*>>三人称視点
地球から離れここは木星圏に浮かぶ人工衛星。この半径約300kmな巨大な作り物の星の名をガリレオといい大昔に人類が木星衛星に入植をするために作成された星である。
ここには地球のとは違うノアNo.7が墜落していた。墜落当時は壊滅的状況だったノアだが、その後サービス開始直後の初心者プレイヤー達が結束し何とか復興に至るまでとなっていた。
そしてそんな中心にいた人物が…
「いやぁ…改めて助かりました。我々来訪者は今一度ガリレオのプレイヤーに感謝を。特にそんなプレイヤーの皆さんの中心であるあなたが…ギビンさんが現れてくれて本当に良かった」
「僕はただ必死だっただけなんですけどね?それに僕に協力してくれたプレイヤーの方々のおかげでもありますから」
いつだったか。200話越しに再登場したこの少年。初心者プレイヤーだった彼は、何の特徴もない黒髪少年から所々にあるプレート装備が輝き、緑の縁どりがその引き締まった体格をなでる。そこそこ見ていられる青年に成長していた。
「私供もあの頃に比べてモンスターに対抗する力をつけることができました。未だにモンスターは現れますが…」
「ノアはもう直りそうにないですよね?」
来訪者。ノアNo.7のリーダー。アルカイド・ベネトナシュはギビンの言葉に頷いた。
そう、ノアNo.7は主要なシステムをほぼ全損しかつての機能の9割を失ってしまっていた。地球に墜落したNo.2はまだ何とか幾つかの機能を保持できていた。しかし今のNo.7には墜落当初使えていた艦砲もその後使用不可能になり、格納庫や食料生産施設、さらにエンジンも致命的な損傷を抱えこれ以上動かしていたら爆発しかねない。そんな状況だったのだ。
現状ノアはエンジン未稼働のまま、付近にあったエネルギータンクから〔電力〕を供給し何とか電気系統だけ動かせてはいる。
「ではやはり一旦ここへん一帯を開拓しましょう」
「本当によろしいのですか?」
「地球のノアは既にかなり土地に馴染んだ様子ですし、我々ガリレオのプレイヤーもそれを望んでいますよ」
「そうですか。では我々も何かプレイヤーの役に立つ仕事をさせていただけませんか?無償で施しを受けるのは我々の面子に関わります。今までずっと助けていただいていて今更ですが、ほかの者達もあなたがたに協力したいと申しております」
「わかりました。この周辺の開拓や生産、それに防衛なんかもお願い出来ますか?もちろんプレイヤーも同じく、一緒に」
ギビンは手を差し出す。アルカイドもその手を取り2人で握手を交わした。これで何とか追いつくことができるだろう。握手を交わしながら今も最前線を突き進む憧れのリリースを思い浮かべる。
彼女たちならこうしたはずだ。
まだまだ遠い。追い付けるなんて思ってもいない。でもギビンはただ自己満足のために。
だがそんな自己満足が後々のストーリーへと大きく関わるとは誰も知らない。本人さえも。
そして彼は追い付きその手で彼女を引っ張ることとなるのだ。
*>>???視点
くらい。広いこの何も無い空間。宇宙はただただ広くたとえどれだけ進もうともその暗闇は続くだろう。
我々の祖先はもとより暗闇を、外敵から身を隠せる場所を好む。
時に泥にまみれ、時にゴミにまみれ。我々は数を増やし、仲間を増やし、ほかの生物達から身を守ってきた。
数が増え、情報網が出来上がった。
互いが自己を犠牲にして多を生かした。
連携が生まれ、知識が増えた。
我々は知を学び、世界を知った。
いつしか我々は1番に成っていた。
ほかの11種を出し抜けるほどの才を得た。
そんな世界にひとつの異変が起きた。
プレイヤーという人型の新しい種が生まれた。彼らはこの世界に瞬く間に適応してきた。
2種が彼らを認め、ほか10種は彼らを測りかねている。
我々も彼らがどういった存在なのか…よくわかっていない。
でも、目の前のアナザーは明確に我々12種の敵である。
「ほう?こんなところにまだ見ぬ地があったとはな!ここもまとめて我らがものとしてくれる!!」
くらい。広いこの宇宙で。何も無いこんな場所に居たら誰かが気づく。そして我々が気づいた。明確な敵意ある眼差しが我々のいる土地へ注がれる。
「帰れ」
「あん?何だこの小さいのは。俺は双子の眷属を追いかけて来ただけだ。ホントなら今頃殲滅出来ていただろう。だがいつまでたってもそんな報告が上がって来なかった。だから我自ら来てやったぞ!そしたらなんだ!新大陸を見つけた。誰も手をつけてないなら我のもので違いあるまい?」
「我々の住処だ。双子の眷属とやらは知らぬがさっさと去ね」
「お前の住処?はっ、知ったことか!我らがレベルに着いて来れぬ下等種族が駆逐してくれるわ」
明確な殺意と飛んできた攻撃。本来真正面から自分が勝てるとは思ってもいない。
自分がいなくとも、次がいる。我々はこのことをほか11種へ。いや12種へ知らせなければならない。
「帰れ!」
自らの体を盾に攻撃に突っ込む。そしてクリスタルを投げつけ自らが死を感じる。
「お!?な、なんだこッ!?」
やつは「帰った」。でもまた来るだろう。その時のために。次の自分はどの種にこれを伝えるのだろうか。プレイヤーを含めた13種があれを協力して排除せねばなるまいて…
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