「ご苦労コッコ」
「何が、ご苦労コッコ。よ。明らかに嫌がらせでしょ〜?」
ここはとある洞窟の奥深く。辺りには美しい結晶が所狭しと並んでいる特殊な場所。その結晶洞窟は水色の透き通ったものもあれば、赤紫に怪しく光るものまで。様々な大小、形が複雑に織り成しまるでジャングルのような複雑な構造を作り上げていた。
そんな中心に存在する大きなモフモフと1人の美少女は出会って速攻挨拶もなく本題に入る。
「それでどうだったコッコ?クリスタルはちゃんと持って帰ってこれたコッコ?別に目的は達成したコケからなくてもいいがコッコ」
「無視か〜。というかあんたがクリスタル持って来いって行ったんだけど〜。要らないってどういうこと〜?死にかけたのに〜」
若干声のトーンが低い目だけは笑っていないユキ。そこから漏れ出る殺気を受けてもものともせずすました顔(たぶん)で大きなニワトリは話を続ける。
「そもそもクリスタルはついでコッコ。無くても問題は無いコッコ。案の定、破損したコッコ?」
「ちゃんと持ってきたよ〜…」
そう言いながらユキはインベントリからそのクリスタルを取り出しニワトリに見せつける。
「ほう?…まさか無傷とは…、強いのはわかっていたコケがソナタひとりで潜り込んでよく無傷のまま逃げ出すことが出来たコッコ」
「私じゃなかったら無理だからね〜?あれ」
無傷なクリスタルを見て一瞬ユキを見たニワトリ。がすぐにそのクリスタルを受け取り何かを調べるようにクリスタルを見つめた。
「ほうほう、なるほどコッコ向こうだとこう加工するのだコケ。参考にさせてもらうコッコ」
「?」
そして何か知ったふうな独り言を言いながらニヤリと笑うニワトリ。そして気が済んだのか。そのまま今度は再びユキの方へ視線を戻し話しかけた。
「それじゃ報酬を作るコケ。少し待ってコッコ〜」
そのままニワトリは器用に羽で掴んでいたクリスタルを宙に浮かせ、何かキラキラした粒子をクリスタルに注ぎ込む。
そうしているうちにクリスタルはどんどん内側から光を放ち初めついに眩く発光する。
「ソナタ。なにか望みの力はあるかコケ?」
「ちから〜?」
ちょっと予想外な問いかけにユキは復唱しながら考える。少し考えるがパッと思いついた言葉をつい吐き出していた…
「もし…、力が手に入るなら…、私は…。…二度と那由花を悲しませない力が欲しい…」
微かな声でそう呟いたユキ。本人も無自覚のうちに出たその本心と後悔の念に…。ニワトリは…。
「無理コケ」
あまりにも淡白に、無機質に。その時だけニワトリではなく…。ただの存在しない。何者でもなくただ指示通り動きを続ける機械のように。相手のことなど考えてもいないただの結果を告げる。
…まるで、心を持たぬAIのように。
「そうだろうね〜…。人の心を護りきるなんて…。本人にしか分からないんだもん…。治せないもん…。私じゃ〜…、護れなかったんだもん…」
ユキの表情はニワトリからは見えない。
「…そうかコッコ」
「はぁ〜、無し無し!今のは無しね〜?せっかくの報酬なんだし〜、いい効果ならなんでもいいよ〜」
そんなニワトリに少し苦笑いしながら、バツの悪そうに、話題を本題に戻す。今先程までのくらい雰囲気すら消し飛ばした…
ただの少女に…。
「ただ…。もし悲しませたくないと。ソナタが本心から思っておる相手なら。…ソヤツも同じく。…お主に傷ついて欲しくないと思っておる。…と、思うコッコ。
人というのは曖昧で、狡猾で、不安定な生き物だコッコ…。でもそれは我らには持つことも許されぬ特権コッコ…。もしソナタがソヤツを悲しませたくないなら…。そばにいてあげるのが…。何よりも効果的…なのかもコケよ…」
まるで、それはただのAIで。それは何か人間味の帯びた声色と表情で…
ユキはそんなただのAIを誤魔化す笑顔すら忘れて…。
「なる…ほど…」
少し止まって目を閉じた。そんなユキは何を思ったか。言い終えたニワトリはその次にはクリスタルに力を注ぎ込む。
「だから、この力を封じ込めるコッコ」
そうして出来上がったクリスタルは、澄んだ半透明な無色から少し赤みを帯びるものに変貌していた。
「これは「不死巍のクリスタル」。これを持つ者を1度だけ死を否定し、全快へと誘うクリスタル。そしてその否定したものを相手に押し返す…。それは不思議なクリスタル。ソナタがそれをどうするかは自由コッコ。焼くなり煮るなり砕くなり好きにするコケ」
「え〜…。さすがにとんでも性能すぎて今までの話が半分飛びかけたんだけど〜…。性能盛って話してな〜い?」
「盛ってないコケ」
「うそぉ〜ん…」
ユキの手元に届いたクリスタルはそのままインベントリに入っていく。
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チェインクエスト:きらびやかな物
クリア条件:「封核クリスタル」を鶏に届ける
クリア状況:クリア
参加者:ユキ
報酬:特別報酬に変更
特別報酬:「不思巍なクリスタル」
特別報酬条件:「封核クリスタル」が無傷であること
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こうして知られざる3つ目のクリスタル…。いや、1つ目のクリスタルはユキのものとなった。
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