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「よっ、ほっ、どっこいしょ〜!」
まだ日も登らぬ早朝。ユキは1人、下へ続く洞窟を下っている最中だった。
そして目の前に現れた広場には夥しいほどの結晶がこれでもかと立ち並び。はるか上空に空いた穴から差し込む光を辺りに煌めかせている。
「おお〜」
ユキを持ってしてもなかなか壮大な景色に思わず声を漏らし、辺りを散策するようにキョロキョロしながらさらに奥に進んでいく。
結晶でできた林を抜け、少し開いたスペースを見つけたユキ。そちらに横たわる白いなにかを発見した途端にユキは戦闘服のドレスを纏い。タガーを構えた。
「まだ、目覚めには早いコケ。何奴コッコ?」
「んあ?」
そしていきなり聞こえた声にびっくりした拍子に変な声をあげたユキ。その白い塊はゆっくりと動き出し、その巨体を持ち上げた。
「ほう?人の子か。聞けば我等が領域にいきなり現れたと聞くコッコ。何用か?まあ、いいコケ。お日様が登ってから攻める予定だったコケが、今からでもよかろう」
「ん?なんの話し〜?」
喋り初めてこちらのことも気にせず語り続けるその白い塊は、最後までユキを見ながらもユキの話はガン無視するというある意味すごい芸当を繰り広げる。そしてそのまま首を持ち上げその大きな鳴き声を轟かせた。
「コケコッコーーーーーーーーーーーーーォ!!!」
「うッ!?」
このよく響くであろう洞窟内で突然の爆音。うるさいを通り越して一種攻撃となる鳴き声はユキに状態異常すらも引き起こした。
「これでそなたらはいずれ地上堕ちるだろうコッコ」
「え〜!!なんて〜??」
ユキの耳は先程の爆音で未だ耳鳴りの最中だ。
「その前にそなたから堕としてくれるコッコ!」
「だから聞こえないって〜!!うわっ!!?」
ユキ目掛け飛ばした羽を目眩しにその白い塊はいつの間にか別の姿へと容姿を変えていた。
「行くコケ」
「おお〜。綺麗」
氷像でできたかのようなガラスのような羽。1枚1枚がおり重なりながらも崩れぬその容姿にユキは見とれる。
「じゃあ、私も〜。【私と一緒に踊りましょう?】」
「ほう?」
ドレス姿ではあるものの。自身にバフをつけるため技を唱える。ドレス姿はそのままに、ユキの周りにはキラキラと粒子が舞い始めていた。
そんなユキを見てその氷像は珍しいものを見るように鳴いた。
「そなた。それをどこで手に入れたコケ?」
「秘密」
両者同時に飛び出した。
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「コケコッコーーーーーーーーーーーーーォ!!!」
その頃、浮島全域で聞こえた鶏の鳴き声に、ログインしていたプレイヤーは何事かと囁きあっていた。
紆余曲折あって、浮島に作るこの街の名前を「アインズ」に決めたアインズメンバーも同様であった。ちなみにこの頃からアインズメンバーと聞けば、リン、ダイチ、レン、シズカ、シリウス、サナタリアの6人である。
「リン」
「ええ、これはなにか起こった。或いは起こる予兆でしょうか?」
早朝でも、たくさんのプレイヤーがいる中、アインズの街を着々と作り上げているプレイヤーとちょうどログインしていたダイチとリンがその咆哮を受ける。
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サイドクエスト:こけー?
クリア条件:鳴き声の解明
参加者:全員
報酬:?
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ログイン中の全プレイヤーに向けられて出されたクエストが、なにか起こることを予期しイベント参加者の警戒心を煽る。
さらにそれから少ししてほかのプレイヤーからアインズに衝撃の報告がなされる。
「え?備蓄していた資源が消えた?」
リンにそう報告するプレイヤーの焦り方も相当で、みんなで集めて誰でも取り出せるように保管していた資源が消えたという。そしてその保管していた場所には1匹の猫が居たという。
その猫はプレイヤーが現れると逃げ出したが、猫がなにかしたのか。それともほかの要因なのか検討もつかない。
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チェインクエスト:消えた資源
クリア条件:消えた資源の発見。奪還。
参加者:任意
報酬:?
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「なにかのイベント。ということですね。これが出たという事は…」
さらに追い打ちをかけるように発生しだしたイベント。アインズメンバーは街づくりを継続しつつ資源奪還を目指して動き出した。
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