*>>ミカ視点
大規模戦闘システムは一見とても便利だ。だがしかしそれを使用する側が常に正解を導き出し、それをプレイヤー全体に知らせるとは限らない。
今回のように、本来同陣営のプレイヤー同士がぶつかってしまうと途端にプレイヤーは大規模戦闘システムの信用を失ってしまう。
ユキが上手くまとめたのだろう。ウサギの攻撃は一旦収まったが、そのことをプレイヤー側へ伝える手段が少ないのだ。
こちらが何を大規模戦闘システムの〔念話〕機能を使って話しても信用して貰えない。唯一、月にある複数の大規模ギルドや同盟は指示系統がしっかりしているのであろう、かなり減ったように思える。
アインズギルドもかなり手が空いてきたようだしうちはユキ達の様子を見ようかな…
『ミカ〜。ちょっと月が動いている原因が大樹にあるらしいんだけど〜。何か変わったことある〜?』
向こうも同じことを考えてたのか。ユキの方から連絡がきた。
『大樹?真ん中のか?少しここからじゃ見えにくいから待ってくれ』
現在アインズのギルドホーム付近にある大規模戦闘システム。がある建物の中だ。元々アインズのメンバーが操っている大規模戦闘システムにお邪魔させてもらっていたのである。
建物を出てすぐに〔飛行〕。そのまま大樹を見てみるがこれといった変化はない。
あの大樹…昔イベントで見たが中が空洞でそこをアスレチックさながら登らなくてはならなかったはずだ。
あの木の空洞はそこに居た鳥達が空けたもの…そんな状態でも葉を生い茂らせているのも変。
あの木…もしかして生きてるんじゃないか?植物的な生きてるじゃなくて、意思があるのか?
…おそらくそうだ!ウチらは何を見た!さっき勇者達が目の当たりにしたじゃないか…意思を持つ木に!!
もし、意思を持つとしたらどうしてこんなことになる?
『ヒカリ!月はどの方向にズレ始めてる!?もしかしてその方角にエルフの里があるんじゃねーか!??』
『ッ!待って。確認。してる』
今起こっていることは今日、突発的に発生したクエストだ。だがこういう場合どこかで共通点というものがあることが多い。それでもたまたまということもあるが…
…今回の共通点は両方ともクエストの中心に「木」があることだろう。というかこれしかない気がするぜ…
スカイスクランブルの大樹のイメージ、つまり大樹をフィールドとして捉えていたのが気づくのに遅れた原因なのだろ。
『確認した。月、エルフの里。目指してる』
『了解。サンキュー』
確認は取れた。この大樹は自らの意思で苗木のあるエルフの里へ向かっているのだな!?
…
『なあユキ。ここにある大樹と会話って出来ると思うか?』
『大樹?大声でお〜い!って話しかけてみたら〜?』
『それで会話できるならアインズの誰かが既に接触してるだろ?』
『そ〜お〜?ん〜…じゃあ〔念話〕とかは〜?勇者君も念話のように声が聞こえたみたいだし。同じなんじゃな〜い?』
〔念話〕か。基本的に念話はパーティーを組んでいないと発動しない。ただし例外として大規模戦闘システムの補助があるならある程度自由に念話を届けられるし、受信することも可能だ…
『わかった。大規模戦闘システム越しに話しかけてみよう』
『ホイホ〜イ』
もしこれで会話ができるならなぜ移動をしているのかがわかる。
苗木に会いたいのか?それとも弱った苗木を助けたいのだろうか?
よし。先程出ていった私がすぐさま戻ってきたため大規模戦闘システムを操っているアインズのプレイヤーは少し驚いていた。
「すまねぇ。念話の機能の権限をくれないか。少し試したいことができた」
「は、はい!」
忙しいだろうそのプレイヤー。は少し苦労しながらも念話の権限を無事にうちへ付けてくれた。
ここから念話の設定をいじっていく。
念話の目標を味方からその他へ変更。大樹が選択肢に表示されるはずもないのでマップをつつき大樹の場所に念話を届けるように指定する。
『あ、あー。聞こえてたら念話で返してくれ。うちの名はミカ。プレイヤーだ。今大樹はなぜこの星を無理やり動かしてまで移動している?苗木やエルフと関係あるのか?』
…
『…ザ……ザザー』
返信はしばらくこなかったが、代わりになぜかノイズのような砂嵐のような音が帰ってきた。
『…ザ…人の子…よ』
今度は明確に言語が聞こえた。少し違和感のある声だがどうやら〔念話〕で会話できている。
『お前はなんだ?』
『…トコリネ…老いた…木である』
どうやら大樹で間違いないらしい。というか個体名まであるのかよ。
『どこをめざしている?』
『ユラグドシル』
?
これも個体名か?…ユラ…グド…シル?
ユグドラシルか!!ユグドラシルといえば世界樹!世界樹と言われて思い浮かぶのはエルフやハイエルフ。つまりやはり目的地は苗木で間違いない!!
『止まってくれ』
『否。ユラグドシルの危機なり』
苗木の危機。枯れそうな苗木を救うためにこの大樹は移動を!!
『行ってどうする!?何も出来ないだろ!』
『実を…』
実?木の実か?いやでもこの大樹にそんなものあったか?少なくともうちは聞いたことがない。
『実を届けたら苗木は救われるのか?』
『うむ』
なら簡単だな。
『その実。超特急でうちがその苗木に届けるのじゃダメか?』
『信用。足らぬ』
っち。
『どうやったら信用してもらえる?』
『勇者を探せ。緑の光に導かれし勇者を』
おいおいおい!ここで勇者かよ!?
『ちょっ!?今勇者はその苗木のところにいるぞ!』
『勇者を知るか。…わかった。その勇者を連れて現れよ。さすれば実を授けん』
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緊急クエスト:空に浮かぶ大樹
クリア条件:浮島を占拠し大樹を落とせ
敗北条件:月の軌道が修復不可能位置に到達
クリア状況:進行中 月の軌道が一時安定化
参加者:月のプレイヤー
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緊急クエスト:ウサギの襲撃
クリア条件:浮島を守れ
敗北条件:アインズ(ギルド)の陥落
クリア状況:進行中 一時的な休戦中
参加者: ギルド「アインズ」
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特殊クエスト:願いを叶える星となれ
クリア条件:勇者を見つけ出し、老いた大樹「トコリネ」の願いを果たせ
敗北条件:???
クリア状況:進行20%
参加者: ユキ ニワタリ 軍曹 ミカ ギビン
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クエスト全てに更新が入る。やることは明確になった。ここからはただのお使いクエストだぜ!
…
そんな矢先。本当の戦いはここからだった。
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緊急クエスト:天秤の試練
クリア条件:???
敗北条件:「勇者」の死
クリア状況:0%
参加者: 全プレイヤー&来訪者
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