「キリが無いな?w」
「そうだね?でもあたしはそこら辺の奴とは違う」
ガキャン!!!
「ちっ!」
(さすがに気力がもたないかもな。周りもどんどん数を減らしていく)
さらに場所は移り変わり、東側側。闘技場から川を挟んでさらにその少し先の東エリア。ここはJチームが所有するエリアだ。
そこにいるのはハルトと、Jチームのメンバーが大半である。しかし、CSFの中でもかなりのメンバー数を保持するJチームは、今回、ほとんどのエリアに分散するように構えていたため、ほんの少しだけほかより東側の防衛が薄い。
そこはハルトが補う予定だったが、寄りにもよって東側が敵プレイヤーが1番多く集まって来ていた。
「おやおや?技は使わないのかい?舐められたもんだね?」
「ふんッ。お前みたいなババアには剣1本で充分だよw」
「ガキが。黙ってたら良く吠える。ランクSだったっけ?最近有名になったからって調子に乗るんじゃないよ!!」
「ご老体。世代交代の時間だぜ?w」
ドコッ!!
ハルトが相手にしている女性は、見たところ年齢30後半くらいの大人の魅力溢れる女性だ。
彼女は先程まで持っていた剣を、攻撃モーションの途中で大きく重たそうな棍棒に変えて殴ってくる。
剣で受け流そうとしていたハルトだが、棍棒に変わったのを見て、咄嗟に回避に切り替えることに成功した。あのまま受けていたら、剣が無事では済まない。
「〔チェンジ〕か。ま!問題無いな!」
「すばしっこいガキだね?そのまま潰れてくれたらあたしは楽でいいのに」
「でかい獲物はその分行動に時間が掛かるからな。それにタイミングが早くて、見て回避できるレベルだぜ?話になんねーなw」
ハルトの視界の端でパーティーメンバーのHPゲージがひとつ減る。
(なに?)
突然消えたHPはヒカリの物だが。ヒカリの名前すら消えたことに違和感を感じたハルト。
『ヒカリは無事だよ〜。ミカちゃんはなにかあったらたぶんメールで指示があるからそれに合わせて〜』
『了解したぜ!』
が、その後すぐにユキがヒカリが大丈夫と言っていたので安心する。抜けた理由はいまいち想像出来ないが、なにか理由があるはずだ。
そんなことよりも、目の前のババアに集中する。…。ババアとハルトは言っているが、普通に少しアラサーっぽいお姉さんだ。
ガギャ!ジャラジャラ!!
今度は棍棒を上から振り下ろす途中でモーニングスターに武器〔チェンジ〕したババア。
後ろに回避したハルトだが、遠心力はそのままに、射程の長いモーニングスターに変わったことで、射程と、威力、速度が途端に上がる。
回避は間に合わないと見切り、ハルトは咄嗟に剣でそのモーニングスターの「核」を狙う。
キンッ!!
そしてそれは綺麗にモーニングスターを下段から上段に真っ二つに切り裂いた!!
「なにッ!!?」
「ハッ!!」
そのまま切り返し、上から剣を振り下ろすハルト。モーニングスターの振り下ろしに体重を乗せていたババアは回避行動も取れない。が。
ガキッ!
咄嗟にモーニングスターを盾にし、ハルトの剣を自身から右に向かって受け流す。
今度はハルトが体制を崩すが、それはババアも同じ。両者そのまま交差するように直進し、相手から距離を取りながら向き直った。
「ちっ!運がいいババアだなw?」
「ふんッ!クソガキのくせに、モーニングスターがお釈迦になったじゃねーか!」
「いっぱい持ってるんだ。いいだろう?思い入れもねーだろうがw。全部叩き切ってやるぜ?」
「うるさいガキが。おや?そっちの後続は足止めを食らっているようだぞ?」
「なに?」
『おい!ユキ達になにかあったのか?』
『いや、大丈夫だぜ?ただ敵に偽の情報を流してる。あわせてくれよな』
『そういう事か…』
「確認は取れたかい?」
「ちっ!俺がお前を倒せばいいんだろw?1人で充分だw」
「ほざけッ!!」
今度はハルトよりも長い槍を構え突撃してくるババア。
(あのモーニングスターを見て考えたな…。「核」がいちせぇ…)
ハルトの「剣鬼「一」」よりもはるかに長いリーチで、一直線の突きが放たれた。
真正面から顔面目掛けて放たれた突きは、遠近感が掴めにくい。
だが、そんな突きに臆することなくハルトは剣を同じく突き出した!
槍の穂先をほんの少しだけ顔を逸らして回避しながら、真正面に向かってカウンター気味に放つ突きは、相手の突進とハルトの前身により、あっという間にそのリーチの距離を埋める。
「なっ!?」
咄嗟に躱されたことを感知した瞬間。武器を変えようとするが、それは間に合わないことを悟るババア。
何とか回避しようと足掻くが、下腹部右側をハルトの剣が貫いた。
「ッ!?」
「装備「黒龍「煉」」終わりだぜ?w」
後ろに逃げようとしていたババアを逃がさず、ハルトはババアに刺さった剣「一」を手放し、そのまま新しく黒龍素材からできた剣「煉」をババア目掛け横薙ぎに払った。
ババアのHPはもうほんの数ミリ。
状態異常に、出血などもあるため時期にゼロになるだろう。ハルトはそこで、ババアを見下ろしていた。
そして、倒れたババアもハルトを見るが…。
「フッ。踊らされたのはこっちかい…」
ハルトの後ろから現れた、足止めを喰らっているはずの「リリース」が現れたのを見て全てを理解した。
ハルトは、そんな事実を知って、いっそ清々しい顔なババアに問いかけた。
「なんで、わざわざこっちに条件を合わせたんだ?技すら発動させていないし、飛行もしなかっただろう?」
「あ?そんなの、年配としての意地よ…」
「ふっ。おもしれぇババアだぜ。おい、ババア。名前は?」
「あたしの名は、ホウリだ」
「俺の名は、ハルト。覚えとくぜ?ババア」
「ふん。待ってろよ?クソガキ」
そして、ホウリのHPがゼロになった。そこには、キラキラと粒子になって行くホウリと、どこか嬉しそうなハルトの笑みがあった。
「浮気ですの?」
「は?う…、なんだって?」
「なんでもないですわ!!」
そんなやり取りを眺めていたナユカの心の叫びをどうぞ。
爆散ッッ!!
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