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初心者がゲームの常識をひっくり返す...無自覚に?
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D,S(diamond)

T084  有名税を払う(自称)初心者

公開日時: 2022年2月27日(日) 20:42
文字数:1,992


 見事ワンライフをクリアしたユキはそのままメンバーの所に帰ってくる。


「さすがユキ!ちゃんとクリアしてくれたね!」


「うんうん〜、このくらい朝飯前だよ〜」


 実際には晩飯前である。


 そんな2人を他のメンバーとギャラリー、そしてビュアの視聴者は、見た目はそれほどでもないが内面驚愕していることは、誰も一言も発言しないことで察して頂きたい。

 各々の心の声はこんな感じだ。


(え?なんなんですわ!?なんなんですわ!?この2人!?)


(俺はこんな化け物に挑んで返り討ちにあったのな…)


(まさか!?まさかですよ!?こんなことできるとは思わないじゃないですか!?)


(ウソーン…)


 上からアリア、ハルト、ビュア、ミカの順番である。この4人以外の人間もだいたいこのようなかんじだ。超高難易度のミニゲームを2連続で2人ともクリアしてみせたことに、感嘆よりもいっそ恐怖と言われるような感情が渦巻いていた。若干引き気味とも言う。


『な、なにこれ?』


『化け物展覧会か何かだな』


『え?何?ここ、咄嗟に生えてきた木を逆利用したり、いきなり飛んできた爆弾アイテムを蹴り飛ばして回避するようなそんな技術求められるの?』


『この後のプレイヤー可哀想だな…同情するぜ』


『いやよく見ろ、順番待ちの列半分くらい減ったぞ…』


『むしろ半分は残ったのかー…』




 ようやく、復活した視聴者がコメントを打ち始め、ギャラリーをさらにガヤガヤともう何を言っているのか聞こえないくらいだ。




「あ、あの!!」


 そんなギャラリーの中勇気を出した女の子プレイヤーがナユカ達に声をかける。


「サ、サインくださいッ!!」


 そう言いながら差し出される色紙。


「ん…?」


 ナユカはまあまあ混乱していた。そもそもこういうこと自体初めてなのだから仕方がない。


「ん〜、まあ、そろそろそゆこともしてあげないとね〜」


 そんなナユカの困惑は露知らず、おもむろにユキはその色紙を受け取ると、左斜め上の方に「yuki」と指で描き私に差し出してきた。


「まあ〜、有名税ってやつだよ〜。ナユカも描いてあげなよ〜」


「え?いや私?ユキだけで良くない?」


「いえッ!ぜひ!!」


「お、おぅ…。でも私初心者だよ?」


「「「んなわけあるかッ!」」」


「えーーー!!」


 ハルト、ミカに続きアリアにまで同時に否定され渋るナユカ。本人いわく自分は初心者と言い張りたいようである。


 その色紙を渡してきた女の子のキラキラした目に、さすがに折れたナユカはユキの右斜め下に「nayuka」とサインをした。その後それを受け取って満面の笑みを浮かべる女の子を見て、まぁ喜んでくれてるならいっか。と気を持ち直したナユカである。


「さて、ちょっとアイテム使うよ〜」


 そう言いながらユキが取り出したのは、最近お世話になりっぱなしである。姿隠しのカプセルである。


(あれ?持ってるなら行きしなも使えばよかったじゃん?)


 ナユカは1人疑問を浮かべつつも6人の姿はこの会場から消えてった。


 実はこういう並んで受付などが必要な場合はアイテム使用状態では参加出来ないというのは当分後でナユカの知るところとなる。






*






「彼女。すごい注目度集めてる」


「あんだけ黒龍とドンパチやったり?ほとんどユキと一緒に行動してたり?今回みたいな生配信してたらそりゃー目立つよね。あれユキわざと目立つようにしてるでしょ?」


 そうぼやく2人は今仕事を終え、祭りのように並ぶ出店を楽しもうと闘技場から出たばかりであった。

 そんな中人だかりを見つけ、何が起こっているのか確認しに近ずいたのである。すると、今話題のパーティーがそのミニゲームに挑んでいる最中だったのだ。


「あの子もう規定値達したんじゃない?」


「その周り。もワンチャン有り得る。でも。約束は約束。デュオで優勝」


「いやどう考えてもその前に上から接触してって言われるのがオチだと思うよ?」


「…かも」


 そう話す彼女達は遠くからその2人を眺めていた。


「まあ、そうなったら私は仕事が減っていいんだけど。あ、あのデザートみたいなの美味しそう!」


「アキアカネ。ワンライフ。どこまで行ける?」


 唐突に問われるヒカリの問にアキアカネはデザートを売っているであろう出店に行く足を止め…。


「行けても4:00。ヒカリは?」


 振り返りながら答えるアキアカネ。ついでにヒカリに同じ問を返す。


「あそこまでの。身体能力がまず無い。行けて3:00」


 ヒカリは再度そのパーティーを眺めようと視線を戻すが、もう既に彼女たちはいない。


「まあ、そんなとこだろうね」


 ヒカリの答えを聞いて再度出店の方にあゆみ出すアキアカネ。その顔は今にもヨダレがたれそうなほど緩みきっていた。


「遊ぶのもいいけど。明日も実況あるから。程々に」


「大丈夫!わかってるよ」


 そうして2人は人混みの中に消えていく。その後ろ姿を横目で見ながらユキは薄く笑うのだった。








「まだまだだよ〜?お二人さん♪」


「何か言った?」


「いや〜、なんでもないよ〜」

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