イベント2日目。結局、あの後ゆっくりと幹の上にある道?を進み何とか抜け切ったヒカリとアキアカネ。しかしもうその頃には深夜に突入していたためその場でお開きとなったのだった。
そして2日目の朝、2人はログアウト地点から再スタートすることにした。
「ほらヒカリー。起きて」
「まだ眠い…」
まだ眠たげなヒカリはどこかぽあぽあしたまま。しかし無表情である。アキアカネに言わせれば違うらしいのだが、その違いは微々たるものだ。
現在時刻は6:30。普通に早めの起床時間だ。もっとも目的はゲームなのでいいこととはいえなさそうだが。
入り組んだ幹の道を踏破した2人は再度大樹の幹の中に入る。
中には大きな…。半径20mほどありそうな螺旋を描いた階段が出現し、真ん中は広い空洞で吹き抜けのようだ。当たり前のように〔飛行〕が使えないので、真ん中を飛んで聞くことは出来ず、代わりに落ちることは出来そうだ。
落ちたら死ぬことを除けば。
もちろんそんな状況。少し進んだあたりでいきなり上から物音がし始めた。
バサバサ…。バサバサバサバサ…。
「ヒカリ」
「ん、多い」
2人を出迎えたモンスター。最初にであった小鳥とは違いその体格は普通のサイズ、キツツキに見えるそれが群れをなして上から現れた!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シークレットクエスト:群れる脅威
クリア条件:?
参加者:ヒカリ、アキアカネ
報酬:?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「シークレット?」
「とりま、あれ、どうにかする」
「だね…」
突然の通知も束の間。一匹一匹が体制を整えそのままその鋭い嘴を先頭に突撃してくる。
「くっ!?」
「ん!?」
あまりの数に2人とも次々被弾、急所は護りつつも着実にダメージが削られ2人とも3分の1程度HPを減らされてしまった。
即座に〔風〕の魔弾を飛ばし数匹を射止めるアキアカネ。ヒカリも、水弾を使い撃ち落としにかかる。
「数が多い!」
「きり、ない」
MPには余裕はあるものの、あまりにも多いキツツキに2人では対応しきれない。さらに…。
「〔爆発〕はダメだからねッ!」
「がってむッ」
ここは大樹の中。もちろん滅多なことでは無いが万が一燃えると詰みだ。
キツツキは一旦旋回を挟み、さらに2人目掛けて突撃攻撃を再開する。2人ともできるだけ弾幕を張りつつ回避に専念するが被弾は増える一方だ。
「多い多い!!弾幕間に合わない!」
「アキ!魔弾、できるだけ、MP追加消費、ない。最大、最小サイズ!で!」
「最大の最小!?」
ヒカリは魔弾をできるだけ小さくし代わりに魔弾の数を増やす。
キツツキ本体は貧弱なのか、そんな小さな魔弾でさえも当たれば一撃で消えていっていた。
「なーる」
そんな光景を見てヒカリの言っていた意味を理解したアキアカネ。同じく魔弾をできるだけ小さくしつつついでにその魔弾を盾のように前方に集めて即席のバリアを作る。そこに突っ込んできたキツツキは消滅していくのを見てヒカリも真似した。
「ひとまず死ぬことはなさそうだけどこのままだと進めないよ?どうする」
回避とガードができるため先程までと違い被弾はしなくなった2人、だがしかし、キツツキの数はまだまだ圧倒的な量を残しており、MP的にもここで持久戦になるのは避けたい。
大樹の中にいるが、ある程度登ってきたことを考えると頂上はあとほんの少し残す程度だろうと予測するヒカリ。だが、まだこの階段を抜けた先がゴールとは限らない。
「魔弾、キリがない。だから、〔魔法〕」
「…、えと?何か違ったっけ?」
ヒカリの回答に、疑問符を浮かべるアキアカネ。
「とりま、「ウィンドカッター」。撃つ」
そう言って説明するよりも見せた方が早いとヒカリは「魔弾」ではなく〔魔法〕を放った。
その風の斬撃はキツツキの群れにまっすぐ突っ込み、そして…。
「おおー!!後ろも全部斬っていく!!」
アキアカネの言葉通り、ウィンドカッターに触れダメージを受けたものを通り越してさらに後ろにいたものまで斬り進む。
魔弾と魔法。どちらもMPを必要とするが厳密には仕組みが違う。
魔弾は相手に、もっと性格には相手のMPに当たれば付与された属性系、変化系などの効果を発動させながらダメージを与え「消える」。また物理的なものに当たっても消える。魔弾そのものの核は消え、現象だけが残る。
対して魔法は、MP消費して属性系に「タイプ」を付与し、その現象を攻撃とする。魔弾のようにMPに当たろうと、物理的なものに当たろうとその現象は変わらず、物理法則的にその現象がゼロになるまでそれは続く。
MP消費は多いものの。魔法の本質は現象そのものであり、魔弾のように単純な「弾」では無い。
ヒカリはさらにウィンドカッター。
[〔風〕属性に「斬撃攻撃」のタイプを付与した現象]
をキツツキに当てたのだった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!