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R261.1  透き通った水晶は羽のように

公開日時: 2022年9月12日(月) 14:54
文字数:2,128




《緊急クエスト:鳥の試練を開始します》


「さて、先程は冷たかったこっこ。次は綺麗にいここっこ」



 途端に辺り一面の結晶が妖しく光だし、ニワトリの体身もそれに反応するように輝き出した。



「我は酉。キラキラしたものを好み、その殻を纏う結晶。ソナタ等に与える試練は結。我が使うは結晶。その煌めきで世を誑かす」



 2人に語るニワトリ。そして光が収まり姿を表したニワトリは…。



「アキっ!ニワトリカチコチに!」


「見ればわかるよっ!!」



 目の前で、クリスタルの鎧を纏ったニワトリ。いつもの無表情から少しも変わらないのに、何故か目がキラッキラに輝いてアキアカネの方を見る。アキアカネは思う…。



(ヒカリ…。宝石好きだもんね…)



  そう、いつも無表情だが、宝石やクリスタルと、そういったものが好きなヒカリはいつもよりテンションが高い。


「いくこっこ」


「ヒカリっ!」


「ん!」


 両者、戦闘体制をとり、空中へ飛ぶ。結晶が多くあるこの空間はかなり大きく。そして歪だ。空間の中心は広く何も無いが、端っこに近付くにつれ結晶が森のようにそびえ立ち入り組んでいる。



 体がクリスタルで覆われようと問題なく空中を飛ぶニワトリ…。現在のニワトリはどちらかと言うとカラスのような見た目に近く、普通にスリムになっていた。


 少し上体を立て、2人に羽ばたくように翼を動かす鳥は、その翼から羽を高速で飛来させる。もちろん羽と言えど、結晶化しているものであり、硬く鋭い。羽の根元部分はアイスピックのように尖っていて、あれに当たれば大ダメージは免れない。


「【万残槍アフターIアタック】!」


「ん。【万残拳アフターIファイト】」



 2人もそれぞれ槍とグローブを装備して構える。2人の技は、どちらかと言うと弾幕ではなく設置型の妨害がメインではある。1人ではほとんど妨害にはならないが2人いれば充分に相手の機動を阻害できる。



 2人とも回避に専念しながら、その軌跡に弾幕を置いていく。鳥を取り囲むように展開し、アキアカネとヒカリは鳥を挟み撃ちになるように誘導した。


「頭はあるこっこね?ならこれで行くこっこ【鴉の目クロウズアイ】」


「モンスターが技!?」



パリーンッ!!




「んあ!?結晶が!!」


 鳥が技を使った直後、天井にあった結晶が一部割れ、粉々に砕け散る。その悲惨な光景にヒカリは若干の悲鳴の叫びをあげるが、砕け散った結晶はキラキラと辺りに粒子状になり辺りを舞い落ちる。


「そんなにクリスタルが欲しいなら、羽のクリスタルをプレゼントするこっこ!」


「こんなの。いらない…。いる」


「ヒカリ!?後にしてくれるっ?」


 いつまでもマイペースなヒカリだが、鳥はヒカリ目掛けて再び羽を飛ばす。

 ヒカリも一応、油断しているわけではないらしく、即座に反応し回避行動をとるが…。



「っ!?」



 その避けた羽はヒカリを通り過ぎた後、一旦停止し、再びその進行方向に向きを変えて飛んでくる。


 後方からの攻撃に、何とか致命傷は避けたものの。少なくないダメージをうけるヒカリ。羽は未だになお止まることなくヒカリを襲う。


 たまらず、その場から大きく離れ羽を躱そうとするが、しつこく追ってくる。

 さらに鳥はヒカリに羽を放ち追い討ちも欠かさない。


「私もいるんですけど!【直進槍ストレートIアタック】」



 見られていない。そう思い至近距離まで接近し、その槍を鳥の心臓目掛けて、1突きしようとアキアカネは近付く。



 が。






「見えてるこっこ」




バキッ!!


「グハッ!!?」


 ノールックでその鋭い鉤爪の回し蹴りをくらったアキアカネ。そのまま吹き飛ばされ、結晶の柱に激突した。


「アキッ!」


「自分の心配をするこっこ。じゃないと次はソナタこっこ〜?」


「っ!!」


 吹き飛んだアキアカネ。心配する暇もなく。いつの間には今度は鳥に接近されていたヒカリはその鉤爪の蹴りをギリギリ〔飛行〕を切る事で回避する。


「【直進拳ストレートIファイト】」


 そして、そのままその鉤爪目掛けて拳を叩き込む。




ガキャン!!



「ん。硬い…」


 カウンター気味の一撃。結晶化していない足を狙うも、見た目の割に恐ろしく硬い。チラリとアキアカネのHPバーを見ると、大ダメージだが生きてはいるらしく少しHPは残っていた。その後、回復したのが見えたので回復薬を飲んだらしい。

 ひとまず、相方の無事に安堵しつつ、目の前の鳥を見つめる。


「いい一撃だったこっこ。でもダメージにはならないこっこね」


「【残進槍アドバンスIアタック】」


 先程のお返しとばかりに、今度はアキアカネが今まで設置していた槍の軌跡を鳥目掛けて突き飛ばす。


「うむ…。体がでかいからこっこ。回避は苦手こっこ…」



 そう1人愚痴るようにつぶやく鳥は、できるだけ密度が薄い方へ体を滑らし、槍型の弾幕をできるだけ回避する。しかし、言ったように体がデカい分、当たる面積が増えて回避しにくい。ほんの少しづつであるが、鳥のHPを削ることが出来た。それでも見た目殆ど変わらない。


「あんだけ当たっといて、なんでそんだけしか減らないのか…」


「体。めちゃくちゃ硬い」


「クリスタルは打撃に弱いこっこよー」


「自分で弱点言っちってるし!」


「ん。バカ?」


「失礼こっこ!!」



 ヒカリの拳もわざわざ足でガードするくらいである。逆に言えば、あのクリスタルの羽を殴ることが出来れば、まだ望みがあるということだ。


「よし!」


「ん」


「「撃ち落とす!」」


「仲良いこっこねー」



 2人は同時に飛び出した。





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