場所は変わり、ここにはキリアが、黙々と作業机に座りアイテムを作っていた。
「…」
終始無言で、ただひたすらに〔実験〕と試作を繰り返しアイテム作成に必要な素材を湯水の如く消費していく。
「…」
ひとたびアイテムを作り出すと止まらず、本人が気付いた時には数時間が経過しているのはざらである。
そんなアイテムをいじるカチャカチャ音しかしない静かな部屋に、お客さんが現れた。
「それ。爆弾」
キリアの作っているアイテムを見て、ヒカリはそう判断したのか、正解を知っているキリアに問いかけた。
「…」(ウン)
手は動かしながらも小さく首を縦に振るキリア。それを見たヒカリは、他に何も聞くことはなく。
「ここ。見てていい?邪魔。しない」
「…」(ウン)
そのまま2人は無言になり…。
そのままさらに数時間が経過した。
*
「できた?」
「…♪」(ウン)
数時間後、やっと完成したアイテムを手に、立ち上がったキリア。それを見たヒカリも立ち上がり、そのアイテムを覗き込んでいた。
「見たことない。形。でもやばいものなのは。理解した」
制作工程を見ていたヒカリは、詳細までは理解できないまでも、それがどんな効果を生み出すかは理解出来ており、言葉と行動とは裏腹に、表情はカチンコチンで、サビたロボットのような歪な動きをたまにしていた。
それはそうであろう。なんせそのアイテムはユキが同盟後の紹介時に言った爆弾の改良版なのだから。
「…♪」
「んッ!???」
そんな、まじやばい爆弾をヒョイっと持ち上げ、コンコン叩いて音や、変に動いたりしないか確認しだしたキリアを見て、さすがのヒカリも、こいつまじでっ!?と言いたげな表情と、悲鳴を上げながら数歩後ずさる。
そのまま落としてみたり。
「ん゛っ!?!?」
壁に投げつけたり。水に突っ込んで見たり。
「やっ!!やめっ!!?」
キリアがそのアイテムを机に置いた時。ふと、後ろを見ると、見えないはずの汗が見えるほどの恐怖の目をキリアに向けていた。
「…?」
この時、キリアはそんなヒカリを見て、何してるのかわからずに首を傾げる。
ヒカリは悟った。無邪気とは時に狂気となる事を。
その後、落ち着いたヒカリは、何とかキリアの横に立ち上がり。そのままこういった。
「現実で。危険な物を。そんな扱いしたら。メッ!危ない。わかった?」
「…?…♪」
わかった?のか、わかってないのか曖昧な反応ではあるが、ヒカリはひとまず気持ちを切り替えることにした。
これでアイテム作成は終わったようなので例を言ってから今日はもうログアウトしようとキリアに話しかけようとしたその時。
辺りがヒカリとキリアを除いて、全て白く、何メートル毎に縦横が直線で仕切られた空間にうつり変わっていた。
「ん?」
「…♪」
こんないきなりの変化にヒカリは驚いたのだが、キリアを見ると驚いているそぶりも見せない。
「これ。キリアがやった?」
「…?」
そう問いかけるも、首を傾げたキリアはよくわかっていなさそう。そのまま今度は慣れた手つきでフォログラムパネルを操作しだす。
「…。もしかして。〔実験〕のスキル?」
「…♪」
「なるほど」
どうやら正解のようである。
スキル〔実験〕は、使用者とその周辺のプレイヤーを、非戦闘時に限り別のVR空間に飛ばすスキルである。その空間内では、持ち込んだアイテムは何回も使用出来。その空間外に出たら戻ってくる親切設計だ。
一時期話題になったこともあり、状況解説をしているだけあってヒカリはそういう知識はそこそこ揃えている。なので察することができた。
それと同時にほかのことも察してしまった訳だが。
「ん。私出して。今すぐ!」
時既に遅し。
キリアは構わず、爆弾の栓を抜いており。
「っ!?!?!?!?」
それを〔ロングスロー〕で投擲する。
「とっても!。遠くに!。飛ばしたけれども!!」
はるか遠方で一瞬、キラッ!っと輝く閃光。次の瞬間。極大の爆発が起こり、その衝撃にヒカリは吹き飛ばされた。
あ、キリアちゃんは普通に立ってた上にどこから取り出したのか分からない、ブカブカのサングラスをかけながら腕を組み仁王立ちで頷いていたとさ。
遠くでヒカリの悲鳴と、衝突音と共に「うげっ!?」っと、聞こえたのは気の所為である。きっとそうである。
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