【完結】慰霊の旅路~試練編~

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旧吹上トンネル(東京・青梅市)

公開日時: 2022年3月12日(土) 15:47
文字数:11,730

心霊ロケ最終地となる青梅市内にある旧吹上トンネルへと向け一同は車の中で打ち合わせを行っていた。


侑斗が綾羽と飯塚に対して「次に向かう旧吹上トンネル、一体何を検証されるというんですか?」と切り出すと、飯塚は「何を検証するって決まっているじゃないか。有名な噂で、白い服を着た女性の霊が本当に出るか否かだよ。それ以外にも多数幽霊の目撃談があって、東京に来たからにはやはり有名な心霊観光地と化しつつあるこの旧吹上トンネルは外せない!旧吹上トンネルを出た上手にあるとされる旧旧吹上トンネルについては某有名怪談家の方がDVDの収録で潜入できた時は人ひとりがやっと入れるぐらいの、フェンスに大きな穴が開いていたそうだが今は崩落の危険性があって2009年の3月に坑口が封鎖された。また左手に入っていく道は通行止めで人も通過することはできない状態になっている。調べたらトンネルの反対側から近づくことは出来るようだがかなりの獣道を突き進んでいかねばならない。基本的に旧吹上トンネルでは心霊写真がよく撮れ、旧旧吹上トンネルでは怨念が強いとも言われている。」と語ると続けて綾羽が「1993年に今の新吹上トンネルが完成するまでは現役で使われていたトンネルだからね。今は車両での通行が禁止され、歩行者や自転車の方が利用できる遊歩道となっている。有名な噂の一つである白い服を着た女性の霊だけでなく、トラックに巻き込まれて引きずられ亡くなったご高齢の方の霊なども見かけるらしい。また旧旧吹上は噂話の一つではあるが、トンネルの近くに居酒屋があってそこで1955年頃に強盗殺人事件が起きたとされている。その際に殺された親子や従業員の霊が現れる。それが怨念が強いと言われる所以の一つだね。」と続けて侑斗に対して説明をすると侑斗は鼻で笑い始めた後に指摘をした。


「旧旧吹上は以前に僕の兄が行ったことがあります。噂されているトンネル近くの一階建ての平屋がかつては家族で経営していた居酒屋で店に押し入ってきた強盗により女性店主が殺害され娘が辛うじて旧旧吹上トンネルへと逃げ込んだが犯人に追いつかれた末に頭を鉈でかち割られたとか、だから今でも殺された娘の怨念が漂っていると某有名怪談家の方はそう仰ってましたね。頭をかち割られるっていうのがお好きなんでしょうね。そんなに頭をかち割られた幽霊みたけりゃ北海道行きましょうよ。」


侑斗の話に綾羽が「まあ噂話の一つだし、それに1955年頃とされているがこれだけ犠牲者が出ている事件ならば報道されていてもおかしくないのに、犯人が結局どうなったのかそれすらわからないあたりからも、犯人が死んだとしても事件のことについてメディアが報道しない理由など存在はしないからね。」とサラッとした口調で返答すると侑斗は「噂話と言っても、デマだと分かっている情報をメディアとして伝えてそれを聞いた若者が益々肝試し目的で民家もあるこの付近でどんちゃん騒ぎをしたらどうなるか。あんまりそういうことは取り上げるのもいい迷惑だと思いますよ。」と語った後に侑斗は兄星弥から聞かされた内容を語りだしたのだった。


