*>>ナユカ視点
もうすぐ出発。月の港にて私たちは同じくコメットに搭乗することになっている軍曹とヒヒリーを待っていた。
搭乗までの間私たちはもう見慣れた高級感のあるいかにもVIPって感じの待合室に来ていた。
コンコン
「失礼します…」
「こんちゃー」
「あ、こらっリリィ!」
「いやいや、かしこまったら誰が誰だかわからないでしょ?」
「おおー!そのまんまだ!」
「私たちもだけどね〜?」
そういえばそうだった。やってきた2人の少女。同い年くらいかな?2人ともゲームの姿と殆ど変わらない。髪色と瞳が変化しているだけかな?
「ナユカさんが1番変化がないのでは?初めましてゲーム内では軍曹。本名は蓮 金糸雀と言います。よろしくお願いします」
「あ、私はヒヒリーこと妃衣 凛凛だよー。よろしくねー。リリィって呼んでね」
軍曹は黄身がかった髪色に髪型はョートヘア。三つ編みのアレンジと服が清楚感を生み出している。
ヒヒリーは茶髪にインナーカラーがピンク。セミショートでゲームの中のイメージに近い。
「米嶋 那由花だよ!よろしくね!」
「朝霧 雪、ナユカの護衛だよ〜」
「アキアカネの秋田 茜です。」
「ん。菊池 陽花里」
「リリースのカメラ役。プレイヤーネームビュアの乏月 夜宵です。よろしくお願いしますね」
自己紹介を終えた私たち。だがしかしなんか違和感が…
「あ、軍曹の口調か!」
少し考えて違和感の正体に気づいた。イメージと違う大人しそうな口調の軍曹!
「さ、さすがにリアルでまであの口調では無いですよ?」
「ゲームと違ってー、ちょっと可愛いでしょー?名前もカナリアで小鳥ちゃんって感じー」
確かに言われてみれば、普段ゲーム内で見る凛々しい感じでハキハキした雰囲気はない。逆に少し内気な美少女。なんかこう…神聖さを感じる!!箱入り娘ってこういう感じなのか!
「…ナユカ。何考えてるかあえて聞かずに言っとくけど〜。あなたも充分筋金入りの温室育ちだからね?」
「えー?そんなこと…」
「人生で何回自分の敷地を出たか覚えてる〜?」
「そりゃ!いっぱい!」
「RBGはカウントしないでね〜?」
えー!?
えっと…確かユキに初めて会ったパーティーの時でしょー?
初めてユキの家に遊びに連れてって貰った時でしょー?
襲われた時でしょー?
衛星軌道エレベーターにパパとママと一緒に行って大事な話した時でしょー?
このライブツアーでしょー?
んー。
「5回!」
「片手で数えられる時点でかなり箱入りだからね〜?」
「5回って…」
「ん。土地広い」
「い、一応私は数えられないかな?」
「カナリアー。たぶん人類のほとんどの人はみんな数えられないからねー?」
とりあえず打ち解けることが出来たので、全員でコメットに搭乗する。2人も私たちのようにゲームネームで統一してくれるようだ。
私たちと動く以上身バレは確実なので、わざわざ本名で呼ぶよりもゲームネームで呼んだ方がいいらしい。と、ビュアさんが言っていた。ナビィやパパ達も何も言わないのでそれでいいのだろう。
「軍ちゃんはねー。ほんとにリリースの人達に感謝してたんだよー」
ヒヒリーさんは話題をよく提供してくれる。
「ちょっと…」
「軍曹は名前通りロールプレイヤーだからねー。リリースが原型を解放してくれて、ロールプレイにも意味が生まれたから堂々としてられるんだってー」
そういえば前にもそんなことを軍曹本人が言っていた気がする。ただ自分で言うのとヒヒリーさんに言われるのとじゃ違うのか、軍曹は恥ずかしそうに顔を少し赤らめていた。
…なんかギャップ萌えしてきた。
『皆さん。そろそろ地球に到着いたします。姫とユキ、アキアカネさんとヒカリさんは何時でもライブできるようにスタンバイしていてください。勇人様と花恋様はトビィが案内いたします。軍曹さん、ヒヒリーさん、ビュアさんはVIPルームにトビィが案内致します』
あれ?
「そういえばどこでライブするの?」
『宇宙港です。本日貸切となってます』
「はい?」
『なので本日は地球の日本地区への離着陸可能時間が早朝しかありません。定期便から個人的所有船まで停泊不可能。実質、現在のこの艦隊のみが着陸します』
…
あれ?なんか急に静かになったんですけど。
「ユキ。こういうことってよくあることなの?」
「ナユカ〜。よくこんな流通ストップみたいなことあると思う?」
「さー?」
「よ、米嶋家の財力って?」
「ん。えぐい」
「流石にそんな無茶はしないよ。これは防衛省が噛んでるな?」
『はい。それと太陽系管理AI2機がこの動きを支持しました』
「本気だな…」
なんかスゴイってことだけはわかった。
『それでは着陸いたします』
私たちを載せたコメットは静かに宇宙港に入港していく。周りのでかい船もあとを追うように港に入港した。
空は星空。太陽が見えるため日中である。足元はかなりしっかり見え、少し下を見れば一際明るい地球がお帰りと主張していた。
私たちはそのまま控え室に案内される。
「じゃあ〜ラストライブ〜。張り切って行こうか〜」
「おーう!」
視界は暗転し私たちはゲームを開始した。
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