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Z355  人工物と人工の森

公開日時: 2024年10月30日(水) 03:30
文字数:1,900

*>>ナユカ視点



「初めまして。プレイヤーの皆様。私はエルフ族の長。そして当艦の艦長。ミザール・ハイ・プリオルです。どうぞお見知り置きを」


 すごい。美人とはこういう人のことを言うのだろう。そんな容姿でモデルさんよりも綺麗なプロポーションを持つ女性。そんなハイエルフ族の艦長。



「お久しぶりです。ミザール艦長。ノアNo.2アリオト艦長が部下、ヒイロでございます。まずは応答に感謝を」


「いえいえ、空の戦闘兵を殲滅したのはあなたがたでしょう?ならば礼を言うのは我々です。ありがとうございました。ところで、そちらの方々とここにこられたのは…」



 そういえば私たちはまだ自己紹介を終えていなかった。ユキをちらっと見たら、それに気づいたのかこっちにウインクで答えてくれた。なにあれ可愛い。

 それと同時にユキが話し出す、どうやら任せろ、という合図だったようで。


「まずは自己紹介から〜。私はリリースのリーダ〜のユキ。アリオト艦長からの依頼でここにいるよ〜。同じくリリースの〜」


 自分の自己紹介が終わってこちらに視線を移すユキどうやら次は私らしい。


「ナユカです」


「ウルドだ」


「ニワタリ、コケ」


「あ、リリースでは無いですけど、ギビンと申します!」



 流れるように自己紹介を終えた。今回私は付き添いだしそこまで肩書きがあるわけじゃないからね。シンプルに名前だけ。


「私たちは先程伝承と同じく緑の光と声を聴いたという少年を光の元へ送り届けに来ました。緑の光はそちらも見えているのでは?」


「ええ、今も観測しております。ではこの方の誰かが?」


「はい。こちらのギビンさんが声を聴いたと」



 そして話は勇者の話へと移り変わっていく。長かったので割愛するが、内容的にはほとんど変化はなかった。




*




「基本的には予想通りですね。ということは光…つまり大樹様に一度会って貰わなければなりません…しかし我々も今は緊急事態、それに大樹様は…」


「大樹に何かあったのですか?」



 …


 言い淀むミザール艦長。これは一筋縄ではなさそうな…そんな重い口調で私たちにとって衝撃の真実を語り始めた。



「大樹様はおそらく…死んでしまわれました…」


「「んな!?」」


 死ぬなんて言葉をこのRBGで聞くとは思わなかった。確かにモンスターは倒せば死ぬし、来訪者も太陽系に来るまでは私たちのリアルと同じような生死の価値観だった…


 そんな来訪者も今はHP全損でもすぐにリスポーン…つまり復活する。

 これはエルフにも適応されているはずだ…


 でも考えてみれば大樹というのは文字通り木なのだろう。それは果たしてリスポーンするのだろうか…するならどこに?


「で、でも僕はさっき声を聴いた!ということは死んではいないのでは?」


 た、確かに、ついさっき声を聞いたならやはりどこかで生きてる可能性の方が高い。では、なぜ?何を根拠にミザール艦長は大樹が死んだと判断したのだろうか?

 


「いえ、確実に死んでは居るのです…我々…と言うよりも私は大樹様にいちばん身近にいました。ですから大樹様といつでも、離れていても会話できるのです…でもいくら呼びかけても願えども…もう声を聞くことが叶わず…」


 声?〔念話〕みたいな?でも来訪者って最近までスキルの存在も知らなかったはず。ということはなにか別の方法で?


「大樹様が死んだと言うならこの緑の光は一体?」


「この光は大樹様ではなく大樹様から授かった苗木を指しています…ですがその苗木も豊かな大地のないこの不思議な星では育たず…」



 ふむふむ?何となく流れがわかってきたかもしれない。ついでに絶対その苗木って大樹かそれに近しいものだよね?話せないのもパワーが足りないとか?

 ともかく私たちがやるのはその苗木に対して、育つ環境か改善しなきゃ行けないクエストのクリアかな?


 所々話に違和感がある気がする。でもその違和感の正体はよく分からない。

 困った時はユキだ。ちらっと見てみると本人は別段、なんとも思ってなさそうな表情だった。



「話はわかったコケが、我らはその苗木に会ってみんことには進まんコッコ。何かあってもこのメンツならどうとでもなるコッコ」


「そうだね〜。出来れば早めに動かないとまた敵が来るかもしれないし〜」



「わかりました。案内しましょう」



 と、こんな感じで私たちは移動を開始した。こういう場面だと私は出る幕がない。ユキが全部やってくれるし、私は内容を追うだけで精一杯だ。



 案内されたのは先程このノアに入る時とは反対側のハッチだ。両サイドにあるもう片方。だがハッチが開くとそこは外ではなく…



「ようこそ。エルフの開拓地へ」



 そこには歪な空間を形成している広大な機械の洞窟と、そこに無理やり生えてきたような森が広がっていた。


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