「俺の兄が以前にあの旧旧吹上トンネルに足を運んだ時の事です。兄曰く旧吹上トンネルは”事故が多かったんじゃないのか”ということでした。というのも、あの旧吹上トンネルってトンネルが途中で傾斜になっているんですよ。それは某有名怪談家の方が紹介したDVDでも取り上げられていましたが、対向車が来ても分からない構造になっていますよね。トンネル内には事故による損傷などは見受けられませんでしたが外のガードレールには衝突による痕跡が生々しく残っており、カーブミラーも恐らくぶつかったことにより激しく折れ曲がっているのがかつて事故が多かったことを物語っている何よりの証拠だと思い、噂されている女性の霊が現れるかどうか霊視を行い確認を取ったところ、ここは女性のみならず男性の霊も、老若男女問わず複数名の御霊が彷徨っているのを確認することが出来たとのことです。損傷の具合から見ても恐らく思いもよらず事故に巻き込まれ亡くなられた御霊達の可能性のほうが高いのではとのことです。旧旧吹上でも、殺された女性の霊の信憑性を確かめるためにも確認をしましたが、ここでは女性ではなく男性の霊を確認することが出来たと申していました。恐らくですが明治時代に造られたトンネルのために、機械などを用いてトンネルを作る技術が今と違って人力による掘削作業が当たり前だった頃、当然ながら生身の人間がつるはしなどを用いてトンネルを掘っているわけですから労災事故も後を絶たなかった可能性もありえます。旧旧吹上トンネルの近くにはお地蔵様が祀られていますが、ひょっとするとこのお地蔵様は交通安全を祈願するほかに旧旧吹上トンネルの工事の際に殉職をされた方を弔うために設置された可能性もあります。それに殺人事件が起きたとされる茶屋は兄が調べたところによると旧吹上トンネルの工事に携わった父と息子の二人があの土地を買い取り親子二人仲睦まじくトンネル工事が終わっても気に入って住んでいたそうですが息子が先に出て行ってからは父が死ぬまでずっと住み続けたそうですが、それからずっと放ったらかしの状態になっていたようでそんなときに建設会社が資材置き場にあの茶屋とされる場所を買い取りたいという話になったのであの土地を譲り今に至っているわけです。つまり居酒屋でも茶屋でも何でもなくただのトンネル工事に携わった方の民家だったわけです。殺人は兄が調べた限りではそんなことは起きていないそうですよ。起きていないことをいつまでもいつまでも言い続けていたら、はっきり言ってキリがないと思いますよ。なので僕としてできることは今もなお事故でお亡くなりになられた御霊達が旧吹上トンネル内で彷徨っていないかどうか、また旧旧吹上に行かれるというのであれば工事に携わった方が殉職されているのかどうかも含め、現地で確認する必要性がありますね。」


