「川崎ステラが大量リードしている!」
「これは意外な展開ね!」
「選手交代よ!」
「百合ヶ丘を出すの?」
「いや、違う選手ね……」
「誰かしら、あのツインテールは……」
「ふふっ! やっぱりワタクシの出番ですわね!」
魅蘭が笑いながらピッチ脇に立つ。
「頼むね」
「お任せあれ!」
円と交代で魅蘭がピッチに入る。
「よっと!」
雛子がボールを奪う。
「雛子さん、一旦下げて!」
ヴィオラがボールを要求する。
「それっ!」
雛子がボールを下げる。
「OK!」
ヴィオラがボールをキープする。
「ヴィオラ、寄越せ!」
真珠が前線でボールを要求しながら、斜めに走り込む。
「!」
横浜プレミアムのディフェンスがそれに釣られる。
「……!」
「⁉」
ヴィオラの出したパスが、マークの付いていないフリーの状態の魅蘭に渡る。
「ナイスパスですわ! ……えいっ!」
「き、決まった!」
「これで4点差……!」
「あの抜け出し方……只者じゃないわね……」
ギャラリーがざわつく。
「ふふふっ! この鷺沼魅蘭の名をその胸に刻み付けなさい! 横浜の皆さん!」
魅蘭が左手を胸に添え、右手を掲げる。
「さぎぬまみ……らん⁉」
「さぎぬま みらん ですわ!」
ギャラリーの声に魅蘭が反応する。
「ギャラリーとケンカすんなよ!」
「どの口が言うんだか……」
「ああん、なんか言ったか?」
「なにも……」
真珠と雛子が言い争いながら魅蘭に駆け寄る。
「とにかくナイス!」
「ファーストタッチでよく決めたわね!」
「ふふっ、もっと褒め称えてもよろしくてよ?」
魅蘭が胸を張る。
「いや、まだ試合中だからよ……」
「そうね、ゴールセレブレーションはこれくらいで……」
「あらら?」
軽くハグやタッチをして、さっと離れる真珠と雛子に魅蘭は拍子抜けする。
「おおっ、良い調子!」
「出来過ぎなくらいね……」
ベンチでガッツポーズを取る円の横で、恋が笑みを浮かべる。
「恋は出ないの?」
「ヴィオラちゃんのフィクソが上手く機能しているし、雛子ちゃんも守備を頑張っているし、変にいじらなくても良いんじゃないかしらね」
「なるほど……」
「まあ、もうちょっと様子を見て……ん?」
恋が横浜プレミアムのベンチを見る。コーンロウヘアーが特徴的な女性がコーチに何やら話しかけている。
「あ、あれは中華街で見た……」
「いよいよ出てくるということかしら……?」
「コーチ、自分が出ます」
「……」
「まだ前半とはいえ、これ以上の点差が開くのはマズいです」
「………」
「自分たちを投入してもらえれば、流れを取り戻してみせます」
「…………」
「コーチ!」
「アンタらがいないからこうなったんでしょ⁉ 揃いも揃ってどこ行ってたのよ⁉」
「会場間違えました……」
「ったく、とりあえず、アンタを投入するわ!」
コーチがユニフォーム姿になった、コーンロウヘアーの女性の背中を押す。
「おおっ‼」
ギャラリーが湧く。コーンロウヘアーの女性がピッチに入る。
「へっ、いよいよ真打のご登場か……」
真珠が笑う。
「三人はもっと前目にポジションを取れ! 守備は自分一人で充分だ!」
「ああん⁉」
コーンロウヘアーの女性が出した指示に真珠がムッとする。
「舐めやがって! ボールを寄越せ!」
「むっ……」
ヴィオラが逡巡する。
「いいから寄越せ!」
「はいっ!」
ヴィオラから真珠にボールが入る。
「よっしゃ!」
「むん!」
「うおっ⁉」
素早く体を寄せたコーンロウヘアーの女性が真珠からボールを奪う、ボールがこぼれる。
「よっと!」
「ナイスパス!」
雛子からのパスが抜け出した魅蘭に通る。
「……ふん!」
「ぬおっ⁉」
コーンロウヘアーの女性が猛然としたダッシュで魅蘭に追いつき、ボールを奪取する。
「そらっ! ……リターン!」
味方にボールを預けたコーンロウヘアーの女性が川崎ステラのゴール前に駆け上がる。
「そうは……なっ⁉」
対応しようとしたヴィオラが驚く。浮き球がゴール前に送られてきたからである。
「ぬん!」
「ぐっ⁉」
コーンロウヘアーの女性と競り合うがヴィオラは簡単に吹き飛ばされる。コーンロウヘアーの放った強烈なヘディングシュートが川崎ステラのゴールネットを揺らす。
「決まった! 守備面だけでなく、攻撃面でも頼れる!」
「これが横浜プレミアム、不動のキャプテン、八景島紅!」
「さあ、反撃開始だ!」
紅と呼ばれたコーンロウヘアーの女性が両手を叩いて、チームを鼓舞する。
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