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"293"  【兎ノ結】

公開日時: 2023年3月26日(日) 13:53
文字数:2,215



 ここは湖の上。優雅に水面に立つ白猫。対するはバカップルことアリアとハルトだ。


「アリア、俺が近距離に持ち込む。援護を頼んだ」


「了解ですわ」



「わても近接特化やでぇ?」


「ほう?」



 素早くステップを踏んだかと思うと白猫は瞬く間にハルトのそばへ駆け寄る。

 それはハルトがギリギリ目で追える速度で、全くもって体は反応してくれない。


「なにッ!?」


 鋭い一撃で白猫はその手に埋もれた爪をハルトに振るう。



「ガハッ!!」


「ハルトッ!!」


 モロに攻撃を腹に受けるハルト。何とか墜落を間逃れるもHPをそれだけで半分ほど失った。あまりの攻撃力の高さに戦慄する。


 ハルトに追撃を入れられる前に、アリアは水の弾幕を白猫目掛けて解き放った。


「ぬるいぞ?」


 アリアの弾幕もぬるりと回避しさらにしっぽから魔弾を放ってきた。


「近接特化じゃねぇーのかよッ!」



 だが、アリアのおかげで体制を立て直したハルトが白猫に斬り掛かる。

 それも見えていたのか白猫は空中でヒョイっ!と体制を変えると剣を見事に躱して再び水面に優雅に着地して見せた。



「やべぇな…」


「早すぎますわ…。でもHPはそこまでなさそうですわね」



 素早さ攻撃力が異様に高いがその分HPは低いとアリアは考える。その憶測は正しく、実はこの白猫。体力はとても低く通常魔弾が一発直撃しただけで致命傷なのだ。

 それゆえガードもできず回避しか選択肢がない。


 また、白猫は普通のネコと何ら変わらないサイズである。小柄なほうと言っても過言では無い。


 数度ハルトとアリアが連携し白猫目掛けて攻撃を繰り広げるも、その攻撃は1度も当たることはない。


 ハルトの攻撃の合間を縫うように飛ぶ魔弾も全て軽々と避けてしまう。

 

「ちっ!」


「ホレホレ。ぬるいぞ?」


 何をどうしようと、ひらりひらりと回避してしまう白猫。さらにその合間合間に攻撃を返してくるほどだ。まるで何もかも見えているかのように攻撃を躱す。


「「ウォーターピアス」!」


 ここで、普通の魔弾では当てることすら出来ないと踏んだアリアが、速度重視の〔魔法〕を放つ。

 それを見て同時に白猫が回避しにくい位置に攻撃を置いたハルト。


「ほう。読みはよぉてよ?」


「なんでんな空中でクルクル回れるんだよッ」



 それでも白猫は余裕なのか、ハルト達に話しかける余裕すらあった。

 実力差は歴然。それでも立ち向かうハルト。その手にはいつの間にインベントリから取りだしたのか。青い液体の入った小瓶を手にしており、それを隙を見て飲み干した。


「アリアッ!お前は攻撃を続けろ!俺を気にせず弾幕をばらまけッ!」


「わ、わかりましたわ!」


 青白い発光を纏いながらハルトは突き進む。アリアもハルトを気にせず弾幕を散らし始めた。

 ハルトの考えを読み取ったアリアはさらにスピードよりの弾幕を置くように配置する。



「よいぞ?わての逃げ道を減らし障害物を置く。でもまだたりぬ」



 そこに先程よりもさらにスピードが上がったハルトがアリアの弾幕を縫いながら斬り掛かる。


「【兎ノ結とのゆい】ッ!」


 さらに剣速の減速一切なく切り返し、一撃目を回避した白猫を再び斬り返す。

 

「ムッ!?…危なかったぞい?」


「おいおいw。終わりじゃねぇぞ?」



 ニ撃目すらよく分からない姿勢制御で回避して見せた白猫にハルトはそれすらも想定内と三撃目、四撃目を次々と放つ。


「ッ!」


 さらに既に回避先にハルトの剣撃が迫っていたのを目前で爪で〔パリィ〕する白猫。

 ハルトの剣撃は物理的にありえない速度で切り返される。斬り返すのに減速も加速もなくまるで進む方向だけが切り替わるようなそんな不思議な剣さばき。


 【兎ノ結】は剣を振るための加速。剣を振り切ったあとの減速。この繰り返しで連撃する普通の剣さばきの前後を切り取り、常に最高速度で、常に瞬間で剣をその場で止める。

 後隙も前隙もない剣撃。それが【兎ノ結】だ。


「おいコラ、なんで躱せんだよッ!」


「何年生きてる思うてん?わて、これでも長寿やで?同じような攻撃見たことあるさかい。その技は反動で色々つくんやったか?」


 それでも、そんな人外じみた攻撃でさえ全て躱された。さらにハルトは内心毒づく。この技の弱点さえ知られているとは思わなかった。と。



 【兎ノ結】に使われるスキルのうち〔クリップ〕は物理的動作と動作の間を切り取ることができる。だがしかし、使いすぎる身体を酷使しすぎて状態以上になる上、さらに途中から何故か使えなくなる場合がある。

 後者はこの時まだハルトも獲得していない〔気力〕のSP切れであるが、この時はまだ解明されていない謎だったのである。


 故にそう連発して使えばむしろ不利になる可能性のある諸刃の剣だった。


「それまでにお前を倒せばいいんだろw」


 だがしかし、ハルトはその表情を崩さずに白猫に挑発的な笑みを見せた。


「まだほざくかたわけ。わてには勝てんて」



  もちろん、ハルトもこのままでは勝てるとは思っていない。でもこの場にはもう1人。日頃からよく知ってる幼なじみの彼女がいるのだ。そしてそのアリアは攻撃の合間に1度MPを全快させ、水面スレスレに立つようにして詠唱を開始している。詠唱の長さや聞き覚えのない単語に十中八九〔大魔法〕だろうと当たりをつけたハルトはそんなアリアを背に剣を構えた。




「お前は俺が倒す。違ったな。俺達が倒す!悪いが負けないぜ?w」


「…ほう?〔魔法〕か。ならそちを狙えばよいの?」


「行かせるとでも?w」



 アリア目掛けて加速した白猫、その速さについに追いついたハルトがその行く手を阻んだ。








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