*>>ユキ視点
私たちが浮島に登って来るのを分かっていたかのように待ち構えていたリン。彼女って確かアインズのリーダーだったはずだ。よく考えてみれば私は彼女達と行動を共にしたことが無い。戦争となったあの時もほぼ別々行動だった。
だがヒカリやアキアカネはスカイスクランブルの当事者、彼女達とはそこそこ関わりがあるのかもしれない。
「ようこそ。アインズへ。お待ちしておりました」
「「おおぉ!」」
『ぉぉー!』
『勢揃いや!!』
『配信見られてた?』
『巫女?』
たくさんのプレイヤーが後ろで待ち構えている。あれが我々に敵対する可能性も考えていつでも戦闘できるように身構えた。さすがにあの数は苦戦しそう。
だが向こうにその気は無いらしい。私の警戒を察してか、先んじて敵意がないことをお辞儀でアピールしてきた。まあ、そもそも敵対する理由が今のところない。
「お久しぶりですね。ナユカさん、ユキさん。リンにございます」
なるほど…。ここまでペースが良かったのはこちらに恩を売っておきたかったのかな?
「用意がいいですね?誰か視聴者にでも聞いたのですか?」
「そもそも。あなたはスカイスクランブルで自身の動画越しに色々情報伝達していたではありませんか。そのままたまに見ていたのですが、とんでもない配信者に化けましたね?」
『だいたい配信すれば爆弾投下してるからなぁ』
『配信追えてなくてもアーカイブあるし』
『スカイスクランブルの時はその場しのぎの配信だと思ってた』
『ストーカー覚醒す』
「あ、言われてみればそうですね。いやー見ていただけてるとは。ありがとうございます。古参名乗れますよ?」
『俺も古参名乗れるらしい』
『黒龍勢はギリ無理か?』
『新参者です』
誰かから配信について聞いたのかと思ったがそうでも無いらしい。ビュアもアインズと接点があったようだ。
「浮島はアインズ所有。そして移動は割と自由だと聞いていました…なるほどであります!」
「ご苦労さま〜」
『浮島って移動できたんだな…』
『浮いて移動出来て大きな要塞…』
とりあえず状況は把握出来た。ナユカのために動いてくれていたならそれなりにお礼をしないとね〜
「そもそも、ここまでRBGの中心であるリリースの動画。イベントなど無くても見ていたでしょう。ナユカさん達は半公式でもありますし、実質RBGの公式動画のようなものです」
『わかる』
『同感』
『公式映像より新要素が多い』
『配信も予告してくれたらなぁ…。突発的すぎるから追いかけるのが大変で』
そもそもゲーム所有者がナユカの父、勇人さんだ。マザーも私達を広告塔として使っているし間違いはないよね〜
「んじゃ〜改めて〜。ナユカが浮島散策したいって言ってるんだけど〜。好きに浮島探検してい〜い?」
とりあえず許可は取る。拒否されても無理やり押し通そうかな?
「ぜひどうぞ。こないだの件もありますし、我々も協力するつもりです。システムの都合上同盟とまではいきませんが、我々アインズとリリース。友好的でありたいと思っています」
『同盟はやめてね?』
『他が可哀想』
『絶望』
あら。大丈夫そう。
彼女達アインズのメンバー数十人は言うなれば戦争参加者だ。突発的だったとはいえ戦争参加前にある程度の説明は受けたのだろう。
ゲームのこと。
ナユカのこと。
正体不明の敵のこと。
私は守人。ナユカが全てであり彼女を守ることが戦争に繋がろうとも変わらない。
…でも、彼女達はどうなのだろう…。いきなり巻き込まれ、今後の太陽系の重要な戦いに参加せざる負えない。「RBG」をゲームではなく兵器として使わなければならないことに…
「ありがとう」
静かに響いたナユカの声。地球をバックに微笑みかける彼女は慈愛すら感じる不思議な感覚に陥らせる。
いつの間にか薄ピンク色を揺らす髪が❨エドヒガン❩の色に染め上がり、まるで発光しているかのようにナユカを彩る。
『この笑顔。守って見せろよ』
流れる配信のコメント。
当たり前だ。言われるまでもない。私は守人。ナユカを護るのは私だ。
「助かる。ナユカも私も。リリースも。これから仲良くしてね〜」
「はい。では時間が無いようなので御案内致しましょう。ところで具体的に何を見たいとかあるのですか?」
話が一区切り着いたところでリンは時間を気にしながら浮島入口から見える街に歩みだした。浮島の街はリリースの所有する地域よりも広大で建物も多い。
「結晶洞窟。そこに行きたい!」
そしてナユカは目的地を告げた。
…気になったのはそれを聞いたリンが首を傾げていたことだろうか。え?もしかして…
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