*>>三人称視点
コンコン
軽いノックの音が聞こえ、ハルト達5人がいる会議室に1人の女性が入室する。
「お呼びと聞ぃて来てみればぁ」
「おお、ちょうどいいところにきたの」
彼女はお淑やかな立居振舞に、長い黒髪を綺麗にまとめあげた金色の瞳を持つ。なんと言っても特徴的なその容姿は紫メインの色とりどり、何重にも重ねられた色が覗く和服により美を極めていた。
ハルトとキリアは2人で首を傾げている。はて、そんな綺麗な人今までこのモールで見たかな?と。
「す、すごい!十二単衣?…かな!?」
「おやぁ、お目が高ぃ。正確には再現してまへんがその通りですぅ」
「♪」
生産職であるリリース4人の目から見てもこの衣装はすごい。一体これを作るまでにどれほどの苦労をしたのか。モデルが十二単衣なら、見た目にこだわったまま楽に動けるように軽量化したりしなきゃならないことを考えて少しブルブルっと震えたヒヒリー。普段お調子者口調であるが彼女も生産職としての知識はそれなりに高い。
「いい腕だな」
「そうじゃろう。そうじゃろう」
ハルトに賛辞を貰えてさぞ満足そうなジーク。ジークが作ったわけじゃないだろう?と少し疑問に思ったハルトだがその答えはすぐに解消することとなった。
「自己紹介がまだでしたぁ。うちの名はクリィームぅ言いますぅ。そこに居るジークの嫁ですぅ。よろしくぅねぇ」
…
「「「なにーーーーー!?!?」」」
キリア以外の声は息ぴったりで会議室を揺らした。キリアは小さくパチパチと拍手しながらにこやかである。
唐突なカミングアウトに空いた口が塞がらない3人。その中でもハルトの驚愕たるや想像を絶するだろう。
心の中では、お前嫁なんかおったんか!?と、この変人になりかけのジジイ(ロールプレイ)が嫁ぇ!?と大忙しである。
そりゃお嫁さんを褒められれば誰だって嬉しいだろう。そう合点がいく回答ではあった。
「お、お前…既婚者だったのな?」
「そうじゃの。スカイスクランブルイベントで出会ってのー。1週間前に籍を入れたところじゃ」
「バリバリの新婚じゃねぇーか!?」
「おめでとー!!」
「ご結婚おめでとうであります!」
「ありがとぉ」
「んじゃ…一応自己紹介といくかw」
ハルトはとりあえず自分の名前と職業を話し始めた。
*
少しして、お互いの自己紹介を終えクリィームを加えた6人はハルトの持ち込んだいくつかのサンプルを前に話し合いを再開していた。
「これがその羽根ですかぁ」
「ナユカの浴衣にこれを使用したい。ただ…皮や布、絹は魔法付与こそ多く受け付けるが剣や鎧のような金属を溶かし込むなんてことはできないからな…。一応黒龍の鱗を編み込んでいるが、それもかなり無理やりだ」
「そうですねぇ。あの浴衣は現状でもぉ、かなりのものだと見てましたがぁ、鱗を編み込むのもかなり苦労したのでは無いですかぁ?そこにこの羽根もつけるとなるとぉ。難しぃですねぇ」
「あの浴衣は一応、ユキが作ってるんだが。ユキも難しいと言っていたな…。やっぱり無理か?」
「ただでさえあの服は物理防御も高いのでしょ?これ以上変に強化すると見た目悪くならない?」
「…」
「そうじゃのぉ…無理に強化するとそれぞれの効果が邪魔をする事例も確認しとる…布面積を増やす手もあるのじゃがそれも動きを阻害しかねん」
なかなかの難問。既にナユカの装備は完成されている。ハルトは製作者としてそのことは自負しているし、その他5人もハルトとユキの無駄のない仕事に感心し苦悩している。
完璧な装備というのはそれ以上何かを差し込む余裕が無いということなのだ。
「人形使い的には…。もういっそ新しい装備として2つ目を作るのはどうでありますか?今の装備と違う装備は新鮮味があって〔魅力〕的にもいいような気がするであります!」
「二着目か。確かにそれでもいいのかもしれないなwただ効果はどうする?」
「これさぁー。新しく作れるなら全部の羽根使えたりしない?それかもう何着も作っちゃう?特化型衣装!!かっこいいじゃん!!」
「特化型をぃくつか作るのはありやねぇ。浴衣にこだわらなくてもぃぃしぃー」
「複数作ってもそんな金ないぞw?」
「コアとなる素材はそっち持ち込みじゃ。そう大して大金にはならんのじゃないか?」
「ぃまのところぉ。五着想定して5億Gあればぃけますよぉ?」
「なら大丈夫か」
何がどうやったら大丈夫なのか。少なくともナユカはそんな大金持ってはいない。
だが現状リリースのメンバーで1番お金を持っているのがハルトなのだ。彼の売る武器はかなり高額で取引されそれなりに稼いでいる。彼からしてみれば5億Gくらいなら払える額だということになる。
ちなみに、2位は横にちょこんと座っている小さな爆弾魔だったりする。
こうしてナユカの知らぬところで総額5億Gほどの取引が成立した。
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