「じゃあ今家や建物の中にいた人達は外に出られなくなってるんだね?」
『最近のハウスはほとんどがAIによる制御があり、それが落ちている以上扉などは開かないかと、窓も同じくロックがかかっている可能性が高いです』
ほんとにまずいじゃん…。最近の窓ってアホみたいに硬いからハンマーとかでも割れるかどうか…。
『確認が取れました。今回のこの騒動は全てマザーから攻撃が行われています』
「はい?なんでマザー?マザーってRBGの統括管理AIだよね?」
『現在はRBG統括管理AIですが、過去に地球のAIを統括する役割を持った仕事をしていたAIでもあります。…何故そんな高性能なAIがこんなゲームの統括管理AIをしているのかが謎ですが…』
「なるほどな。ならそのAIが地球のAIに命令する権限を持っていてもおかしくないのか」
『持っていた可能性が高いです。なお、マザー本来の意思は現在機能してないと思われます』
「それはなぜだい?マザーが自らの意思で地球に攻撃している可能性の方が高いだろう?」
『RBG内にて、先んじてゲームシステムがダウンしました。その時にその他の子機の判断の元。救援要請が飛ばされています。もしマザーが自らの意思で地球を攻撃するなら、まず間違いなくその子機から支配下に置くはずです。ですがそれをせずにことを起こしたことを考えると、外部からの何らかの攻撃で意思を封じられ、メインシステムを乗っ取られた可能性の方が高くなります。マザー程の高性能AIが、子機から先に情報を漏洩されるようなミスをするはずがありません』
「なるほど。その線が濃厚だな…。だとすると…」
『攻撃相手はあまりAIに詳しくなく。この星を乗っ取る気のある人物となります。そして先日の件を総合すると』
「「ソレ」が動き出したか…。もしかしてとは思っていたが、もうこの星に工作兵が送り込まれていた可能性が高いな」
私はパパとナビィが一体何を話しているのかさっぱりなんだけど…?
「現状、どうにかできる方法はあるか?」
『…。あるにはあります…。ですが姫や雪様を危険に晒す可能性があります。それ以外のアクセス方法は模索しておりますが…今のところはそれしかないです』
「…一応聞こうか」
え?私とユキが危険?
『現状を打開するには、マザーをどうにかして制御権をこちら側に戻す必要があります。しかし、世界中何億とあるAIの中から現実世界での捜索はほぼ不可能です。そこで今までの姫経由で獲得したデータと、逆算でRBGのシステムを再構築します』
「できるのか?」
『21世代機舐めないでください』
「さすがだ」
『そこにRBG内でのステータスを持っている人物。すなわち、姫とユキ様を送り込み。RBGのゲーム内からマザーを探し出しアクセスを開始。マザーの操作権限をこちらに奪取します。そうすることで地球への攻撃を止めることが可能です』
「…」
『しかし、現在ゲーム内では不明なERRORが多数出現していることが予測されます。また、再構築した際に、「ソレ」にその事実が通達され、姫とユキ様は何かしらの妨害に会うことが予測されます』
「那由花とゆきのアバターを保護することは可能か?」
『可能です。しかし、ゲーム内のシステムには逆らえないので1回でもHPがゼロになると再構築が出来なくなります』
「那由花やゆきは、その場合無事か?」
『無事です。しかし、姫とユキ様の情報が抜き取られてしまうでしょう。その場合、姫がガーデンプラントの姫だということが「ソレ」に知られてしまい。本格的に太陽系に攻撃が来るようになる可能性があります』
「行くよ」
「那由花…?何を言って…」
「私が行く」
「話を聞いていたのか?もしゲーム内で死んだら、ナユカの素性が敵にバレるんだ。本格的に命の危険だって訪れるようになるんだぞ?」
「でも、他に方法があるの?」
「でもな…」
「無いなら早く動かないと手遅れになる。どっちみちこのまま統括AIが動かないと死人が出るんだ。後のことより今のことを考えないと、しかもこれは私達が巻いた種なんだよ?責任は取らないと」
「それは那由花には関係ないだろう?」
「またそうやって私をここに置いていくの?」
その言葉にパパは数歩後退りながら視線を逸らす。
「俺たちは那由花のことを思って…」
「なら、私もパパ達と居たい。生まれだとか、戦争だとか、全部受け止めて。それでも私はパパとママのそばに居たい」
「な、那由花」
「私はどんな血筋でも、どんなに人と違う力があったとしても、パパとママの娘なのは変わらないから。私もパパ達と戦いたい。まだ見た事ないけどおばあちゃんやママの故郷を見てみたい。一花さんにも会ってみたい。私はもう、怯えて何も出来ないわけじゃない」
自分の過去。それは鮮明に覚えてる。恐怖とまるで極寒のように冷たい空気。唯一あったのは手のひらから伝わる熱だけ。
あの時、ゆきが私から離れ1人で敵に立ち向かったあの時。私は何も出来ずにただ怯えることしか出来なかった。
その手からその温もりが離れていくのに。怖くて前すら見えずに、金縛りのように動かない体。あの時はゆきも私も無事だったけど…。次がそうとは限らない。
それがもしも次に同じようなことが起きて、パパやママが私から離れていくようなことがあったら…。私はもう…。その温もりから離れないと決めた。
たぶん、その次が刻一刻と迫ってきているから。
私はもう、守られるだけなのは嫌なんだ!
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