Reality barrage Gamers

初心者がゲームの常識をひっくり返す...無自覚に?
D,S(diamond) D
D,S(diamond)

"294"  【雷光ノ軌跡】

公開日時: 2023年3月27日(月) 13:49
文字数:2,238



 アリアは詠唱しながらハルトと白猫の戦いをチラ見する。

 何かとこういう時だけ連携が取れるのはなにか不服であるが満更でもない。白猫はアリア狙いの攻撃や行動の素振りを見せるが、それは全てハルトが阻止していた。

 何となくハルトが護ってくれると信じることが出来ているアリア。ひとまず、このモヤモヤは胸の内にしまい込んで今は魔法を完成させることだけを考える。



「その天から堕落する全てのエネルギー、辺りを見回しゆける道余すことなく弾けゆく。その障害を足止めする力となれ。我は命ず、須臾なる旅時の行き先を、その性質とともにここへ招いて、微々たる力も。力であり不定形な御身はことを成す。この湖の水。道として我の前に降り注げ。[贄は我が身自身 纏いし魔力。目指すは我の見えるもの全てなり。どこまで早く進みゆき、その障害の動きを止めよ。また、我と並ぶかの者に力を授けよ。力は速さへ、速さはその性質を持って] 」



 長い長い詠唱。1字1句丁寧に紡ぐ。あの白猫は人語を話す。なのでその性質が見抜かれぬよう、遠回りして属性を指定する。

 水面に付いた足。静か振り上げたアリアの右腕に伝い魔力の線が伸びてゆく。その黄色い魔力は右手の手のひらに集まり丸い球体となった。


 ハルトと戦闘中の白猫も警戒してそのままハルトと一旦距離を空ける。水面に波紋を広げながらその上に立つ白猫。ハルトは剣を構えたまま湖の上で飛行しながら構えている。


 そしてアリアは左手の人差し指をハルトに向け呟いた。



「ハルト。この攻撃を受けなさい…」


「…了解した」


 刹那、アリアはその技を唱えた。


「【雷鼓「パラライズサーフィン」】ッ!!」



 パァァァアンッ!!!


 それは閃光。アリアの右手に落雷したように見えた雷。実際は本物と比べるとかなり弱い瞬間的な電流の軌跡であるがそれがアリアを伝い湖の水面に広がる。反応する間もなくその電流を真に受けた白猫。ハルトは浮いているため電流が流れることなく無事だ。


 かなり弱い電流でも白猫を麻痺するまで持って行ったアリア。自身のHPとMPを犠牲にした一撃はそれだけでは終わらず、ハルト目掛けてアリアの左手から細い電気が飛ぶ。それはハルトに直撃していた。


 ここまでがほんの数瞬の出来事。



 麻痺付与とついでに閃光により目を潰された白猫はスキルは維持できるものの体は一切動かせない。


「小癪なッ」

「よお?w」


「んなッ!?」


 さらに刹那アリアの電流はハルトだけにバフとして正しく雷光が如くスピードを授ける。そのスピードを持ってして、急激に移り変わる視界を何とか認識し白猫に肉薄したハルト。

 間近で聞こえたハルトの声に白猫は死を悟る。


 ハルトに一閃され霧散した白猫、ハルトはそれすらも確認せずに進行方向を180度反転させた。




 ハルトにバフを付け終えたアリアはその終了と同時に残りわずかとなったMPを消費して〔飛行〕で真上に体を浮かせる。だがしかし即座にMP切れになったアリアはそのまま真っ逆さまに落下。さらにアリアも麻痺を食らっているため全く身動きが取れない。



「こんにゃろぉぉおおおおお!!!!」


水面スレスレを雷光とともに飛んできたハルト。水面ギリギリでアリアをキャッチしてみせたハルトはそのまま湖のほとりまでたどり着く。



 着陸してバフが切れたハルトはアリアをお姫様抱っこしたまま叱りつけた。


「お前MPの加減しろよッ!!危なかったじゃねぇかッ!!」


「そ、それは、仕方ありませ、んわ…」


「仕方ねぇも何も無いだろがッ!」


「あぅ…」



 実際ハルトが間に合わなければアリアは死亡確定である。RBGの世界で未だ水中は死地なのだ。リアルで泳げようともRBGでは泳げず沈む。


 なんとも可愛らしい声で鳴いたアリアだが、麻痺が未だ効いているためまだ言葉もおぼつかない。



「また、いちゃつきおってからに…」


「なッ!?」


 そんなハルトとアリアの耳に聞こえた声は間違いなく白猫の声だ。あれで倒せなかったのかとハルトはアリアをお姫様抱っこしたまま構える。



「なに、安心してやぁ?わての負け、体の維持ができひんからこうげきもできんしねぇ」


 そして白猫は実態のない霧のような姿のままハルト達の前に現れる。


「今回はここはバカップルに譲ろゆうことやね」


「誰がバカップルだッ!」


「お前ら以外に人がおるんけ!?こな見せつけとるんか!!ホンマに!!次会ったらシバくぞぃ!?」


 これでもかと見せつけられた白猫は心做しかどこにあるか分からない額に青筋を浮かべながら指摘したがハルトはなんのその。

 そんなハルトを見て呆れたのか。そのまま話し始めた。



「さて、わてはそろそろ本体に戻ろかね?」


「え?お前猫じゃねぇのか?」


「猫よぉ?でもさっきの白猫は式神みたいなもんや。本体は今忙しゅーてなぁ。色んなところにばらまいとんねん」



 これが本体でないと知ったハルトとアリアは内面冷や汗をかく。


 あの動きで式神…。本体は絶対もっと強いじゃん。と。


 まさしくその通り、猫の本体はここでは無い別の場所にいる。そして今のハルト達では手も足も出ない。


「ほなバカップル、また会おや〜?わては猫。また会った時はしっかり殺したるさかい覚悟しときぃね?」



 言うことだけ言った猫。もとい霧状の何かは今度こそ姿を消したのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


チェインクエスト:湖のほとり


クリア条件:湖の謎を調べること

クリア状況:クリア

参加者:アリア、ハルト

報酬:水源地の獲得、白猫の柔毛

特別報酬:猫のマーキング


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート