このゲームにはスキルが無数に存在する。俺が得てきたスキルもその中のごく一部に過ぎない。そのごく一部には自分でも信じられない動きを、働きをするスキルがある。それは自分で発見するのではなく、たまたま他のプレイヤーが自分と同じスキルを使い、全く違うことをしている場面を目撃して発見することも少なくない。
その逆も然り。
同じスキルでも自分だけの使い方というものがあったりする。それを見つけたのはたまたまだった。
時は少し遡り
「〔気力〕ってなんなんだろうな?」
沢山ある自分のスキルの中でいまいち効果がわからなかったスキル、それが〔気力〕だった。このスキルはパッシブスキルで、いわゆる常時発動型のスキルだ。だが、ゲットしてから今までその恩恵を受けたと実感したことはなかった。そもそもこのスキルを使おうと意識したことは取ってすぐ以来ない気がする。
たまには暇つぶしにいろいろしてみるか。
軽い気持ちが今後のプレイを変えるきっかけになるとは思っていなかったのである。
〔気力〕ってそもそも、なんのことを指しているのかが分からない。アニメや漫画などでは魔法と同じような捉え方をしているものもあれば、魔法とは別のカテゴリーとして扱われる場合もある。
〔魔力〕と同じように魔法が打てるのかと言われるとそうでも無い。魔法はMP(魔力)を消費して発動しているが、それを気力で補えないかと思いやっては見たものの成果は上がらなかった。
このことから魔力=気力では無いというのがわかった。まあ、飛行=飛翔、とか。火=火炎とかでもスキルの性質は異なるため全く同じ効果というのは無いと思う。
なら、まったく別の力であると考えた方がいいのか?
だとすると何をするためのものなのか?〔魔力〕とは違うカテゴリー…
もしかして、MPみたいに気力用のバーがあるなんてことはないよな?そんな、誰も気が付かないようなところに変な隠し要素なんてある訳…
ハルト何を思ったのかおもむろにステータスを表示する。
「まさかね… ステータス…〔気力〕〔表示〕」
…
嘘だろ…
ステータス
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名前 ハルト
所持金 15,0000,110G
HP 0├───────────┨
MP 0├───────────┨
SP 0 ├───────────┨
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バー…生えたよ。さも当たり前のように生えてきたよ。SP…まあ、十中八九〔気力〕のことだよな。
どーすっかなー…
片っ端から試していくしかないか。
〔気力〕それは、〔魔力〕はMPを消費して本来起こりえない現象を起こすのに対して、〔気力〕はSPを消費してそれらの現象を物や人に付与することができる。また、素手などに纏うことで魔法耐性、身体能力強化できる。他にもいろいろ試せていないこともあるがこんなものだろう。
だから、こんなことができるようになる。
ナユカが上に飛んだことで黒龍の目線は上がり俺のことなんて見えていない。そこに【剣ノ弾幕流儀】をぶち込む。
黒龍に急接近しながら剣を構える。それと同時に剣が薄黄緑色に発光しだす。それでも黒龍は俺に気づかない。だから思いっきりそのまま腹を切りつける。
グギャァァァーーー!!?
お!結構いいダメージ入ったかな。でも、これからだぜ?
俺はそのまま黒龍に接近したまま右側に移動。黒龍も攻撃してきた俺の方に意識を向けている。もう一度、脇腹?ら辺を切りつけると黒龍が腕を振り回し攻撃をしてきた。
黒龍の腕をスラリと躱し、そこに目掛けて剣を振る。剣は黒龍の腕に届いていないがそれでも問題は無い。剣を振ったその時、剣から斬撃が飛び出す。
これは〔飛撃〕…とは少し別物で、〔風〕の魔法だ。先程の剣の薄黄緑色の光は〔風〕を剣に付与しているために発生したものだ。
風の魔法はそのまま黒龍を切り刻み、それを予期していなかった黒龍は再度悲鳴をあげる。そして怒りに任せて腕、しっぽ、足など様々な攻撃を俺に向けて放ってきた。
ある程度躱しているがそれでもナユカのように直角に避けたりできない俺は先読みされ、目の前にしっぽが迫ってくる。それを剣で受け止めた。
重っ!!
本来なら質量の違いから俺はしっぽを受け止めた瞬間吹き飛ばされるだろうが、それも〔気力〕を纏っているおかげかその攻撃を受け止めることを可能にしていた。多分身体能力強化のおかげだと思う。
そのままでは埒が明かないので体を剣と一緒にひねり回転しながらしっぽをくぐり抜けることで攻撃をいなし、そのまま黒龍の後方へ移動。また、剣を振る。
「【散】!!」
そう技を唱えることで予めセットしておいた現象が起こる。
なんとそれは剣から出てきた〔風〕の斬撃が複数に分裂してさもショットガンのようにデタラメに斬撃が黒龍を切り刻む。しかし、背中は鱗が丈夫なのかかすり傷程度で終わってしまった。
「ちっ!!」
その後体勢を立て直した黒龍はハルト目掛けブレスを放つ。
「危ない!!」
しかし、ハルトはブレスを避ける素振りはしない。そのまま剣を構えたかと思うと、あろうことかブレスに突っ込んで行った。
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