侑斗の語る内容を聞いた藤村が「さすが星弥さん。警察官だから、とはまた違うか。でも仮にそれが事実なら、この話も興味深いんだよね。東京・埼玉の連続幼女殺人事件を起こした犯人が某有名怪談家の大ファンでこぞって心霊スポット巡りをして行く中でこの旧旧吹上トンネルにかつて人が通れるほどの大きな穴を切り取ったとされるのがこの犯人で、トンネル内に入って中腹辺りで少女の霊を見たことから”少女を殺さなければいけない”という考えに至り犯行を起こしたとされているが、実はこの事件が起きる前に女児殺人事件が起きていたという。はたして連続幼女殺人事件の犯人がその事実を知っていたかどうか、以前に聞いたことがある怖い話でね自分自身もどうかなと思いながらうんうんと聞き流すだけだったんだけどね。」と侑斗に対して語ると、侑斗は「その話なら聞いたことがあるよ。犯行後に旧旧吹上トンネルに行ってそこで一晩潜伏をしたとも言われているね。まあ死刑が執行されている犯人なのでどうなのか、わからないところだけどでも俺が実際に行った旧小峰トンネルも思えば事故が多いのが心霊スポットとして言われる所以の一つだったんだけどね、でもそれが小峰峠で殺した幼女の遺体を遺棄しただけに過ぎないから、仮に殺された幼女がトンネル内にまで出てくるかとなると1km以上も距離が離れている場所にわざわざ、旧犬鳴トンネルもだったけど旧犬鳴トンネルが事故の名所として知られているから犬鳴ダムに集結するかといえばそれは違う。旧犬鳴トンネルと犬鳴ダムは距離が同様に1km以上は離れている。御霊達のたまり場だったという概念で想定したとしても、こんな距離が離れた場所に集結するとは考えにくいのと同じことだよ。」と話すと、政井が「いずれにしろ、その犯人がかなりの心霊好きだったことに間違いなく、そういった場所だと分かって犯行を繰り返しているのだとしたらかなり達は悪いよね。まあわたしがいうことでもないけど、心霊スポット巡りをしていると必ず幼女連続殺人事件の犯人の名前が出てくるのも死刑囚でもあるとわかっているからこそ地元民からすれば有難迷惑な話のほか言いようがないね。この人が行った、行かないとかで噂になって幽霊が出てくると思われてどんちゃん騒ぎされたら、いい迷惑だと思う。」と語り始めると、藤村は「そりゃあ、そうだろ。でもだからこそ、俺達が行くことによってここが危険なのかそうではないのか、正確なジャッジを下すことで肝試し目的で悪ふざけに訪れる若者達に対して戒めることはできるよね。そのためにも俺達は来ているのだから。ただ、俺も饗庭兄弟とは違って旧小峰トンネルですら行ったことがないからどんな霊がという話になってしまうとそこはやはり星弥さんや侑斗君の霊視した結果を頼りに参考にして行くしかない。」と話すと、それを聞いた侑斗は「あくまでもイメージだけなんだけど藤村さんって東京の心霊スポットに九州に住む俺達以上に足を運んでいるイメージがあったのになあ、一体どこに行ったんだよ!?」と切り出すと藤村は「俺が行ったことがあるとしたら、東京は八王子城跡に多摩湖、道了堂跡、たっちゃん池といったところ。あと貴重な体験をさせてもらったと言えば、TV番組の第二次世界大戦の慰霊ロケで硫黄島に同伴させてもらったこと!これはなかなか基調だったなあ。あと東京じゃないけど今は崩壊の禁止があって通行すら禁止されている畑トンネルも俺にとっては貴重な体験だった。」と振り返るように答えると、侑斗は「畑トンネルなら饗庭兄弟で行ったことがあるから思い出深いけど、硫黄島ってある意味ですげぇよ。俺達自衛隊に知り合いがいたとしても上陸すらしたことない。慰霊目的で同伴してくださいすら、そんな依頼もない。羨ましいよ、未だ立入が制限されているところもあるのに上陸できるなんて良いなあ!」と悔しそうな表情で話し始めると、藤村は「あれは俺達のような霊能者は行かないほうが良いよ。今でもなお遺骨が引き上げられていない、不発弾の処理さえも弾丸の雨が降り注いだと言われるほどの場所だからね。俺はあそこで数え切れぬほどの兵隊の霊を目撃した。それはもう、観音崎にも行ったがそれを遥かに上回っているね。だから全ての不発弾が処理されて住める状態にまで戻ったとしても、あそこは冗談抜きで行くべきではない場所だろうな。だって慰霊目的でも”戦いの時だぞ!”という声が聞こえてくるんだよ。肝試しでも何でもないのに、今でも亡くなった兵の御霊達にとって時代は変われど戦場であるのは変わりないのかもしれない。無念やらアメリカ軍に上陸されて侵略されたという日本軍の恨み節も言葉には言い尽くしがたいものがあるのかもしれない。」と語り侑斗は「まあ、そうだろうね。俺も行けたとしてもそんなところは行きたくない。沖縄で十分、いやもう体験させてもらったら、戦場だった場所を見るのは辛い。人の生き血が、ここで沢山の方々が亡くなったのだと思うと見えてしまったことにただただ、血が怖いってわけじゃないけどでもやっぱりあんな地獄絵図とも言ってもいい光景を透視で見てしまった以上、俺には耐えられない、田原坂でも辛すぎた。でもそれが彼らの御霊となった今でも貫くファイティングスピリットなら、亡くなった御霊達の戦はまだまだ終わっていないってことなんだよね。」と頷きながら話をし終えたところで車の中での打ち合わせを終了することにした。


