目の前がひらけると同時に見えてきた浮島は聞いていた話よりも大きくかなりの迫力だ。その大きさに圧迫感すら覚える。
「デカイね!」
「そりゃ〜、あそこだけでイベント会場として作られてたからね〜…。下から見上げるのは初めてだけど」
「こう、改めて見るとでかいですね…画角に収まるかどうか…」
ビュアさんはあまりのデカさに画角を気にしながらカメラを操作する。確かにこの場所からは画面に収まりそうもない。なら…
「上行ってみよう!」
「そだね〜」
「ま、まあ早くに見つかって良かったであります!!行きましょう」
上に登れば見渡せると思う。下からだとゴツゴツの地面?地表?だけしか見えないし!探索してみたい!!
浮島が大きいのでかなり距離感が狂っているが、浮島の上に登るにはまだかなり上昇しなければならない。色々見て回りたいから急いで昇る。
「それにしても不思議ですね?」
「なにがー?」
少し上昇に時間がかかる。そんな合間に疑問を口にしたビュアさんはひとりごとのように続けた。
「少しトントン拍子に行きすぎます。都合よく浮島がセカンド入口に居ることもそうですが、変なプレイヤーに絡まれることも、モンスターが進路を妨害してくることもありませんでした…」
「タイミング良かったとか?」
「…」
ビュアさんは悩んでいるようだが、普通にたまたまこっちに移動してきていたとかじゃないのかな?
そんな疑問もすぐに消し飛ぶ。それは浮島の陸地にたどり着いた時に起こった。
「ようこそ。アインズへ。お待ちしておりました」
「「おおぉ!」」
その浮島の入口に集まるプレイヤー。そしてそのプレイヤーたちの先頭に立つのは巫女服を着こなし凛とした立ち姿勢のままお辞儀をする女性。
あの茶髪を綺麗に伸ばし少し内巻きにしている彼女は…。確か…
「お久しぶりですね。ナユカさん、ユキさん。リンにございます」
そう言って出迎えてくれたリンさんは私の方を向き綺麗なお辞儀をして見せた。流れるような髪の毛がサラサラと滴り落ちる。
「用意がいいですね?誰か視聴者にでも聞いたのですか?」
あ、確かに。偶然な訳じゃないから…もしかして浮島がセカンド入口に移動してたのも?
「そもそも。あなたはスカイスクランブルで自身の動画越しに色々情報伝達していたではありませんか。そのままたまに見ていたのですが、とんでもない配信者に化けましたね?」
「あ、言われてみればそうですね。いやー見ていただけてるとは。ありがとうございます。古参名乗れますよ?」
「浮島はアインズ所有。そして移動は割と自由だと聞いていました…なるほどであります!」
「ご苦労さま〜」
私たちが来ることをリアルタイムで追っかけてくれていたリンさん。アインズのメンバーを使いかなり急ピッチで出迎えてくれたらしい。通りで道中モンスターは居ないし、変なプレイヤーにも絡まれない訳だ。
「そもそも、ここまでRBGの中心であるリリースの動画。イベントなど無くても見ていたでしょう。ナユカさん達は半公式でもありますし、実質RBGの公式動画のようなものです」
それは買い被りすぎじゃない?私達半公式も知らされてないこととかかなり多いし。
「んじゃ〜改めて〜。ナユカが浮島散策したいって言ってるんだけど〜。好きに浮島探検してい〜い?」
よくよく考えたら私たちアポ無しでよそ様の領土に乗り込んでるのか…。なんか悪いことしちゃったかも?
「ぜひどうぞ。こないだの件もありますし、我々も協力するつもりです。システムの都合上同盟とまではいきませんが、我々アインズとリリース。友好的でありたいと思っています」
大丈夫そう。こないだの件って言うとやっぱりあの戦争のことだろう。アインズのメンバーの数十人は援軍として地球まで来てくれた。リンさんはその筆頭だ。
「ありがとう」
自然と呟いたお礼の言葉。ほぼ無意識に出たその言葉。
何故か私がそうつぶやくとしばしの静寂が訪れた。みんな私を見ながら微笑んでいる。
『この笑顔。守って見せろよ』
流れる配信のコメント。ちらっと見えたその言葉。うん。私が守るよ。今度は。
「助かる。ナユカも私も。リリースも。これから仲良くしてね〜」
「はい。では時間が無いようなので御案内致しましょう。ところで具体的に何を見たいとかあるのですか?」
話が一区切り着いたところでリンさんは時間を気にしながら浮島入口から見える街に歩みだした。浮島の街はリリースの所有する地域よりも広大で建物も多い。
石造りの外壁が街を囲っているらしく守りも万全だ。外壁はそこまで高くないものの地上からの侵入は防げるように出来ている。
プレイヤーが空をとべたりするので確かにこちらの方がいいのかもしれない。
あ、行きたいところだったね…
「結晶洞窟。そこに行きたい!」
私はライブツアー移動中にユキから聞いた結晶洞窟。そこを指名した。
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