あじさい色のアミィ~永久に枯れない花束を~

二重人格のドジッ娘メイドアンドロイドが贈る、純愛ラブコメです!
ゴサク
ゴサク

37話 ぬいぐるみ、嬉しいです!

公開日時: 2020年11月21日(土) 20:15
更新日時: 2020年11月21日(土) 20:18
文字数:1,888

 ゴミを吸い続けること10分弱。ジュリさんはようやく満足したようで、スッキリとした表情で俺達の元へ帰ってきた。


「いや~ 一回掃除を始めると徹底的にやらないと気が済まないたちでな! 何か待たせちまったみたいだな、わりわりぃ! それじゃあオレ達はそろそろ行くわ! ほら進、お兄ちゃんとお姉ちゃんに挨拶しな」


「うん! 今日はジュリお姉ちゃんのこと探してくれてありがとうね! 恭平お兄ちゃん! アミィお姉ちゃん!」


「よし! 良くできたな、偉いぞ、進」


 良かった、進君も元気になったみたいだ。ここで会ったのも何かの縁だ、これからも遊びにでも行けたらいいかもな。


「あぁ、どういたしまして。そうだ! どうせなら連絡先の交換をしよう。どうかな? ジュリさん」


「おう! もちろんいいさ! 進も人見知りだからあんまり友達もいないんだ、むしろこっちからお願いしたいくらいだ」


「それじゃあ、私達はそろそろ行くね、バイバイ、進くん」


「うん、今度は一緒に遊ぼうね、アミィお姉ちゃん」


 俺達は連絡先を交換し、二人と別れて広場を歩いていった。少し変わった関係の二人、これからも仲良くできたらいいよな。


 …………


「いや~ 早めに見つかって良かったな。これならまだまだ遊ぶ時間はあるから、助かったよ」


「そうですね、本当によかったです。それにしても、ジュリさん、とっても優しそうでしたよね」


「あぁ、そうだったな」


 確かにジュリさんは粗っぽい所もあるようだけど、基本的には優しそうだったな。

 初めて会った時はどうなることかと思ったけど、ジュリさんがあんな事をしたのは進君を思えばこそだったんだろう。あんなに心配してくれるお姉ちゃんがいる進君は幸せ者だ。


 俺達は気を取り直して、遊園地を満喫すべく辺りを見回す。俺とアミィのデートの仕切り直しにふさわしい場所はないもんかな?

 そんなことを考えていると、俺の目に何やら賑やかなアトラクションが飛び込んでくる。


「おっ! 見てみろアミィ! 次はあれなんてどうかな?」


 俺達の目の前には的当てゲームがずらりと並んでいた。景品の種類も豊富で、アミィにプレゼントをするにはもってこいだ。


「アミィが欲しい景品があったら取ってあげるよ」


 俺の提案を聞いたアミィは、少し申し訳なさそうに目を泳がせる。


「そんな! よいのですか!?」


「あぁ、もちろんだとも。さぁ、どれがいい?」


「そうですね……それじゃあ、私、あれがいいです」


 アミィが遠慮ぎみに指差す先には、30センチ程の大きさのウサギのぬいぐるみが景品台の上に座っていた。ピンク色のモコモコした見た目はアミィによく似合いそうだ。


「解った、それじゃあ、行ってくるよ!」


「は、はい! 頑張ってくださいね! ご主人様!」


 俺はアミィにいい所を見せるべく的の目の前に立った。的まではそれなりに距離はあるけど、狙って当てられないことはなさそうだぞ。


 チャンスは三球。まずは第一投、俺は勢いをつけてボールを放る。


「ふんっ!」


 球は的を大きく外れ地面に落ちた。しかし、これで感覚は掴めた気がする。続いての第二投は、今度はちょっと方向重視で行こう。


「ほっ!」


 放られた球は的をかすめた。次はいけるぞ! ラストの第三投、俺は更に力をセーブしてボールを放る。


「せいっ!」


 球は真っ直ぐ的へと向かっていく。が、直前で失速して的の直前で無情にも地面へと落ちた。


「ダメだったか……!」


「ご主人様……」


 いや、ここで諦めては男じゃない。俺はいくらかかろうがぬいぐるみを取ることを決意した。


「すみません! もう一回お願いします!」


「そんな! 私はいいですから!」


 アミィは慌てて俺を止めようとする。しかし、それでも俺は行かなければならないんだ。


「いや、男には引けないときがあるんだよ、だから、アミィは安心して待っていてくれよ」


 俺の熱意が伝わったのか、アミィはグッと手を握りしめ、俺にエールを送ってくれた。


「解りました! それじゃあご主人様、ぬいぐるみ、お願いしますね!」


「あぁ、任せろ! アミィ!」


 アミィからの声援を受けて、俺は再び的の前へと向かった。大丈夫、さっきの感覚を忘れなければ問題ないぞ。


 …………


 結局の所、ぬいぐるみを取るのに要したのは十四球。思ったよりかかったけど、何とか取れたから良しとしよう。


「お待たせ、何とか取れたよ。ほら、アミィ」


 俺はアミィにぬいぐるみを渡した。


「ご主人様、ありがとうございます! ず~っと大切にしますからね!」


 アミィは満面の笑みでこちらを見つめている。この笑顔が見られるなら、この程度の出費は大した問題じゃない。

 俺達が的当てゲームを後にした道すがら、俺の隣で歩くアミィは、ぬいぐるみを抱き締めながら、終始微笑んでいた。

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