そして一同が乗る車が車両の通行止めのところにまで辿り着いたところで駐車して徒歩で旧吹上トンネルへと向けて移動した。


歩きながら政井が侑斗と藤村に「わたし、行っていなかったからわからないんだけど畑トンネルって埼玉でも凄いところだって聞くけど実際本当に凄かったの?」と興味津々になって聞き出すと、侑斗は「ああ。あそこはね。人面犬の発祥地として知られているから色んな人が足を運んだりして大変有名なトンネルだったんだけどね、俺があそこで体験したのは数え切れぬ、噂される老婆の霊や母娘の霊のほかに色んな、車など走っていないのに急に”ゴー”と車のエンジン音が聞こえてきたり、老若男女問わない御霊が怒りの表情を浮かべながら俺達のような霊的エネルギーの強い者がやってきたと分かれば近付いて何かを訴えようとしてきた。恐らくあのトンネルの壁面の損傷の具合から察しても車同士で離合出来る程の幅員ではなかったために避けようとして擦った可能性もある、そんな場所だから死亡事故が多発していてもおかしくなかったに違いない。あそこで彷徨う御霊達は死にたくて死んでいるわけではないので今もなお死を自覚できないまま藁にすがる思いで助けを求めているのかもしれない。だからトンネルが封鎖され解体されるのは良い事だよ。明治時代に造られた貴重な歴史遺産とも考えたら畑トンネルを残してほしい気持ちもあるが、近隣住民の迷惑にもなることを考えたらそれはもう、あればあるだけルールを守らない若者達が騒ぐきっかけを作ってしまうことにも繋がりかねない。致し方ない。だからせめて今回行った正丸峠もそうだけどそういう死亡事故が多発したような場所に行政として誠意を示すためにも何かしらお地蔵様なりそういったものは亡くなられた方々を弔うためにも設置をしてあげるべきなんだ。まあ関東でそのような類の場所はここだけに限った話ではないので、ここだけがとなってしまうと、あっちこっちで必要性が生じてくるから大変なことになってしまう。だからせめてゲームのアプリを活用して人が多く集まりやすい場所にして行くなどして、心霊以外の目的で足を運ぶ人の割合を増やすことで、供養にも繋がるかもしれない。」といって返事をすると続けて藤村も「全くの同意見だね。」と語っているうちに一同は旧吹上トンネルの前まで到着した。


トンネルに入る前に、侑斗は何かに勘づいたのか藤村と政井に対して「透視を行ってみるよ。まだトンネルには入っていないけども、何名か御霊がいるのは確認することが出来た。果たしてここに何があったのか、見てみることにするよ。」と語った後に気を集中させるために深く深呼吸を行ってから透視を行い始めた。


侑斗が見えてきた光景を呟くような口調で語り始めた。


”車が通っている。1953年に竣工された全長245mの幅5.5m、高さ4.8mの大型車同士であっても離合は出来たとしても仮にもしここで歩行者がいたとしたら車幅がお互いの車がそれぞれ規格サイズ内に収まる2.6m以内だと想定すると5.2m、計算上3mの余裕はあるから離合できずに事故が起きる可能性というのは低いと思われる、歩行者の発見に遅れた可能性も今はLEDの照明灯に切り替わっているがそれまではオレンジの照明で夜は非常にわかりにくかったと思われる。だがそれでも旧旧吹上トンネルの1904年に竣工されたトンネルと比較すると、全長が112m、幅が3.3m、高さ2.8mだったことも考えると、乗用車が1台しか通過できない、道幅も狭小ともいえるほどのものしかなかったと考えると通行しやすくなったものだと思うが、因みに俺が今さっき言った年代やトンネルのサイズは前もって調べた事を言っているだけなんだけどね。この先の道が峠道ならではのヘアピンカーブになっていて曲がりくねっている。そのためにこのトンネルで事故が多かったとかそういうわけではなく、峠道ならではの曲がり切れずに起きてしまった事故のほうが多い。トンネルは広いがこの峠道に関しては自転車や歩行者が歩いていたりすると距離を取るためのすれ違いが十分出来る程のものではない。すれ違おうとして、カーブミラーがあっても見通しが悪いからこそ対向する車に対して避け切れずに正面衝突している様子が、きっとここで現れる御霊は事故を起こし比較的目撃されやすいのではと思ってトンネルにまで入ってSOSのサインを出すためにやって来ているのかもしれない。”


侑斗がそう語った後に、吸い込まれるようにトンネルの中へと入っていく。


侑斗の話した内容に、政井が「調べていたことを前もって話すのは分かったけどもここで現れる御霊は事故で亡くなった方ってこと?噂されている殺された女性がここに現れるというのも、殺されたのではなく事故に遇われた方ってこと?」と質問すると侑斗は「自分の目で見たらわかること。老若男女問わずこのトンネルには彷徨っている。」と語ると、政井はそっと目を瞑り霊視を行おうとした時だった。


