バキッ!!!!
すべてが凍りついたその会場でまず1番に正気に戻ったのはアキアカネであった。ユキVSセバスという好カードと言うだけあって実況解説もトップであるアキアカネとヒカリが担当していたのである。
『な、なんということでしょう!?一体目の前の光景はなんだ!?ついにこのゲームは壊れたのかと、本気で考えています!!?』
それでも気が動転しているアキアカネと、そのアキアカネの声で正気に戻ったヒカリ。
『あれ、が。〔妖力〕?でもこんな…』
残念まだ正気ではないらしい。ザワつく会場。今日ここまでで出た情報がここまでの事態を招いていた。
「うん。まあ〜。仕方ないよね?元々公開する予定だったし〜?そ、それにちょっとあいつがムカついたから派手にやってやろうと思っても仕方がないよ〜、うん」
この事態を引き起こした本人でさえさすがにここまでのことになるとは思ってなかったのか。目の前の大きな氷塊に冷や汗が止まらない。
そのまま逃げるように会場を後にするのであった。
*
「これは…」
「やりすぎですわ…」
「だな…」
「ウンウン。さすがユキだ」
その頃観戦室の4人はそんなことを言っていた。しかしビュアが気になったのかコメント広場を見て盛大に顔を引き攣らせる。
「皆さん…今日は外に出ない方がいいかもしれませんよ…」
全員が振り返り?を浮かべているがそんなこと知らぬとビュアは言い切る。
「今、ハルトさんとユキさんが公開したことがニュースのようにコメントされ、たくさんの人に広がっています…。同じようにチームを組んだ私達もそのような力があるのではないかと予想してもう既に私達捜索隊が組まれようとしていますね…」
「「はー!?」」
「おぉ、人気者だー!」
驚くミカとアリア、なんかちょっと嬉しそうなナユカと反応は分かれている。ナユカの場合は現実逃避とも言うが…
「と、とりあえず。今日はここで大人しくしていましょう。その方がいいでしょう」
「ですわね…。変につけられたりしたら嫌ですわ…」
「美味いと噂のたこ焼きの屋台行きたかったぜ…ちくしょう…」
「んー…」
さらに追い討ち
「後現実の映像中継もすごい荒れてるようですよ…。革命の予兆だとか…チートだの言われていますね…」
「革命の予兆なのはあながち間違ってねーんだよな…」
「この中でリアルとアバターほとんど同じ人いますの?」
そのアリアの質問にみなが手をあげる。つまりみなゲームと現実の容姿に差異はほとんどないのだ。
「私そのままだよ」
「え?髪とか目とかもか?」
「うん」
驚く2人。
「とりあえずナユカさんは今日外に出ない方がいいですね。出るとしても少し身を隠した方がいいと思いますよ。もしバレたら大変です…。素顔や住所なんかも誰かが特定してします可能性があります」
「それ多分私達もですわよ…。髪や目の色だけならわかる人は分かりますわ…」
「まじか…」
「いや…多分住所とかもバレないと思うけど…、ナビィに対策してもらおう。うん」
もう既に、このことを外から感知していたナビィが動いていることをナユカは知らない。ナビィは優秀なのだ。
*
「ロールプレイ…か、カルマこれはデュオも荒れるぞ?」
「そのようだね」
場所は変わって一般会場席。ここに現在ランキング5位と14位の人物がユキの試合を見に来ていた。
「これはお前と組んでも厳しいんじゃないか?」
「やってみないと分からないでしょ?特にあのナユカって子は」
「あいつも十分やべぇぞ?ビュアの動画見てこいよ。回避能力なら多分お前負けるぞ?技も現在に至るまで1回しか使って無いしな…」
「しかも公式戦じゃあ1度も使ってないからどのスキル使ってるか分からないしね…。普通あんなに弾幕貼ったらMP切れるけどなぁー?なにかやっぱりあるよね」
「だろうな…」
「でもいいんじゃない?ランプだって切り札は切ってないんでしょ?むしろ知られてない分有利じゃん」
「あぁ…でも用心はしとけよ?」
そう言って2人は会場を後にする。2人はざわめく会場の人混みの中に消えていった。
*
『せんぱーい?アレ見ましたぁー?』
『見た。てか今外でもその会場の荒れ具合を生中継してる。なんやこれ?』
『やばないですかー?』
『別に?いいんじゃね?やること変わらんし』
『んんー、まぁー、センパイがいいならいいんすけどねー』
『それよか、シオリ。自分こそ大丈夫か?個人出てたろ?』
『いやー、どいつもこいつも強いったらありゃしませんよー』
『せやからやめとけって言ったのに』
『サーセン。でもまあできるだけ探って来ますよー。白雪姫改め…雪女ー?ですか?』
『あんま、手の内晒すなよ』
『ウッス』
『センパイもあんまゴロゴロして菓子ばっか食べたらアカンッスよー』
『うっせー』
*
『わかった…』
『それでヒカリさん。あの強大なユキさんの力はなんなのでしょう?』
未だに静まらない会場の中実況の2人は今起きたことの説明を開始する。
『あれ、初めから最後まで〔妖力〕ってスキル。使ってた』
『それはどんなスキルなんですか?聞いたことありませんが…』
『ん。〔妖力〕は。自分が憑依。させたものと。周りのイメージ。重なれば。今まで以上の。強力な技になる。WPを消費して力を増幅させる。また。敵の魔弾に干渉。可能』
『な、なんですか?WP?憑依?』
ヒカリの解説に混乱した会場。この後次の試合までヒカリは説明を続けていく。
その内容は、その解説を聞いていた者の常識を壊して回っていた。
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