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ここは中央の島。広い大地と森。そして真ん中にそびえ立つは見上げるほどの大樹。それがそびえ立つ大きな島。いや、浮島。
いったいどうやって浮いているのか検討もつかないそれに降り立ったアインズのメンバー。この時は「アインズ」の名も無き仲良しパーティー、リン、ダイチ、シリウス、シズカ、レン、サナタリア。
彼らはいつも通り6人で行動しこのイベントに参加していた。
「それでレン。建築できそうですか?」
「まだ分からないかな。きっと資材は継続的に集めないといけないし。もしここに建てるならしっかり区画わけしないとただデタラメに好き勝手建物が建ち出すよ」
巫女服に身を包み和やかにレンに話しかけるリン。
大して、そのリンに答えるように辺りを詮索するレン。
「じゃあ!いっぱい建てまくろうよ!!うちでさー!」
「このイベントに何人参加してると思ってるです?絶対喧嘩になるです」
元気にそう言い出したシリウスに、少し疲れた顔のサナタリアがたしなめた。
「とりあえず、ほかのプレイヤーとの協力は必要不可欠です。レン。あなたには生産職を中心に呼びかけ、プレイヤー同士の協力関係を提案して回ってください」
「了解」
リンはひとまず全員の行動を決めていく。
「シリウス」
「なにー?」
「あなたには今から自由にこのイベントフィールドを駆け回って貰います。地図を埋めてください」
「おー。僕の好きそうな仕事で助かったよ!!」
と、即座に飛び出していくシリウス。そんなシリウスを見送りリンはさらにみなの行動を決めていく。
「シズカ、サナタリアは継続して素材集めを頼めますか?」
「は、はい…」
「え?…またです?…はいです…」
明らかにサナタリアは嫌そうだがリンは
「大丈夫です。素材集めと言っても集めてもらうのは薬草や、変わった素材です。このイベント。街をつくって終わるとは考えずらい。なら、戦闘に備えて起きましょう。もし必要ならPVPも許可します」
「なら了解です!」
「薬草…。なるほど」
リンの説明で納得がいったのか。サナタリアもシズカも納得顔だ。2人とも装備を戦闘用に切り替える。
「ダイチは私と他に戦闘や素材集めをしてくれるプレイヤーを集めていきます」
「…」
ダイチは静かに頷き、シリウス以外のメンバーはそれぞれリンを見つめる。
「今回のイベントは協力戦。きっと予想外のことが起きると推測しています。各々ができうる限り最善を尽くしましょう。ではダイチさん行きましょう」
その言葉を皮切りに、全員がそれぞれの方向へ飛び立つ。
この後、スピード自慢のシリウスは地図を全部埋め。レンは片っ端の生産職をまとめあげ。ダイチとリンは協力者を募り。サナタリアとシズカは珍しい素材を集める。
そのまわりには多くのプレイヤーが集まるようになり、このイベントの中心へとアインズがなっていくのだった。
*
「ヒカリー。いつまでもしょげてないでしっかり歩いてください」
「アキ、ほんとに…。あれ登るの?」
「え?そうだけど」
「…」
場所は変わり、ヒカリたち2人は、同じく中央の浮島のジャングルがごとく入り組んだ地形に苦戦していた。
「なんで…。飛べないの」
そう、その苦戦の一因として、中央に近づくと何故か空を飛べなくなる。飛行系スキルはことごとく機能を止め、全く使えない。
別にそういう状態異常でもなければ表記すらなく使えない。まるでそういう仕様のように。
「運営さんの意思じゃない?飛んでいくとすぐに着いちゃうから…」
「ぐっ…」
ふたりがめざしているのは中央の浮島にこれでもかと主張する大きな大樹。
せっかくのイベント。気になった場所には行ってみようと言い出したアキアカネ。それに反対意見もないので賛成したヒカリだったが、まさか飛行禁止エリアがあるとは思わず…。
結果、2人してこのアスレチックさながらのジャングルを踏破しなくてはならなくなった。
アキアカネは別段慣れているように突き進むも当のヒカリは…。
「う…!?」
ドテン
飛べない=自分の足でギミックを超えなければならない。つまり…。
「ヒカリ、アスレチックとか苦手だもんね」
普段物覚えが得意で戦闘も難なくこなすヒカリ。だがしかしそれは飛行有りきで有り、なおかつ闘技場のような綺麗な地面であったり。つまり、極端に不安定な地形に極端に弱いヒカリにこの状況はクリティカルヒットしていた!!
「ここ。滑る」
「しっかり足元みなよ」
「見てる。足の力加減。わからん」
1歩踏み出し片足を離した瞬間ズルっと…。そんなことを繰り返しズタボロなヒカリ。心做しか少し落下ダメージすら食らっている。
「ほら、まだ半分位だと思うよー?」
「…」
ヒカリの地獄はまだ終わらなかった。
❆
時を同じくして。
「ん〜。まあまあ体幹トレーニングとかにはいいかも〜?」
既にジャングルを爆速で踏破して見せたユキは大樹の真下に到達していた。
そういった訓練の経験もあるユキにとっては朝飯前である。
「んで〜。まだ終わりじゃないよね〜」
そして、ユキの目の前にはとある光景が広がっていた。
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