。”


声が聞こえた途端に斧落は杉沢村のほうを見て「強がっていないで怖いと思うんだったら怖いって言ったほうがすっきりするよ。呻き声なんか出しちゃって、本当怖いと思っているのがわたしたけじゃないって思ったら安心した。」と話すと、杉沢村は唖然とした表情で斧落のほうを見ると斧落に対して「違う。今の声は俺じゃない。明らかに足場などない湖のほうから聞こえてきた。これはおかしい。後藤と村田の声がここで聞こえてくるのも不自然な話だ。」と話すと、斧落はえっとなって「まさか自殺者の声が聞こえてきたとでも?」と話すと辺りを警戒しながら霊がいないかどうか見始めると、杉沢村が斧落に対して「もう間もなく橋の中腹部分に差し掛かるからまたここでも違う現象が起きるかもしれない。」と話した瞬間今度は別の声が聞こえた。


”キャアアア”


それは女性の叫び声だった。


しかし斧落はそれを聞いて驚きのあまりにキョトンとするだけであって、杉沢村も思わず「何だったんだ、あの悲鳴は?」と感じ始め、徐に持っていたカメラで女性の悲鳴が聞こえたところで写真を何枚も撮影することにした。


斧落が杉沢村に対し「さっきの叫び声が噂された突き落とされた女性の声ならば今もなお助けてほしいという思いでわたしたちを呼び寄せているのだろうか。だとしたら可哀想だし、あんまりわたしたちがこうして肝試しを行うことその行為が不謹慎にも思えてならなくなった。」と不安に思ったことを打ち明けると、杉沢村は「冷静になって考えてみろ。もしそのようなことが現実的に起きていたら、警察は間違いなく事故と事件の両面で捜査するし、一緒にいた友達と恋人が通報の義務を怠って後々女性の遺体を発見した人の通報により発見された事例であったとしても、まず女性の指紋がどこで採取され、また同時にどういう落ち方をしたのかも含め警察は捜査する。投げ落とされたのならば女性が抵抗した痕跡が残る。それをもとに警察は事件と判断し関係者に事情聴取を行うだろ。ところが過去に起こった事件は2006年の集団練炭自殺以外はヒットしない。つまりそのような事例があったとしても自殺として処理された可能性のほうが極めて高いってことだ。つまり某有名怪談家は超えの内容を聞いただけで”殺しだ、自殺なんかじゃない、投げ落とされたんだ”と根拠もないことをただ霊達の話し声だけを聞いて叫んだ可能性のほうが高いってことなんだ。」と説明すると斧落は杉沢村の解説を聞いて「そうだよね、普通に考えたらあり得ない話だね。」と首を振って頷くと、杉沢村が「自殺者の声を鵜呑みにし過ぎないほうが良い。そうやって新たな自殺者を勧誘しようとしているのかもしれない。」と話し、斧落も杉沢村が話した内容に理解を示し「わかった。」と言って二人は後藤と村田が待つ橋の出口にまで辿り着くと、後藤が「お憑かれ。やっぱここは投身自殺者のたまり場といってもいいところだろう。」と自分なりの解釈を説明したところで、村田が「俺達が先に橋を渡るから、俺達が渡り切ったら入り口でまた合図を送るから、続けて渡って来てほしい。」と話すと、杉沢村は「OK!」と言って返事をしたところで、後藤と村田が再度吊橋の上を歩き始める。


そして何事もなかったかのように二人が入り口のところにまで辿り着くと、大きな声で合図を送り、続けて斧落と杉沢村が橋を渡り始める。


橋を渡りながら斧落が「自殺ってつくづく残念だよね。人それぞれいろんな理由があって生きるのが辛いと思って死ぬんだろうけども、でも昨日のはねたき橋でも思ったことがある。それは神様は決して乗り越えられない課題なんて与えない、だから強く自信をもって生きていく事が大事なことなんだとね。結局自死を選んでも、水から与えられた命を絶つというのがどれだけ罪深くて許されたものではないってのが死んでからわかるんだろうね。だから最期の地となる場所であらわれてはこの世の中に対する怨みをこういった形で晴らしているのかもしれない。とっても残念な方達だね。」と話すとその瞬間に再び不審な声が聞こえた。


”もういい、もういい”


”やめてくれ、やめてくれ”


斧落の話した内容が霊達にとっては説法そのものだったのだろうか、やがて出口に辿り着いたと同時に不審な声は静まり返り、一同は約束場所の二瀬ダムのある方向へと戻ることにした。時刻が17時過ぎをまわったところで、二瀬ダムで村田チームと油井チームが落ちあうとそれぞれの収穫を話し合ったところでライブ配信を終了した。


車の中で油井が「良い収穫が出来た。だけど某有名怪談家が話した内容と真実はかけ離れているようにも感じた。」と話すとそれを聞いた村田が「あくまでも怪談をエンターテイメントの一つにしか考えていないからね。嘘話だっていくらでもある。今回もその一つだったかもしれないが、自殺だったという話はデマではなかった。それだけは言える。」と話した後に一同は二瀬ダムを後にすることにした。東京へ戻る車内で斧落が「次は成人式3連休となる1月10日から1月12日だね。この日はどんなところに行くの?」と杉沢村に聞き始めると、杉沢村は「1月10日に山梨編、1月11日に神奈川編、1月12日連休の最終日に千葉編を取り上げたいと思っている。いずれも関東近郊になるんだけど、なかなかYouTubeでもニコニコ動画でも視聴率が伸び悩んでいてね、でも今回の動画で視聴率は稼げるはず。より遠くに行けることを目指して頑張って調査を続けたい。」と意気込むのだった。

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