「誰かわたしの後ろにいる。」


気配を感じ、振り返るも誰もいなかったが、ふとその瞬間に誰かに両腕を掴まれた政井はその場で御祓いの儀式を行ったときに、ハッとなる光景を見てしまった。


”目で訴えられている。助けて、助けてと、悲痛な叫びが言葉にはしていないが顔の損傷の具合から察すると必死になってわたしのところにまでやってきたのかもしれない。この人たちは今もなお死んだことを自覚できずに彷徨い続けているに違いない。だとしたら自分の手で何とかしなければいけない。”


政井が除霊を行おうとした時に、藤村が止めに入った。


「そんなことをすれば俺達はここで彷徨い続ける数え切れぬ事故者の御霊達の心のケアに追われる日々になってしまう。新道が出来たことを知らず今も道幅を広げてくれとか、自転車や歩行者が通行できる歩道や路側帯を設置しろとか、無理難題を突き付けられたときに、新しい道が出来ているから今は安心して下さいと言えば通用できるものではない。”事故が起きたのはこの狭い道のせいだ”と思っているのが大多数だからね。だから新しい道が出来たと言って納得を示してくれるようなものではない。今の俺達が出来ることは亡くなられた方々に対して、こうして俺達の前に現れたことにし対して両手を合わせ拝むしかないだろう。時間の経過と共に生前に負った心の傷が癒えるのを祈り続けるしかない。救いたいのは山々だが、除霊しても除霊してもきりがないと分かるものは関わらぬほうが良い。」


藤村の助言に、政井が冷静に考えた末に「そうだね。わかった。」と語った後にトンネルのさらに奥へと突き進んでゆく。


一方、三人のやり取りを後ろでじっと見ていた飯塚が「噂されている白い服を着た女性の霊は確認できたのか?」と質問すると、侑斗は「いや。あまりにも多すぎる。事故死者の数だけでも、その中で白い服を着た女性がいるとか特定の御霊を行ってしまえば、女性だけにとどまらず男性の御霊も複数名いることから見ても、中には自らの死を理解できない子供もいる、例の幼女連続殺人事件とは恐らく無関係。事故が多いからこういう話題が、幼児=事件の話が連動して噂が出回った可能性のほうが高いのだろう。」と語った後に、トンネルの出口にまで辿り着いた。


そして旧旧吹上トンネルへと向かうことが出来る獣道と言ってもいいだろう舗装など全くされていない険しい道のりを歩き進んでゆく。分厚い鉄板で覆われた旧旧吹上トンネルの入り口のところにまで辿り着くと侑斗が右背後に歩く藤村に対し「俺、何だか兄ちゃんに嘘を吹き込まれたような気がする。真相が違うような気がする。」と語ると、それを聞いた藤村は「嘘を吹き込まれたってどういうこと?」と突っ込んで質問をすると、侑斗は透視を行った結果を語り始めた。


「兄が話していたことと違う真相が見えたんだ。このトンネルを抜けた先にある一階建ての平屋なんだけど、戦後の闇市のような感じの、空襲があって焼け野原になったときにここには間違いなく居酒屋兼住居があったのだろう。苦しい世の中でも生き抜くための術の一つとして住居を居酒屋にしたのかもしれない。そこに住んでいたお婆さんとその娘さんが物取りによる犯行で殺されてしまい、娘さんのお子さんかな、2歳ぐらいの女の子がいてその子だけは命が助かった。お婆さんと娘さんは建物内で殺されたので、トンネル内に逃げ込んだ際に鉈で頭をかち割られたというのは全くのでっち上げられた嘘であることは間違いないが、事件があったのは事実だろう。生き残った女の子は別の場所に移転して幸せに過ごしている。怪談話が先行して伝わったがために、怖いもの見たさで若者が集う結果になってしまい、このような正規ルートで行こうとしたら中には悪戯をして騒いだりする者も出たから致し方なくこのようなやり方で制限をしているのだとしたら、兄ちゃんがどうして嘘をついたのかが何となくわかったような気がした。仮に心霊の依頼があったとしても霊能者として関わるべきではない事案ではないってことだろう。逆に今こうして俺達が旧旧吹上トンネルに向かって何かを発見したと言ってしまえばそれもまた心霊ネタとなって世の中に吹上トンネルが怖いと思われるかもしれない。近隣の方々に迷惑を掛けぬためにも、思いついた限りの怖くないと思わせるための嘘を話したのかもしれない。」


