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D,S(diamond)

T075  大事件

公開日時: 2022年2月20日(日) 21:07
文字数:2,081



「フフフッ!!さぁ、【あなたの美しい命を凍らせましょう】」


 そう唱えたユキは次の瞬間。吹雪に包まれる。それはユキ周辺だけでは収まらずユキ側のフィールドを綺麗に半分だけ真っ白に染め上げ見えなくなってしまった。


「おや?」


いつもと違うユキの変身に戸惑うセバスと会場。吹雪が収まると目の前には、真っ白に染まったフィールド。そして…


「吹雪の日。それは静かに現れる。白い肌に、目は赤く輝く女を人はいつしかこう呼んだ。私はあなたを凍らせる者。或は妖怪。雪女…」



 今までの可愛らしいドレスとは違いその服装は水色がかった白装束である。しかし白装束と言っても下はスカートのように広がっていたり、振袖はとても長くなっていたり、水色の太めの帯がたくさんの雪の結晶で彩られていたり。まるでお化けなようなと言うよりかは、可愛い浴衣を着た凛としたユキ。といった感じだ。


 ユキの新装備に湧く会場。いままでとは異なる雰囲気に唾を飲む者に咄嗟にコメント広場に書き込みを開始する者と様々な反応を見ることができる。



 そんなこと関係ないと流れる試合開始のカウントダウン。


《3…2…1…スタート》


 今ここに新たな力が開放された。







*






 始まってすぐにバリアは解かれる。この時セバスは疑問に思っていた。


(なぜ?ユキは登って来ない?)


 そう、ユキが上空を目指すどころか〔飛行〕すら使っていないのである。さすがにおかしいと思ったセバスはこのまま長引くのはまずいと本能的に察知し攻撃を、最大火力で使っていく。ユキはそれを雪を踏みしめながら躱していくだけだ。


(雪?)


 変身時の目隠しのように舞っていた吹雪が振り積もった雪がユキのそばには沢山ある。綺麗に半分だけ真っ白なのだがそこに違和感を感じるセバス。


「まあ、いいでしょう。行きますよ?【あなたへこの屋敷の接客を】」


 そうして放たれる弾幕はユキを狙い放たれ大きく広がり、そして一気にすべての魔弾がユキ目掛けて取り囲むように迫っていく。これが5回も飛んでいく。


 途端、こんどはユキが両手を広げてクルクル周りながら冷気を放つ。そしてピタッ止まると。ユキに迫ってきていた弾幕をすべてその場で止め…、いやまるで空間ごと凍らせるようにして砕ける。


「はて?もう凍って…ッ!!あの雪のせいですか」


 ユキはいつもとは違い【凍える世界】を発動させてはいない。否、発動させる必要がないのである。なにせもうこの空間は冷え切っているのですから。


「試合開始前から冷やすのはありなのですか?」


「いやいや、私は私側の半分しか冷やしてないですよ〜。別に試合前からスキルは使ってもいいんだからダメなのは地面から離れることだけだし」


 ユキが言っていることは正しい。試合開始前にはちゃんと《スキルオープン》と、10秒間の準備タイムが与えられるのだその間に何をしようとプレイヤーの自由。唯一地面から離れることだけはできないようになっているが、その間に自信にバフを掛けようと、装備をつけようと、周りを冷やそうと自由なのである。



「確かに盲点でした…。でもただそれだけです。温めてしまえば無意味でしょう?」


 こんどはセバスが火弾をばら撒きそれを辺り一面にぶちまける。そうすることで温度をあげようとしているのだが…


「わかってないね、もうここは吹雪の中だよ?【掘っ建て小屋の中は暖かいか?】」


 瞬く間にフィールドが吹雪に見舞われる。そんな小さな炎など無意味と言わんばかりにかき消される火弾と巻き込まれるセバス。セバスには既に状態異常:凍傷が着いていた。


 セバスは思ういままでとパワーが桁違いではないかと。


「【ティータイムはいつでもどこでも】」


 こんどはセバスが降下し技を発動。途端に現れるはガゼボと言われる西洋の庭などにある屋根付きの休憩スペースを模した建物が〔建築〕される。屋根があるだけのガゼボだが、そこは〔バリア〕のスキルで防ぎ、中に火弾を浮かべることで暖を取る。たちまち凍傷の表示は消える。


(このまま少し待ちましょう。フィールド全体に及ぶ吹雪です、すぐにMPが尽きるでしょう。そうなればこちらが有利です)


 セバスの考えは間違っていない。しかしそれが普通のプレイヤーならである。相手はユキ。しかも闘技大会の覇者がそんなことするわけがなかった。




「【氷の心】」




 吹雪の中で聞こえたその声にセバスははっと驚く。少し前のユキの動画を見たではないかと。物理をも凍らせ砕くその技を。


(し、しかしいくらなんでもこのでかさの物体を凍らせるのは無理でしょう。えぇ、きっと)



ピキッ



 妖力 WP willpower=念力


自信の体に妖力力を使うと妖力憑依できる。憑依はさせたもののイメージと重なれば重なるほど強力になる。また魔法物理ともに遠隔で軌道や性質を変化させることができる。これは敵の攻撃などにも効有効。ただ制限あり。





 イメージが重なれば重なるほどその威力は強くなる。今会場中を巻き込みユキのイメージは「雪女」へと塗り固められていた。

 その威力は想像を絶する。




バキッ!!!




 今日ここに、フィールド全体がガゼボと、ガゼボの中にいたセバスごと一緒にすべてが凍りついた事件が発生した。

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