「よっと〜。ほいっと〜。どっこらしょ〜」
「軽い掛け声の割にやってることは化け物コケ…よくそんなほかのプレイヤーをばったばったと倒せるコッコ」
別に私は私を倒しに来たプレイヤーの致命傷となりうる場所をタガーで切りつけただけ。力も相手が勢いよく来てくれるのですぎ去り際にそこに刃を当てているだけだ。
行動もわかりやすい。乱雑にばらまかれた弾幕。近づかれて焦るプレイヤーはその手に持った武器のみに神経を尖らせ私を一直線に狙うのみ。
人は日常生活の中で武器を持つなんてことはほとんどない。あってもゲームでありその武器は相手を切ろうが、己を貫かれても視界が消え、You deadの文字が浮かぶだけだ。
つまり、相手から向けられた武器にも、自身が持つ武器ですら持ち慣れてはいない。
「ニワタリもしっかり倒してるよ〜?」
「ぬかせ、ほかのプレイヤーごときに負ける我ではないコッコ。そもそも基本性能もスペックも違うコケ」
そんなに不思議がられてもリリースメンバー全員に当てはまるけどね?
私たちリリースメンバーは強い。ただし、ワンorワンなら少なくとも上位プレイヤーなら勝てるだろうメンバーもいる。私たちはそれぞれ極端な性能をしている。
ナユカはもちろん。自身の力やその身に宿す人を惹きつける何かを。
アリアは誰よりも広範囲を一撃で破壊する魔法とギルバートを。
ハルトは剣を用いた近接戦闘とその手製の剣から繰り出す攻撃を。
ビュアは隠密、足止め、そして何より実況者としてみんなを間接的にサポートを。
ミカは超遠距離高火力な一撃と戦闘機を。
ヒカリは解析力と頭と連携を。
アキアカネは闘技場とニワタリと連携を。
キリアは多彩で破壊的なアイテムを。
軍曹はひとりで多を生む数の暴力を。
ヒヒリーはどんな状況をも覆せるポーションを。
ふむふむ?破壊系の特徴を持つメンバーが多い?…そんなこともあるさ〜!
何が言いたいのかと言うと、得意不得意があるし、それをみんなが理解している。みんながみんな、ナユカを中心にその持てるものを最大限活かせる立ち回りを理解している。
私は強い。このメンバーの中でもただただ強い。強くないといけない。
私が負けるなんてナユカは思ってすらいないのだから。私の〔妖力〕がそう言っている。
私が負けるなんてイメージが「そもそもない」。
これは私の力を引き上げる。そして私は圧倒的強者で居続けることを縛られているに等しい。
負け無しの白雪姫。
これが私の「イメージ」。私だけのイメージなのだから。
妖力は他者からのイメージを保つことで効果を発揮する。いわば客観的視点に縛られることを余儀なくされるとも言える。
別に負け無しを求めたわけじゃない。負けてもいい。でもみんながそれでこそ私だと言うのなら。その力をナユカのために意地でも守り抜いてやる。
圧倒的強者を。負けるなんて微塵も感じさせない覇者を。貫き通す!
「〔ジャンプ〕ってこういう時便利だよね〜」
「なんじゃ?いきなりコッコ」
「だってこういう地面移動を〔ジャンプ〕で進めるなら〔飛行〕のMP消費抑えられるでしょ〜?」
「そんな勢いよく跳ねたら障害物にぶつかりそうコケ」
「気合いで躱す〜」
「それができるのはお主かナユカだけコッコ」
また今度、時間を見つけて〔ジャンプ〕を取得しておきたい。何よりナユカとお揃いだし!
「せいや〜!」
ウサギは的が小さくて狙いずらいね〜?
「む?この先を超えたらウサギの親玉コッコ!」
「ならさっさと終わらせてしまお〜う」
この後夕方からナユカはとある用事がある。現在時刻的に今日中に素材を届けるのが精一杯だろう。用事までにこれを終わらせて、ナユカの隣にいてあげなければ。
彼女が安心して力を引き出せるように。
私は守人。とある王族の姫様付きの守人だ。彼女の大事な用事を守るのもその仕事なのだ!
ついでにその後パジャマパーティーを計画中なのも仕事のうちなのだ〜!!
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