侑斗の話を聞いた藤村が「星弥さんが言っていたことは恐らく、この入り口付近で漂っている土木作業員らしき男性の御霊が複数名見受けられることから、殉職者が出てもおかしくないというジャッジを出したのかもしれない。確かにそんな感じにも見受けられるし、手掘りのトンネルだから本来ならしっかりと煉瓦で舗装しなければいけなかったのを急ピッチで造り上げなければいけなかった事情もあって脆弱な造りになってしまった可能性も否めないね。ただ茶屋の殺人事件について星弥さんにも見えること、過去の通報履歴から調べたらわかること、あえて嘘をついたのだとしたらもうここには来させないほうが良いと思ったのかもしれない。住んでいる方がいるのなら尚更後々迷惑になるようなことがもし起きても霊能者の立場としては近隣住民に対して何の保証もサポートもすることも出来ない。星弥さんが話したお地蔵様のところに後で確認のために行って見ようよ。」と話すと、侑斗は「怖いのは幽霊ではなく、怖いもの見たさに器物を損壊してでもこの地に訪れようとする人間のほうだな。馬鹿騒ぎをして、ゴミなどが散乱している様子から見ても、あの恐怖のDVDを見て影響を受け夜中だろうが霊を見たい一心で怖い怖いと騒ぎ立てたらどうなるか、近隣の方々もそうだがここで彷徨う御霊達にとっても”五月蠅い”他言いようがないだろうな。それがあのDVDの宣伝材料でもあるんだけど、きちんと社会ルールを守って時間も考え騒がぬようにして肝試しを行うのならまだしもさっきの旧吹上トンネルの中にはねずみ花火をしたのかそのままゴミが放置されていたりと、騒音にもなりかねぬことをして騒いでいたのだと考えたら、ここはもう”何もない”と言い切ったほうが良いだろうな。」と言い切った後に綾羽と飯塚に対し「ここは怖くありません。綾羽さん、飯塚さん、これ以上はもう検証しません。」と自分なりの意見を語ると左後ろでじっと侑斗と藤村の話を聞いた政井が「わたしも同感。お地蔵様のところに行って亡くなられた母娘さんの追悼を皆で捧げましょう。これ以上追求しては近隣の方の迷惑になるだけです。」と提案して一同は旧旧吹上トンネルの前をさっと後にして、来るまでの道のりにあったお地蔵様の前まで移動することにした。


到着すると、一同は手を合わせ拝んだ。お地蔵様が大事に祀られている様子から見て藤村が「恐らく地蔵様は事件があったことを知った住民の手によって手厚く供養されている。お供え物があるあたりから見ても、もうこれ以上騒ぎ立ててほしくないということだろう。視聴回数稼ぎの心霊系のYouTuberもどうかと思うよ。稼ぐために私有地に無理矢理侵入して良いものではない。自らの行いが犯罪かどうかも考えずに立ち入る。大人として先ずは土地の所有者に土地の中に立ち入ってもいい許可を取るなど守らなければいけないルールを逸脱してでもやることではない。きっと俺達もどんちゃん騒ぎに着た若者の一人だと思われたら、これほど不名誉なことはない。」と話すと政井は「わたしが遭遇した御霊達もきっと助けを求めてではなく、これ以上騒いでほしくないという一心で怒りの感情をぶつけた可能性もあり得るね。それにここ以外にもお地蔵様があるような気が何となくする。侑斗君が話していたトンネルを抜けた先が狭いヘアピンカーブになっていて、その先にお地蔵様が並んでいる場所があると思われる。恐らくだけど、そこで亡くなられた方を祀られているのかもしれない。その先も歩いてみましょう。」と話すと、侑斗は「そうだな。透視をしてこの先に事故死者の御霊を弔うための地蔵堂があるのは確認できたし、マップにも情報は記載されていないがそれらしき施設は確かにあった。行って見よう。お詫びのためにも。」と答えたところで更に193号線に出るための道のりを突き進んでゆく。


