*>>那由花視点
「うっ、キツイ…」
「もうちょっと頑張って〜…。よし固定!」
目の前でユキがドレスの制御パネルを操作しながらにっこり笑顔を向けてくる。
ユキは現在、水色のドレスを身にまとい髪の毛をアップにしてとても美しい美少女になっていた。どこで準備したのか。ゲーム内でも付けているアクセサリーを現実で身にまとい、おとぎ話からそのまま出てきたようにも錯覚できる。
元々可愛いユキだが今日は少しだけメイクを入れ、唇は薄く透明度のあるピンク色にお肌もツヤツヤで綺麗に整っていた。
友達メガネを外して感想を言おうも美しい意外の言葉が見当たらない…やばい。可愛い…お人形さんみたい。
そしてそんな笑顔で私を苦しめるユキ…
自動で身体のサイズに合わせてくれるこのドレスだが、少しでも私を細く見せたいらしくユキは私にお腹を引っ込めるように言うのだ。
私そんなに太ってないやい!!
太ってないのは事実だが、身体のラインがどーのこーのと全く聞いてはくれなかった。引き締まったクビレがやはりキツイ…。これ破けたりしない?あと多分、脱ぐまで座れない。
そしてやっとドレスを着終えたら今度は少しだけお化粧。次にヘアメイクだ。
どちらもナビィが操作する小型ロボでやってくれる。
私の唇はユキと違い少しだけ強い赤が映える。髪型は短い私の髪の毛でどうやって編み込んだのか、三つ編みをぐるっと両サイドから後ろへ編み込んで首から上にまとめあげていた。
「よ〜し。これで準備はOKだね〜」
『出来栄えはどうですか?』
「100点!」
『良かったです。では花恋様達と合流して会場入り致しましょう』
「じゃあ私は先に会場で待ってるね〜」
「え?ユキ一緒じゃないの!?」
やっと準備が終わったと思ったらユキがとんでもないことを言い出した。
「いやいや、一応順番があるんだよ〜」
「え、やだ。ユキと一緒がいい!」
言っとくけど!言っとくけど!こちとら人前に出るのにまだ一応抵抗感あるんだからなー!特にこんな格好!!ユキがいないと私絶対端っこかママの後ろから離れない自信があるぞ!!
『…失念してましたが確かにユキ様と姫様は一緒がいいかもですね…』
「ありゃ…でも私とナユカじゃ〜…」
『大丈夫です。今回ユキ様もこの戦争での功労者ですので』
「じゃあ!決まり!私はユキと入場ね!」
なんか知らないけどナビィが私の味方してくれた。珍しい!なのでナビィの気が変わらないうちにユキと入場することを強引に確定させた。これで一安心だよぉ。
『ではそのように花恋様と勇人様にお伝えしときます』
「う〜ん」
ナビィの返答に若干困ったような表情を浮かべるユキ…
「そんなに私と行くの嫌だった?」
「そういう訳じゃないんだけどね〜…勇人さん怒んないかなぁ〜…」
???
「いやだって〜。娘のドレス姿だよ〜?たぶん一番に見たかったろうに〜…」
いやいや、最近いつも会ってるんだから別段気にしないでしょ。早く行くよー!
私はユキの手を取り、そのまま会場に向か…
「会場どこ?」
「案内いたしますよ〜お姫様〜」
すぐに私はその手を引かれる側になった。
*>>三人称視点
会場に続々と現れる偉い人。そしてそのあとからやってくるは我らがリリースのメンバーだ。リアルで会うことが初めてな面々だが殆どアバターを弄っていないリリースのメンバー。すぐに誰が誰だかわかったようだ。
「これはすごいなw」
「大きな会場ですわ…」
「カメラ越しですがちゃんと配信できてます?」
「ん。映ってる」
「き、緊張してきた…かも」
「♪」
「なんかうちだけ子供っぽい…」
それぞれ皆髪色と瞳以外変化のない容姿。ビュアが配信しているため全員もれなくリアルの容姿についても世間へバレる訳だが、こういう場でみんな集うと決まった段階で身バレは諦めたようだ。
「あ、みんなー」
「ちょ、リリィ…」
そしてそんなメンバーよりも先に会場入りを果たしていた軍曹とリリィことヒヒリー。
ナユカとユキ以外のメンバーが出揃い会場の視線もチラチラと感じる。それもそのはず、もはや既にリリースそのものがRBGの中心にあるのだ。
歩けば新要素、探せば芋ずる式になにか掘り当て、当たり前のように先頭を独走する。そして今や世界中から注目される11人のメンバー。
ザワザワ…
そしてそんなメンバーのあとから入るは、今戦争の中心である米嶋ご夫妻。
勇人がエスコートしながら腕を組み。花恋はニコニコとそこにしがみつく…
少し顔の赤い勇人はビシッとした正装で髪も整えられている。そして花恋も見目麗しい容姿をこれでもかと会場に振りまき堂々と入場して見せた。流石本物だなんか空気が違う。
そして2人はそのままリリースメンバーの元へ…
「みんなごきげんよう。いつも娘の那由花がお世話になってます。ありがとう」
「これからも仲良くしてやってくれ」
誰よりも先にリリースメンバーのところへ向かった2人。会場の視線を受けながら、リリースメンバーは息を揃えて頷いた。
「もちろん」
「仲間ですから」
「ん」
「ですね」
「おまかせくださいですわ」
「♪」
「はい」
「頑張りまーす!」
「だな」
全員の反応に満足気に頷いた2人。さてそろそろ来るだろうと入口に視線を向けた。2人の視線に誘導されるように会場の目線はそこに集まる。
タイミングよく扉が開き、ようやくナユカとユキが姿を現した。そして会場はフリーズする。
「普段とは真逆かw」
「お姫様ですわ…」
「ユキもナユカもすげぇ…」
「…」
「…ん」
「コメントが…」
「はわぁ…」
「すっご!?」
ナユカは深紅の肩から鎖骨までオープンドレス。スカートもそこそこ短い簡素なものだが無駄な装飾がなくいつもの衣装とは真逆の大人な魅力を引き立てていた。
対してユキは露出が少なくフリルが多めのゆったりしたドレスだ。至る所に雪の結晶のようなあしらいが施されゲームと同じ装飾も見える。正しくお姫様のような見た目だ。
2人はそのまま会場を横断していく…
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