10分程すると、二人共何とか落ち着いてきたようで、俺がジュリさんに経緯を説明すると、ジュリさんは俺に謝罪してきた。
「悪ぃ! 俺の勘違いだった! スマン! この通り!」
ジュリさんは手を合わせて深々と頭を下げた。さっきまでのジュリさんとのギャップに、俺はちょっと困惑した。
「いや、解ってくれればいいんだよ、俺達、そこまで気にしてないからさ」
「そうですよ、頭をあげてください。ジュリさんが進くんの事を心配していたのはよく解りましたから……」
俺達がそう言うと、ジュリさんは顔を上げた。
「そうか! お前ら、進を保護してくれて本当にありがとうな! あぁ、自己紹介がまだだったな。オレの名前はジュリ、進ん家のメイドアンドロイドだよ。親がいっつも仕事で居ないからオレが進の親代わりみたいなもんなんだ。もし良かったらこれからも仲良くしてくれよな!」
ジュリさんはニッと笑って俺達に自己紹介をした。
どうやらジュリさんは普段はサッパリとした人当たりの良い性格のようだ。口元で八重歯がキラリと光る。
「俺は響 恭平。宜しくね、ジュリさん」
「アミィと申します、宜しくお願い致しますね!」
俺達もジュリさんに名乗り返す。俺達の自己紹介に、ジュリさんは満足そうにうなずいた。
「それにしても、保護者がメイドアンドロイドっていうのは珍しいな、何か事情でもあったのかな?」
ジュリさんはちょっと呆れたような口調で俺の質問に答える。
「いやな、進がどうしても遊園地に行きたいって言うもんだから、両親に内緒で連れてきちまったんだ。まぁ、オレが居れば何も問題無いって思ってたんだけどさ。実際にはこの様さ、笑っちまうよ」
ジュリさんの言葉を聞き、進君が口を開く。
「ゴメンね、ジュリお姉ちゃん、勝手にジュリお姉ちゃんの側を離れちゃって」
「いや、進をよく見ていなかったオレが悪ぃよ。俺の方こそゴメンな」
「ううん、勝手にジュリお姉ちゃんの側を離れたのはぼくだから……」
「あ~ この話は終わり! 切りが無ぇ!」
ジュリさんが両手を広げながら話を打ち切った。そんな中、俺はジュリさんを眺めながら思わずつぶやいた。
「それにしても、何なんだろうな、アレ」
俺はジュリさんの脚の両脇にある長い筒の様なものに目をやった。その視線に気付いたジュリさんが口を開く。
「あぁ、これが珍しいのか? 解るよ、普通のメイドアンドロイドにはこんなもの付いちゃいねぇもんな」
「あ、ゴメンね、じろじろ見ちゃって。確かに、初めて見るよ、そんな大きなものを脚につけたメイドアンドロイドは」
「いいって! そんなのは慣れっこさ。これはな……こうやって使うんだ!」
ジュリさんが長い筒の様なものを地面に対して45度程になるように動かし、地面に落ちているゴミの前まで持ってきた。
すると、その黒い筒にみるみるうちにゴミが吸い込まれていった。どうやら、これは掃除機みたいだな。
「オレはな、お掃除専用メイドアンドロイドなんだよ。ま、他の家事も一通りは出来るけどな。進ん家がムダに広くてなぁ、オレの仕事が多くて参るぜ」
掃除機は次々とゴミを吸い込んでいく。妙なことに、さっきからゴミを吸うばかりで、ゴミをどこかに貯めている様子もない。
「……ちょっといいかな? ジュリさん」
「何だ? 恭平」
「その掃除機なんだけど、吸ったゴミはどこにいってるのかな?」
「さぁ、考えたこと無いから解んねぇや! ゴミを捨てる手間もねぇし、オレは楽で助かってるんだ!」
「さぁって……」
俺は何とも釈然としない疑問を抱えたままジュリさんがゴミを吸い込む様を眺めていた。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!