10階には9階にあるカウンターへ行く必要がある。吹き抜けがない代わりにそこに上に上がる為の通路があるのだ。
「いらっしゃいハルトさん。今日も売り物をお持ちで?」
「いやw今日は上に用があってな」
ここには生産職連合会議に雇われた来訪者の受付嬢がいる。かなり高頻度で武器を売りに来るせいだろうがもう見知った仲だ。
「わかりました。後の御二方もお連れ様…あ、新しくリリースに入ったって言う?」
「そうそう」
「えーと。確か、スーパーギャップ萌えの軍曹と小悪魔少女のヒヒリーさん!」
「ちょ!?ギャップ!?!?」
「おいコラ!美を付けろー!美をー!小悪魔美少女でしょーがー!!」
個性の塊みたいなメンバーだからなw
新メンバーとはいえリリースに入った時点で世間からの注目度は一気に跳ね上がる。そして2人とも特殊な戦い方だからな。
数多の兵隊人形を操り「戦術」を個人で繰り出す軍曹。
多彩な攻撃やサポート手段を持ちポーションを用いたデバッファーのヒヒリー。
2人とも物理的な媒体を主体とするプレイヤーだが物が違えばここまで戦闘スタイルは変わるんだな。個人的にはヒヒリーとはもうやり合いたくは無いな。勝てるとは思うが回りくどい搦手がバカスカと飛んでくるとか、やっててめんどくさい。
受付嬢はそのまま俺たちを10階に続く通路へ通してくれた。そして10階には外部に一切情報が出回らないアイテムや素材、装備などがずらりと並ぶ。
「おおー!!!?」
「す、凄まじいでありますね…。見たことないアイテムや素材がこんなにも…」
CSFは各ギルドがそれぞれ得意な分野を提供し合って出来ている。多少の秘匿はあるだろうが、それぞれがそれぞれの分野でほぼトップレベル。
インフォメーションコーポが情報管理を。
生産職連合会議が生産職を。
開拓使団が未開の地の情報や素材の収集を。
闘技戦士団が戦闘技術を。
Jチームが戦術や検証、雑務を。
この中でJチームは浮いているように見えるが、その他特徴的すぎるギルド同士の人手不足や来訪者からのクエストなどにもすぐに対応できる組織力が個性だと俺は思う。
リリースは…広報か?w
いや、名前の通り、力の解放。つまり革命だな。
ひとまず騒いでどこかに消えそうなヒヒリーが動き出す前に目的地に進む。
目的地と言ってもどこに居るのかは分からないからそこら辺を探し歩くだけだ。フレンド一覧からメールを送ったら居るとは言っていた。おそらくキリアとは合流済みだろ?
案の定。キリアと俺たちが探していたジークはこっちを見て手を振っていた。
「♪」
「おぉ、ハルト。よくきた。今キリア嬢ちゃんに新配合の爆薬を渡すために移動しておったところじゃ。後ろの2人も聞いておるよ。軍曹とヒヒリーじゃな?」
「おい、また物騒なもん作らせようとしてないか?w」
「お初にお目にかかるであります!軍曹であります!」
「おじい…ちゃん?若いよね?んまぁー、よろしくぅー。ヒヒリーでーす」
まあ、初見ならヒヒリーの反応が正解かもな。
このジークという妙に年寄り臭い口調の男は生産職連合会議のギルドリーダーだ。この口調なのにアバターはおじいちゃんとはかけ離れた青年なのである。ゼッテェわざと違和感増し増しロールプレイだろ?w
こんな変なやつだが腕は確かだ。建築が得意らしいが、武器作成や農業、さらには料理もできるらしい。システム的なアシストもあるが噂によるとかなり上手に作るのだ。
「して、ハルトよ。用事とはなんかの?」
「こいつらの紹介とニワタリが落とす…というかは生産する素材についてだ」
「なにぃ!?」
大きな声でうるせぇな…。ジークがいきなり大声上げたせいで視線を集めちまってるじゃねーか。
「どこか話せる場所は?」
「…っ。スマンの…こっちじゃ」
ここはCSF限定とはいえおそらくギルド内でもあまり広げたくはない情報だろう。そのこと察してジークに呼びかけるが、既に新しい素材について知りたいのかかなりの早歩きで応接室らしき場所に到着した。
おい、ロールプレイ剥がれかけてるぞぉーw
さてサクッと内容を要約するとこうだ。
俺たちリリースはおそらく唯一無二の素材を入手出来る。しかもかなり高レアリティのものだ。
それらはニワタリ言わく、一日に1個だけ譲ってくれるようである。
そしてその素材なのだが、ニワタリの意思で種類が幾つか変えられるようだ。
・酉の羽根
・八咫烏の羽根
・鳳凰の羽根
・結晶の羽根
・不死鳥の羽根
・羽根矢
・結晶矢
・酉の尾羽根
・〔結晶〕のオーブ
・〔応急処置〕のオーブ
・〔医学〕のオーブ
この際、俺の感想を添えておこう。
はっきり言ってぶっ壊れだろw
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