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"328"  ヒヨッコ

公開日時: 2023年8月10日(木) 08:06
文字数:1,985



「おおー!!!?ぉぉおおおお!?!?」



 現在、アキアカネとヒカリは鳥の背中に掴まり…。否、しがみつき急上昇する鳥とともに浮島のはるか上空に登ってきていた。


「ふむ。そろそろ見えるかコッコ」


「ふむ…。じゃないですッ!!このニワトリさっき洞窟を脱出する時も!今回も!!事前予告とかできないんですか!?!?」


「コケ?ちゃんと掴まっとくように言ったコッコ」



「急上昇するからって理由を言ってないでしょ!!」


「細かいことは気にするなコケ。それよりもそろそろ降りるコッコ。…急降下するからしっかり掴まるコッコ!!」



「あちょッ!?!?」



 今度はしっかり忠告を果たした鳥。これでいいだろ?と言わんばかりに1拍もおかずして急降下を開始する。



「うむ。いい感じに見られてるコッコ。ヒカリたちのおかげでみんなの視界に入れたコッコな!」



 〔妖力〕のおかげでスキルの力が上がる。その勢いのまま〔加速〕〔アクセル〕両方を同時発動させた鳥は落下も相まってどんどんスピードをあげていく。

 羽を閉じて風をきる弾丸のようなそれは、隕石のように大気を割いた。

 その状態で少しだけ風に乗り前進する。


「グェッ!!?」



 急激なGの変化にアキアカネは踏みつけられたような悲鳴をあげ、死にそうな顔でそっと呟いた。



「は、吐きそう」


「!?!?まっ!待てッ!!早まるなコケッ!!」



 どうやってそのかすれる程度の音量を聞き取ったのか。あたりは鳥の風をきる轟音で包まれているのにも関わらず…


 とりあえず鳥はまっすぐに飛びできるだけ揺らさないように心がける。なぜこのようなことになっているのか今更ながらに少し疑問だが今ここで考えても仕方ない。鳥はひとまず背中の爆弾を起爆させないように全力で尽くす。


 実際はゲーム内で吐くことは無いのだが、三半規管にはダメージが入るらしい。現代の飛行慣れの世代でこのダメージの受け方は鳥にも責任の余地があろう。



 そんなことをしている合間に街上空付近までやってきた。戦場となった街だが、一回目の時と違いそこまで損傷は見受けられない。プレイヤーたちの努力の賜物だが、現在進行形で白猫が向かって来ている。何としても阻止せねばならない。



「ソナタら、行けるか?」


「「もちろん」」



 そこだけははっきりと聞き取れた2人。さっきまでの吐き気をも感じさせぬ顔で言い切ったアキアカネ。まっすぐ街を見下ろすヒカリ。



「よし!ならばいくコッコ!!あの糞ガキを殴り落とすコケッ!!【天翔鶏の子ヒヨコ】ッ!!」




 既にとてつもない速さの落下。そこからカタパルトがごとく射出された弾丸改め、アキアカネとヒカリ。2人はあっという間に街にたどり着く。






 …失礼。墜落する。



 着地(足首をくじきました!)を乗り越え何とかダメージを負いつつも〔飛行〕を継続する。


 本来なら即死だが、何故かいつの間にか着いていたバフ表示と、空中飛行中にものすごい勢いで回復していったHPとMPに首を傾げる暇もない。



「ヒカリ。見える?」


「ん、西外壁。見張り台の上」



「いくよッ!!」


「ん!」




 ヒカリが先頭。ついでアキアカネが斜め後ろから全速力で飛んでいく。


 あっという間に白猫の元までたどり着いたヒカリは見張り台が壊れることも承知の上で殴り掛かる。


 パッと見何も無いが、ヒカリが攻撃をするということはそこに猫がいるということ。回避先を予測し、ヒカリを避ける弾道で弾幕を飛ばす。的確に追い打ちとして有効打な弾幕。さらにヒカリは前に詰めて白猫を殴る…と見せ掛け足で回避行動後の白猫を蹴り上げた。



「ガハッ!?…ほんに。しつこいなぁ!大人しく見取ればええものを!!お前らごと街を吹き飛ばしてやるッ!!!!」


「その前に!!」


「お前、潰す!」




「チッ!!!!!!【災い。ここに来たる。我が呼び起こすは霧の城エンドミスト】」





 白猫の体毛がシルバー気味の白毛からツヤのある黒毛に塗り変わる。それを見ることが出来たのはヒカリだけだが明らかに今までとは違うその姿。



「アキ!」


 警戒に対してそんな2人の周囲を黒い霧が覆う。



「けほッ!!?な、なにこれ!?変な、鉄のような臭いが…」


「くち。覆う」




 降ったらダメだと即座に見抜いたヒカリが〔布〕を精製し即席だが、アキアカネの口元をぐるぐる巻きにする。即席のマスクだが、その甲斐あってアキアカネはひとまず何とかなった。ヒカリも口元を布で多い止めていた息を吸い込む。

 微かな鉄のような。さびたような臭い。そして何より黒い霧が2人を、街全体を包み込む。



「これ…」


「ネコ、は?」



 ヒカリも猫を見失い辺りを見回す。そしてそれは西のジャングルの中。しっぽに青い炎を浮かばせている。黒猫が正面を横切ってこちらに振り向く。



「終わりやね?」



「!!」


 何かを感じ取ったヒカリが黒猫目掛け飛びかかる。



…最悪の予感に従い。即座に黒猫を撃破せんと動いたヒカリの予想は正しい。なんせこの黒い霧は…。





 全て火薬が霧のように浮いているだけなのだから。









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