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初心者がゲームの常識をひっくり返す...無自覚に?
D,S(diamond) D
D,S(diamond)

R×2 47  守られる者の覚悟と、受け止める器を。それはいつか必要になる…。

公開日時: 2022年8月23日(火) 21:26
文字数:1,872



「キャー!」

「ほ、本物だ!!」

「白雪姫とナユカたんだ!!」





 おう…。なかなかの熱気でこっちがビビっちゃうよ。



 私たちはそのままコメットから降りて、ポータルまで向かったあと、予定通りに火星までテレポートした…。のは良かったんだけど。


 火星のポータルから今度私たちの向かう所までは、車で行くため。そこまでの道のりで「火星に無事到着しましたよー」とお知らせのために、一般ロビーを横切るルートが予定されていた。


 もちろん、人混みが多いロビー内では何があるか分からないので、私たちが通るための道を即席で仕切ってくれている。が、そのおかげでめちゃくちゃ目立っていることこの上ない。さらに、辺りには警備ロボがかなりの数配置されていた。そして…。



「こっち向いてー!」

「サ、サインをっ!」

「ビュアちゃーーん!!」

「リリースの人達だ!!」




 その道を取り囲むように人々で溢れかえっていた。どうしたみんな…。暇なのかな?



「ファンサービスでもしてあげたら〜?」


「え?…何すればいいの?」



 ユキにそう声をかけられるも、ファンサービスなんてやったことないから分からない。あ、いや、1回だけサインしてあげたことあったけ。

 ただ、今回は事前に因幡さんから他の人との接触を禁止されているのでそれは出来ない。んー。とりあえず手を降っておく。



「キャー!」

「グハッ!お、俺もう死んでもいい…」

「バカ。これからライブ行くんだろうが!」

「ナユカたん!サ、サインを!!」



 1部に変なのが混じってるけど。重ね好評のようだった。



「うん。さすがナユカ。早速致命傷を与えたようだ〜」



 私をちらっと見ながら何がユキが言ってた。ほとんど聞こえなかったけど、致命傷って聞こえたから、私を守るために色々考えてるのかも…。嫌でも致命傷って、考えすぎでは?


 順調にロビーを進んで、もう少しで出口。というタイミングになった。そして、そのタイミングでちょっとしたハプニングが起こる。



 相変わらずの歓声の中、私たちが出口に差し掛かると…。


「ナ、ナユカたん!!こっち!サインっ!クソっこうなったらっ!!」



 そんなワードが歓声の中、掻き消えるように呟かれたあと。1人の男が、私たちが通っている道から手を伸ばっ!!


「っ!!」

「ナユカっ!」



サッ!!



 私目掛けて、突進のように突撃してくる男が、仕切りを超えてかけてきた。素早く私が反応して向きを男に向けたと同時に、私を遮るようにヒカリさんとアキアカネさんが、男と私の進路上に身を乗り出し私を庇う。さらにビュアさんも、私の後ろにサッとよってきて辺りを見回した。


「うぉおおおォー」


 とでも言いながらやってくる男の人は私たちとは比べ物にならないくらい体格が大きい。そしてそんな男にユキと因幡さんは即座に接近していた。



「どけぇえぇ!」


 男は私目当てらしく、そのままユキを邪魔だと払い除けようとするが…。



「ふんっ!」



 振り払おうとした男の腕を少し体制を低くして躱し、走っている男目掛け、足を払う。男が踏み出し、その足を地につけようとしたタイミングで払われた足は、そのままユキの足に吸い付くように男の後方へ持っていかれる。もちろん、今踏み出そうとしていた足がいきなり後ろに引っ張られるように刈られ、自信の体重と突進の慣性はモロに逃げ場をなくし、男はそのまま顔面から地面に激突した。


 うわっ…。痛そう。



 そのまますぐに因幡さんが男の腕を後ろに持っていき、身動き取れないように関節をキメながらのしかかった。

 すぐに警備ロボも駆けつけ、男を拘束していく。



「ナユカ〜。怪我は無い〜?」


「私は大丈夫、ユキこそ大丈夫?」


「へ〜き〜」


「なら良かった。ありがとね、ユキ」


 そのまま男は警備ロボに連行されていく。男の人は私にまだ危害を加えてきたわけじゃないけど、これだけ守られてたら嫌でも理解させられる。



 自分がどういう存在で、今後何が起こるのかも。



 一瞬悲鳴なような声になっていたが、見に来てくれた人たちも次第に歓声に戻って来たので、ひとまず安心だね。

 あと、やっぱりユキが強い。私は反応できてもたぶん体が動かない。というか、体格のいい男相手に推しつぶされるのが目に見える。



 襲われたりしたら、やっぱり少し怖いけど。ユキがいてくれるから、私は今。外を歩いて生きていける。それはあの時から変わらない。少し前の私なら…。



 そんなこと考えてもキリがないから。一旦思考をやめて、観客に笑顔を振りまく。降り注ぐ悪意と、好意。私は今一度その胸の中で考える。どちらも、私は受け止めて生きていく。今は、この溢れ出る好意を素直に受け入れることが、できるようになったのだから。


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