合流地点に辿り着くまでに右手に設置されてあった地蔵堂を目にすると、一同は改めて手を合わせ追悼の意を捧げ終えたところで、侑斗が改めて星弥に連絡を取って事の真相を確認することにした。


星弥は侑斗からの電話を取ると嘘をついたことについて「あんまり携わって欲しくなかったからそう言っただけ。」と釈明後、「あそこって今もご高齢だけど住んでいる方もいらっしゃるのは事実だし、あんまりねこう俺が霊能者として見た世界をオープンに話をし過ぎてしまうとそれこそ霊が出ると分かって怖いもの見たさで夜中に騒がれたりしてしまうと俺だって正直に言って良いのかどうか、霊能者のジャッジも難しくなってしまう事態に陥ってしまう。場合によってはその怖いと判断した責任すら押し付けられてしまうから。だからもし侑斗が関わるとなった場合に予め前もってあそこは何もないという事を言いたかった。」と語った後に「侑斗に見せたいものがあるから電話を切り終えた後にLNEで写真を送る。まだ資材小屋になるまでのあばら小屋だったときに行った時の写真だ。それを見たら答えが分かるはずだ。じゃあね。」と語って電話を切ると、すぐ侑斗のLINEに星弥から画像が送られてきた。


送られた画像を見た侑斗、そしてスピーカー越しに侑斗と星弥のやり取りを聞いて居た藤村と政井は恐怖のあまりに凍り付いてしまうと、三人の様子を見た綾羽と飯塚が「何だよ!何が送られてきたんだよ!」と追及すると送られた画像を確認した。


飯塚が「ただの廃屋じゃないか。それのどこが怖いんだよ。」と話すと続けて綾羽も「これが噂の殺人事件があったとされる茶屋だよね。心霊写真でも何でもないじゃないか。それにビビるってどういうこと!?」と笑いながら話すと、政井は「霊視をしたら視えたんです。霊視をしないと分からないレベルですが、鋭い目つきで睨み付ける女性が佇んでいます。建物の周りには女性の死を悼み、浮遊霊達が集まっているあたりから見てもここは強烈なマイナスのエネルギーがたまっているという事だと思います。ここは冗談抜きで仮にここが私有地じゃなくとも行かないほうが良いでしょう。これは霊能者として怖いと判断したのではなく、ここはもう追悼目的以外はそっとしてあげるべき場所です。そっとして安らぎの時を与えてあげましょう。」と答えると藤村と侑斗が政井の意見に頷き同調すると、綾羽が納得のいかぬ表情ではあったが「トンネル内で霊障らしき映像は撮れたし、あとはそれ以外にも霊が写っているか霊感がないから何とも言えんのだけど、でもあの捨てられた空き缶やペットボトルといったゴミがそのままの状態だったとも考えるとマナーを守らない若者達によってこれ以上汚染してほしくないし、騒音などで近隣の方の迷惑になるとも考えたら、大袈裟にならない程度で行ってきましたよぐらいでおさえておかないとまた霊が出ると分かって馬鹿騒ぎする若者が出てくるかもしれない。それだけはしっかりとルールを守って欲しいと注意喚起を行ったうえで放送は行う。」と語ると、旧吹上トンネルでの収録を終えることにした。


3日間の心霊ロケを終え、佐賀に戻ってきた侑斗に早速星弥からLINEのメッセージが入ってきた。


「3月20日(金)~21日(土)~22日(日)と連休があるでしょ。市役所も休みでしょ?前に俺が参加した明るい肝試しが16日の月曜日から北海道の心霊ロケを行うみたいで、今回霊能者として同行してほしいとお願いされたんだけど、日程的に仕事に戻っているから無理だし、さすがに平日の参加は侑斗には無理だろうと断ったけど侑斗はどうする?三連休の期間のみ参加してあとはリモート霊視しちゃう?」


星弥からの仕事の依頼に侑斗は「まだ2月。それに休みの申請をしなければいけなくなってくるし、しかも16日からなんて無理に決まっている。そんなことをしたら4月に入るお給料が減ってしまうし、有給だってこのために消化したくない。」と思いながら返事をどうするべきか悩み始めるのだった。

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