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初心者がゲームの常識をひっくり返す...無自覚に?
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D,S(diamond)

"302"  見えざる者と見えた物

公開日時: 2023年4月24日(月) 00:03
文字数:2,128


「とりあえずここにはちょっと動いてうるさい給水機がいる。水路は後回しでいいぜ?w」


「誰が給水機よ!!私は火炎放射機にもなれますわ!」



(なんじゃろ…。ワシ。なんか作った爆弾カタパルトの着弾ここにするべきだったか?)



 ジークは2人の夫婦漫才を見ながらそう思った。ここはプレイヤー達が作る街。その中にある商業区と呼ばれている一角。小さくも既に完成している家のような建物の横には石造りで小さな煙突のようなものも併設されている。


 その中には溶鉱炉をはじめ様々な器具が置かれ始めている。



「とりあえず俺は量産型の剣と槍をできるだけ高性能でって…。なかなかハードなこと言ってねぇか?w」


「ハルトは普段遊んでばっかなのですわ。このくらいしなさい」


「お前はオカンか!?」


「フン」



(こいつらいつか爆殺したろうかのうッ)



 フツフツと煮えたぎる殺意を何とか押し殺しながら、ジークはフォログラムパネルをつつきだす。


「ほれ、資源じゃ」


「お、おう。サンキュッ!?何だこの量はッ!!!?」


「ん?ああ、余ったら返さなくていいそうじゃ。良かったのう?」



 ハルトに〔プレゼント〕として大量に送り付けられたそれはインベントリ内でとんでもない個数で表記されている。


「これ…、ゼロが2桁くらい多くねぇか…?」


「とりあえず両方7万本作って欲しいらしいのう」


「oh……」



 サラッと言われたノルマにハルトは膝から崩れ落ち、これから来るであろう鍛冶地獄を想像して顔を青くする。

 流石にアリアも多くね?と思ったのか。その顔はハルトことを笑いながらも引き攣っていた。


(あれ?普通剣ってそんなぽんぽんできるものでしたっけ?ま、まあ、ハルトならできるとかそんなのですわ。わ、私も少し可哀想なので手伝いますし)


 こうして少しスッキリした顔のジークと、対面。とんでもなく暗い顔のハルトが生まれた。

 この後もちろんハルトは一日中剣をとんでもないスピードで作り上げていくこととなる。

 ちなみに、アリアは給水機兼、着火剤として1日ハルトに付き添った。






📷



 街の中央に位置する広場、その周りにある資材の数量を〔記録〕していたセリエル。数多くのプレイヤーが今も尚忙しそうに行き交う中。ふと何も無い資材の片隅を見つめ、唐突に言い放った。



「ふむ?盗撮は感心しませんね?出てきたらどうですか?」


 しばらく何も無く、それでもセリエルが見つめ続けると、観念したのか。その何も無い空間が溶けるように歪み、そこから昔ながらの新聞記者の格好をしたプレイヤー、ビュアが現れた。



「…なぜ、気付いたのです?結構自信あったのですが…」


「あなたの〔透明化〕は有名ですからね。そんなんの動画はそこまで有名というわけではありませんが…。情報収集家としてどうにかして真似出来ないかと一時期話題になりましたよ。ビュアさん」


「名前まで…、まあいいでしょう。少しこのイベントの情報が欲しかったのです」



 ビュアは名前まで言い当てられたことを少し驚く。何せ動画投稿者、配信者としてはまだそこまで有名では無い。かなり調べてやっと浮き上がってくる程度。さらにそのビュアがこの〔透明化〕を使用するのは撮影中か隠密行動中。配信中にはしないように徹底していたため、本来その〔透明化〕とビュアという名前は結びつかないはずなのだ。


 つまりこの目の前にいる男は少なくとも、情報収集家としてはかなりの手練であると言える。


「ふむ。では情報交換で如何ですか?最も、我々の知らない情報があるかどうかですが…」


「それでいいですよ?では私が望むのは猫について。差し出すのは鼠について」


「ほう?」



 セリエルが放った挑発に、返すように挑発てきな笑みで応じるビュア。はたまたこれはハッタリか、それとも何か特殊なクエストクリア済みか。

 鼠というワードに含まれた妙なニュアンスにセリエルは真面目に交渉することとした。


「その前に、これを」


「姿隠しのカプセルですか?そんなにほかのプレイヤーに聞かれるとまずいことでも?」


 セリエルの言葉に無言で見つめ返すビュア。まるでそれすらも聞かれたくないと言わんばかりの訴えにセリエルは少し考えながらもパーティー申請をビュアに飛ばす。


「ご理解頂けて感謝します」


「いえいえ」


 ビュアがその申請を承諾し姿隠しのカプセルを使った。途端に2人の姿が掻き消える。そうして周りから視認されなくなったのを確認したビュアは話し始めた。



「鼠はほとんどプレイヤーから目撃されていないようですので。私からしたら結構な頻度で目の前を横切るのですけどね?」


「…、なるほどあなたのその特殊な〔透明化〕は鼠をも誤魔化せるのです?」


「私のは匂いも消せますから。あと彼らは人語を話せるようです」


「!?人語を?そんな話は聞きませんが…」


 セリエルは驚きながらもこれは期待出来るかもしれないと内心大喜びだ。



「そして、1人に一匹。監視役として小さな子鼠が全員を監視しているようです」


「な!?」




 ビュアのそんな発言にセリエルは今度こそ絶句した。人語を理解した鼠が1人につき一匹。つまり…。



「こちらの情報は全部…」


「筒抜けですね」



 セリエルは即座にリンにメールを飛ばす。姿を隠せるビュア。その目に写ったこのイベントの裏側がついにプレイヤーに認知されようとしていた。






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