「うわぁ~! きれいですねぇ~!」
アミィは、目の前の光景に目を爛々と輝かせている。
照りつける太陽、薫る潮風、そして目の前に広がる青い海。俺達四人は『潮賀浜海水浴場』へとやってきた。
この海水浴場はレジャー施設も充実しており、施設の目玉の巨大ステージが目を引く。
高天崎市と比べたら周囲に自然は少ないけど、それでも目の前に広がる海は高天崎市にはないものだ。高天崎市から約一時間半、近場ので海水浴場といえばここしかない。
「今日は思いっきり楽しむぜぇ~! 何たって今年の夏は今年しかないからな!」
「何を言ってるんだか……まぁ、俺達、傍目から見たら男二人のムサい客だがな」
「何言ってんだ! アミィちゃんとキッカもいるだろ?」
「キッカ?」
キッカさんが昌也をギロリと睨む。その眼光はどう見ても主人に向けられるものではなかった。
「すいません! キッカさんキッカさん!」
このやり取りにも飽きてきたな。というか、昌也も飽きないのか? 飽きないんだろうな、ドMだから。
「それじゃあ取り敢えず水着に着替えようか」
「まぁ、俺達は脱ぐだけだから楽だけどな」
「それでは、私達は着替えてきますね! 少しお待ちくださいね、ご主人様!」
「行って参ります、ご主人。その間、荷物の方をお願い致します」
アミィとキッカさんは更衣室へと入っていった。俺達はどうせ脱ぐだけだから先に場所の確保へと向かった。
…………
俺達は場所を確保すると、借りてきたパラソルを立て、レジャーシートの上に座った。
パラソル越しに照りつける太陽は、俺達をじわじわと暖めていく。
「それにしても、楽しみだな~ 恭平!」
「何がだよ、昌也」
「馬鹿か! 水着に決まってんだろうが! み・ず・ぎ! それでも男か! お前は!」
「そんなに騒ぐことかよ……このクソ暑いなか元気な奴だな、お前は」
「いやいや、侮ること無かれ。メイドアンドロイドの水着、これが意味する所はだなぁ」
「ふむふむ」
「メイドアンドロイドの持ち主の性癖が出るってことだよ! もちろん、俺も含めてな!」
力が入りすぎて怖いんですけど。まぁ、昌也も俺も人並みに男だからしょうがないか。
「何を期待してるのかは知らんが、アミィの水着は普通だぞ」
「どうだかねぇ」
そんな下らないやり取りをしていると、アミィがこちらへやって来た。
「ご主人様ぁ~! お待たせしましたぁ~!」
俺は見た。この世の天国を。そこには純白のワンピース水着を纏った天使がいた。
その肢体は一切の無駄がない完璧な流線型。許されるなら、人目を憚らずなで回したい。
「あ……あ……」
俺はただただ、言葉を失うだけだった。
「どうされましたか? ご主人様」
アミィは上目遣いでこちらを見つめてくる。その顔は、みるみるうちに赤く染まっていく。
「そんなに見つめられると……恥ずかしいですよぅ……ご主人様」
「グッ!」
頬を赤らめる仕草に俺は昇天しかけた。文字通り悩殺、これは俺の人生のなかでも屈指の危険度だ。
「戻ってこい戻ってこい、ガチロリコン」
「ハッ!」
俺は昌也に呼び戻された。いや、冗談じゃなく普通にヤバかった。
「すまん、助かった、危ない危ない……」
「全く、これだからロリコンは……」
クソッ! 反論できない! 悔しいのう悔しいのう。それでも、俺はこの性癖をどうこうしようとは思わない。
「何を騒いでるんですか、お二人とも」
続いてキッカさんがやって来た。俺達はその姿に思わず目を奪われる。
キッカさんの水着はド派手なワインレッドの三角ビキニ。その面積はお子様にはとてもみせられないほどギリギリを攻めている。
その艶やかなボディは、出る所は出て引っ込む所は引っ込んだモデルもかくやのスタイルだ。
そして、その手には、その格好には不釣り合いないつもの箒が握られていた。
「さすが4961型、凄いな……」
ふと隣を見ると、昌也が恍惚の表情を浮かべている。鼻の下は伸びきり、目にはうっすらと涙を浮かべる。
「恭平……生きてるって素晴らしいよな」
そりゃそうよ。
「何をジロジロ見てるんですか? ご主人」
キッカさんが汚物を見るような目で昌也を睨む。その眼光は、昌也を殺さんばかりに鋭く貫く。
「ああああああ!!!」
昌也が汚い高音を発しながらのたうち回る。恥ずかしいから止めてくれ。
「いいから起きろガチドM」
「くっ……今日の所は敗けを認めてやるぜ」
「アホか」
俺は昌也を引っ張り起こした。悔しいけど俺達は似た者同士、だからこその腐れ縁なんだろうな。
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