「どう見る〜?」
「まだ、なんとも言えない。情報が少ない」
観戦席でそう問いかけたユキに、分からないと返すヒカリ。実際、今の闘技場はランキングの入れ替わりが激しく、人の出入りもいつもよりも多い。
原因は言わずもがな、「革命」のせいだ。
革命後に起きたオーブショップの混雑もそのせいと言える。店でさも昔からありましたよ?と普通に売られ始めた六大原型のオーブ。それらが、誰でも買えるのだ。ランキングを競いたい人達からしみれば、今後必須スキルとなって来るであろうそれらは、必ず早期にゲットしておかなければならない。
そして、いざゲットしたなら誰よりも早く使いこなしたいと思うのは必然なのだ。
いざログインしてみれば、周りはモンスターばかりでそれどころじゃなかった午前中はさすがにランキングバトルなんて言ってられなかったのだか…。
そのイベントが終わり、落ち着いてきた今は闘技場に入り浸りである。
さて、軍曹もそうであったように、六大原型を使い新たな「個性」としてバトルを「魅せる」物に変えてきたもの達が増える。それは、ユキの〔妖力〕や、ナユカの〔魅力〕に感化されたプレイヤーが発端であるが、その新たな「他の人間のイメージや感情を自己の力にする」という、なかなか馬鹿にならない戦闘スタイルが流行り始めた証拠であった。
「大会。「見せる」作戦だった」
「初めは〜、ナユカを上の人達に「見せる」のが目的だったんだけどね〜。それを「魅せる」に変えたのは紛れもなくナユカだよ〜。いつの間にか」
「あの子。ナユカ。ほんとに不思議な子」
「でしょ〜?昔からあんなだよ?」
ナユカを褒められて?嬉しそうに話すユキの横顔を見ながらヒカリは思った。そこに、お前も入ってるんだぞ?と。そのことを目線で訴えかけるも既にユキは席を立っていた。
「私のナユカの半公式プレイヤー入の件。明日まで待ってもらえる?」
「ん。上に言っとく。でも明日にはナユカ。ログインの時。メールが行ってると思う。公式から」
「うん!それでいいよ〜」
これで話は終わりだね!と、そんな雰囲気を醸し出すユキだが、ヒカリの用事はまだ終わっていない。
「ユキ。お願いがある」
「ん〜?なんか珍しいね?」
既に席を立っていたユキに合わせるように、ヒカリも観客席から体を持ち上げ、そのままユキの方の全身向け話し出した。
「ノア。楽しそうだから私も入れて」
「はい?」
真面目な話をするのかと、真顔で話しかけてきたヒカリに身構えていたユキは、足を滑らせないように踏ん張るので精一杯だった。
そういえばヒカリはいつも真顔だったと思い直し、建て直したユキ。
「えっと?それはギルドに?」
「ん」
「あんた、アキアカネは〜?」
「たぶん、今日中に同じく。参加を求む」
まじか…。
「私たち。半公式プレイヤーで気軽に入れるギルド。「リリース」位しかない」
「なんでよ?そもそも半公式プレイヤーがギルドに入ってもいいの〜?」
そういうの、上から止められそうだと思ってたユキ。自分達はギルドに既に所属しているのでノーカンである。
「半公式。完全な公式じゃない。半分は普通のプレイヤー。だから、私。自由。公式の仕事は。ある程度「実況解説」しとけば。ぐーー」
「ん〜…」
ヒカリをギルドに入れるのは別にいいと思ってるユキ。しかし、自分だけで勝手に決めるのも悪いと思うためユキは。
「それも回答は明日でいい〜?私は別にウェルカムなんだけど〜…」
「ん。いい。明日、またここでいい?」
ユキは少し、考えて。
「ま!たぶんOKだからね〜。こっちに明日ログインしたら連絡ちょうだ〜い」
そう言いながら、ユキはヒカリにフレンド申請を送ったのだった。
*
「あ、いたいた!!軍ちゃーーん!!」
「負けたであります!!」
試合が終わり、ロビーに帰ってきた軍曹。そこに駆け寄る元気いっぱいな女の子。プレイヤーネームはヒリリー。
「負けても元気いいねー!軍ちゃん!楽しかった?」
そんな彼女は軍曹が負けたのに、そんなに気落ちしておらず、むしろ嬉しそうなのを見て尋ねる。
「わかるでありますか?」
「ニマニマしてるねー!」
「いやー!惜しかったでありますがねー」
実際、あと数ミリだったのだから。
「〔魅力〕はやはりナユカさんには敵わないであります」
あの時、魅力のCPの上昇によりバフが入ったであろうナユカ。実際、CPはかなり上げずらいことがわかった。そんな物をナユカはいとも容易く上げるのである。
「ナユカちゃん可愛いよねー!!」
「さて、ヒリリーも試合、行くでありますよ!」
「はーい」
そう言って2人は受付ボックスに向かう。
「それにしても、この人形兵。すごいであります!」
「結構機敏に動いてたねー!」
「ドールのおかげであります!!」
「帰ったらお礼言っときなよーー!」
「もちろんであります!!」
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