「いやー。いいなぁ。戦闘機。…それに一考の余地があるぜ…」
ミカは、戦闘機を見つめるあまり遅れて北に進行している。
と言っても、そのおかげで戦闘機を救えているので、お咎めはないが、北の闘技戦士団はその分、負担を強いられていた。
喜んでいるのだが…。
マップ上では既にユキ、ナユカが戦闘を初め、アキアカネは闘技場周辺を完全に制覇。敵の残党も減ってきている。
残るは現時点で南と北。ここが落とせなければ相手は撤退するしか方法が無いだろう。
場は圧倒的にCSFが優勢を維持してきていた。
もちろん、そんな戦争はアキアカネの動画や、公式から見ることができるので、世界中に拡散されている。
作戦、練度、技術、対応力その他諸々、全て相手より圧倒しているCSF同盟を見て、絶対に喧嘩を売らまいと心の中で誓う者。逆に、いつかあいつらを倒してやろうと闘志を燃やす者。千差万別であった。
「この感じだと、こっちがラストだな」
「全く、ほんとに歯が立たないよ…。味方も減って敵はどんどんこっちに来るし」
「まあ、それはあれだな。喧嘩売る相手を間違えただけだぜ」
「君に言われるとなんだか怒りよりも清々しくなるね」
「褒めても何も出ないぜ?」
相手は両手を広げお手上げのポーズだ。そんな行動に首を傾げるミカだが、考えてもわからなかったのかミカはその手に持った重砲をかまえた。
「とりあえず吹き飛べっ!【ドーン】!!」
相手が何を言おうとも問答無用で重砲からビームをぶっぱなす!
それを素早く飛び跳ねながら横に回避した相手はミカ目掛けてその背中から10発のミサイルを放った。
ミカはミサイルを見て、回避行動を始める。しかし、ミサイルはそのままミカ目掛けて軌道を変えた。
「ほう…」
その様子に感心しながらミカは考える。
(最近は実物弾が流行りなのか?それにしても〔追尾〕か。羨ましいな)
意外と余裕そうだが、それもそのはず、ミカは重砲をそのミサイルに標準を合わせて、1発だけ攻撃。
技でも何でもない。ただのビームをほんの少し垂れ流した。
そのビームは見事、ミカを追いかけんとしていたミサイルを全て撃ち落とす。
「〔追尾〕はいいが、結局一方方向から飛んできてたら意味が無いな」
「なかなか厳しい評価で」
「うちなら何とかして、追尾しながらも相手を取り囲むようなミサイルにするな!」
「なるほど、参考になります」
いったい持って、どうしてミカが上から目線なのか分からないが、はたから見たら相手の方が身長も見た目も年上だ。
「名前は?」
ミカは相手のことを呼称しようとして名前を知らないことに気がついて、相手に今更ながら問いかける。
「これは失礼。私の名前はミストラル。ミサイルとも呼ばれますね」
「そうか。お前がうちのターゲットだな」
「聞きたくない文言でしたが致し方ありません…。私も上級者としての意地がありますので」
「なるほどな」
「しかし…、私はあなたにとても感謝しているのですよ」
「あ?なんでだ?」
「それはもちろん、私にミサイルの可能性を提示してくれましたからね。〔電力〕の発見。これは私のロマン。ミサイルを作るのに必要不可欠であり、どうしても越えられない壁だったんです。ですが、あなたが。教えてくれたんですよ。〔電力〕を。私はあの日からミサイルの制作に火がつきまして」
「…爆発するぞ?」
「それはもう!完成した時には爆発でした」
「それは感情がか?それとも物理的にか?」
「両方です」
「ブハッ!」
そんなミストラルの痴態に爆笑するミカ。
「あははは!わかる!わかるぜ!!だいたいみんなそういう過程を辿って来るからな!原因は〔機械作製〕だろ?」
「!?わかるのですか!ええ!そうです!そのスキルが無いまま私はミサイルを作り、見事爆散しました!」
「だよなっ!うちも最初ビームの試射したら爆発したぜ!」
「そうですかぁ。あなたも同じ道を通ってきたのですね!」
「あぁそうさ。うちだって必死に作り上げたのがこいつだからな!」
「分かりますよ!私も初めてこの子ができた時の感動と言えばもう…」
2人は意気投合する。それは、同じ苦難に立ち向かった者同士の敬意と、賞賛。
全く違うものを作り上げた2人が、何回も試行錯誤を繰り返して築きあげたその機器は自らのことも言えるほど。
ミカはそんな同士にフレンドコードを飛ばす。
ミストラルも流れるように承諾した。
「なあ、ミストラル。うちに。あんたの今の最高を見せてくれよ。うちも、あんたに見せるぜ。最高の一撃を!」
ミカはキラキラと目を輝かせながらミストラルに言う。
ミストラルも目を見開くも、次の瞬間には笑って。
「わかりました。今の持てる力を」
「戦争なんて関係ない!」
「はい!ロマンとロマンのぶつかり合いに!」
「「全力で!!」」
会って数分でここまで意気投合できるのは、彼らがオタクだからか。それとも…。
「装備:過赤煌槍砲」
「では!【タスラム】!」
今までにないいかつい巨砲を装備したミカ。
対するミストラルは【タスラム】と名ずけられた巨大なミサイルをミカ目掛けて発射した。
ミカの巨砲に光が集まる。
「行くぜ?【アストレイ】」
ミカが唱えると同時に。張り詰めた空気が、まるで歪むように一瞬で巨砲に集まり、そして。ミサイル目掛けて、音すらも光すらも置き去りにしたような錯覚とともに飲み込んだ。
ちなみに、次の瞬間にはミサイルも、そしてミストラルも。一瞬でHP全損だったという。
しばらくして、その砲撃地には、大きなクレーター。そして、辺り一面。一直線に何も無くなった土地だけが残ったという。
そう、ミカもいなかった。
「スーサイド・ボミング」またの名を、「自爆砲」と言う。
ちなみに、この砲撃で、きたにいた殆どの敵と、闘技戦士団は吹き消し飛んだという。
ビームはロマン。
ミサイルもロマン。
そして。
自爆もロマンだろう?
こうして、この戦争の最後は、実はやっぱり爆発オチという。なんとも言えない空気の中終わったのだった。
後日。
ミカはめちゃくちゃ怒られましたとさ。
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