「【想渡出の未来】」
すらっとしたのに未だご健在なもふもふ要素が可愛さを演出する。その姿はニワトリから大きく変わりフクロウのよう…。
「後で、もふもふ…」
珍しくヒカリが反応しアキアカネが同じように首をブンブン縦に振っていた。
「我は酉。空を統べるモノコッコ。そろそろいい加減。地べたにへばりついとけコッコ!」
「空?宙は飛べへんのに大きく出たなぁ〜?猫は闇を支配するモノ。ほんに調子乗らん方が身のためやで?」
ニワトリが空気をそのまま猫に投げつけるような魔法を使う。空全体が重くなったかのようなそんな気圧の変化に猫は姿勢を低くしてその場で鳥を眺めていた。
気圧のせいでそんなポーズになったのかと思われたが、それは猫が狩りをする時の姿勢であり…。
「【群れのリーダーは獲物を弄ぶ猫残虐さえも本能のままに】」
分身体が掻き消え代わりにその他の猫モンスターがぞろぞろと現れる。その数は2人と1匹に対して軽く100を越すほど。
ヒカリもアキアカネもさすがにきつい。
が、よく見ればそこら辺の猫モンスターはどこか動きがぎこちない。鳥の技が猫たちに枷として機能しているようだ。
「ソナタら、雑魚どもはやれるコケ?」
「「やる」!」
同時に飛び出す2人。槍を数本浮かせながらリーチを生かすアキアカネ。
相手の間合いに急接近、次々に連撃を浴びせ猫モンスターを吹き飛ばし後ろの仲間にもダメージを与えるヒカリ。
「ほんとに残念コケ…」
「油断か?わて相手に考え事とはえらい舐められてはんなぁっ!!」
ガキャン!!
羽ごとクリスタル化させた鳥が猫の爪を弾きさらにクリスタル化した羽で弾幕を飛ばす。カウンター気味なその弾幕をまたもや回避して見せた白猫は憎たらしげに鳥を睨んでいた。
「我の姿を見るモノを増やすとかバカコッコ?わしの力は〔妖力〕。我を見る母数が増えれば力が増すも必然コケ」
「わかっとるわ。わても母数が増えると得なんやで?」
先程よりもさらに速く鳥に迫り今度は体の大きさの違いを使い上手い具合に足元を抜け背中側へ。そして切りつける。咄嗟にまたもやガードするためにクリスタル化した羽…。が攻撃を受けた感触はなく、掻き消えた白猫。
「くっ!?」
即座に違うところから現れた白猫がその鋭い爪を使い鳥を攻撃する。見事当たった攻撃に、追撃とばかりに弾幕を白猫が真上にばらまいた。
「ほい」
そのまま自由落下してきた弾幕が鳥にあたり〔爆発〕をおこす。
さらに白猫は魔法を煙が晴れず見えない鳥目掛けて飛ばす。
「ふん!」
最後の追撃だけは防いだ鳥だがかなりダメージは入ったようで…。
「クリティカルがウザイコッコ」
「的がでかいのがあかんなぁ〜?」
「くっ…、回復も…」
「そもそも?〔魅力〕の使い方が雑やねんなぁ。わての味方の前で〔魅力〕なんて逆効果やで?」
感情がバフにそのまま直結する〔魅力〕は負の感情に弱いという弱点も持つ。敵対心というのはそんな負の感情にほかならずそんな感情を上書きするほどの何かを鳥は持ち合わせていない。
味方が増えた猫はヒカリとのぶつかり合いで受けたダメージすら既に回復しきっていた。
*
「アキ。バフ、切れてる。MP、気をつけて」
「あ、ほんとだ。了解」
その頃、雑魚相手に奮戦する2人戦場となっている地形を利用して立ち回る。元々そこまで耐久力のない猫型モンスターだが、今はニワトリの技のおかげで機動力もない。単機なら苦労もしないくらい弱体化している。
が、その代わり数が多い。その数は初めからどんどん増えてきているのか一向に減る気配すらない。
そんな状況でHPとMP回復まで止まる。持久戦でMPが増えないということは魔弾を無駄遣いすることも出来ないため、攻撃を自身の持つ武器でできるだけ仕留めないといけない。だが、近接戦闘をすれば猫モンスターの攻撃を被弾することが増え、HPが次第に減っていく。
数の暴力の前に持久戦は不利であり状況が悪すぎる。
「え、援軍は?」
「むり、前線。上げてる。けど、ここまで、遠くてまだプレイヤー。奮闘中」
ヒカリ達が戦っているのは街から反撃し始めたプレイヤー達の最前線。そのさらに最奥の敵地本陣に等しい。プレイヤーがここまで来るまでには時間がかかるし、もし到着してもその頃にはヒカリもアキアカネも力尽きている可能性が高い。
「私たち二人とも範囲攻撃系ないですからね…」
「ん。一旦、逃げる?」
「それするとニワトリさんがピンチになるでしょ?」
「ん。だったら、気合い」
「ですよね」
こうして30分2人は猫モンスターを倒しに倒しまくった。減るHPやMP。アキアカネは槍の攻撃で消費し、ヒカリも爆発魔弾を飛ばしたりしながらどんどん2人は敵を倒し続けた。
「ヒカリ…。もう限界です!一旦引きましょう」
「ん。…でも、逃がしてくれそうにない」
もう一撃で沈むほどHPを消費した二人。そしてMPももはや空っぽに等しい。そんなふたりを逃がすほど猫モンスターも馬鹿では無い。二人を囲むように布陣しそのさらに後方には魔法攻撃ができる猫モンスターがこちら目掛けて魔弾をスタンバイされている。
「ここまで…」
「あとは、ニワトリさんに任せるしか…」
「ん」
「行くよヒカリ!HPが尽きるまで!少しでも道ずれだ!」
「ん!」
武器を持って最後の攻撃を二人で猫モンスター目掛けて放つ。それと同時に猫達も二人目掛けて攻撃を仕掛け、弾幕がすぐそこまで迫っていた。
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