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「ちょっと!ヒカリ。待ってください!こんなみんな戦っている場所から離れてはポイントが稼げませんよ?それに今、アインズを落とされるとスカイスクランブルのイベント自体が失敗する。そういったのはヒカリですよ!」
少し薄暗い下り坂の洞窟。その場所を迷いもなく進むヒカリ。そしてその後ろを、アキアカネがついて行く。
「アキ。違和感無い?」
「違和感?」
そう問いかけられて首を傾げるアキアカネ。アキアカネは考えるが別段違和感など感じない。今回初めてのストーリー型のイベントとして、プレイヤー側はなかなか順調に進んでいる。
イベント:スカイスクランブルとは。
ある日、とある場所で空に浮かぶ浮島郡が発見されることとなる。
その場所には貴重な資源や見たこともない生き物が跋扈し、ここにある資源を求めて、プレイヤーが町を1から作ろう。と言うイベントだ。
そして現在、プレイヤーはそのスキルや知識、あるいは戦闘力などを使ってそれぞれの主要ポイントに町を形成することに成功した。が、そのタイミングで、とんでもない数のモンスターがその浮島群。後に、プレイヤーの中でも特に持ちずくりに貢献したプレイヤー達が「アインズ」と名ずけたそこに、その町を滅ぼさんとモンスター達が集まって来ていた。そして今、プレイヤーは自らが作り上げた町を必死に守っている。
「違和感…って言われても。なんか変なことあった?」
やはりわかっていなさそうなアキアカネにヒカリは目もくれず前に進む。
「ある。ひとつ。モンスターの種類。今現状。鳥型と猫型のモンスターが確認されている」
「うん」
「そして。鳥は初めからこの浮島に生息してた。モンスター。対して。猫。この襲撃イベントから新しくどこからかやってきた」
「うん?あ、確かに」
「そして。その二つのカテゴリー同士。戦闘しているのを何回か目撃している」
「確かに何故か仲間割れしているモンスターもいた」
「ふたつ。前半は鳥が町付近を。うろついてた。でも現状、町を攻めているのは猫型のみ」
「え?」
「みっつ。町の素材は何故か。色んなもの。あった。初めから何かに襲われること前提のように。そして、元々いた鳥は。定期的に町を襲う素振りをしていた。のに。1回も集団では来ていない」
確かに、アキアカネはヒカリの言葉を聞いて思い出す。このイベントは確かに初めからどんな町を作るのか。どうすれば町ができるのか。そういうノウハウの部分は何かしらの素材と共に設計図として落ちていたように思う。別段、こういうゲームの仕様だと思っていたが、確かにおかしい。
「まさか。何かが私たちにそうさせた。って言いたいの?でもゲームのイベントとしてはこれが普通なんじゃない?」
「確かに。始まりは。運営のイベント情報だった。でもこのスカイスクランブルは何をするかはイベントが始まってからの解禁で。正確には指定されず。私たちは町を作ることがゴール。そう思っていた」
「そうなのでは?」
「違う。たぶん。違う」
確証は無い。無い…、がどこか確信を持つ言い方に何か引っかかるアキアカネ。
「以上みっつから考えられる。私の予想。本当の「スカイスクランブル」のゴールは…」
「ゴールは?」
「まだ…。分からない」
ズルっ!!!!!?
ヒカリの言葉に思わず足を滑らしたアキアカネ。そして地面はゴツゴツした洞窟の地面だ。
「痛い…。いや痛くは無いけど。ダメージ入ったし…」
強打したおしりを擦りながら、滑り落ちたおかげでヒカリに近づいた。
「…」
「ちょっと!ヒカリ。聞いてる?」
ヒカリに話しかけるも、洞窟の先を見て固まるヒカリ。アキアカネはヒカリの視線につられて視線を前に移し…。
「なに…ここ?」
目の前には暗い洞窟とは比べ物にならないほど。キラキラと輝く無数の結晶の塊。青く淡い輝きを放つそれは、洞窟の壁や天井一面に大量に生えており、そこだけ違う世界のようだ。そして、そんな煌びやかな空間に横たわる白いもふもふ。
「ほう?さっきの小娘といい、今日は客が多いこっこ」
その白いもふもふは重たげに体を起こすと、ヒカリとアキアカネの方に向き直った。
「なにあれ?」
「NPC?」
呆気に取られるヒカリ達。よく見るとその白い体のてっぺんには真っ赤な冠が乗っている。
どっからどう見てもニワトリだった。大きさを除けば…。
「まあ良い。お主達にも試練を与えようこっこ。見事我に勝てたなら、褒美をさずけようこっこ」
少し態度がでかいニワトリ。ヒカリ達に話しかけるもその2人は未だに固まったままだ。あまりに動かないので、恐怖で動けないのかと、ガッカリするニワトリ。だがしかし…。2人はおもむろに口を開いたのだった。
「ヒカリ…」
「アキアカネ…」
「「なにあれカワイイ!」」
…
「コケぇ?」
こうして、2人はニワトリと戦うことになる。そのもふもふ求めて。
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作者コメント
さあ、1部過去解禁。ナユカ無き時代の物語へ
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